フラカン・圭介&グレート × 忘れらんねえよ・柴田の“酉年生まれ1万字ミーティング!”
フラワーカンパニーズ / 忘れらんねえよ 撮影=風間大洋
フラワーカンパニーズ、自らのレーベル「チキン・スキン・レコード」を設立してのニュー・アルバム『ROLL ON 48』を2017年9月6日にリリース、同年10月現在そのリリース・ツアーの真っ最中。忘れらんねえよ、歌詞・メロディ・アレンジのすべてにおいて新たなるトライアルに挑んだ意欲作『僕にできることはないかな』を9月20日にリリース、同年10月現在『忘れらんねえよ主催ツレ伝ツアー2017』の真っ最中。
そして同年12月17日新宿BLAZEにて、今年で4回目の歳男のフラワーカンパニーズが、酉年生まれのミュージシャンをゲストに招いて『第一回ニワトリフェスティバル』を開催、12歳下の忘れらんねえよ柴田隆浩も出演。
というわけで。以前から親交のある両者・フラワーカンパニーズ鈴木圭介&グレートマエカワと柴田隆浩に、お互いのニュー・アルバムのことや『ニワトリフェスティバル』のことなど、じっくりたっぷり語り合っていただきましょう!という企画がこのテキストなわけなのですが、最初に謝っておきます。
1万字以上あります、これ。3万字からここまでは削ったのですが、どうしてもここからシェイプできませんでした、くだらなくもおもしろすぎて、そして生々しくて、かつ、切実でもあって。
ではどうぞ。ご堪能いただけることを心から望みます。
柴田、北海道でフラカンファンにひんしゅくを買う
忘れらんねえよ・柴田隆浩:あの、俺、一部のフラカンさんファンから、嫌われてると思うんですが。前に、圭介さんにディープキスをしてしまって──
フラワーカンパニーズ・鈴木圭介:函館と札幌ね。
柴田:ちょろっとキスしたんでしたっけ?
鈴木:ディープキスだよ(笑)。舌ベロッベロ入れてきたもん。
フラワーカンパニーズ・グレートマエカワ:俺たちが結成25周年の後半にやった、半年ぐらい続いた対バンツアー、函館と札幌で出てもらって。2014年の10月だと思うんだけど。
俺たちの「ホップ ステップ ヤング」っていう曲をすごい好きだって言ってカバーしてくれたから、アンコールで一緒にやって。曲の最後らへんになった時に──
鈴木:途中で曲がブレイクして、そこで何やるか全然決めてなくて。なんかお互いにスローモーションみたいになって、「柴田あ!」「圭介さあん!」みたいにゆっくり近づいていって、これどうなんのかなと思ったら、気づいたら抱き合ってた。
で、キスしようとしてくるから、これはやんなきゃいけないと思ったら、ベロベロベロ!って(笑)。
柴田:チャンスだ!と思って。
鈴木:もう、こっちもやるしかないじゃん。それ次の日の札幌でもやったのよ。函館はまあ事故だけど、札幌はお客さんから怒られたね。
柴田:「圭介さんはそういうことをするキャラじゃない、それを仕掛けた柴田はなんなんだ」みたいな(笑)。それ、今日で挽回したいですね。もうディープキスはやめようと。
フラワーカンパニーズ・鈴木圭介 撮影=風間大洋
グレート、「久々に大物が現れた」と柴田の登場を喜ぶ
──最初の接点はいつだったんですか?
グレート:最初はね、よう憶えとるけど、5年くらい前かな、『ARABAKI(ROCK FEST.)』にお互い出る時があって。ホテルのロビーでね、マネージャーさんに紹介されて。
柴田:あそこの受付って、『ARABAKI』に出るいろんなバンドマンがひしめいてるから。
グレート:そのあと大分のT.O.P.Sで、イベントで一緒になって。その次は呼んでもらったんだよね、『ツレ伝』(忘れらんねえよが行っている対バン企画)にね。渋谷のO-WESTで。
柴田:で、フラカンさんのツアーに呼んでいただいて、ディープキスをして、仲を深めて。あの日、打ち上げもめちゃくちゃ楽しかった。
鈴木:いや、おまえはな。おまえは楽しかっただろうけど。久々に俺、朝までいて。柴田、同じことを延々ループして言ってて。最終的にはウチのスタッフにずーっとからみだして。俺、初めてそのスタッフがちょっと怒ってんの見たもん。
柴田:(笑)。すんません!
