the GazettE 極限状態まで追い込まれ、本能を剥き出しにしたときに気づいたものとは?
the GazettE 2017.10.31 豊洲PIT
THE DARK HORROR SHOW SPOOKY BOX 2 アビス/LUCY
2017.10.31 豊洲PIT(第二夜:LUCY)
人間が極限まで本能を剥き出しにしたとき、果たしてそこに何が現れるのか――? 10月31日、ハロウィン当日に行なわれたthe GazettEのライブは、そんな究極の問いに答えるようなステージだった。
10月30日、31日に豊洲PITにて『THE DARK HORROR SHOW SPOOKY BOX 2 アビス/LUCY』なるワンマンを決行したthe GazettE。タイトルが示す通り、the GazettEのハロウィンライブは2度目だが、FC限定で1公演のみ行なわれた昨年からスケールアップし、今年は“退廃”と“本能”という正反対のコンセプトを設け、大阪と東京それぞれで2daysずつ開催された。病院を舞台にメンバー全員が白衣を着用してコンセプチュアルなステージを展開した初日30日の“アビス”が“静”なら、“暴発する本能 何処までも激しく”という告知映像の文言を体現した31日の“LUCY”はまさしく“動”。そのテーマ通り、ハロウィンらしい趣向を凝らしたコスチュームに身を包んだ5人が現れると、「RAGE」での幕開けから5人の放つ轟音が、拳とヘッドバンギングの波を華麗に指揮してゆく。
“CHAIN KILLER”RUKI、“MAD SISTER”麗、“DEADLY CRAW”葵、“PSYCHO SLUGGER”REITA、“PHANTOM RIPPER”戒――殺し屋に扮した禍々しいメンバーのヴィジュアルもまた、オーディエンスを狂乱に叩き込むには格好の起爆剤。当然、その姿を目撃しようと切望する人々を収め切るには、いかに都内最大級のライブハウスといえど豊洲PITではキャパシティ不足で、メディア関係者も一般客席フロアで観覧することに。そのため小柄な筆者ではステージ上の彼らの姿をオーディエンスの頭の隙間から覗くことしかできず、むしろファンのリアクションの方を目の当たりにすることになったが、それがかえって“本能”の真髄を味わわせてくれる結果になったのは思いがけない幸運だったろう。
the GazettE 2017.10.31 豊洲PIT
RUKIが「かかってこい、野郎ども!」と号令して初っ端から煽り曲の「DAWN」がドロップされれば、REITAは両手でクラップを煽動し、さらに「HEADACHE MAN」のモッシュへ。次々と畳みかけられるラウドな高速チューンに、全方位でヘッドバンギングの嵐が吹き荒れ、メモを取るノートの上に容赦なく長い髪が振りかかってくる。これほどまでに鬼気迫るフロアは、そうそうお目にかかれるものではない。
「今夜は底なしの地獄へようこそ! 俺たちは今夜、お前たちのその愛しい首を狩りに来ました。今夜、生きて帰れるか、ここで死ぬか、お前たち次第だ。どちらが先に殺られるか、勝負だ!」
そんな殺し屋らしいRUKIの言葉もまったく大袈裟ではなく、アグレッシヴなパフォーマンスを繰り広げる5人に対して、オーディエンスも声をあげて頭を振り続ける。その渦の真っ只中で、ここまで全身全霊で彼らが振り絞りたいものとは、いったい何なのか? その原動力は何なのか? と、恐怖にも似た疑問を抱かざるを得なかった。おまけに真っ向勝負で斬りつけ合いながらも、その波動は時にシンクロして一つとなり、「CLEVER MONKEY」では大音量のシンガロングを呼ぶ。そんな客席に向かい、RUKIも雄叫びをあげると言い放った。
「どうやら今夜は特に死にたがりが多いようだな。今日はまだまだこれからだ。じっくりとこの地獄を楽しもう。声を聞かせろ!」
the GazettE 2017.10.31 豊洲PIT
そして満場のうねりがフロアを揺らす「Maggots」から、メンバーも頭を振る「COCKROACH」、ヘドバンとジャンプと合唱が交錯する「VERMIN」と、憎悪が漲るハードなナンバーを休みなく投下。オーディエンスは時折ペットボトルを取り出して水分補給しながら、the GazettEから贈られる果たし状に果敢に挑んでゆく。それは最初のMCの通り、まさしく“どちらが先に殺るか? 殺られるか?”の耐久バトル。事実、RUKIも「お前らのその首にトドメを刺す時が来たようだ。今からもっとグチャグチャにしてやるから覚悟しろ。望み通り俺らが殺してやるからよ!」と、攻撃の手を緩めない。そう。本日のキャッチコピーは“暴発する本能 何処までも激しく”。しかし、ただガムシャラにぶつかるだけでは、数千人に上るオーディエンスの本能を引き出すことなど不可能だ。観る者、聴く者の心を音楽によって開放するには、それ相応の音楽的技術が必要不可欠だが、その点も彼らは抜かりない。戒のタフなドラミングを軸とした濃密でブレのないロックアンサンブルはオーディエンスの身体を無上の心地よさで揺らし、そこでRUKIの強靭な喉から発せられる変幻自在の叫びが心を貫くというサイクルは実に絶妙。さらに「The $ocial riot machine$」では葵のギターリフが鳴るなり「ヤバい!」「懐かしい!」と歓声が湧き、ジャンプする者、拳を振り上げる者、ヘドバンする者と、思い思いのノリがフロアに広がってゆく。その様にこの曲の、即ちthe GazettEの歴史を感じると共に、多様な楽しみ方を呑み込む彼らのキャパシティの広さもまた一つの強みなのだと実感させられるのだ。
