下北沢、新宿、渋谷を舞台に全321組が熱演を繰り広げた『TOKYO CALLING』、3日目・渋谷を観た
-
ポスト -
シェア - 送る
打首獄門同好会 撮影=中尾友香
台風一過の晴天で30度を超える気温となった9月18日の東京・渋谷。昨年初開催した日本最大級のライブハウスサーキット『TOKYO CALLING』の3日目が、渋谷にある12ヵ所のライブハウスで開催された。『TOKYO CALLING』とは、大阪の『見放題』、愛知の『でらロックフェスティバル』、福岡の『TENJIN ONTAQ』といったサーキットイベントのスタッフが東京に集結し、実施する音楽フェスだ。初開催となった昨年は3日間で312組のアーティストが出演し、1万2000人を動員。昨年同様、今年も下北沢、新宿、渋谷と日ごとに開催エリアを変え、3日間連続開催され、全321組が熱演を繰り広げた。今回は、当日券含めてすべての
おいしくるメロンパン 撮影=白石達也
渋谷クアトロでトップバッターを務めたのは3人組バンド・おいしくるメロンパンだった。彼らは2015年結成のバンドでありながら、結成わずか一年でCDデビュー。2016年夏、ロッキング・オンが主催するアマチュアアーティストのコンテスト『RO69JACK 2016 for ROCK IN JAPAN FESTIVAL』第16回で優勝し、同年の『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2016』に出演を果たすなど、注目を集めるバンドだ。
おいしくるメロンパン 撮影=白石達也
この日も入場規制がかかるほどの人気ぶり。観客の賑々しい手拍子に迎えられ、ナカシマ(Vo・G)、峯岸翔雪(B)、原駿太郎(Dr)が登場すると「せーの、おいしくるメロンパンです!」とお馴染みの挨拶でステージの幕が開けた。「シュガーサーフ」ではたくましいビートにフレッシュな歌声を重ね、オーディエンスを刺激していくなど堂々としたパフォーマンスを見せつけていた。峯岸はMCで「去年の会場は新宿ロフトだったんですが、今回初めて渋谷クアトロに立てて嬉しいです。たくさんバンドがいるなかで、僕たちを選んでくれてありがとう」とステップアップを果たしたことへの喜びと、集まったオーディエンスへの感謝を述べ、締めに届けたのは「色水」。3人の絶妙なアンサンブルで彩られた甘酸っぱいメロディが、観客をうっとりとさせていた。
同イベントは好きな会場を自由に回れるスタイルなので、渋谷の街を駆け巡りながら、出演する120組に及ぶさまざまなアーティストのステージを楽しんでいる参加者の姿が印象的だった。休日で全体的に人通りも多いなか、道玄坂や宇田川町周辺のライブハウスにはバンド公式Tシャツを身にまとったライブキッズたちが多く見うけられた。
感覚ピエロ 撮影=中尾友香
会場を移ると、フロアも2階席も超満員になった夕刻のTSUTAYA O-EASTでは感覚ピエロのリハーサルが行われていた。横山直弘(Vo、Gt)の「リハから俺らと一緒に遊ぼうぜー!」の煽りで「触れちゃいたい」が披露されると、本番さながらのクラップが巻き起こる。いったん袖に入ったものの、本番が始まるとアッパーなSEのなかハイテンションでメンバー4人が登場。その勢いのまま、「CHALLENGER」「ワンナイト・ラヴゲーム」「疑問疑答」を立て続けに披露し、会場を一気にヒートアップさせていった。激しいバンドサウンドと高音シャウトが炸裂するロックナンバーが会場を揺らし、観客もそれに応えるかのように思い切り手を掲げている。
感覚ピエロ 撮影=中尾友香
「僕らは今年で2回目の出演になるんですが、1年前よりこの言葉を響かせたいです」と横山の前フリで始まった「O・P・P・A・I」。オーディエンスは恥ずかしげもなく「O・P・P・A・I」を大合唱したり、ノリノリで体を揺らして応えるなど、開放的な盛り上がりを見せていた。ラストに披露したのは、日本テレビ系ドラマ『ゆとりですがなにか』の主題歌で話題となった「拝啓、いつかの君へ」。先ほどのおふざけな雰囲気とは一転、疾走感のあるバンドサウンドにのせて“あんたの正義は一体何だ?”と、過去の自分へと問いかける力強いメッセージソングを歌いあげると、フロアはエモーショルな雰囲気に包まれていた。
