奇跡しか起きない『氣志團万博』、雨で良かったとさえ思えた興奮と感動の2日間

2017.9.21
レポート
音楽

氣志團 撮影=青木カズロー

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シミズオクト Presents 氣志團万博2017 ~房総与太郎爆音マシマシ、ロックンロールチョモランマ~ Supported by イオン銀行
2017.9.16(SAT)、17(SUN)千葉県・袖ケ浦海浜公園

台風18号が日本列島をゆっくり北上していた9月16日(土)、17日(日)の2日間。千葉県・袖ケ浦海浜公園で『氣志團万博2017』が開催された。フェス形式になって6年目、これまでほとんど雨に降られることの無かった『氣志團万博』だが、今年は両日ともにあいにくの雨。しかし、『氣志團万博』のキャッチコピーは“奇跡しか起きない”。音楽の神様による“雨”という演出が、どんな奇跡を生んだのか? 興奮と感動の2日間をレポートする。

JAGUAR 撮影=釘野孝宏

16日(土)初日。曇天の下、オープニングセレモニーアクトとして登場したのは、ジャガー星からジャガー号でやってきた千葉の大スター、JAGUAR。ピンクの頭にヘヴィメタ風衣装、“邪我ー”と書かれたマントを羽織った強烈なルックスに笑いと歓声が上がる中始まった、ささやくような声で歌う「だまってJAGUARにちゃんとついて来い!」に会場中が呆然。さらに独特の間で「ファイトちば!」を熱唱したJAGUARは、「『氣志團万博』、開会式宣言しま~す」とゆる~く開会を宣言。全員が苦笑する中でオープニング映像が流れるという、他のフェスではあり得ない始まり方で2017年の『氣志團万博』が幕を開けた。

氣志團 撮影=青木カズロー

メインであるYASSAIステージの一発目は氣志團。主催者が特攻隊長として登場するのもあり得ないが、アロハ柄の特攻服で氣志團が登場するとフィールドが大きく湧き、“いよいよ『氣志團万博』が始まったんだ”と大興奮。「デリケートにキスして」、「ゴッド・スピード・ユー!」と、デビュー時を思い出させる曲で勢い良く始まった氣志團のGIG。熱心なKISSES(氣志團ファン)には思い入れの強い「鉄のハート」では、サポートドラムの叶 亜樹良が激しく美しいドラムソロで魅せると、「ちょっと待った!」と氣志團“休学中”の白鳥雪之丞(Dr)が登場。「亜樹良だけにいいカッコさせないわよ!」と稚拙なドラムソロで対抗する雪之丞を綾小路 翔(Vo)がビンタで制止。なおも止めない雪之丞とビンタ合戦になり、綾小路からマイクを奪った雪之丞がボーカルを取るというファンには嬉しいサプライズも。氣志團結成20周年イヤーでもある今年。綾小路、雪之丞、早乙女 光(Dance&Scream)とオリジナルメンバーが並ぶ姿にグッと来たKISSESも多かったはず。

ももいろクローバーZ 撮影=釘野孝宏

煽りVTRで「『氣志團万博』が続いているのはももクロのお陰」と綾小路が語った、6年連続出場のももいろクローバーZは、『氣志團万博』だからこそのライブを求めて来たモノノフ(ももクロファン)たちが、今年もフィールドを埋め尽くす。玉井詩織の弾く鍵盤ハーモニカに合わせた「WE ARE THE WORLD」斉唱で厳かに始まったステージは、この日トリを務める布袋寅泰提供の「サラバ、愛しき悲しみたちよ」や、もはやももクロの曲と言っても過言ではない氣志團「SECRET LOVE STORY」のカバーと、万博だからこそのセットでしっかり盛り上げ、「ココ☆ナツ」、「行くぜっ!怪盗少女」の最強コンボでとどめを刺す。もはや貫禄さえあるステージには、氣志團や万博への愛とリスペクトがぎっしり詰まっていた。