the GazettE 2017.10.31 豊洲PIT
「UGLY」では拳を上げるオーディエンスが一斉に身体を折りたたみ、一瞬視界が開けると不気味に身体を揺らすシスター姿の麗が。その出で立ちでライトハンドの猛攻をかます景色は実にシュールで、いかに今日がスペシャルなライブであるかを思い知らされる。それはセットリストもまた然りで、普段のライブならば一箇所は設けられる一息つけるパートも世界観重視の曲もゼロ。当然、曲が進むにしたがって疲労の色を濃くするオーディエンスに、本編ラストの「関東土下座組合」でRUKIは「サボってんじゃねーぞ!」と容赦なく一喝。それに応えようと、目の前ではフラフラになった女性が尚もジャンプを繰り返す。なぜ、そこまで……? と思った瞬間、耳にRUKIの「生きてるか!?」の叫びが飛び込んできて合点がいった。なるほど、本能を剥き出しにして限界まで自分を追い込むことほど、“生きている”ことを実感できるものはないだろう。
ここまでヘッドバンギングの入らない楽曲が一つも無いという驚愕のメニューに、周囲からは「これはホントに殺しにかかってるセトリだよ」「でも楽しい!」という会話が。「今日とことん後先考えずに、全員でココに首を置いて帰りましょう!」というアンコール明けの戒の台詞が、これほどリアリティを持って響いた日も無かっただろう。麗と葵がロックンロールなギタープレイで掛け合う「Psychedelic Heroine」で、ようやくヘドバン要らずな数分を贈ると、RUKIは率直な想いを語った。
「2つのコンセプトで合わせて4公演やって改めて思ったんですが、視覚的にもバンドの二面性を表現できるのは幸せなことで、自分たちでも刺激を受けることができました。こういうことができるのがヴィジュアル系の魅力なんじゃないかと思います。今日も本能でぶつかり合って、良い地獄絵図が……殺し屋っていう設定なんで。こうやって、どこまでもウチの出すものに対して頭振って暴れてくれる皆さんに感謝します。また次に会うときまで、その首洗って待っていてください」
the GazettE 2017.10.31 豊洲PIT
過酷なメニューに屈することなく、メンバーの求めに応えようと必死に喰らいつくオーディエンスの姿を間近で見ていただけに、このRUKIの言葉が嘘偽りのない心からの真実であることに疑いの余地はなかった。「最後にもっとヤバい景色、見せてくれ!」と始まった「Filth in the beauty」では、再び頭を振りたくるフロアにREITAが指を立て、ラストの「TOMORROW NEVER DIES」では「ここにいるお前らが、俺たちの生きる理由だ!」とRUKIが絶叫。全身全霊のパフォーマンスで互いにエネルギーを放出し尽くしたところで大きな感動を湧き起こしながら、ダブルアンコールの再登場で「今夜は殺しに来たんですけど、今日やって楽しかったんで。これからもヤバいことたくさんするんで、殺すのやめときます」と、しっかり設定を活かすのも上手い。いかに殺し屋といえど、自らを愛し、命を賭けて望みに応えてくれる存在を手にかけることなどできない。極限状態まで追い込まれ、本能を剥き出しにしたとき気づくものとは、そんな本物の“愛”ではなかっただろうか。
the GazettE 2017.10.31 豊洲PIT
そして“ヤバいこと”の手始めに、来年の2月28日に今回のハロウィンライブのDVD&Blu-rayが、そして3月10日に新曲が発表されることも終演後にスクリーン上で告知された。さらに今年3月10日に代々木第一体育館で行なわれたライブシーンから“2018 SPRING”の文字を最後に、映像はカットアウト。当然、場内には「えーっ!?」の声が湧いたが、美味しいものほど最後まで残したくなるのは人間の習性。言い替えれば、これもまた愛である。既に来春の発売に向けてニューアルバムの制作中であることはアナウンス済みなだけに、期待は膨らむばかり。その斜め上から“ヤバいこと”が降ってくることを待ち望むばかりである。
取材・文=清水素子
the GazettE 2017.10.31 豊洲PIT
2017年10月31日(火) 東京・豊洲PIT
02.DAWN
03.HEADACHE MAN
04.BEFORE I DECAY
05.GABRIEL ON THE GALLOWS
06.VENOMOUS SPIDER'S WEB
07.CLEVER MONKEY
08.Maggots
09.COCKROACH
10.VERMIN
11.The $ocial riot machine$
12.UGLY
13.BLEMISH
14.DISCHARGE
15.関東土下座組合
16.INSIDE BEAST
17.Psychedelic Heroine
18.Filth in the beauty
19.ATTITUDE
20.TOMORROW NEVER DIES
2018年 2月28日発売
詳細は後日発表
[Sony Music Shop]
https://www.sonymusicshop.jp/m/arti/artiItm.php?site=S&cd=70006133