fox capture plan インタビュー ドラマ『カルテット』等の劇伴制作&“自由に”作った最新アルバムを語る
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fox capture plan
10月4日に6thアルバム『UИTITLƎD』をリリースしたfox capture plan。コンセプトがハッキリしていた前作(5thアルバム『FRAGILE』)、前々作(4thアルバム『BUTTERFLY』)に比べて自由に作ったという今作について。そして、ドラマ『この声をきみに』『カルテット』の劇伴制作についても語ってくれた。
──6thアルバム『UИTITLƎD』は、かなり慌ただしいスケジュールの中での制作だったと思うんですが、どんな1枚にしようと思っていたんですか?
岸本 亮:今年もう1枚出すことは前から決めていたんですけど、前作(5thアルバム『FRAGILE』)、前々作(4thアルバム『BUTTERFLY』)が、コンセプトが結構はっきりしていた2枚だったんですよ。だから、今回はいい意味でそこと対比というか、はっきりとしたコンセプトを設けなくてもいいんじゃないかというところで制作していました。
カワイヒデヒロ:今までは3人の音でやることにこだわっていたけど、『BUTTERFLY』でストリングスを入れたり、菊地(成孔)さんをフィーチャーした辺りから自由になって、前作ではシンセを入れたりしていて。今回もそういうものを入れたらダメ、みたいな縛りをなくして作っていたので、シンセもあるし、ダビングも結構多かったり。ピアノだけじゃなくて、ドラムもダビングしていたりもするし。
井上 司:あと、曲によってレコーディングした時期も全然違っていて、いろんな時期に録った曲を集めたものでもあるんですよ。前作のタイミングで録っていた曲も入っているので。
──じゃあ、今作に関しては、近作で取り入れてきたものを踏まえて、自由に作っていたと。
岸本:そうですね。僕らとしては、ミックスダウンになっても、これをひとつのアルバムとして出しても大丈夫なのかなと思って。でも、キャラの強い曲を並べてひとつのアルバムにすることをしたことはなかったから、実験的でおもしろいかなと。
──でも、そう聞くと、どこか統一感がないような気もしますけど、不思議とありますよね。
岸本:そうなんですよね。自分たちのなかでイメージが固まり過ぎていたというか。いざリリースしてみたら、聴く側の人たちはそこまで関係なく、ひとつのアルバムとして捉えてくれていて。今では僕たちも、1枚のアルバムとして馴染んでいる感じは、だんだん出てきています。
──個性の強い楽曲が揃っている中でも、アルバムの1曲目でもある「Cross View」でミュージックビデオを撮影されていますね。
カワイ:この曲は僕が作ったんですけど、僕としては別にPVにしなくてもいいと思ってたんですよ。「行雲流水」か「繰り返される時空のワルツは千の夢を語り」がいいんじゃない?っていう話をしたら、2人が「いや、「Cross View」がいいんじゃない?」って。まぁ、2対1だからそれでいいよって(笑)。
岸本:僕も(井上)司くんも「Cross View」は1曲目っぽいなと思ったんですよ。前作、前々作を踏まえて、さらにそこから一歩進んだ感じが一番あったので。
井上:今までにない感じも入っているし、今までのものも入っているっていう。今までは発売前にPVを先に出していたんですけど、今回は音源の公開を発売後までしなかったので、撮るとするなら1曲目かなって。
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──アルバムにはメンバーのみなさんがそれぞれ作曲された曲が収録されていますが、ドラマ『カルテット』のテーマソングだった「Theme from Quartet」と、あとは「PLASTIC JAM」がバンドクレジットになっていて。
井上:「PLASTIC JAM」は完全にセッションで作ったものですね。
カワイ:別の企画でレコーディングをしていたときに、2時間ぐらいスタジオの時間が余っちゃったんですよ。そのときに、せっかくだからとりあえず何か録っておくかって。コード進行とキメの場所だけ決めて、譜面というよりは、なんかもう紙の裏とかにババっと書いて、それを見ながら録ったんですけど。
岸本:でも、実際にアルバムを作ることになって、録りためたラフミックスを聴き返していたときに、あの場の勢いで作った曲だからなぁ……と思いながら聴いてみたら、意外といいなと思って。じゃあ、これもいれようって。
カワイ:たぶん、バンド史上最速でできた曲だと思います。僕ら、スタジオでジャムって作ることがほぼないんですよ。
──じゃあ、基本的にはデモをかっちり作るんですね。
カワイ:そうですね。僕らの曲の8、9割ぐらいは、最初に打ち込みで作りあげて、それをスタジオで“せーの”でやってみるっていう。
──でも、ラフというか、自由に作ってみたものが、コンセプトをはっきり設けなかった作品に入るというのは……
岸本:ピッタリでしたね。今回のアルバムの雰囲気にも合うなと思って。
カワイ:キメキメすぎていないっていうか。
井上:そう。演奏も結構ラフなんですよ。
カワイ:それもまた一興というか。僕らの曲はカチっと構築されているものが多いので、そういうものを出してもいいかなって。ジャムった曲を、エンジニアがエフェクト成分を足していくのもおもしろかったし、僕らにとっては斬新な1曲になったなと思います。
──そういう意味では、昔はカチっと構築されたものではないと嫌なところもあったんですか?