鈴木:(そのスタッフ)怒らない人なのよ。それぐらいしつこかったんだよ。
グレート:俺、一軒目終わりで帰ったんだけど、翌朝の集合の時にみんなが「柴田、あのあとすごくてさあ」って(笑)。「久々に大物が現れた」って。
鈴木:最近あんまいないじゃない、酒グセが悪いミュージシャンって。
あと、前の晩、竹安が柴田の隣の部屋だったらしいのね。竹安ってよくさ、iPadをつけっぱなしにして寝ちゃうのよ、耳が悪いから、でかい音で。それがループになってて、ずーっとジャズがかかってたんだって。
柴田:そう、ずーっとうるさくて(笑)。
鈴木:それで全然眠れなかったってことをずーーっと言うの、何十回も。最終的には竹安も、「うん、悪かったと思うけど、おまえもさあ、バンドの人間なんだからいちいちそんな細かいことでグチャグチャ言うなよ」って怒り始めて(笑)。
柴田:全然憶えてない。
鈴木:それとそのスタッフにと、延々ともう。
柴田:あの、(その女性スタッフが)好みだったんです。
グレート:(笑)。知らんわ!
柴田:すんません。それで求愛して──
──最悪ですね、人んちのスタッフに(笑)。
柴田:で、それを拒否られて、「なんだよ!」みたいな(笑)。
鈴木:結婚してるって言われて、「どうやって告白されて、どうやってプロポースされたんですか?」って延々と訊いてて。
グレート:最低の奴が現れたっていう(笑)。でも久々にそういう奴が出てきてうれしかった、俺は。
フラワーカンパニーズ・グレートマエカワ 撮影=風間大洋
柴田、柔道家に投げられる
鈴木:今年、大槻(ケンヂ)さんのロフトプラスワンのイベント、『のほほん学校』に出た時に、大槻さんも言ってた。
柴田:ええっ!?
鈴木:「柴田くんって、酒グセすごく悪いよねえ」「はい、あれは悪いです」「久しぶりだよね、あの感じのバンドマンって」。ちょっとからみ酒じゃない?
柴田:そうですね。けっこうアグレッシヴになる傾向があって。
鈴木:(チンピラ口調で)「○○さんはさあ、どうやってプロポーズされたんっすかあ?」って、ケンカふっかけるみたいなさあ。もう典型的なからみ酒で。
柴田:けっこうトラブルは起きてますね、酒で。前も、大河ドラマに出てる女優さんに、演技のことで説教しちゃったり。
熊本の映画祭があって、僕、地元の映画の音楽に関わってたんで、呼ばれて行ってちょっと歌って、打ち上げにも参加したんですよ。そしたら芸能人がいっぱいいて、ミュージシャンは僕ひとりで。そしたら偉そうにできるじゃないですか?
グレート:え? 小さくなるって言うと思ったら。
柴田:だって、(ミュージシャンとしての)格上がいないから。それですごい酔っぱらっちゃって、そしたら目の前の席にめっちゃかわいい女の子がいて。「かわいい!」と思って、求愛して──
鈴木:求愛ばっかしてんだ。
グレート:素直なんだね。
柴田:で、拒否られて、だんだん説教モードになっていって。
鈴木:役者に芝居論を語るっていう、別の畑の人が。最悪だな(笑)。
柴田:あと、攻撃を受けるっていうのも。富士そばの自販機に並んでたら、前のサラリーマンがいつまでも決めないんですよね。気が大きくなってて、「おい、早く決めろよ!」って言っちゃったんですよね。
鈴木:それはダメだわ。
柴田:で、向こうが「ああ?」ってなって。で、投げられました。柔道家だったんです。
鈴木:はははは!
