ORESAMA SPICE初インタビュー「J-POPを持って世界に行きたい」
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撮影:鈴木久美子
ボーカルで作詞担当のぽんと、トラックメーカーの小島英也による2人組のユニットORESAMA。TVアニメ『アリスと蔵六』のOP主題歌『ワンダードライブ』で再メジャーデビューを果たし、続けてTVアニメ『魔法陣グルグル』のOP主題歌「Trip Trip Trip」をリリース。疾走感とポップネスを共存させた楽曲は広くアニメファンにも受け入れられている。SPICEはそんな二人に初インタビューを敢行、ORESAMAの二人の音楽に対する向き合い方を聞いた。
――SPICE初登場ということでよろしくお願いします。まずはORESAMAの成り立ちからお聞かせ願えたら。
ぽん:私達は高校の同級生なんですけど、元々バンドを進路の関係で解散して、上京して小島くんは曲を作ってて歌う人がいないので、ぽんちゃん歌ってみる?ということで声をかけてもらったんです。それで結成したのがORESAMAですね。
――ほんとに高校の同級生なんですね。
小島:そうですね。ちょうどヴォーカルを探しているときに声をかけたのがきっかけで、偶然ぽんちゃんの歌を聴く機会があって。いいな、この子の声でバンドやりたいなと思って声をかけたんです。
――ぽんさんはいろいろなところで歌うのが好きと発言されていますが、一緒にやろうと言われた時はどうでした?
ぽん:それまで小島くんと話したことなかったんです。たまたま廊下ですれ違ったときにバンドやらない?と言われて、私もその時に歌う場所がほしかったので「やる」といって(笑)。 高校の時に4人バンドを組んだんです。
――即答だったんですね。
ぽん:即答でしたね。
――ちなみに小島さんから見たぽんさんてどういう人ですか。
小島:想像力にたけているというか、いい意味での妄想というか、すごい自分の世界を作っている人だなと。それは歌詞に現れているんですけど、歌詞も前回のシングルに入った「空想フライト」という曲なんかは、ぽんちゃんの想像力が活かされた曲だったり。経験したことのないことも想像や空想の世界で作り上げる事ができる人だなと思いますね。
――ぽんさんは小島さんをどう思いますか?
ぽん:目立ちたくないのに目立ちたがり(笑)。 そういうとこあるよね。ひっこむかと思いきや、じつは前にとか出たがりという印象があります。
小島:テンションがあがったりするとものすごく目立ちたくなりますね。ライブの時とか。
ぽん:ORESAMAの由来も、普段は引っ込み思案なんですけど、ステージの上では堂々としていたいという意味を込めて「ORESAMA」とつけたんです。
――そういう願いがあったんですね。
ぽん:そう、願いがありました(笑)。
――ORESAMAの楽曲に関してなんですが、ダンサブルなシティポップスにぽんさんの歌詞がのって小気味よいサウンドになっていると思っていますが、小島さんはナイル・ロジャーズなどのブラックミュージックやファンクがお好きということなんですが、それを好きになったきっかけとかはあるんですか?
小島:僕はもともとは曲をギター1本で作るという活動をしていて、3、4年前に曲作りの中で、どういうトラックを作ろうかと模索していた時に、ダフト・パンクとナイル・ロジャースが一緒にやった「Get Lucky」という曲を聞いて、その時はナイル・ロジャースは知らなかったんですけれど、こんなかっこいいギターあるんだ、誰が弾いているんだろうと調べてナイル・ロジャースを知り、そこからディスコという音楽に入っていきました。
――ダフト・パンクでいうと『Discovery』や『Human After All~原点回帰』などのエレクトロ路線から、グラミーを取った『ランダム・アクセス・メモリーズ』で70~80年台サウンドを取り入れたように、逆輸入的にディスコ的な音楽にはまっていったという感じですかね。
小島:そうです。ダフト・パンクとかフランスのブレイクボットとかジャスティスとか、ああいうアーティストの元はなんだ?ってさぐっていった結果、ディスコにたどり着くという流れですね。
――ORESAMAはアー写を見てもビビットな色使いで、非常にポップな印象を受けるんですけど、このテイストってちょっと懐かしいというか、90年代位に渋谷で流行っていたようなポップさみたいなものを感じます。お二人は渋谷との関係性を語られたりしていますが、そこもお聞きしたくて。
小島:色使いは、うとまるさんというイラストレーターのかたと知り合ってから始まっているんですけど、僕も70年台80年台の音楽とかサウンドとか好きで、ぽんちゃんも80年台のアニメが……。
ぽん:そう!80年台90年台のアニメ、特に『うる星やつら』が大好きで、その雰囲気というか、ちょっとレトロ調のものと、現代をかけあわせたものをアートワークでダイレクトに伝えられないかと思ったんです。その時にうとまるさんを紹介していただいて、最初のデビューからずっとお願いしているんです。そこから派生させて衣装もセレクトしていただいていますね。
――ぽんさんも「ラムのラブソング」は何回もカバーされてますね。
ぽん:そうなんですよ。大好きな曲ですね。
――渋谷というものに関しての思い出というのはあるんですか?
