混沌にケリをつけた4人が向かう前途は――パノラマパナマタウン、新宿LOFTに刻んだ誓い
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パノラマパナマタウン 撮影=浜野カズシ
Goodbye Chaos Tour 2017.10.14 新宿LOFT
大学の片隅でバンドを結成してから半年後にようやく生まれた初のオリジナル曲「ロールプレイング」と「周りのバンドみんなダサいし、俺らが一番カッコいい」という根拠なき自信を武器にオーディションへ。その結果、『MASH FIGHT! Vol.4』にてグランプリを獲得。現在の事務所へ所属することが決定。
パノラマパナマタウン 撮影=浜野カズシ
そして、その才により、2018年新春メジャーデビューすることとなったパノラマパナマタウン。まるでシンデレラストーリー、順風満帆に歩んできたように見える彼らだが、大学卒業、そして上京――という変化の波に揉まれたこの1年で彼らが抱いたのは、「自分たちの音楽は、こんなにも届かないのか」という実感だったという。音楽一本で生きていくのだと決めたがゆえの、苦悩の日々。その先で彼らが掴み取ったものとは。「ウジウジしてらんねえ」という想いからそう名付けられたという『Goodbye Chaos Tour』、ツアーファイナル・新宿LOFT公演を観た。
パノラマパナマタウン 撮影=浜野カズシ
1曲目「PPT」のイントロをSEにして岩渕想太(Vo/Gt)、浪越康平(Gt)、田野明彦(Ba)、田村夢希(Dr)が登場。定位置についたメンバーが楽器を鳴らし始めると、「待たせたな、We are PPT!」と岩渕が威勢よく挨拶し、そのまま同曲を唄い始めるオープニングだ。その後は会場全体でのカウントアップから「リバティーリバティー」へ突入し、「ロールプレイング」へと繋げる。メンバー紹介とともに自分たちが何者なのかを伝え、<鳴らせ yeah 自由なビート 教科書なんていらないでしょ>と自らを焚きつけオーディエンスを熱くさせ、バンドの原点である“始まりの一曲”を鳴らす。この冒頭の3曲は、自分たちがここにやってきたのだということを全世界に知らしめるかのように、堂々たる響きをしていた。
パノラマパナマタウン 撮影=浜野カズシ
一際陽気なスカのリズムの中にシニカルな口調がピリリと効いた「エンターテイネント」、テンポと重心をグッと落とし不敵に轟かせた「シェルター」、上京後に書いた新曲だという「ねぇ、東京」、音を歪ませまくった田野のソロから始まった「Gaffe」。前半戦はほぼノンストップでアッパーチューンを連投。セットリストが進むにつれ、この日ならではのアレンジにフロアが沸く場面やメンバーが笑顔を見せる瞬間も増え、4人で鳴らす音の波はグオングオンと深くうねるようになっていく。9曲目「ホワイトアウト」までの怒涛の展開。息つく間もなく熱狂に身を委ねていたら、あっという間に9曲終わっていた感じだ。
パノラマパナマタウン 撮影=浜野カズシ
ここで一旦MC。先ほどまでとは一転、これまで遠征先で泊まったホテルでの心霊(?)体験をわいわいと話しつつ、「また話しすぎたな」と4人は笑い合う。そんな中、「アンダーグラウンドで終わらせるつもりもないし、俺たちの自己満足で終わるつもりもない。俺たちの思う“カッコいい”が全員の思う“カッコいい”になるまで、よろしくお願いします」と岩渕。彼はこの日、バンド自身を駆り立てるような言葉をふとした瞬間に吐くことが多かったが、それはきっと、のちに控えた大きな発表のことを強く意識していたからであろう。
パノラマパナマタウン 撮影=浜野カズシ
パノラマパナマタウン 撮影=浜野カズシ