グレート:マンガみたいだね。
柴田:きれいに投げられて、「すんません!」って。めっちゃ走って逃げました。
──でも、こういう場でどんどん言った方がいいですね、そのレベルの酒グセの悪さなら。
鈴木:ああ、そうだね、自分でね。
──ファンとかに見られてネットで拡散されると荒れるから。その前にどんどんカミングアウトした方がいいと思います(笑)。
柴田:でも、友達とか、同世代のバンドマンとかで、そんなにアホみたいに酔っぱらう人は、確かにいないかもしんないですね。みんな上品に飲んで、しかもイケてるバンド同士で、写真撮って──
鈴木:上品って、普通に飲んでるだけだろ。
柴田:イケてます! で、「ファボください」みたいな投稿してますよね。
グレート:柴田、歌に全部そういうのが表れてるからな。それが素直っつうか、すごいな。歌に嘘がないと思う、ニュー・アルバムを聴いても。こういう姿を見とるから。
鈴木:妬みの塊なんだよな。
柴田:もう妬みは! 最近またひどいですねえ。
圭介&グレート、忘れらんねえよの『僕にできることはないかな』を絶賛
──でも、ニュー・アルバムは、遂にそこから多少脱して、次の段階に行き始めた記念すべき作品という位置付けだと、僕は思っていたんですけれども。
鈴木:これが? これでも脱出してる?
柴田:そういう自分は変わらないんですけど、そういうのをテーマに曲を書くところから離れてみようと思って。それをもっとさかのぼって、「妬んでしまう自分ってなんなんだろう?」みたいな。
鈴木:ああ、でも確かに、すごいいい曲があるよね、このアルバム。「喝采」とか「おつかれダーリン」「東京」、すごくいいじゃん。
柴田:ほんとですか。僕、「喝采」いちばん気に入っていて。でも、すんなり受け入れられないんですよね。忘れらんねえよを愛してくれてる人にはすごい刺さってる手応えあるんですけど、一般的な忘れらんねえよのイメージとは違うみたいで。
グレート:それは今までのファンとか、今まで応援してくれた媒体の人とかもそう言うわけ?
柴田:いや、そういう人たちは喜んでくれるんですけど、そうじゃない、たとえばフェスとかで、お客さんの上でビールイッキしてる柴田を観てワーッと笑ってる子たちは、なかなかここに入って来るのに時間がかかるっていうか。
鈴木:それはお客さんじゃないもん、だって。言ってしまえば。
柴田:ああ! ……だから、次に何を作ろうかなっていうのが、正直、悩んでいて。
グレート:難しいよね、これまでの忘れらんねえよって、もう確固たるものがあるからさ。
鈴木:でも、妬みもちゃんと入ってるじゃん、このアルバム。ひどい歌詞あるよ、たくさん。「氏ね氏ね氏ね」とか。
グレート:そうそう。そういうことをどういう気持ちで歌にするのかなっていうのが……鈴木もあるけど、そこまで言い切っちゃう心ってなんなんだろうな?って。
鈴木:いやあ、俺、ここまではないわ。これはひどい! すばらしい!(笑)。
グレート:俺だったら、「でもこれ歌ったら嫌われちゃうかもしれない」ってやめたりすると思うんだ。柴田は思いっきりいくじゃん。
柴田:ああ、そうですねえ……だから、日常ではやっぱ言えなくて。
グレート:ああ、まあ、歌だからね。
鈴木:あとお酒を入れた時ね(笑)。
柴田:お酒を入れた時と、歌ですね。でもそれでも多少はオブラートに包んでいて、「氏ね氏ね氏ね」も。ほんとはこれ、人名出そうと思ってたんですけど。それだとほんとにただの攻撃になる、表現じゃなくなるかなという気がして。
でも、そういうちっちゃいことに腹を立ててる人間を、表現したいというか。こいつ、みっともねえけど、でもちょっとわかるし、こいつの言うこと聴いてあげようかな、みたいな気持ちになってもらいたい。攻撃するのがいちばんの目標ではなくて。
グレート:うんうん。だから、それに付いてくる人、来ない人っていうのはあるかもしれんけど、180度変わったわけじゃないからさ。そんなに悩まんでも……まあ、悩むんだろうけどさ。俺たちも自分らのこと、悩むしさ。
フラワーカンパニーズ / 忘れらんねえよ 撮影=風間大洋
フラカン&忘れ、「なめられる自分たち」を分析
──それ、ほんと上っ面の、イメージの問題だけだと思うんですね。フラカンも90年代はイメージ悪くて、チャラいと思われてたけど、00年代になってからだんだん変わっていったじゃないですか。
鈴木:ヘタレなイメージだったよね。なめられがちでしょ?