小島:本格的にライブをしはじめた場所が渋谷だったんですけど、とてもよくしてもらって。そういう意味で音楽をはじめた街でもあるんです。僕らは上京して渋谷に来たというタイプなんですけど、渋谷は情報がカオスに混ざり合っていて色々なものがうごめいている場所。僕らもそうところで自分たちの音楽を果たしていくのがとっても良いんじゃないかと思って、ここで活動していこうと思いました。
ぽん:原宿は年齢層が若くて、新宿はちょっと上の方が多いイメージがあって。渋谷っていちばん人種も年齢も様々で、本当にごちゃごちゃしていて、スクランブル交差点が象徴しているかのよう。そこに行くというのが楽しかったし、そこで音楽が出来ているっていうのが最初すごく嬉しかったですね。
撮影:鈴木久美子
――再デビューからの話も聞かせてください。今年の7月に都市型野外音楽イベント『Re:animation10』に出演されたときに、出演者のアニソンDJ達が「ORESAMAヤバイよ!」って話で盛り上がっていたんです。ちょうど「ワンダードライブ」がリリースされて、あれが彼らの中でかなりフックしたようなんですが、再デビューしてからの「ワンダードライブ」リリースというのは契機になった部分はありますか?
小島:そうですね。アニメファンの方たちとか、新しい層の方たちがかなり聴いてくれたりライブ見に来てくれるようになって、ライブでも実際お客さんの幅というか、年齢もそうですし性別もそうで、すごい広がってかなり多くの人に知ってもらえる大きなチャンスになりましたね。
ぽん:あの曲はTVアニメ『アリスと蔵六』という作品のために書き上げた曲なんですけど、自分たちの今の境遇とすごくマッチしていた部分があって、タイアップをいただいて再デビューさせていただいたというよりは、あの作品に出会って、あの曲が生まれたから、再スタートを切らせていただけたという印象があって、すごく運命的だなと思います。
――歌詞も「鏡よ鏡、私、世界を変えたいの」っていうところから始まるのはすごく良かったし、それまでの曲よりもBPMも早かったと思うんですよね。
小島:そうですね。あの当時で過去最速だったんで、その次にBPM165で、「Trip Trip Trip」が更新するんですけど、僕は基本的に作るのは128付近の曲が多かったんですね。そういう中で「ワンダードライブ」の時にアニメのお話をいただいて、アニメのOP主題歌なので89秒っていう尺があって、その中で展開をいっぱい盛り込まないといけない。今までとは違うところに挑戦しないといけない部分が出てきた時に、今までは速い曲っていうのはけっこう意識的に作ってこなかったんですけど、今回はそれに挑戦したら絶対に自分が変われるポイントだなと思ったんです。89秒にどれだけORESAMAを詰め込めるかと意識してテンポを早くしてギュッと凝縮したっていう、そういう流れで165になったというか。
――歌ってみていかがでした?
ぽん:新しかったですね。小島くんのこんなに速い曲がいままでなかったので、自分も歌ってて楽しかったですし、『アリスと蔵六』という作品に対する私のイメージにもマッチして、私自身の境遇にもシンクロした歌詞をのせることができて、新しいことだらけですごく楽しかったですね。
――BPM128~130くらいの早さって、クラブユースというかEDMやハウスミュージックでよく使われる速さですよね。
小島:そうですね、ちょうどいい、曲をつなぎやすいくらいの。
――アニソンてやっぱり速い曲が多い気がするんです。ちょっと前までは174鉄板理論みたいなものがあって、アニソン主題歌の多くが174オーバーの速さだったんですけど、これまで作られていた曲と比べて、速い曲を作るのは感覚が違ったりするんですか?
小島:今回に関しては、原作を読んだ時に感じた“疾走感”っていうポイントがあって、そこを表現しようとした時に、今までORESAMAでやってきたことは今回に限ってはあんまり曲げなくても良かったんですね。いいメロディだとかキャッチーなイントロっていうのを今までの延長線上で作ることが出来たので、意外と苦労はしなくて……。まあ苦労したところはあるんですけど(笑)。でもあの一曲を作ったことで感覚が研ぎ澄まされたじゃないですけど、速いテンポの曲を作ると、音の入れ方をすごい緻密にやっていかないとゴチャゴチャしちゃったりとかそういうのがあるんで、そういう意味では今後のORESAMAの曲にも絶対いい影響を与えるっていう、頭の切り替えのポイントにもなりましたね。
――ふたつめのタイアップということで今TVアニメ『魔法陣グルグル』の主題歌として「Trip Trip Trip」が生まれました。これは90年台にヒットした作品のリメイクということで、そこにORESAMAを持ってくるというのは「そうだよね!」っていう感じが僕らはしてて。
ぽん:うれしいです!
