【映画レビュー】『メイクルーム』アダルトビデオ現場経験者だけが描ける、コミカルな人間模様
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左から 川上奈々美、伊東 紅、栗林里莉 (C)2014 映画『メイクルーム』製作委員会
SPICE×ぷれシネ特集 第一回
SPICEをご覧のみなさま、いかがお過ごしでしょうか?秋といえば、映画。映画館にレンタルショップ、試写会など色々な方法で楽しめる季節。そんなタイミングで皆さまにオススメしたいのが、日本初の映画試写アプリ「ぷれシネ」です。
同アプリでは、最新作やDVDの本編を新旧問わず丸々1本を無料で楽しめます。アプリ内の作品一覧から選んで応募すれば、その場で抽選結果も分かり、当選すればそのまま鑑賞可能です。この企画では、SPICE編集部の映画好きライター・フジモトが同アプリを体験し、ネタバレなしの作品レビューで皆さまにその魅力をお伝えしていきます。
○過去の記事はこちらから
第三回の作品はアダルトビデオ制作の裏側を描く異色のコメディ『メイクルーム』です。
この薄暗い部屋だけでお話が進みます (C)2014 映画『メイクルーム』製作委員会
■あらすじ
アダルトビデオのメイク担当・都築恭子(森田亜紀)は、ある撮影で1人で5人もの女優を受け持つことになってしまった。そのうえ、監督は急かすばかりで協力しないうえ、助監督も優柔不断で段取りが悪い。そんな中、現場にはワガママな主演のまさみ(伊東紅)、一度は業界を引退した経験豊富な女優・Masako(栗林里莉)、右も左も分からない新人女優・松子(川上奈々美)ら、ひとクセもふたクセもある人物がつぎつぎと到着。撮影で手一杯なスタッフに代わり、なぜか都築が巻き起こるトラブルに対処するハメになる……。
■分かる人も分からない人も興味深い”アダルトビデオあるある”
(C)2014 映画『メイクルーム』製作委員会
本作はアダルトビデオの撮影現場、それもメイクルームという極めて珍しい空間を舞台に繰り広げられるワンシチュエーションコメディです。同名の舞台を映画化したもので、メイクルーム1室だけで物語は進行します。そして、舞台版も手がけた森川圭監督は一般映画だけではなく、1000本以上のアダルトビデオ制作に携わってきた猛者。それだけに、劇中には興味深い"アダルトビデオあるある"がたくさん登場します。
たとえば、メインとなる5人のセクシー女優たちは、同じ職業でもそれぞれに立場が違います。ギャラが高額な「単体女優」と呼ばれるまさみ、「企画単体女優(通称・キカタン)」と呼ばれるMasako、そして「企画女優」と呼ばれる脇役の女優たち。それぞれの説明はここでは省きますが、劇中にはこういった業界用語がたくさん登場し、どういった意味なのかがよくわかるようになっているんですね。
また、単語だけでなく、さまざまなシチュエーションも興味深いんです。監督よりもベテランでやたらと怖い職人的なカメラマンと照明スタッフが現場にいたり、女優が気合の入った刺青を入れているのが発覚したり、デビューする女優の芸名が旬な芸能人ソックリだったり…「へー、そういううふうになってるんだ」と感心し、思わずクスっと笑ってしまうエピソードが盛りだくさんです。
■ありそうでなかった、メイクスタッフ視点の物語
メイク・都築恭子を演じた森田亜紀。 女優たちを見守る母性……! (C)2014 映画『メイクルーム』製作委員会
これまでにも、アダルトビデオをテーマにした作品はいくつか公開されています。有名なセクシー女優の半生を描いたものや、男優たちの生き様に迫ったドキュメンタリーもの……しかし、本作の主人公はいままでありそうでなかった、メイクスタッフの視点から物語を追ったものです。メイクスタッフの仕事は、一般的にはその名の通り出演者にメイクを施すことですが、アダルトの現場では意外な役割を果たすこともあるようです。「汁男優が撮影中にやたらと身体を触ってくる」などの女優の愚痴や私生活の悩みを聞いたり、撮影をスケジュールどおりに進行しようとするスタッフの間を取り持ったり。女優とおなじ女性が多いからかもしれませんが、精神的なケア役を果たすことがあるんですね。
