LEGO BIG MORLが"良い曲"を歌い鳴らすことと向き合った『心臓の居場所』とそのツアーで生まれた美しい時間

2017.9.28
レポート
音楽

LEGO BIG MORL 撮影=西槇太一

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LEGO BIG MORL Tour 2017 「心臓の居場所」  2017.9.14  WWW X

LEGO BIG MORL 撮影=西槇太一

「命を削って演奏するんで、みんなも呼吸を忘れて聴いてくれたら嬉しいです」(タナカヒロキ/Gt)

そう言って奏でた本編最後の3曲は、いずれも最新アルバム『心臓の居場所』からの「最終回は透明」「あなたがいればいいのに」「美しい遺書」だった。決して派手な曲たちではない。BPMが速いわけでも踊れるわけでもテクニカルなアレンジで目を引くわけでもない。が、それがたまらなく良かった。情感のこもった演奏をバックに普遍的なメロディを大切に歌い上げるカナタタケヒロ(Vo/Gt)。演奏後に巻き起こった長い長い拍手が裏付けるように、あの10数分間、WWW Xにはとても美しい時間が流れていた。

LEGO BIG MORL 撮影=西槇太一

LEGO BIG MORL 撮影=西槇太一

10周年イヤーを締めくくる晴れの舞台、新木場STUDIO COASTでのワンマンライブの翌日に発売され、つまり11年目のLEGO BIG MORLが打った最初の一手であった『心臓の居場所』は、“良い曲を届けよう”という、ごくシンプルだがそのぶん地力の問われる方向に真っ向勝負した作品であった。これまでその音楽的好奇心と器用さを武器に多種多様なカラーの楽曲に挑み、それらを形にしてきたレゴが、もはやキャリアも年齢も若手とは言い切れない世代となった今、あらためて自身の向き合うべきテーマとして導き出した答えが「良い曲」を作ることだったのだ。そんな作品とともに回ったツアーの最終公演を締めくくるクライマックス・シーンで冒頭に書いたような光景が生まれたのは、彼らが今作で目指した音楽を鳴らしきり、それが聴き手にもしっかりと届いたということに他ならない。

LEGO BIG MORL 撮影=西槇太一

LEGO BIG MORL 撮影=西槇太一

時間を開演時まで巻き戻す。ライブのオープニングを飾ったのも『心臓の居場所』からの「未来」であった。いきなり明るく照らされた場内に、抑えきれないとばかりに駆け出していく音。最前列まで飛び出すタナカ、高々とギターを掲げるカナタ。続く「君の涙を誰が笑えるだろうか」では、アサカワヒロ(Dr)による重々しくもあたたかみのあるビートがフロアを射抜き、ヤマモトシンタロウのベースとグルーヴを形成しながら低重心で疾走する。ドラマティックな曲展開に合わせて照明も瞬き、ラストを大きなシンガロングで締めると、即座にカナタが「渋谷、もっと来れるだろ!」と檄を飛ばして、硬質な手触りのアッパーサウンドと艶なメロディが交錯する「Wait?」へ。フロアの温度が上昇するなか無数の手が挙がり、誇張なしにフロアが揺れる。深い紅色に染まるステージに鼓動を思わせるビートが響き、流れ出したのは「end-end」。ここでグッとライブをスローダウンさせると、カナタの歌声にも優しさが宿り、豊かなメロディをじっくりと聴かせていく。さらにタナカがギターの弦を指で弾く繊細な音色と、サビでの重厚さのコントラストで琴線を揺さぶった「melt」など、最新アルバム曲を並べる合間に、2ndアルバム『Mother ship』からの「worlds and traffic」という意外性も織り交ぜながら、熱量高く上々な滑り出しを見せていった。

LEGO BIG MORL 撮影=西槇太一

LEGO BIG MORL 撮影=西槇太一

LEGO BIG MORL 撮影=西槇太一

とはいえ、良い歌を良い音と良い演奏で届けるという点で言えば、その本領が発揮されたのはやはり、タナカとカナタが一旦ステージを降りヤマモトとアサカワがアドリブを応酬する、というセッション・パートを挟んだ中盤以降の流れだろう。中低音域でより豊かに響くカナタの歌声も後半に向けてどんどん輝きを増していった。年々尺が長くなっていってるという脱力系のMCタイムを挟んだあと、アサカワの煽りから全員が手を上げて待つフロアに放ったダンサブルなアンセム「RAINBOW」、さらに「Hybrid」で最大震度を更新してから「愛故に」へと流れ込んだあたりは、ライブならではのフィジカルな楽しさを味わえる展開に。『心臓の居場所』には「演奏とか音とか歌で、みんなを圧倒したい」という意思も込められているのだというが、その魅力をライブで最大限に活かすには、やはりこういったアッパーなゾーンでバシッとかっこいい音を鳴らせてこそだ。それによってドラマティック・サイドの楽曲をじっくり聴かすためのメリハリが生まれ、説得力も増すのだなぁと実感させられる。現に、ここから2曲とMCを挟んだあと、冒頭のクライマックスシーンに繋がるのだから。

