山本耕史の新演出がすごい! ミュージカル『メンフィス』稽古場レポート

2017.11.30
レポート
舞台

山本耕史(左)と濱田めぐみ(右)

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1950年代の米国・メンフィスを舞台に、当時タブーとされた黒人の音楽であるブルースを、ラジオやTV番組で紹介した実在の白人ラジオDJの半生をモデルに描いたミュージカル『メンフィス』。2017年12月2日から東京・新国立劇場中劇場にて2年ぶりに再演されるのを前に、稽古場で通し稽古を見学させてもらった。

『メンフィス』通し稽古の様子


『メンフィス』通し稽古の様子


『メンフィス』通し稽古の様子

本作は、テネシー州メンフィスで黒人音楽を愛した白人DJヒューイ・カルフーンと、彼と恋に落ちた黒人歌手フェリシアの物語。初演時に引き続き、ヒューイを山本耕史、フェリシアを濱田めぐみが演じる。初演時も演出・振付を手がけたジェフリー・ページに加え、主演の山本も今回から演出を担当。新演出で臨む再演だ。

『メンフィス』通し稽古の様子

『メンフィス』通し稽古の様子

『メンフィス』通し稽古の様子

11月中旬の都内某所。通し稽古の直前、ジェフリーがキャスト陣全員に話かける。黒人への暴力に抗議して国歌演奏で膝をつくNFL選手の話や、黒人にとってこぶしを挙げる意味など、人種差別が激しかった時代を描く『メンフィス』の背景知識を語った。

ジェフリーは「『メンフィス』は普段目に入らないこと、社会のいろんな部分に気づきを与えてくれる作品です。一見、黒人と白人の対立の物語に見えますが、それはあくまでも比喩。それより深い物語、世界中で普遍的な深いテーマがこの作品には隠されています」と以前SPICEのインタビューで答えているが、この作品が持つ意義とパワーを丁寧にすくい取って伝える。キャスト陣も真剣にジェフリーの言葉を聞いていた。

そして山本も「思いつきがあったら舞台上でやっても平気です。何か目に入ったものを使いたくなったら、感情が動いたら、やっていいです。それがいい方向になっていけばいい。決めないことが決まっていくのがベスト」と一言声をかける。

『メンフィス』通し稽古の様子

約2時間半の舞台(休憩含む)。見終わった後の高揚感が忘れられない。とにかく迫力のある、それでいて繊細な舞台だった。まだ衣装もメイクも照明もないのに、物語にぐんぐん引き込まれた。『ハッカドゥ!』よろしく山本はちょっと"軽い感じ"の役どころが本当に上手いし、濱田はまさに歌姫さながらにパワフルで伸びやかな歌唱を存分に披露してくれる。フェリシアの兄・デルレイ役のジェロ、デルレイが経営するクラブの従業員ゲーター役の米倉利紀、ラジオ局の清掃員ボビー役の伊礼彼方ら、個性と実力を兼ね備えたメンバーもそれぞれ見応えがあった。

『メンフィス』通し稽古の様子


『メンフィス』通し稽古の様子

『メンフィス』通し稽古の様子

黒人のホットなナイトクラブの様子を描く「Underground」や軽快なロックロール「Big Love」などは、カウントが細かく難易度も高いダンスだが、アンサンブルを中心に大胆かつ艶やかに踊りあげる。黒人女性の辛苦を歌う「Colored Woman」、ヒューイのナンバー「Memphis Lives in Me」など聴かせるバラードも多い。歌詞にも歌声にも胸が熱くなる。

『メンフィス』通し稽古の様子


『メンフィス』通し稽古の様子


合間合間に通し稽古を眺める山本耕史

通しの合間、自分が出ないシーンは客席側から舞台を眺めていた山本。その眼差しからはこの舞台への情熱と愛が感じられた。製作発表で山本自身が少しだけ語っていた新演出も面白い。ここで敢えて詳細は書かないが、なるほど、初演の時よりもシャープで見やすくなっているように思う。さすが「アイディアマン」の呼び声高い山本だなと思った。初演をご覧の方も、初見の方も、ぜひ劇場へ足を運んで欲しい。

『メンフィス』通し稽古の様子

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公演情報
ミュージカル『メンフィス』
 
■日時:2017年12月2日(土)〜17日(日)
■会場:新国立劇場 中劇場
■出演:
山本耕史/濱田めぐみ/ジェロ/米倉利紀/伊礼彼方/栗原英雄/根岸季衣
ICHI/風間由次郎/上條駿/当銀大輔/遠山裕介/富永雄翔/水野栄治/渡辺崇人 
飯野めぐみ/岩崎ルリ子/ダンドイ舞莉花/増田朱紀/森加織/吉田理恵 
■演出・振付:ジェフリー・ページ/演出・主演:山本耕史 
■脚本・作詞:ジョー・ディピエトロ 
■音楽・作詞:デヴィッド・ブライアン 
■翻訳・訳詞:吉川徹
■公式サイト:http://hpot.jp/stage/memphis2017