しかしその昂揚感と緊張感が空回りすることなく、バンドをさらに走らせるためのエネルギーとして機能していたこと、さらにそうなった時の彼ら4人の攻め方が決して一辺倒ではなく、バンドの新たな可能性を感じさせられるものであったことが、この日のライブが良かった要因だと思う。MCを終えるとマイナーコードを太く鳴らし、岩渕の地元・北九州のシャッター街に宛てた「真夜中の虹」へ。過疎化した故郷への寂寞と愛情を滲ませたこの曲は、1番:日本語詞、2番:英詞となっており、その時々で異なる表情を見せてくれるが、吠えるようにシャウトする岩渕の絶唱も相まって、この日の演奏は特に素晴らしいものだった。「PPT」の歌詞を借りるならば、パノラマパナマタウンの曲は“早口の歌詞で沸かしてくスタイル”がひとつの主流になっているが、「パン屋の帰り」、そして「ラプチャー」と続いたこの中盤は、歌をしっかり聴かせることに重きを置いたゾーン。ここで唄われたまっすぐな言葉の数々からは、もがきながらも必死に信念を掴み取り、光の方へと突き進んでいくことを決めた、バンド自身の覚悟を読み取ることができた。
パノラマパナマタウン 撮影=浜野カズシ
「パノラマパナマタウンのテーマ」を機にライブは一気にクライマックスへ。「上から目線で言ってくるヤツら、みんなの周りにもいると思う。誰でもいい、そういうアイツを思い浮かべながら聴いてくれ!」(岩渕)と届けられた未発表の新曲「フカンショウ」は、エネルギッシュなサウンドに乗せて<ほっといてくれ>を連発するサビが特徴的で、このバンドらしい野心漲る新曲の登場にフロアのあちこちから歓声が上がる。そして本編ラストの「MOMO」では、冒頭の歌詞を<2018年新春、パノラマパナマタウン、メジャーデビューする! お前らありがとう!>と替え、来たる春にメジャーデビューすることを発表! 場内がこの日一番の熱狂に達し、「おめでとう!」なんて声も飛ぶなか、4人はステージを去っていった。
パノラマパナマタウン 撮影=浜野カズシ
パノラマパナマタウン 撮影=浜野カズシ
アンコールでは「抑えきれずにさっき言っちまったんだけど……」(岩渕)と改めてメジャーデビューの報告が。温かな拍手の音が彼らの新たな旅の始まりを祝すなか、岩渕はバンドの道のりを改めて振り返りながら、上京後は自分を曲げそうになる日もあったこと、4人の熱狂は今や自分たちだけのものではないのだということ、だからそういう混沌に別れを告げるためにこのツアーを『Goodbye Chaos Tour』と名付けたのだということを語っていった。「だからここで約束する。迷うこともあるかもしれないけど、絶対、俺たち4人はやりたいこと曲げないんで」「伝わったかな? 絶対に流されんな、ってことが言いたかったことです」。新たに芯に据えたその想いは、バンドのこれまでとこれからを綴った「odyssey」に託されていく。
パノラマパナマタウン 撮影=浜野カズシ
パノラマパナマタウン 撮影=浜野カズシ
再びのMCで、「もっと楽しくやりませんか? そのテンションで次の曲やりませんか!」と切り出したのはバンドのムードメーカー・田村。「湿っぽく終わるのは違うなと俺も思ってた」(岩渕)ということで、ラストは一気に駆け抜ける。岩渕がフロアへ下りてギターを掻き鳴らした「いい趣味してるね」、「ずっとこの曲を唄っていたい、全員に届くまで!」と紹介された「世界最後になる歌は」をポジティブに響かせ、この一日を締め括ったのだった。充実の表情を浮かべ、「俺たちの夜明けだ!」という宣誓とともに去っていった4人。「自分自身の音楽を信じる」という芯さえ見失わずにいれば、この先さらなる困難にぶち当たってもきっと乗り越えていけるはずだ。
混沌にケリをつけ、パノラマパナマタウンはその先へ進む。今度は“根拠に基づいた自信”を武器に、派手にカマしてやる番だ。
取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=浜野カズシ
パノラマパナマタウン 撮影=浜野カズシ
1. PPT
2. リバティーリバティー
3. ロールプレイング
4. 寝正月
5. エンターテイネント
6. シェルター
7. ねぇ、東京
8. Gaffe
9. ホワイトアウト
10. 真夜中の虹
11. パン屋の帰り
12. ラプチャー
13. パノラマパナマタウンのテーマ
14. SHINKAICHI
15. フカンショウ(新曲)
16. MOMO
[ENCORE]
17. odyssey
18. いい趣味してるね
19. 世界最後になる歌は