“青の炎”再びーー舞台「青の祓魔師」島根イルミナティ篇 ゲネプロレポート
(C)2017 加藤和恵/集英社・舞台「青の祓魔師」プロジェクト
加藤和恵原作の人気コミックス『青の祓魔師』。その舞台化4作目となる『島根イルミナティ篇』が10月20日Zeppブルーシアター六本木にて開幕した。初日直前に行なわれたゲネプロには多数のプレスが集結。注目の完全新作の見どころをレポートしたい。
悪魔(サタン)の落胤である奥村燐(北村諒)とその双子の弟・雪男(宮崎秋人)が通う正十字学園。年に一度の学園祭の賑わいの最中、突如現れた啓明結社イルミナティの総帥ルシフェル(横田龍儀)は正十字騎士團に宣戦を布告。学園生・志摩(才川コージ)の手引きで候補生の出雲(大久保聡美)を連れ去ってしまう。事態の収拾を図るべく、理事長のメフィスト(和泉宗兵)は急きょ雪男を隊長とする救出班に出雲奪還を指示。一行は出雲が捕えられている島根県へと向かうが、そこにはとある研究を進める外道院ミハエル(原勇弥)が待ち構えていた。さらにイルミナティと出雲の間には壮絶な真実が存在し──。
(C)2017 加藤和恵/集英社・舞台「青の祓魔師」プロジェクト
(C)2017 加藤和恵/集英社・舞台「青の祓魔師」プロジェクト
(C)2017 加藤和恵/集英社・舞台「青の祓魔師」プロジェクト
昨年の『京都紅蓮篇』で結束を固めた学園生たちの新たな戦いを描いた『島根イルミナティ篇』は、脚本・演出の西田大輔も舞台化を熱望していたエピソード。悪魔と人間の業が交錯する複雑で壮大なストーリーはまさに2.5次元舞台にふさわしいスペクタクルにあふれ、その様子は囲み会見での北村の「どこを観たらいいかわからないくらい、目が足りないほどいろんなモノが詰め込まれている」という言葉そのもの。また、今作の突き抜け感を宮崎が「やっべぇ作品になった(笑)」と、シンプル且つストレートに吐露。さらに「物語はもちろん、演出にも感動する作品。お客様のハートを震わせます」(大久保)、「アンサンブルが何百人もいるんじゃないかっていうくらい。お客さんに迫っていくカッコイイ舞台になっています」(横田)、「隅から隅まで観て欲しいです!」(原)と、「ギリギリまで悩んで調整した」(宮崎)、「想像の上の上の上を行っている作品」(北村)に寄せるキャストの自信も本物だ。
(C)2017 加藤和恵/集英社・舞台「青の祓魔師」プロジェクト
(C)2017 加藤和恵/集英社・舞台「青の祓魔師」プロジェクト
ストーリーの中心は、出雲と出雲の母・玉雲(田中良子)との強烈な確執。そして、逃れられない宿命の果てにたどり着く母と娘の深い愛の物語である。今作から出雲を演じる大久保の可憐で勝ち気なキャラクター像はとてもチャーミングで、背中合わせの脆さが露呈していくほどにグイグイと話に引き込まれてしまう。志摩役の才川も出雲の心情とシンクロしつつ新たなキャラクターの顔を見せ、展開に深みを与えてくれた。勝呂役の山本一慶の篤い友情と押さえた熱情も印象的。ねむ役の樋口裕太は謎めいた存在感の裏にある優しさで全体に余韻を添え、外道院役の原は登場から退場まで見事にインパクトを継続させていた。横田のルシフェルの“出し惜しみ感”も忘れ難い。
(C)2017 加藤和恵/集英社・舞台「青の祓魔師」プロジェクト
(C)2017 加藤和恵/集英社・舞台「青の祓魔師」プロジェクト
思い切り刀を振り回す姿が清々しい燐役の北村は今回は助ける側に徹し、その成長の跡と常に真っすぐな勢いが気持ちよかった。雪男役の宮崎は紳士で冷静な講師モードと学祭中の不器用モードとのギャップが新鮮。ふたりが渾身のアクションで共闘するしっくり感も、本作の大きな魅力である。
(C)2017 加藤和恵/集英社・舞台「青の祓魔師」プロジェクト