10-FEET 撮影=青木カズロー

四星球 撮影=中野修也

MUCC 撮影=中野修也

氣志團の学ランを着てステージに登場した10-FEET氣志團ネタを多分にぶち込んだ四星球、ガリ勉スタイルの学ランに手製のデコチャリまで用意して臨んだMUCCなど。万博ではももクロに限らず、多くのアーティストがこの日限りの演出を用意し、氣志團への愛やリスペクトを表現している。それは何故か? 綾小路が各アーティストへの想いを語る煽りVTRを見るだけでも分かると思うが、“日本一のホスピタリティ”と言われる万博でのおもてなしも含め、氣志團からそれ以上の愛とリスペクトを受けているから、特別な演出や最高のステージでその気持ちに応えたいと思うのだろう。

LiSA 撮影=釘野孝宏

2度目の出演となるLiSAは「今回は大人のデートしましょ!」とVTRで語り、スカジャンを羽織った少し大人な不良ファッションで登場。「だってアタシのヒーロー。」で始まるハイテンションなライブで魅了すると、「氣志團先輩が作ったこの場所を思い切り楽しんで!」と「Catch the Moment」で大きく盛り上げ、最高の笑顔とピースサインで万博に出演する喜びを表した。

マキシマム ザ ホルモン 撮影=浜野カズシ

マキシマム ザ ホルモン 撮影=浜野カズシ

マキシマム ザ ホルモン 撮影=浜野カズシ

マキシマム ザ ホルモン 撮影=浜野カズシ

マキシマム ザ ホルモン 撮影=浜野カズシ

Dragon Ash 撮影=釘野孝宏

Dragon Ash 撮影=釘野孝宏

Dragon Ash 撮影=釘野孝宏

ポツポツと降ってきた雨に「ウチらにとっては好条件です!」と言い放ち、「恋のメガラバ」から始まる必殺チューンの連発でフィールドをめちゃくちゃに掻き回したマキシマム ザ ホルモン。ATSUSHI(Dance)が氣志團の学ランをなびかせて華麗なダンスを魅せ、Kj(Vo/Gt)の「氣志團に“知らない音楽を教えてくれてありがとう”って感謝してください」というMCで感動させたDragon Ashと、インディーズ時代からの盟友たちが圧巻のステージを見せると、初日も残すところ数組。

VAMPS 撮影=青木カズロー

VAMPS 撮影=青木カズロー

VAMPS 撮影=青木カズロー

「ここで夏を納めるのが楽しみになってる自分もいます」と、HYDE(Vo/Gt)が万博への想いを語ったVAMPSも6年連続出場。花道で雨に濡れながら歌うHYDEの姿が神々しくもあった「BLOODSUCKERS」、「全員でピリオドの向こうに行こうぜ!」と煽って全力の歌と演奏で魅せた「SEX BLOOD ROCK N' ROLL」など、短いステージに何度もクライマックスを生んだ。

私立恵比寿中学 撮影=中野修也

MOSSAIステージのトリは『氣志團万博』5度目の出場となり、数々の伝説を残している私立恵比寿中学。スケバン風衣装で登場すると、1曲目「サドンデス」の曲中に氣志團が乱入。サビを歌うビーナスを決める“ダンス・サドンデス”に一人ずつ倒れていくも、最後は濱田あいかと綾小路の一騎討ちから全員が立ち上がり、全員でサビを熱唱。強い雨に打たれながら、万博への想いを込めた渾身のステージでしっかりトリを勤め上げた。

