細野晴臣、歌謡曲やブギであふれた日比谷公会堂公演

レポート
音楽
2015.9.27
細野晴臣

細野晴臣

細野晴臣が9月19日に東京・日比谷公会堂でワンマンライブ「Boogie Woogie Holiday」を開催した。

今回の公演は、細野(Vo, G)、高田漣(G, Pedal Steel)、伊賀航(B)、伊藤大地(Dr)というおなじみのメンバーに、野村卓史(Key)を加えたバンド編成で実施。近年細野が取り組んでいるブギを中心にしたセットリストが期待できるとあり、会場には幅広い年代のファンが足を運んだ。

場内に足を踏み入れると、ステージには赤いカーテンが際立つステージが。このビジュアルが日比谷公会堂のロケーションと相まって、場内にはレトロな雰囲気が醸し出されていた。そしてオーディエンスの大喝采の中で登場したバンドは、ゆったりと「バナナ追分」からライブをスタートさせた。

最初のMCで細野は「今日から僕は、“俺”と言うことにします」という謎の宣言をし、“自身がいかにワルなのか”を示すエピソードを次々と展開。「崎陽軒のシウマイ弁当はアンズから食べる」「ヘアカットするときは、自分でシャンプーをしてから行く」といったスギちゃんのネタのようなMCで観客の爆笑を誘う。そのようなユルいMCで場内のムードを和ませると、バンドは野村のアコーディオンが光るアレンジのフレディ・フェンダーの「Mathilda」や、ブルージーなギターのオブリガードが印象的な「Susie Q」など、カントリー色の強いカバー曲を続けていった。

その後細野は「ライブのテーマを考えたときは『Boogie Woogie Holiday』だったんですけど、日々変わりますから……」と前置きし、8月に東京・東京国際フォーラム ホールAで行われた松本隆の作詞活動45周年イベント「風街レジェンド」に出演し、自身が1980年代に発表した歌謡曲を改めて見つめ直したことを話す。そして「歌謡曲って世界中のどこにもない音楽で。アメリカにもないし、純和風ってわけでもないし。80年代の独特の音楽で、こういうのって今どこにもないなって思ったんです」と述べ、裕木奈江に提供した「いたずらがき」と、森進一が歌った「ルーム・キー」を続けて披露した。

歌謡曲コーナーで観客をリラックスさせたあとは、ザディコ風に仕立て上げられた「Ain't Got No Home」のカバーからいよいよブギの時間へ。ここでは中川翔子とのユニットで話題を集めた「ネコブギー」や未発表曲を続け、さらにポルカ的なリズムとアコーディオンのサウンドを生かしたアレンジが楽しい「Pom Pom蒸気」でオーディエンスの体を揺らす。そして「Beat Me Daddy, Eight to the Bar」などカバー曲を続けて場内の一体感を強めると、「本当にバンドに入れたいくらいなんだけど」と紹介してゲストピアニストの斎藤圭土をステージに招き入れた。斎藤はピアノソロでブギーを奏で卓越した演奏力を示したのち、細野バンドと「Cow Cow Boogie」を共演し大きな見どころを作っていった。

後半は細野のライブでの定番曲となった「Tutti Frutti」のカバーから幕開け。「スポーツマン」「Body Snatchers」といったオリジナルの人気曲をカントリーアレンジでプレイした際にはいずれも原曲がテクノだったことに触れ、「当時自分が作ったテクノは、なぜかカントリーでのアレンジがハマる。いかにカントリーが好きかって言うね」と分析。そして「映画もライブは短いほうがいいんで」と告げ、「The House Of Blue Lights」を奏でて大喝采を誘った。

アンコールを求める大きな手拍子に応えるべくステージに登場したバンドは、ゆったりとジェームス・ブラウン「Get Up (I Feel Like Being A) Sex Machine」のカバーと「Hong Kong Blues」をプレイし観客を喜ばせ、歌謡曲、ブギウギ、ジャズ、カントリー、ロック、ファンクなどさまざまな音楽にあふれた一夜を終了させた。

音楽ナタリー
シェア / 保存先を選択