LEGO BIG MORL 撮影=西槇太一

LEGO BIG MORL 撮影=西槇太一

また、タナカが「レゴ史上最大級に手応えのあるツアー」と口にしていたように、この日再三語られていたのがツアーの充実ぶりであった。「終わってしまう」「追加公演がしたい」と個々に名残惜しさを思いっきり漂わせつつ、「こんなにソールドアウトの文字が並んだのは久しぶり」と喜び、現在の活動に対する手応えもにじませる。10周年の新木場はある意味ご祝儀的にたくさんの人が来てくれたんだろう、でもそのあとのツアーでも好調な動員を記録しているのは良い流れだ、と冗談めかすような発言もあったが、あながち間違ってもいない気がする。ある意味、彼らのディスコグラフィ上でもっとも地に足のついた今作がさらなる飛躍のキッカケになるかもしれないという事実は、LEGO BIG MORLが持つ底力の証明であり、フェスロックなどという言葉も叫ばれ、良い曲を作るという基本が軽視されがちな流れも存在したここ10年の邦楽シーンへのカウンターともなりえる。といったら大袈裟だろうか。

LEGO BIG MORL 撮影=西槇太一

LEGO BIG MORL 撮影=西槇太一

ライブを観終わって、この原稿を書きながら改めて実感するのは、レゴにとってこのアルバムを完成させたことは本当に大きかったのだな、ということ。音楽的好奇心が旺盛で器用ということは裏を返せば、それ故にこれまで「レゴといえばこれ」という軸を見えづらくさせていた面もあったんだろう。環境も変わったりする中で11年目に踏み出すにあたり己と向き合った4人が、「レゴはこれなんだ」と勇気を持って掲げた旗。それが"良い曲を届ける"ということであった以上、それをちゃんと良い音で、良い歌と演奏で、良いライブで再現してみせたこのツアーもまた、間違いなくバンドの未来にとって大きな意義をもったはずだ。

LEGO BIG MORL 撮影=西槇太一

アンコール。次なる自主企画『Thanks Giving』の発表と、初の映画主題歌に決まっている新曲「一秒のあいだ」を披露してこの先の展開へも期待を抱かせてくれたあと、最後はやはりアルバムの精神を象徴するタイトルチューン「居場所」をじっくり届けきって、ステージを降りた。


取材・文=風間大洋 撮影=西槇太一

LEGO BIG MORL 撮影=西槇太一

セットリスト
LEGO BIG MORL Tour 2017 「心臓の居場所」  2017.9.14  WWW X
1. 未来
2. 君の涙を誰が笑えるだろうか
3. Wait?
4. worlds and traffic
5. end-end
6. fin.
7. melt
8. 真実の泉
9. RAINBOW
10. Hybrid
11. 愛故に
12. 問う今日
13. バランス
14. 最終回は透明
15. あなたがいればいいのに
16. 美しい遺書
[ENCORE]
17. Rise and Set
18. 一秒のあいだ(新曲)
19. 居場所

 

ライブ情報
LEGO BIG MORL“ Thanks Giving “ vol.10
11月16日(木) 東京 TSUTAYA O-EAST
OPEN 18:00 / START 19:00
GUEST BAND: Base Ball Bear
問合せ☎ DISK GARAGE: 050-5533-0888(12:00〜19:00)
 
LEGO BIG MORL “ Thanks Giving “ vol.11
11月23日(木祝) 大阪 umeda TRAD
OPEN 16:00 / START 17:00
GUEST BAND: 雨のパレード
問合せ☎ キョードーインフォメーション: 0570-200-888(毎日10:00〜18:00)
 
情報
*LEGO BIG MORL Fan Club/LBA会員先行予約
東京公演 https://www.legobigmorl.jp/contents/ticket/vol10 
大阪公演 https://www.legobigmorl.jp/contents/ticket/vol11
2017年9月15日(金)12:00〜9月22日(金)23:59迄
*オフィシャルHP先行予約
http://w.pia.jp/t/thanksgiving/
2017年9月27日(水)10:00〜10月4日(水)23:59迄
<一般販売日>
10月21日(土) *両公演
料金 ¥4,000税込(整理番号付・ドリンク代別)
  • イープラス
  • LEGO BIG MORL
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