井上:う~ん、特に嫌というわけではなかったんですけど。
岸本:でも、バンドを結成してこういう音楽をやろうというコンセプトとしては、わりとそっち寄りだったかもしれないです。ポスト・クラブジャズというか。たとえば、ドラムンベースのビートであったり、ポストロック調のものであったり、機械的というか、淡々とやる曲調が自分たちの演奏スタイルというか。司くんのドラムとか特にそうなんですけど。でも、そればかりだと……というのもあるので、最近はこういう曲調も増え出しているんだと思います。
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──バンドのキャッチコピーとして「現代版ジャズロック」と銘打たれていますけども、初期の頃はそういったポストロック的なイメージがあったんですね。
岸本:日本であればtoeとか、海外の音楽とかもいろいろ聴いていて、ジャンル的にそこまで遠くはないのかなって。そこと交差しているような音楽って、もしかしたら時代的に求められているんじゃないかなっていうのは思ったりしました。そういう「ジャズ」と「ポストロック」というところと、結成時は特に90年代や00年代の音楽の影響が大きかったので、「現代版」というのがついたんですけど、それがいつのまにかキャッチコピーみたいになっていて(笑)。
カワイ:いつのまにか書かれていたっていう(笑)。
岸本:でも、そこはある種、合ってると思うんですよ。
カワイ:そうだね。ジャンルを決められない音楽だなとは思うので。でも、誰かうまい言葉を作ってほしいんですよ。たとえば、アシッド・ジャズみたいな、ああいうわかりやすい言葉を誰か作ってくれないかなって。「現代版」と言っても、「現代っていつだよ」って何年後かに言われそうな気がするし(笑)。
岸本:そうなんだよね(笑)。10年代以降ってなんかふわっとしてるというか。
カワイ:音楽もすごく細分化してるから。
岸本:ネオ・ソウルとかは、わりと定着してきてるけど。
カワイ:ネオなんとかにする?
井上:ネオ・ジャズ?(笑)
カワイ:でも、“ネオ”っていうのもちょっとアレか。
岸本:“ニュー”っていうのが古臭いから今は“ネオ”って言ってるんやろうな。
カワイ:でも、“ネオ”っていうのもなんかちょっと古い感じがしちゃったけど。ネオジオみたいな(ネオジオは1991年に発売された家庭用ゲーム機)。
井上:懐かしい(笑)。
──久々にその単語を聞いてテンションあがりました(笑)。90年代、00年代の影響を受けているとのことでしたが、過去には90年代の楽曲を集めたカバーアルバム(『COVERMIND』)をリリースされていたり、本作ではコールドプレイの「Viva La Vida」をカバーされていますね。
岸本:カバーは恒例にもなってきていますし、することにもあまり抵抗がないんですよ。
カワイ:ジャズ・スタンダードってだいたいカバーではありますからね。
岸本:だから、それと似ているのかもしれないです。この曲もアレンジするの早かったですよ。
井上:全部が終わった一番最後に録ったっていう。
カワイ:そういえば録ってなかったねって(笑)。どんなアレンジにするかもその場で決めて。
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──でも、なぜ「Viva La Vida」を選んだんですか?