柴田:そう、なめられがちなんですよ! 「忘れらんねえよ笑」とか。フェスとかで、強いバンドの裏に置かれて、お客さんがぶっちゃけ少ない時とか、「忘れらんねえよ客少なすぎワロタ」とか。「うっせえバカ!」みたいな。
グレート:でもそれ、いまだに俺らもあるからね。腹立つっちゃあ立つけど、まあいいかと思うこともあるしね。だってそこでさ、「笑」を付けちゃいけないバンドもいるじゃん。言えないっていう。俺らみたいにシャレですむバンドじゃなくて。
鈴木:風通しがいいってことだよ、それは。
柴田:まあそれはそうかもしれない。
鈴木:それさえも言えないバンドになっちゃったら、裸の王様じゃん。いちばん哀れじゃん。それより笑われてる方がいいじゃない?
グレート:もっと言うとさ、柴田も「笑」が付く世界に行きたかったとこもあるんじゃないの?
柴田:ああ、ぶっちゃけ、そういうキャラになりたかったとこもありますけど。
グレート:俺らもそうで。風通しが悪いっちゅうかさ、孤高の存在になっちゃうとか、そういうのが嫌いで始めたところもあるバンドなわけでさ。まあ、腹立つ時もあるけどさ。
鈴木:でも、柴田も気にしてないでしょ? ほんとはそんな自分が好きでしょ?
柴田:好き、です(笑)。
鈴木:絶対そうだよ。
──まあ、なめられると頭にくるのはわかりますけどね。
鈴木:それはわかる。なんで大した音出してないバンドが、こんなに評価されてんのに、って思うでしょ?
柴田:おっもっいますねええええ!
鈴木:大していい曲作ってないのにこのバンド、イメージだけで評価されて、とか。さんざん思ったもん、俺も。
柴田:だし、もっと言うと、俺の曲をこいつ歌ったらもっと売れんのにな、とか。こんな曲でこんな売れてんだったら、じゃあ俺の曲をこいつが歌った方が──
鈴木:ああ、曲としては自分は負けてないから、ってことね。
柴田:絶対負けてないのに、「忘れらんねえよ笑」みたいなとこで、聴いてもらえないというか、ちゃんとした音楽としてその人の中ではカウントされてないっていうことが。
笑われたりとか、「なんだあいつ」って言われるのは好きだし、そういう自分が理想の自分だったりするんですけど、でも一方で、そういう音楽的なとこでそういう感じになってくると、猛烈にモヤモヤして。
グレート:最初に大分で一緒にやって、初めてその時ライブ観たんだね、俺。で、打ち上げでちょっとだけ飲んだんだけど、その時に「長い付き合いになると思うな」みたいな話、したでしょ?
柴田:はい。うれしかったです。
グレート:そのライブを観た時に、鈴木の感覚とすごい近いなと思ったんだね。「なんであいつらは評価されてるのに、俺は!」っていう鈴木、昔からおるわけじゃん。このバンドおもしろいな、これは絶対また一緒にやることになるんだろうな、と思ってさ。
フラワーカンパニーズ・鈴木圭介 撮影=風間大洋
柴田はフラカンの『ROLL ON 48』をこう聴いた
──では、フラカンはその軽くてユーモラスなイメージを保ちながら、いかになめられキャラから脱していったのかを伝授していただけますか。
柴田:あ、それは思ってて! アルバムを聴かさせていただいて。まず、音の説得力を、僕、すごく感じたんです。バンド・サウンドが、もうほんと、ブルースとかのグルーヴだなと思って。これを聴いたらもうほんと、なめるなんて気持ちにはならないよなと思ったんですね。だから、今出してる音と、活動してきた実績なのかなと思ったんですけど。
鈴木:音じゃないと思うんだよね。長くやったから、っていうだけの話だと思う。30代ぐらいから自分たちが歳上になってくるじゃん。そうすると、歳下のバンドの人はあんまりなめないじゃない、さすがに。曲は、そんなに20代の頃と変わってないと思う。
グレート:まあ、若いバンドマンにはあんまりなめられんけど、世間的にはなめられとるとか多いからね。
鈴木:そう、変わってないと思うんだよ。
グレート:両方かな。長いからすごいと思ってもらえるとこもあるけど、でも、長いのもさ……自分で「メンバーチェンジなし!」とか言っとるけど……それもすごいことだと思うけど、メンバーチェンジしてるバンドの方がすごいと思うこともあるしさ。
鈴木:だから、同じ歳ぐらいのバンドと比べると、パワーバランスは変わってないよ。その頃同じ時期に出てきたバンドとの感じは。ただ、同世代のバンドが減ったっていうだけで。
柴田:うーん……でも『マンモスフラワー』の時と今回のアルバムって、音楽の質感が全然違うというか。やっぱりブルースをものすごい感じて。たとえば『マンモスフラワー』の時は、華やかで大きくて、整理整頓されたきれいなイメージの音だけど、今回のはもっと……イメージなんですけど、犬がいて──
鈴木:犬!?