西田が得意とする動く舞台装置の表現は以前から定評があったが、本作では徹底的に“可動”にこだわった見せ方で勝負。学園内からイルミナティの地下組織内部まで、あらゆる場面を2台の階段と門型のソリッドなセットで立ち上げた。瞬時に場が移動したり、時間の経過を感じさせたり、さまざまな同時多発を可能にしたりと、独特の動線を駆使して常に動き続けるセットは多様な効果を上げ、その“強固なアメーバ”とでも呼びたくなるムービングが役者の芝居と一体化する感覚はちょっと不思議な感触。作品が持つダークファンタジー感ともマッチして、ここでしか観ることの出来ない世界観を刻みつけた。
(C)2017 加藤和恵/集英社・舞台「青の祓魔師」プロジェクト
時折差し込まれるコメディータッチでシリアスになりがちなドラマに緩急をつけ、シンプルなセットだからこその複雑な動きと出来る限りの人力で視覚的な刺激と驚きを狙う。さらに、怒濤のアクションシーンでエモーショナルをかきたて……と、“全部入り”の攻めのステージが散らばることなくきっちりと締められているのは、スタッフワークとの絶妙なコンビネーションはもちろん、やはり役者陣の熱量あってこそ。舞台上から感じられるカンパニー全体が放つ相当量のエネルギーは、舞台でしか味わうことの出来ない大きな高まりだ。“生きている舞台・青エク”。残酷な現実を乗り越え、見えない未来に突き進んでいく若者たちの果てしないパワー、劇場で存分に感じ取って欲しい。
取材・文=横澤由香
囲み取材コメント
ゲネプロに先駆けて行われた囲み取材では、北村諒(奥村燐役)、宮崎秋人(奥村雪男役)、大久保聡美(神木出雲役)、横田龍儀(ルシフェル役)、原勇弥(外道院ミハエル役)が登場した。
ーーおひとりずつ意気込みをお願いします。
北村:『青の祓魔師』の完全新作となる今作は、今までにないギミックだったり舞台スタッフの皆さんの仕事だったりたくさん……本当に目のやりばに困るくらいの……。
宮崎:言い方あってる?
北村:まあ、目が足りないということです。どこ見たらいいか分かんないよ、という。本当にしっちゃかめっちゃかしているので、観に来た方が一緒に体感してもらえるような舞台にしたいと思います。
北村諒(奥村燐役) (C)2017 加藤和恵/集英社・舞台「青の祓魔師」プロジェクト
宮崎:“やべえ”作品になるんじゃないかと思います。西田さんのいろんなアイデアが、スタッフさんはじめ皆の力で実現しています。緊張もかなりしていますが、去年と違って神戸公演がありますので、ロングスパンになりますけれども最後まで頑張っていきたいと思います。
大久保:本当に、舞台上がスペクタクルです。物語はもちろんですが、演出ひとつひとつに感動する場面があると思います。お客様のハートを震わせられるように頑張りたいと思います。よろしくお願いします。
横田:今回の舞台はセットもすごい動きます。観てるお客様が驚いてしまうくらい(セットが)迫ってきたり、人も100人くらいいるんじゃないか?というくらいめまぐるしく変わって登場しています。皆が一丸となってかっこいい舞台になっていると思います。楽しみにしていただけたらと思います。
原:燐、雪男、出雲たちを追い詰めるルシフェル、外道院たち。その攻防戦も注目していただければと思います。舞台のいろんなところを駆け回って、スペクタクルな超大作になっていると思います。皆さんの眼をひくような素晴らしいものになっていますので、舞台の隅から隅まで楽しんでいただければと思いいます。
宮崎:この格好ですごい真面目なことしゃべるね(笑)。
原勇弥(外道院ミハエル役) (C)2017 加藤和恵/集英社・舞台「青の祓魔師」プロジェクト
ーー自分の役以外で、「このキャラクターがいいな」という役柄があれば教えてください。
宮崎:僕は個人的にはやっぱり外道院ですね。出てきたときからインパクトがすさまじくて、それがしかも最後まで続くので、やっぱり目が釘付けになると思います。(それに負けず)ほかのキャストも注目してみていただければと思います。
北村:僕は今回は出雲と玉雲ですね。燐と雪男もですが、家族の絆、親子の絆の物語が好きなのもあるので。注目していただきたいですね。