岸本:アルバムのコンセプトをはっきり設けていなかったから、ここはもうやるなら超名曲でいいんじゃない?って。いつかは取り上げようと思っていた曲でもあったので。
カワイ:一度話題にあがった曲ではあったんですよ。どこかのフェスに行ったときにBGMで流れていて、この曲いいんじゃない?って。そのときはそういう気分じゃなかったのか、やらなかったんですけど。
──あと、バンドとしてドラマの劇伴も手がけられていて。今年は『カルテット』と、9月から放送されている『この声をきみに』の楽曲を制作されています。
カワイ:『カルテット』のときは、「悲しい」とか「嬉しい」とか、そういう感じの曲が何曲かあれば、あとはわりとおまかせみたいな感じだったので、みんなで曲を出してみて、この曲はこれと合いそうだなというので何曲か作ったんですけど。でも、『この声をきみに』は、打ち合わせの段階で“こういう曲を作ってほしい”という指定があったので、この曲を作れそうなのはこの人だなって最初に割り振って作っていきました。
岸本:あと、今回は「全体的にテンポをさげてください」と言われましたね。そこは映像を観てすぐにわかったんですけど、セリフのテンポとあってなかったんですよ。『カルテット』のときは、セリフ回しのテンポ感がわりと速かったので、そこは自分たちの得意とする部分と重なっていたんだなと思って。そういう発見もありました。
──井上さんは今回の劇伴制作や、劇伴を作るということに対しての印象はどんなものがありますか?
井上:僕は元々ドラムしか叩いてこなくて、ドラムソロは考えるぐらいで基本は作曲されたものを叩くという、よくいるイチドラマーだったんですけど、自分も曲を作りたいとはずっと思ってたんですよ。そこからバンドで劇伴のお話をいただくようになって、自分も曲を作り始めるようになって。今回のアルバムでも2曲作ったんですけど、バンドだけやっていたら、ここまで曲を作るようにはたぶんなっていなかったと思うので、そういう意味では、劇伴はかなり貴重な経験でもありますね。
岸本:『この声をきみに』には、3人それぞれが作った曲が使われているんですけど、客観的に見て、いいバランス感があるというか。3人が別々に曲を作っていなかったら、こういう広がりを出せなかったんじゃないかなというのは、我ながら思ったりはしますね。
カワイ:サントラを聴くと、たぶんこの人が作ったんだろうなっていうのはわかると思います。
──でも、ものすごく単純な話、めちゃくちゃ多作じゃないですか。なんかもう、ハイペースを超えたハイペースでリリースされていて。
岸本:「あと2年ぐらい出さなくてもいいんじゃない?」っていう話もあるんですけどね(笑)。
──これだけ出しているのであれば(笑)。
井上:2015年も3枚出したんですよ。今年はそれより容量も多くて。
カワイ:『FRAGILE』、『カルテット』のサントラ、『ROCK IN DISNEY ~fox capture plan』、『UИTITLƎD』、あとは『この声をきみに』もあるから……。
岸本:5枚か。
──ストレートに言ってしまうと異常ですよ!(笑) 延々と曲を作り続けているんですか?
カワイ:そうですね。作曲に関してはもう日常的にやってます。
井上:去年、中国にツアーで行ったときも、ホテルでずっと作っていて(笑)。
カワイ:パソコンと鍵盤があればどこでもできますからね。
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──先ほど「ジャンルを決められない音楽」というお話がありましたが、企画ライブに9mm Parabellum Bulletを招いたりと、活動自体もクロスオーバーしているところがありますよね。
岸本:普段対バンするのは同じインスト系とか、ウチのレーベルにもいるジャズっぽいバンドとかその界隈が多かったり、フェスとかに出るとシティポップ系の人たちと一緒になったりもするんですけど。でも、そうじゃない意外な組み合わせなものをしたくて。
井上:こっちから仕掛けないと一緒にやれなさそうな相手じゃないと。自分たちの企画ライブなので。
岸本:あのツーマンは、自分でいうのもなんですけど、合っていた感じがしましたね。エネルギーの発し方は近い感じがしました。
──一般的なジャズのイメージって、“オシャレ”っていう感じになると思うんですけど、やっぱりエモーショナルな音楽ですから、この組み合わせはたしかに合ってますよね。今後も企画ライブはやるんですか?
岸本:やりたいですね。今回はツーマンでしたけど、今後はスリーマンとかもありかなとか。
カワイ:メンツによってはハコのキャパを広げてもいいと思いますからね。これだとすぐに売れ切れちゃうとなったら、せっかく一緒にやるのにもったいないので。でも、定期的なものではなくやっていきたいです。
岸本:そのほうが続くと思うんですよ。毎月とか隔月とかワンクールに1回とかになってくると、なかなかね。
井上:このバンドとやりたいなっていう気持ちになったら、またやりたいです。
──次回の開催を楽しみにしつつ、10月29日の沖縄Outputから、『UИTITLƎD』を掲げたツアーがスタートします。前半は中国に行き、そこから地方を回って、ファイナルは来年の2月2日にTSUTAYA O-EASTで開催されますけど、どんなツアーになりそうですか?