布袋寅泰 撮影=釘野孝宏

布袋寅泰 撮影=釘野孝宏

そして初日の大トリは、ついに万博のステージに降臨した布袋寅泰。「みんな布袋に憧れてた。同級生や先輩に褒められたい!」と、綾小路が興奮気味に語る煽りVTRから、「Battle Without Honor or Humanity」で布袋のGIGがスタート。「THRILL」、「POISON」と誰もが知ってる代表曲ばかりの贅沢なセットで魅了すると「Bad Feeling」のイントロに大きな歓声が起きる。興奮状態に雨が降ってることも忘れて“神さま、布袋さま!”と会場中が布袋に釘付けになる中、「実は雨ってそんなに嫌いじゃないんだよね。みんなとビートを浴びながら、雨に濡れるなんて最高じゃん!」と笑う布袋。新曲「Dreamers are Lonely」を初披露するなどサービス精神過剰なほどのGIGのラストは「このステージに上がるのが夢でした。夢を叶えてくれた張本人をお呼びします」と綾小路を呼び込み、なんと「Dreamin'」を披露! 布袋の鳴らすエッジィなギターをバックに、喜びを噛み締めながら歌う綾小路。まさにI'm only Dreamin'! 大きな夢をまたひとつ叶えた男の姿は本当にカッコ良かったし、“夢は叶う!”と見る者に勇気と希望を与えてくれた。

レイザーラモンRG 撮影=上山陽介

2日目の17日(日)。台風がさらに北上し、朝から雨と強い海風が吹き付ける悪条件の中、オープニングセレモニーアクトとして登場したのは、レイザーラモンRG。細川たかしを真似た、こぶしたかしで登場したRGは「浪花節だよ人生は」に乗せて“『氣志團万博』あるある”を披露。開演前から雨でびしょ濡れになり、心が折れかけていたオーディエンスに<午前中雨だけど、午後になると止みがち>というあるあるは救いの言葉となり、大きな歓声と拍手が会場を包む中、RGが開会を宣言。
 

ゴールデンボンバー 撮影=釘野孝宏

ゴールデンボンバー 撮影=釘野孝宏

ゴールデンボンバー 撮影=釘野孝宏

続くYASSAIステージの一発目、ゴールデンボンバーはビキニ姿で登場し、自ら花道に出てびしょ濡れになると、喜矢武豊(Gt)がシャンプーで頭を洗い始める。ほとんど全裸の格好で花道に出て、さらに腰の上でダッチワイフを回す樽美酒研二(Dr)に爆笑したり、どんどん元気になってきたオーディエンス。ラスト「女々しくて」はフィールドに溢れるオーディエンスが振り付けを合わせ、音楽と笑いが人を元気にしてくれることを証明してくれたし、その勇姿は感動的ですらあった。

BOYS AND MEN 撮影=中野修也

WANIMA 撮影=青木カズロー

水曜日のカンパネラ 撮影=中野修也

BLUE ENCOUNT 撮影=中野修也

トレードマークの学ランにサングラス、リーゼントまで決めた万博仕様のファッションで登場したBOYS AND MENは激しい雨に打たれながら「喧嘩上等 50%」、「One Night Carnival」と氣志團のカバーを熱演し、氣志團へのリスペクトと万博初出場の喜びを表現。氣志團が楽曲提供した「GO!! 世侍塾 GO!!」では綾小路と早乙女が登場。“兄貴”と慕う氣志團との共演にさらに気合い十分なパフォーマンスを見せた。ほかにもYASSAIステージを全力のステージで沸かせ、現在のバンドの勢いを見せつけたWANIMA。雨さえ味方に付けた芸術的なパフォーマンスで魅了した水曜日のカンパネラ。「『氣志團万博』の歴史で一番の景色を作ろうぜ」とオーディエンスを熱狂の渦に巻き込んだBLUE ENCOUNTと、若手アーティストの台頭が目立った2日目。ここからきっと、『氣志團万博』の新しい物語や歴史が生まれていくのだろうと想像すると、来年以降の万博にも期待が高まる。

氣志團 撮影=上山陽介

2日目は中盤に登場した氣志團は、初日同様、休学中の雪之丞の登場でKISSESを歓喜させると「せっかくみんながこの街に来てくれたから、この街の歌を歌います」と、綾小路の独唱で始まった美しく力強いバラードソング「落陽」でオーディエンスの心を震わせ、色褪せることのない代表曲「One Night Carnival」で再び会場を盛り上げる。さらにシンプルでストレートな歌と演奏が胸を突き刺す「幸せにしかしねーから」で短いステージを締めくくり、20年のキャリアと説得力を持つ、主催者としての誇りを感じる堂々としたステージを披露。フィールドから溢れるほどのオーディエンスを、興奮と感動で包んだ。