――「Trip Trip Trip」に引き続いて2クール目主題歌も担当されることも決まってますけども、このお話に関してはいかがですか?
ぽん:最初の放送が94年なんで、私全然赤ちゃんの時なんですけど(笑)。 家になぜか『魔法陣グルグル』のビデオがあって、それをちょっと大きくなって学生になってから、勉強する振りしてよく見てたんですよ。別の世界に連れ出してるような世界観が好きで、何回見ても声を出して笑っちゃうし。そういう経緯があったので今回のお話は家族がすごく喜んでました。それを与えていた母もすごく喜んで。
――20年以上前の作品ですからね。
ぽん:今作で変化している部分も多いですよね。ナレーションの声もなくなってたり、展開にスピード感があったり。
――そうですね、でも全然違和感がないというか。ORESAMAの曲も違和感がないですよね。前は奥井亜紀さんの「Wind Climbing ~風にあそばれて~」や「晴れてハレルヤ」が使われていましたが、そこに対しても違和感がないというか。
ぽん:嬉しいです。
撮影:鈴木久美子
――そしてライブもワンマンが10月にあります。ORESAMAの楽曲って作り込まれているので、ライブを見てない人はサウンドがどうなるのかイメージが湧きづらい可能性もあるかと思うんです。その辺も踏まえてご自身たちのライブに対する思いを聞ければ。
ぽん:リリースさせていただくことで自分が作ったものを届けることはできるんですけど、一緒に楽しむ空間はライブしか無いじゃないですか。なのでそういう意気込みで来てほしいなと思います。一緒に遊ぶという体でお客さんにも来てもらいたいし、その空間で一緒にいることを楽しんでほしいなと。それをいちばん大切にしたいと思います。
――小島さんは音作りの面でライブと制作の違いだったり、難しいところはありますか?
小島:楽曲を作っている時っていうのは基本的にライブのことを考えているというか、「ここで盛り上がるだろうな」とか「ここで盛り上げたいな、煽りたいな」とかライブでどうなるかというのを考えていつもサウンドメイクをしているんですけど、やっぱりCDで聞くものとベースやギターは違うかな。
――具体的に言うと?
小島:打ち込みではパソコン上で作るので、人間が弾けるか弾けないかのラインを作っていくんですね。シンセとかベースとかも打ち込みで基本作る。それをライブになるとベースはプレイヤーの方に弾いてもらうんですけど、ドラムは入れてないからバンドとまではいかなくても、人が弾くことで曲が確実に生のグルーヴを帯びていくんです。きっと聴いてくれてる人たちは身体が自然に動き出してしまいそうな、そういう音作りを意識していますね。家で作る時はかなり緻密に作って、ライブの音を奏でる時には人間性とかグルーブをすごく意識する。だからライブではそういうCDでは聴けないORESAMAの音っていうのを絶対感じてもらえると思うので。そこは聞いてほしいポイントですね。
――たしかに生で拝見した時は想像以上にグルーヴィーな感じはしましたね。ぽんさんの躍動感と含めて、すごくグルーヴィーでした。
ぽん:あはは。
――音源を聞いてる時以上の躍動感はたしかにありましたね。
小島:やっぱりテンションが上がるんですよね、ライブって。
――ORESAMAになる?
小島:ORESAMAになりますね!
ぽん:ふふふふ。
小島:家で作ってるのと、外でギターをかき鳴らして歌を歌い上げていると、テンションが違う、そういうところが音に直結して現れるものだと思っているので。ライブってそういうところがいいなあと思って。
――ぽんさんもライブは好きなんですか?
ぽん:大好きですね。『Re:animation10』で「ワンダードライブ!」って言った瞬間に「ウォーッ!」って皆さんがなってくれて。あの日はその反応を初めて生で目の当たりにできた場所だったんですよ。すごく嬉しかったんです、こっちももちろん楽しませるし、でも私たちも楽しむし、みんなで一緒に楽しもうって。この輪をどんどん広げて行くのが今自分が一番やりたいことだなと、その時すごく思いました。
――変な話、ぽんさんは歌をPCの前で歌うというか、録音して歌うことが多かったわけじゃないですか。生でORESAMAとして人前で歌うってことは、楽しみってありますか?