岸本:後半になるにつれて、内容が結構変わっている可能性が非常にありそうな気がしてますね。それは、序盤は手を抜くという意味ではなく、ライブに投入していない未知数な曲ばかりなので。でも、中国に関しては『FRAGILE』を出してからまだ行っていないので、『FRAGILE』と『UИTITLƎD』の2枚がメインになるツアーになるかも。初めて行く場所も多いんですよ。
──中国のライブハウス事情ってどんな感じなんですか?
岸本:どこも(会場が)デカいです(笑)。
カワイ:機材もわりと新しめなんですよ。
──実際に行ってみて問題があったとかは?
井上:今のところ全然ないですね。
カワイ:むしろ、だだっ広くて大丈夫かなって(笑)。
井上:でも、お客さんもちゃんと来てくれるしね。
カワイ:ちゃんと最後まで見てくれて、アンコールもくれるので。海外の人たちはインストバンドもわりと寛容に観てくれる印象はありますね。この前、台湾のフェスに行ってきたんですけど、それもすごく盛り上がっていたので。
岸本:アジアって、ポップスはアメリカと張るぐらいのクオリティの人たちはいるんですよ。でも、アンダーグラウンドミュージックは、日本は結構独特な進化をしているので、近隣の国の人たちは結構注目してくれているみたいで。
井上:結構いるんですよ、日本のバンドをチェックしている人。
カワイ:“完全にtoeとか好きでしょ?”みたいなバンドとかも結構いるしね(笑)。
岸本:でも、そこはある種、日本の音楽が盛り上がっているからなのかもしれないですけどね。フェスが好き、バンドが好きというので、ライブが好きな人ってパーセンテージ的に多いじゃないですか。だから、インディーズであったり、アンダーグラウンドシーンにいろんなバンドが出てくるというのはあるのかもしれないです。
──なるほど。すみません、話を戻しまして、お二方はどういうツアーになると思いますか?
井上:まだ見えていないというのが楽しみなところはありますね。「Theme from Quartet」以外は、まだ一度もライブでやっていないので。
カワイ:新鮮だよね。ツアーを通して曲を育てていくのって。
井上:うん。「Butterfly Effect」はストリングスを入れていたんですけど、ライブでは3人でやる形にアレンジしたみたいに、今回はダビングしている曲もあるので、それをどうするか今考えている最中です。
──ストリングスを呼ぼうとかは考えているんですか?
岸本:まだ決めてないんですよ。
カワイ:毎度毎度、ファイナルでは呼んでるしなって(笑)。
──そういう意味でも、ツアーでしっかり曲を育てていこうと。
岸本:毎回挑戦して、試行錯誤しながらまわっていけたらいいなと思います。
取材・文=山口哲生 撮影=大橋祐希
fox capture plan
発売日:2017年10月4日 / 規格番号:PWT-038
価格CD: 2,315円(+税) / POS: 4988044034365
デジパック仕様(初回限定特典:スリーヴケース仕様)
収録曲:
01. Cross View
02. 行雲流水
03. 繰り返される時空のワルツは千の夢を語り
04. Theme from quartet
05. No End
06. seafrost
07. PLASTIC JAM
08. UNTITLED SCENES
09. Viva La Vida(Coldplayのカヴァー)
10. Real, Fake
11.Pain
2018年2月2日(金) 東京都 TSUTAYA O-EAST
OPEN 18:30 / START 19:30
TICKET ADV 4,000円 (1ドリンク代別)
【ファミリーマート先行】
10/30(月)~11/13(月)
【一般発売日】
発売日: 12/16(土)
各プレイガイドにて(e+・ぴあ・ローソン
INFO: DISK GARAGE (050-5533-0888)
2017年10月29日(日) 沖縄県 Output
2017年11月3日(金・祝) 中国 西安市
2017年11月4日(土) 中国 成都市
2017年11月5日(日) 中国 重慶市
2017年11月7日(火) 中国 武漢市
2017年11月8日(水) 中国 杭州市
2017年11月9日(木) 中国 上海市
2017年11月10日(金) 中国 北京市
2017年11月15日(水) 神奈川県 MOTION BLUE YOKOHAMA
2017年11月18日(土) 北海道 DUCE
2017年11月19日(日) 宮城県 HooK SENDAI
2017年11月23日(木) 福岡県 Fukuoka INSA
2017年12月1日(金) 大阪府 Music Club JANUS
2017年12月3日(日) 愛知県 伏見JAMMIN'