岡村靖幸 撮影=青木カズロー

MIYAVI 撮影=上山陽介

YASSAIステージで岡村靖幸が「愛はおしゃれじゃない」で始まる圧巻の20分メドレーでオーディエンスを踊らせ、MOSSAIステージでMIYAVIが「What's My Name? 2017」から始まる世界基準の圧倒的ギターテクでオーディエンスを魅了。
 

山下達郎 撮影=菊地英二

会場が闇に包まれた頃、YASSAIステージに降臨したのはPOPSの神様、山下達郎。近藤真彦に提供した名曲「ハイティーン・ブギ」のセルフカバーでライブが始まると会場中が山下に釘付け。「台風がなんぼのもんじゃい! 雨風上等です!」と語ると、「今日は雨ということでバラードはやめました」と夏の大定番曲「SPARKLE」やKinKi Kidsへの提供曲「硝子の少年」など、アップテンポかつサービス精神旺盛な楽曲でライブを進行。「恋のブギ・ウギ・トレイン」では痛快なギターのカッティングでたっぷり魅せると、ラストは「さよなら夏の日」で会場中を魅了。<雨に濡れながら 僕等は大人になって行くよ>の歌詞を聴きながら、雨という演出が“楽しい”という感情を“感動する”に転化してくれることに気付いた時、一日中降り続けていた雨の大変さが浄化された気がして、“雨も悪くなかったな”とさえ思えた。

岡崎体育 撮影=青木カズロー

MOSSAIステージのトリは昨年同様、岡崎体育。初めて名前を聴く人も多かった昨年とは明らかに状況が異なり、溢れ返るほどのオーディエンスに大歓声で迎えられた彼。「今年は向こうのステージと思ってたけど、ラスボスだらけのラインナップを見て“これはMOSSAIステージだ”と思った」と語りながら、強い雨にも負けず「感情のピクセル」や「Q-DUB」でYASSAIステージに負けない盛り上がりを生む姿は感動的。

米米CLUB 撮影=上山陽介

そしてYASSAIステージでは、「山下達郎さんがトリ。そして大トリがこの人たち」と綾小路が語った、米米CLUBがついに万博初登場。メンバーが並ぶだけで一気に華やかになったステージで、「僕らのスーパー・ヒーロー」から派手やかに賑やかに始まったライブは、初めて見る人も絶対楽しめる極上のエンターテイメント。「FUNK FUJIYAMA」、「浪漫飛行'07」と代表曲が続き、ジェームス小野田(Vo)が満を持して登場する頃には、完全に米米カラーに染まっていた会場。ラストは「SHAKE HIP!」でこの日一番の盛り上がりを生んで、堂々フィニッシュ。興奮と感動の2日間を見事、締めくくった。

氣志團 撮影=釘野孝宏

氣志團 撮影=釘野孝宏

2日間の余韻が残る会場にエンディング映像が流れ、クロージングアクトとして氣志團が登場。真っ赤なスーツ姿で、“万感の想いを込めて”と国民的アイドルをオマージュした「One Night Carnival」を披露すると、会場中のカウントダウンで打ち上げ花火が上がる。毎年、夏が終わる寂しさに浸りながら見ているこの花火だが。降り続く雨を浴びながら見ていると、この2日間に雨の中で見た白熱のステージや美しい光景が浮かんだり、荒天の中でも全力で楽しんだ同士と言えるオーディエンスとの結束を感じたり、例年とは異なる感情が頭を過ぎっていた。しんどさや大変さを上回る興奮と感動をもたらし、参加した全ての人に忘れられない思い出を刻んでくれた、神様による“雨”という演出。開演前は台風上陸のニュースに憂鬱しかなかったのに、2日間を終える時には“雨で良かった”とさえ思わせてくれたことが一番の奇跡だろう。ま、来年は晴天がいいけど(笑)。


取材・文=フジジュン
撮影=青木カズロー、上山陽介、釘野孝宏、中野修也

氣志團 撮影=釘野孝宏

 
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