大久保:やっぱりこのお二人(北村と宮崎)は、先輩というだけあって、いるだけで安心感、安定感があるので“ついていきます”という気持ちになります。主演のお二人は本当に魅力的だと思います。
北村・宮崎:ありがとうございます。
宮崎秋人(奥村雪男役) (C)2017 加藤和恵/集英社・舞台「青の祓魔師」プロジェクト
横田:僕は志摩蓮造です。とにかく動きまわっていて、アクションもカッコイイので。志摩に注目していただきたいと思います。
原:僕は親衛隊上官ですね。(外道院)よりルシフェル様の近くにいる。ルシフェルへの愛情の出し方も外道院とは違って、隣にいて支えてあげるような。そういう女房的な感じがいいなあと思います。
横田龍儀(ルシフェル役) (C)2017 加藤和恵/集英社・舞台「青の祓魔師」プロジェクト
ーー来月でブルーシアターが閉館となりますが、思い出などお聞かせください。
北村:そうですね。やっぱり去年の『京都紅蓮篇』も同じブルーシアターですし、 今年も去年のことを思い出したり。やっぱり“ブルーシアター”というくらいなので、青の祓魔師で…… 言ってて恥ずかしいな。でも、勝手につながりを感じつつ、またここで演じることができてうれしいです。
宮崎:ブルーシアターがなくなるのは寂しく思いますが、皆さんの記憶に残るようなものを皆で作ってきた、この板の上を楽しめるようにしたいと思います。個人的にはブルーシアターの広い?木の?トイレが好きでした。
大久保:私は今までブルーシアターに立ったことがなくてお客さんとし来ていたので、今回初めて立つことができてうれしいです。最初で最後というのがちょっと寂しいですが、(今回の役に)すべてを詰め込んで置いていきたいと思います。いえ、神戸にも持っていきます、頑張ります!
大久保聡美(神木出雲役) (C)2017 加藤和恵/集英社・舞台「青の祓魔師」プロジェクト
横田:僕も立ったことはこれまでなかったのですが、色々な芝居を見に来たことがあります。広くて、上からも出られたりするので面白い劇場だなと思っていました。そこに立てるのはうれしいですが、これで最後かと思うと悲しさもあります。それも思い出にして次につながるように頑張っていきたいと思います。
原:ブルーシアターに立つのは2回目なのですが、ステージから客席を見たときの景色がすごく好きで、(今回舞台に立った時に)感慨深くなるのかな……と今から思ってしまいますが、悔いのないように出し切って演じられたらいいなと思っています。
ーーファンへのメッセージを奥村兄弟からお願いします。
宮崎:ぎりぎりまで悩んで、ぎりぎりまで粘って仕上げてきた舞台なので、絶対にお客様にものすごインパクトを与えられると思います。非常に団結力のある、強いカンパニーだと思うので、千秋楽まで勢いを止めずにいきたいと思います。期待していてください。よろしくお願いします。
北村:これから観にきてくださるお客様の、想像の上の上の上を行っているんじゃないかと思います。ぜひ楽しみにして足を運んでいただければと思います。ぎりぎりまで粘ってやってきた作品ですので、だからこそ面白いものができていると思いますし、カンパニーのメンバー、一人も離脱することなく全員で作ってきた素晴らしいものだと自負しています。ぜひ楽しみにして会場へお越しいただき、そして一緒に舞台を作っていけたら、幸せだなと思います。よろしくお願いします。
(C)2017 加藤和恵/集英社・舞台「青の祓魔師」プロジェクト
ほかキャストより意気込みコメントが到着
■勝呂竜士役:山本一慶
本当に、やっとここまできたな!という気持ちでいっぱいです。あらたに加わったメンバーと、すごいものができあがったなと思っています。今までの青エクの良さを最大限に出している舞台です! これから、全力で走り抜けたいと思います。
■志摩蓮造役:才川コージ
チャレンジャー。今回の『イルミナティ篇』は僕に取って挑戦だと思っています! 沢山アクションもあるので、20公演突っ走れるように、稽古終わり毎日ランニングしていました! 挑戦という壁を打ち壊して最高な作品をお届けします!