柴田:なんか野犬みたいなのがいて、筋肉質の。そいつが「ハッ、ハッ」て言いながら軽く上下に揺れてるみたいな、そんなイメージなんです。
グレート:まあ、20年前のアルバムと違うのはあたりまえだと思うんだね。「あの時はあれが最高だと思ってたけど、違ったんだ」って思うこともいっぱいあるからね。
今聴くと、いかに自分らがいろんなことを知らなかったのか、っていうことだらけだからね。どうすればリズムがかっこよくなるのかとかさ、どうすれば音がドーンといくのかとかさ。
柴田:そう、音がドーン! と来て、今回のアルバム。楽器のひとつひとつの音像が、すごくゴリッとしてて。サンボマスターの新しいアルバムを聴いて、おんなじ感じを受けたんですよ。プッて切ったら血が出そうな音というか。大量生産されてない感じ。「うわ、これすげえな」と思ったんです。
──柴田さんが最初にフラカンを聴いたの、『マンモスフラワー』なんですね。
柴田:そうっす。高校の頃、一緒にバンドやってたセイケって奴が、すっごいフラカンが好きで──。
鈴木:柴田と話すとよく名前出てくるな、セイケ。覚えちゃったわ。誰なんだよ(笑)。
グレート:今度会わせろよ。今はもう聴いてくれてないのかな、セイケ。
柴田:いや、大好きですよ。今、熊本のテレビ局で働いてて、この前一緒に仕事しました。で、そのセイケがビデオを観せてくれて、アルバム貸してもらって「うわ!」って。で、『ポップジャム』(当時のNHKの音楽番組)で「ホップ ステップ ヤング」を歌ってるのを観て「これだ!!」っていう。それが原体験ですね。
フラワーカンパニーズ・グレートマエカワ 撮影=風間大洋
柴田、フラカンの言葉に勇気が湧く
鈴木:そうだ、忘れらんねえよの新しいアルバム、ストリングスがすごい入ってるじゃない? これがねえ、効果的だなあと思って。合わない感じするじゃん。でもそれがこんなにハマるんだ?と思ったんだよね。
柴田:ありがとうございます!
鈴木:歌詞もすごいんだよ、「喝采」とか。「喝采を送りたい」だもん。普通「喝采をもらいたい」じゃん、柴田が歌うなら。「『送りたい』なんだ? その感覚、俺、ないな」と思って。
グレート:あのストリングス、忘れの曲にすごく合うんだけど、これまで俺が聴いてきた「こういうバンドの曲だったらストリングスに合うな」っていうのとは違う、今まで聴いたこともない感じの響きでさ。それがすごいよかったんだよね。
これは新しいものができてるんだな、と思ったし、誰もやってないことを探しながらやってるんだろうな、その姿勢もすげえかっこいいな、と思ったし。
柴田:ええっ、マジですか! ありがとうございます! ものすごい勇気が出るし……(しみじみと)そういう言葉をほしかった。
グレート:はははは。甘えか!
柴田:いや、なんか、誉めてほしいんですよねえ。
鈴木:なんだ、喝采ほしいんじゃねえかよ、じゃあ(笑)。
グレート:嘘か、その歌は。
鈴木:でもストリングス入れるの、一時みんなやったじゃん。ほら、みんなオアシスみたいになるじゃん。でも、そうなってないの。
グレート:そう、それがいいんだよね。
柴田:うわあ、うれしい! 正直、わかってもらえねえなあっていう気持ちもあって、でも「これでしょう!」とも思ってるし。なんか今、混乱状態にあるんですよね。「なんでこれ、わかんねえの?」みたいな。
鈴木:時間がかかるっていうだけじゃない? まだ戸惑ってるだけだと思う。大丈夫だよ、だって絶対こっちの方がいいじゃん。
グレート:まだ最初だからね。
鈴木:単純に、もっと聴きたいよね、次のアルバムでもこういう曲を。
柴田:……(しみじみと)すっごいうれしいし、すっごい染みます……今日、来てよかったなあ。めっちゃ勇気出る……。
あと、歌詞で言うと、「ハイエース」の「笑いながら 騙しながら くぐり抜けてきた歌の中を」の、「騙しながら」が、俺、すげえきて。めっちゃくちゃリアルだし、作詞家とかじゃ絶対に辿り着けない言葉だなと思ったんですね。
ロック・バンドの人間にしか書けない。ロック・バンドって自分の言葉で歌うじゃないですか? それの最たるものがこの「騙しながら」っていう言葉で、めっちゃグッときて。
騙しながらでも進んでいくんだ、なんてリアルで、でもそうやって歩いてる人ってなんて美しいんだろう、と思って。
グレート:俺もね、ここはいいなあと思ったね。
──忘れらんねえよにも「バンドワゴン」って曲がありますよね。
柴田:はい。機材車で移動してる時って、歌詞って出てきません?
