ブルガリア国立歌劇場 《トゥーランドット》《イーゴリ公》
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耳と目を奪う圧倒的な歌唱とステージ
東欧の歌手なら「喉が強い」がトレードマークだが、中でもブルガリアの名手たちは「体つきに関係なく、パワフルに歌い上げる」ことで名高い。
来る10月のブルガリア国立歌劇場来日公演では2つのオペラが楽しめるが、まずは、プッチーニ《トゥーランドット》のヒロイン、ヨルダンカ・デリロヴァに注目。“クールビューティー”そのものの美女ソプラノだが、ひとたび口を開けば圧倒的な声の力を披露。迫力と繊細さを兼ね備え、皇女の気品も忘れない。一方、彼女に求婚する王子カラフを演じるのは、ブルガリアきっての知性派テノール、マルティン・イリエフ。彼の強みはドラマティックなメロディをしなやかに歌えること。英雄的な役柄が得意なだけに、名アリア〈誰も寝てはならぬ〉も朗々と歌い上げることだろう。
そして、もう一つの演目となるボロディンの《イーゴリ公》は、バリトンやバスの出番が多く、スラヴ系の深い響きをふんだんに味わえるオペラ。でも、ファンの視線を一手に集めるのは、やはり、合唱とバレエがダイナミックに絡む〈韃靼(だったん)人の踊り〉だろう。テレビでも頻繁に使われるほど、エキゾチックな旋律美で人気の一曲だが、今回の演出家プラーメン・カルターロフは曲順をあえて変更し、華々しいこの名場面を大団円の象徴として最後に置くとのこと。民族の対立が結婚を機に融和に向かうシーンだけに、舞台装置も衣裳もひときわカラフル。幸福感に満ちる見事な幕切れを堪能してみたい。
文:岸 純信(オペラ研究家)
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年10月号から)
《トゥーランドット》10/10(土)15:00
《イーゴリ公》10/11(日)15:00
東京文化会館
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040
http://www.japanarts.co.jp
他公演
《トゥーランドット》
10/12(月・祝)京都コンサートホール(075-711-3231)、10/14(水)福岡シンフォニーホール(092-725-9112)、10/16(金)ハーモニーホールふくい(0776-38-8282)、10/18(日)三原市芸術文化センターポポロ(0848-81-0886)、10/21(水)岡山シンフォニーホール(086-234-2010)
※10/12,10/16,10/21公演はセミ・ステージ版
《イーゴリ公》
10/15(木)兵庫県立芸術文化センター(0798-68-0255)、10/17(土)愛知県芸術劇場大ホール(中京テレビ事業052-957-3333)