ぽん:PCは対自分なんですよね。自分との戦いになるので、「できた」と思って聞いても、「ここはやっぱダメだ」ってなると、90秒の尺でも2時間3時間かかったりとかしますけど、ライブはやっぱり対人なので、そこはナマモノというか、その場を楽しもうという気持ちでいきますね。どっちも楽しみがあります。
――どっちがいいとかでなく、どっちも。
ぽん:どっちも楽しいです。
――本当に歌うのが好きという感じですね。
ぽん:好きですね(笑)。
撮影:鈴木久美子
――ORESAMAのこれからも聞きたいと思います。ジャンル的に類似しているアーティストで言うと、tofubeatsさんとかがコンセプトが近いのかなと思ったんですけど、意識しているアーティストとかいますか?
小島:もちろんtofubeatsさん大好きですし、Awesome City Clubさんも大好き。
――なんか凄いわかります(笑)。
小島:分かります?(笑)。 Suchmosさんも大好きですし。ジャンルでいわせていただくなら、僕はJ-POPに入りたいんです。
――J-POPですか。
小島:シティポップも含めてJ-POPになると思うんですけど、J-POPとしてORESAMAの位置づけをしていきたいと思っていて。だからチャートの上位の曲とか僕大好きなんです。チャートとかランキングとか。いわゆる評価されているのが大好きで、そういうところに行きたいっていう思いがあるので。J-POPのフィールドでやりたいっていうのがデカイいですね。
――細分化されたジャンルって言うより、大きいJ-POPの中でいたい。
小島:今、いろいろパソコンで音楽が作れるとなると、いろんなジャンルを取り込むことが出来て、垣根なくいろんなものを取り込んでいってORESAMAとしてのいいメロディを乗せて曲にしていくっていうのをやりたい。
――ぽんさんはどうですか?
ぽん:私はたくさんの人に届けたい、楽しみたいので、一緒ですね。ど真ん中に行きたい。
――アニソンとか、シティポップとか、どうしても細分化したところに分類しがちじゃないですか。そうじゃなくて大きいメインストリームの中にいたいっていう感覚があるんですね。
小島:もちろんシティポップと言っていただけるのも、エレクトロと言っていただけるのも嬉しいんですけど、大きく日本で音楽をやるっていうことでJ-POPにいたいというのは言い続けている。
――好きだったり意識しているアーティストさんとかいるんですか?
ぽん:この人になりたいっていうのは正直あまりないですね。なりたいと思ってもなれないですし……。自分の歌でみんなと楽しみたいという気持ちが大きい。
――聞かせていただいていると、再スタートの段階でぽんさんの歌い方がかなり変わったなと言う印象があります。
ぽん:そうですね。再スタートを切らせていただくまでの間に自分の歌の幅がすごい広くなったなと思っていて。それを持って再デビューできたので、その期間が無駄じゃなくて、糧になってスタートを切れた。そこは本当に良かったなと思います。
――個人的には息遣いがなんか素敵になったなと。
ぽん:ありがとうございます。そうですね、自分の声と向き合う中で、自分の息をすごく気にするようになって、ここでちょっと吐息を出したほうが良いとか、ここは声を張ったほうがいいとか、そういう研究をすごく出来た期間なので、それが今に活かせていているのかなと思います。
――では、これからの目標を。
ぽん:海外に行きたいですね。J-POPを持って海外に行きたい。
小島:いまアニメ文化も海外で評価されてて、フランスの『JAPAN EXPO』とか大きなイベントもある。その中で僕らとしてもずっと海外でライブをしたいと思っています。アニメはもちろんなんですけど、日本のJ-POPを持って海外に行きたい。そのためにJ-POPを作る。日本にいる以上、日本の音楽を作って、それを海外に持っていってどういう反応があるという勝負をしたいというのが、今、本当に大きな目標かもしれないです。その前に日本で頑張らなきゃいけないですけど。
――アニソンもJ-POPっておっしゃってますよね。
小島:もちろんそうですね。
――アニメ業界からもフィーチャーされていますけど、単純に歌を届けるというか、日本の音楽をやるという意識がある?
小島:そうですね。アニソンもものすごい曲がいいじゃないですか。そういう意味でも現実J-POPのランキングで上に来ているわけだし、世界に通用するいい音楽が日本にあると思っているし、僕もそういうものを作りたいので、誇りを持ってやりたいなと。
――その最前線を診てもらうために10月のライブにぜひ、ですね。
ふたり:ぜひ!
ぽん:自分たちのワンマンでしかできないような夜を届けたいと思いますので、ぜひ、一緒に遊びましょう! よろしくお願いします。
小島:10月21日土曜日は、いちばん最新のORESAMAを表現したいと思っていて、次の週にはシングルのリリースもあるので、もちろんその曲もやると思います。ORESAMAだけのワンダーランドをふたりで作っていきたいと思うので、あ、サポートメンバーも入れて4人です。よろしく、ぜひ見に来てください。
撮影:鈴木久美子
インタビュー・文:加東岳史 撮影:鈴木久美子