鈴木:出てこない(笑)。機材車にかかわらず、どこでも出てこない。しぼり出さなきゃ。
グレート:柴田は出てくるんだ?
柴田:機材車に乗ってる時がいちばん出ますね。家で考えてる時は全然出てこないし、出てくるの全部つまんないって思っちゃう。
「『ハイエース』リリース前に、歌詞が現実に」事件
──そうだ、鈴木さんグレートさん、「ハイエース」のあの話、していただいていいでしょうか。後半に「できなくなるまで」というリフレインがありますが、曲をリリースする前に、本当にそうなりそうだったという。
グレート:ああ、竹安ね。俺ら、柴田の一回り上でしょ? 今の柴田ぐらいの時は、健康問題なんか全然大丈夫だと思っとったけどさ。俺と竹安が、今年、頚椎をやられてね。特に竹安がひどくてさ、『JOIN ALIVE』に出る当日に羽田空港に行ったらさ、右腕をずっと頭の上に上げてるわけよ。
鈴木:ストレッチ?と思って。
グレート:何してんのかなと思ったら「頚椎やっちゃってさ、腕を上げてないと痛くてたまらんのだよ」「え、じゃあギター弾けないじゃん!」って話になって、
これヤバいな、とりあえず会場に行って注射打って、それでもダメなら最悪キャンセルするしかないなと思って。で、会場近くの病院に行って、座薬でなんとかなって、一応は弾けたんだけどさ──。
鈴木:すっごいちっちゃいの、音が。いつもうるさくてしょうがないのに。
グレート:ボリュームとかはいつもどおりなのに。「ハイエース」もやったんだけどさ、「これ、ほんとに今日でおしまいかもしれん」っていう時に、横で鈴木が「できなくなるまで できなくなるまで」って歌ってて。「今じゃん!」って。
柴田:ははははは!
グレート:俺、泣きそうになったっちゅうね。それぐらいのこともあるんだよ、この歳になると。
鈴木:やっぱり、クルマ移動も原因のひとつなんだって。やっぱりずっと揺れてるから。まあ歳をとると、誰でもね、クルマ移動してなくてもいろいろ出てくるじゃん。
柴田:でもほんと、前人未到の領域に来てる感じがないですか?ライブ・バンドで、全国のライブハウスを回ってずーっとやってるのって、先人でいたっけ? っていう。
グレート:もちろんいるけどね、先輩でも。SAとか、ラフィン・ノーズとか。でも、その人たちも俺たちも含めて、60ぐらいまでどういうふうにやっていくんだろう?っていうのは、前人未到かもね。
柴田:ですよね。新しい文化というか。
グレート:もっと上の、鮎川(誠)さんとか、エンケンさん(遠藤賢司)とか、そこの領域に行っとるわけじゃん。ああいう人たちがいるからこっちもまだやれる、っていうのもあるしさ。そういうのは、昔はなかったと思うから。
鈴木:昔は、ホール・ツアーとかじゃないと、食えないもんだと思ってたからね。そういうものじゃなくても、地べたでもなんとかいけるっていうね。
フラワーカンパニーズ / 忘れらんねえよ 撮影=風間大洋
12・17『ニワトリフェスティバル』、一緒に何をやる?