感覚ピエロ 撮影=中尾友香
忘れらんねえよ 撮影=中尾友香
この日、最も破天荒なステージを披露したのは、忘れらんねえよだったと思う。まずはその登場シーン。会場の後方から「俺を運んでくれー!」と柴田隆浩(Vo/G)の叫ぶ声が聞こえたかと思えば、突然流れ出す[Alexandros]の「ワタリドリ」。それに乗せてクラウドサーフで送られながらステージへとなだれ込み、そこで待つ梅津拓也(B)とサポートギター・タナカヒロキ、サポートドラマー・マシータと共に“SEXジャンプ”をキメたのち、「バンドやろうぜ」からライブをスタートさせる。
忘れらんねえよ 撮影=中尾友香
「スマートなんかなりたくない」演奏後のメンバー紹介では、梅津を三宅健、タナカを森田剛、マシータをイノっち、そして「俺は森田剛。って、森田二人もいるじゃねえか!」と柴田節全開のトークで笑いを誘い、V6「WAになっておどろう」をワンコーラス披露、会場を盛り上げた。中盤では、「バカばっかりだぜ!」と叫び「ばかばっか」を投下。途中、ポケットから1000円札を出したかと思えば、客席にダイブを決め、2回目のクラウドサーフで後方にいたスタッフからビールを購入。フロア中央まで引き返すと、そこでオーディエンスの頭上に立ち上がり、客席中央で持ち上げられながら一気にビールを飲み干した。お馴染みのハチャメチャ演出からガラリと変わって、20日にリリースしたフルアルバム『僕にできることはないかな』のリード曲「花火」が披露されると、フロアは熱い感動に包まれていく。ラストは「いいひとどまり」をドラマチックにプレイして、ステージをあとにした。
忘れらんねえよ 撮影=中尾友香
TSUTAYA O-EASTでトリを飾ったのは、打首獄門同好会だ。リハーサルでは、騒ぎたくてうずうずしているファンを前に大澤敦史(Gt/Vo)が「本番前でセキュリティが手薄だから控えめにね」と告げてから「ヤキトリズム」を披露したり、リハ後にはうまい棒を配ったりと、打首ならではの心遣いが有り難い。開演時間になると、さっそく披露された「デリシャススティック」で観客が先ほど配られたうまい棒をサイリウムの如く高く掲げ、サビのコーラスでは“うまい棒”とシャウトする。続けて「まごパワー」で敬老の日を祝ったところで、ゲストのDr.COYASSが登場し、「歯痛くて」を投下すると、“でも歯痛くて~”の大合唱とともに、ダイブやモッシュの勢いも激しさを増していった。
中盤では、“肉フェスの公式イメージソング”という肩書きを伴う新曲「ニクタベイコウ!」を初披露。<ニクタベイコウ!/そうしよう!>など明快にノリやすい彼らの新曲は、これまでと同様に迫力あるシンガロングナンバーに仕上がっていた。「島国DNA」では魚のバルーンがフロアを勢いよく飛び跳ね、ラストは「日本の米は世界一」で米への愛をオーディエンスとともに歌い叫び、本編を締めくくった。
打首獄門同好会 撮影=中尾友香
実は、同イベントには専用のフードコーナーはないため、周辺の飲食店やコンビニで済ませる人がほとんど。だが、食事をとるには一度ライブハウスから出なければならなくなるため、食事の時間を惜しんでライブを楽しんでいるファンも多くいたのだが、そんななか、まるで空腹を音楽で埋めるかのように(?)濃厚な食べ物ソングを披露し、オーディエンスを喜ばせてくれた打首。“最初から”コールで迎えられたアンコールでは、「アンコールできるのは最後の特権なんだぜ。疲れた君たちにこの曲を贈る」と、風呂と布団に入る幸福感を歌った「フローネル」をプレイ。最初から最後まで観客を労うセットリストを届けた打首のステージは、大盛況のなか幕を閉じた。
打首獄門同好会 撮影=中尾友香
今回で2回目の開催となった『TOKYO CALLING2017』。出演したバンドのなかには、<また来年、ここで会おう!>というメッセージを残す者も多くいた。『TOKYO CALLING』スタッフも「イベントは続けることが一番大切。みなさんの力を借りて10年20年と続けていければ」とコメントしているように、今後の『TOKYO CALLING』の動向も見逃せない。
取材・文=日野綾 撮影=中尾友香、白石達也