■三輪子猫丸役:土井裕斗
『京都紅蓮篇』から1年とちょっと、『島根イルミナティ篇』で、再び大好きな子猫丸を演じられることに感謝の気持でいっぱいです。ありがとうございますッ! 季節は秋になりましたが、昨年の夏と同様、劇場は熱いです。1公演、1公演、全力で神戸での千秋楽まで駆け抜けます! よろしくお願いします!
■杜山しえみ役:松岡里英
稽古を重ねていくにつれて、しえみちゃんが、青の祓魔師がさらにさらに大好きになりました!! しえみちゃんって本当に心が強くて相手の気持ちを素直に受け止められる優しい女の子なんですよね。きっとしえみちゃんのそういうところが今回のラストシーンでは出雲ちゃんを救ったんじゃないかと思っています。そんなしえみちゃんの良さを余すことなく毎公演毎公演大切に演じさせていただきます!!
加藤和恵先生直筆応援イラスト@劇場ロビーにて展示中
■宝ねむ役:樋口裕太
宝ねむ役の樋口裕太です。初日を迎えられてまず嬉しいです。そして、見にきてくださったファンの皆様には青エクの世界に引きずり込まれるような世界観になってると思います。セットの転換に注目して見てください! あとは、ねむが目を開けるシーンとパペットとの一体感を注目してください!
■朴 朔子役:小槙まこ
朴朔子役の小槙まこです。いよいよ、舞台「青の祓魔師」島根イルミナティ篇の本番を迎えました! 優しくて、穏やかで、友達想いな朴ちゃんを、大事に演じさせていただきます。朴ちゃんは、みんなと共に戦えないけれど、大好きなみんなの無事を誰よりも祈り、そして、出雲ちゃんの1番の友達として、大きな存在でいられるよう頑張ります! 宜しくお願い致します!
■親衛隊上官役:稲村 梓
親衛隊上官役の稲村梓です。稽古を重ねて、この作品がとっても好きになりました。観にきてくださる方が、もっともっとこの作品を好きになってくれるように、精一杯頑張りたいと思います。
■メフィスト・フェレス役:和泉宗兵
まだアニメ化されていない『島根イルミナティ篇』の舞台化、演出西田さんのイマジネーションによって物凄い世界観が出来上がったと思ってます。自分としても『青の祓魔師』ファンの皆さんの思いを裏切らないようにメフィスト・フェレスという役に向き合いました。稽古場で築き上げた情熱を余すことなく劇場で皆さんにお届けします。
■神木玉雲役:田中良子
お稽古期間ずっと、皆笑ってました。世界をつくる過程はとても大変で、体力的にも楽な時間なんてなかったけど、本当に皆笑ってました。初日のこの瞬間を信じてたからだと思います。必ず面白くなる。言葉にしなくても全員がそう思っていたんだと思います。届きますように。青エク、最高です。
加藤和恵先生直筆応援イラスト@劇場ロビーにて展示中
(C)2017 加藤和恵/集英社・舞台「青の祓魔師」プロジェクト
【東京公演】
日時:2017年10月20日(金)~10月29日(日)
会場:Zeppブルーシアター六本木
【神戸公演】
日時:2017年11月2日(木)~11月5日(日)
会場:新神戸オリエンタル劇場
原作・脚本協力:加藤和恵(集英社「ジャンプスクエア」連載)
脚本・演出:西田大輔
奥村 燐:北村諒、奥村雪男:宮崎秋人
勝呂竜士:山本一慶、志摩廉造:才川コージ、三輪子猫丸:土井裕斗
杜山しえみ:松岡里英、宝 ねむ:樋口裕太、朴 朔子:小槙まこ
神木出雲:大久保聡美
ルシフェル:横田龍儀、親衛隊上官:稲村 梓、外道院ミハエル:原勇弥
メフィスト・フェレス:和泉宗兵、神木玉雲:田中良子、ほか
■発売日 2018年3月28日(水)