──12月17日のフラカン主催の『第一回ニワトリフェスティバル』に柴田さんが出演するんですよね。
グレート:うん。今年酉年で、フラカン酉年生まれだから、酉年のミュージシャンを集めて『ニワトリフェスティバル』っていうのをやろうと去年決めて。
12歳上は子供ばんどのうじき(つよし)さん、24歳下はPeque from La Senasっていうパーカッション集団の中からの酉年の3人、12歳下が柴田に出てもらうということで。
柴田:あの、中身、何をやるのか、今いち僕、把握できてないんですけど。
グレート:そこはね、まだ決定してないわけだけど(笑)。もちろんフラカンのワンマンセットをするつもりなのね。そこにゲストで……3組全部出るステージもあるかもしれないし、それぞれかもしれないし、そこは今から考えるんだけど。
仲のいい同世代のセッションとかはよくあるじゃん。そうじゃなくやるのがおもしろいと思ってね。うじきさんの、子供ばんどのカバーをやるかもしれないし、そうじゃなくて、うじきさんが好きだったもっと上の世代の曲をやろうっていう話になったら、ちょっと新鮮かもしれないし。
柴田:だし、僕らの世代のめちゃくちゃ流行った曲を、敢えてやるとか。
グレート:そういうのもおもしろいよね。24歳下のパーカッションが3人入るのもおもしろそうだし。
柴田:「真冬の盆踊り」とかでパーカッション入るとすごそうですよね。
グレート:あと、俺らで遊んでほしいのもあるんだ。わかるじゃん、「フラカンだったらこうやって遊べるな」っていうの。
柴田:ああ、いろいろやりたいことはありますね。「フラカンさんにダンマリでこういうパフォーマンスをやろう」っていうのもおもしろそうな気もします。
グレート:いいねえ。
柴田:僕自身、そういうのをやられるとすごいイヤなんですけど(笑)。
鈴木:俺もイヤだよ。
柴田:「考えてる流れがあるんだから!」みたいな。
鈴木:そうそう。こっちの計画を壊されて。
柴田:「なんだよ! しかも尺長えよ!」みたいな。こないだ爆弾ジョニーと岡山で2マンした時に、それをやられたんですよ。僕らがパクってる「真冬の盆踊り」のヨサホイも勝手にやるし、「忘れらんねえよ」の合唱もやるし、ビールイッキもやられて。
もう全部やられて「ああー、段取り全部壊れるわあ!」って。でも、その日の俺らのライブが、すごくよくなったんですよね。もうすべてどうでもよくなって、そしたらカオスになって。だから、ちょうどいい按配で想定外のことをやった方が。イヤじゃないレベルくらいで。
鈴木:いや、イヤなぐらいやってほしいね、こうなったら。
グレート:ギターは弾く? 弾かない?
柴田:ギターは、好きじゃない(笑)。俺、巻き指になっちゃったんですよ。
グレート:じゃあ歌だけで全然いいと思うし──
鈴木:いや、いいよ、歌も歌わなくて。
柴田:ええっ?
鈴木:ディープキスだけでいいよ。
柴田:はははは!
鈴木:出てきて、ディープキスだけして帰るっていう。
柴田:また叩かれそう(笑)。
取材・文=兵庫慎司 撮影=風間大洋
フラワーカンパニーズ / 忘れらんねえよ 撮影=風間大洋
・10月29日(日)山口@周南LIVE rise SHUNAN Open 17:00/Start 17:30
・11月1日(水)長崎@Studio Do! Open 18:30/Start 19:00
・11月3日(金・祝)大分@club SPOT Open 17:30/Start 18:00
・11月7日(火)大阪@十三ファンダンゴ Open 18:15/Start 19:00
・11月11日(土)秋田@Club SWINDLE Open 17:30/Start 18:00
・11月12日(日)青森@Quarter Open 17:00/Start 17:30
・11月19日(日)鳥取@米子AZTiC laughs Open 16:30/Start 17:00
・11月21日(火)愛媛@松山W studio RED Open 18:30/Start 19:00
・11月25日(土)茨城@水戸ライトハウス Open 17:30/Start 18:00
・11月26日(日)栃木@HEAVEN'S ROCK宇都宮 VJ-2 Open 17:00/Start 17:30
・12月12日(火)京都@京都磔磔 Open 18:15/Start 18:45
・12月13日(水)京都@京都磔磔 Open 18:15/Start 18:45
2018年
・1月20日(土)熊本@Django Open 17:30/Start 18:00
・1月21日(日)福岡@Live House CB Open 17:00/Start 17:30
・1月27日(土)群馬@高崎club FREEZ Open 17:30/Start 18:00