主人公・都築も、演者とスタッフの間をとりもちつつ第三者として現場を見つめる、なんとも不思議な役回りを果たすことになります。そのため、私が観たときには「ああ、メイクさんて大変だなあ」と感じつつも、キャラクターに肩入れしすぎることなく、軽めのコメディとして楽しむことができました。
右側のスーツの男性は元男優のマネージャーという設定。アダルト業界あるある (C)2014 映画『メイクルーム』製作委員会
■アダルトビデオ撮影 その過酷な現実も
(C)2014 映画『メイクルーム』製作委員会
一方で、本作では控えめにではありますが、アダルトビデオの過酷な環境についても描かれています。そもそも、都築が1人で5人のメイクを担当したり、監督が撮影を急ぐのは、撮影の予算が極めて限られているからなんですね。また、スカウトされて業界入りしたにもかかわらず、ぞんざいな扱いを受ける企画女優が苦悩する場面もあります。フィクションと銘打たれてはいますが、明らかに現実を反映した演出です。
物語の核となる女優を演じた栗林里莉、川上奈々美、伊東 紅の3人は現役のセクシー女優。劇中で彼女たちが吐露する悩みは、軽いセリフであっても説得力がありました。Vシネや一般映画にも出ている方たちなので、演技力が高いということもありますが。とくに、川上奈々美演じる新人女優・松子が初めての撮影で不安のために泣き出し、それを乗り越えるシークエンスは、経験者にしか出せない独特の生々しさがありましたよ。
とはいえ、あまりにドロドロした部分には踏み込みません。登場人物も、基本的には前向きに仕事に向き合っていく。もっとディープな部分や、厳しい問題提起はほかのドキュメンタリー作品に譲りましょう。本作では、森川監督のアダルトビデオ業界と関係者への愛が満ちた演出が、そこかしこに光る良作でした。
ただ、本作を電車の中で観ることはおススメしません。エグイ濡れ場はありませんが、女性の乳首や放送禁止用語がガンガン登場しますんで。その点だけはご注意を!
(C)2014 映画『メイクルーム』製作委員会
さて、本作に興味を持った方はさっそくぷれシネで試写会に応募して見てください。応募の方法は簡単!
①itunesまたはApp storeでアプリをダウンロード
②会員登録(メールアドレスと希望するパスワードを入力)
③ログイン
③観たい作品を選んで「受付中」の部分をタップ!
これだけで応募が完了し、その場で当選の結果もわかります。当選決定から24時間の間は、いつでも同じ作品を観ることができるので、通勤や通学、ちょっとした待ち時間をつぶしながら気軽に鑑賞するのもいいですね。
現在公開されている作品の定員は50~100名。ただし、抽選ではなく先着で当選が確定するものも多いので、人気作は早めに応募したほうが良さそうです。
また、鑑賞後は「シェア」ボタンをタップして、TwitterやFacebookに感想を投稿することもできます。感想を投稿すると、次回からの試写会の当選確率が上がるそうです!フジモトもさっそく投稿してみましたよ。
なお、Androidアプリへの対応は現在調整中。SPICEは毎週オススメの作品とともに進捗をお伝えしていくので、お待ちください!
(2014年/日本/86分)
監督・脚本・編集:森川 圭
出演:森田亜紀、栗林里莉、川上奈々美、伊東 紅、住吉真理子、大迫可菜実、柴田明良 ほか
予告編
価格:無料
カテゴリ: 写真/ビデオ
言語: 日本語、英語
販売元: HIROFUMI SOYAMA
(C) simpleplus / (C) precine
App store: https://appsto.re/jp/d4uL6.i ※iPhoneからアクセス可能
iTunes: https://itunes.apple.com/jp/app/pureshine/id982863363?mt=8
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