・1月28日(日)福島@Out Line Open 17:00/Start 17:30
・2月10日(土)宮城@仙台darwin Open 17:30/Start 18:00
・2月11日(日)岩手@盛岡club CHANGE WAVE Open 17:00/Start 17:30
・2月17日(土)高知@X-pt. Open 18:00/Start 18:30
・2月18日(日)徳島@club GRINDHOUSE Open 17:00/Start 17:30
・2月24日(土)北海道@札幌PENNY LANE24 Open 17:30/Start 18:00
・3月3日(土)大阪@心斎橋BIG CAT Open 17:15/Start 18:00
・3月4日(日)愛知@名古屋BOTTOM LINE Open 17:00/Start 17:30
・3月10日(土)東京@赤坂BLITZ Open 17:00/Start 18:00
日時:2017年12月17日(日) 開場17:15/開演18:00
会場:東京@新宿BLAZE
出演:フラワーカンパニーズ
<スペシャルゲスト>うじきつよし、柴田隆浩(忘れらんねえよ)、Peque from La Senas(ペケ フロム ラセーニャス)、and more
料金:前売¥4,200(税込・1drink代別途要)
フラワーカンパニーズ大晦日年越しライブ「ヤングナイター’1 7/’18」
日時:2017年12月31日(日) 開場22:00/開演22:45
会場:下北沢GARDEN
前売:¥4,500(税込/ドリンク代別)※2018年おみやげ 付き
発売日:2017年11月18日(土)10:00
問い合わせ:ネクストロード 03-5114-7444
16thアルバム『ROLL ON 48』
発売中
アルバム『ROLL ON 48』
価格:2778円(税抜) 3000円(税込)
発売元:チキン・スキン・レコード
収録内容(全11曲):
1. ピースフル
2. 人生Roll On
3. ハイエース
4. てのひら
5. NO YOUNG
6. 花のようでした
7. HAPPY!
8. あまくない
9. キャンバス
10. 最後にゃなんとかなるだろう
11. あなたはだぁれ?
※終了分は割愛
10/27(金)盛岡:the five morioka w/ヒトリエ 18:30/19:00
10/28(土)山形:ミュージック昭和Session w/ヒトリエ17:30/18:00
11/1(水)香川:高松DIME w/ Creepy Nuts 18:30/19:00
11/4(土)福岡:福岡DRUM SON w/LEGO BIG MORL 18:00/18:30
11/5(日)熊本:熊本B9V2 w/LEGO BIG MORL 17:30/18:00
11/7(火)長崎:長崎DRUM Be-7 w/SUPER BEAVER 18:30/19:00
11/12(日)北海道:札幌ベッシーホール w/四星球17:30/18:00
11/17(金)兵庫: 神戸太陽と虎 w/フレンズ 18:30/19:00
11/18(土)大阪: 十三GABU w/04 Limited Sazabys 17:30/18:30
11/22(水) 宮城: 仙台CLUB JUNK BOX w/NUBO 17:30/18:00
11/29(水)石川: 金沢vanvan V4 w/ Czecho No Republic 17:30/18:00
12/1(金) 新潟: 新潟GOLDEN PIGS RED STAGE w/Rhythmic Toy World 18:30/19:00
12/7(木)愛知: 名古屋CLUB QUATTRO w/Creepy Nuts 18:30/19:00
12/9(土) 東京: EX THEATER ROPPONGI 1700/18:00
*未公開の各地ツレ(対バンゲスト)は後日発表。
*料金:前売 3,500 円 (税込) ドリンク別
*発売:
9/26~12/7 公演分:発売中
11/5 熊本B9V1 追加販売分 & 12/9 EX THEATER ROPPONNGI:9/30(土)発売
アルバム『僕にできることはないかな』
発売中
初回盤(CD+DVD)UMCA-19054 ¥3,300+税
通常盤(CDのみ) UMCA-10053 ¥2,600+税
CD収録曲 ※初回限定盤・通常盤ともに収録内容同一
1.花火
2.新・俺よ届け
3.喝采
4.氏ね氏ね氏ね
5.明日晴れるといいな
6.いいひとどまり
7.いいから早よ布団から出て働け俺
8.時間がないっす
9.おつかれダーリン
10.スマートなんかなりたくない
11.東京
12.明日とかどうでもいい