あの“もう中学生”がミュージカルに挑戦! オーディションで勝ち取った『メリー・ポピンズ』への出演
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もう中学生
パメラ・トラバース原作、ウォルト・ディズニーの不朽の名作映画の世界を舞台化した、ミュージカル『メリー・ポピンズ』が来年2018年3月に日本初演される。バンクス家の使用人であるロバートソン・アイ役を見事射止めた、お笑い芸人のもう中学生にオーディションの裏話や意気込みを聞いた。
オーディションで課題曲ではなく「愛燦燦」を歌った
――出演が決まった時の率直なお気持ちは?
夢のような気持ちです。正直、「オーディションに参加してみませんか?」と言われたときに、こんなにも皆様に愛されて誰もが知っている作品に出させていただくのは申し訳ないと思いました。普段僕は、自分でネタを考えて、自分で絵を描いていますが、今までミュージカルや舞台の勉強してこなかった人間です。いち観客として楽しんで観る側の人間だったわけです。だからオーディションだけでも味わおうという気持ちだったんですね。どういう人たちが、どういうところで、どんなことをするのか、興味がありました。面白いことがあったらいいなぁと思っていたら、本当にあったんですよ!
――どんな面白いことがあったのですか?
事前に歌を覚えてきてくださいと言われていたんですけど、覚えないでサラで行ったんです(笑)。案の定「なぜ覚えてきていないんだ」という雰囲気になって。外国のプロデューサー陣も「Oh,no」みたいな感じで、ヤバイなぁと思っていたんです。そしたら「歌える曲は何かないのか」と言われて、美空ひばりさんの「愛燦燦」を歌わせていただきました。そしたら「音程が違う」と言われて、その場で「愛燦燦」を教えてもらえたんですよ(笑)。ピアノでトゥルリン〜って弾きながら教えてもらったんです。僕はそれだけでもうオーディションに行った価値があったと思いました。
――すごい度胸ですね(笑)。
そのあとしばらく何もなかったかのようにふんわり過ごしていたら、マネージャーに「オーディション、合格したわよ」と言われて。びっくりしつつ嬉しかったですね。周りの人にもいろいろ言われて「あぁすごいことなんだなぁ」と徐々に実感がでてきた感じです。
製作発表の前日に、長野に住んでいる母ちゃんに電話したら、「とりあえず、“夢のようだ”と繰り返し言っていけ」と言われました。「洋服大丈夫かい」とか「(製作発表が行われた)帝国ホテルに入るために革靴じゃなくていいんかい」なんて心配もされました(笑)。
もう中学生
――オーディションの時にアピールしたのはどの部分ですか?
僕、特技という特技がないんです。芸人の先輩にサイゼリアで「ダンスもダメでしょ、歌もダメでしょ、ネタもちゃんとしていないでしょ。特技がないよ」と説教されたことがあります。「お笑い目指していて、努力したことあるの?」と聞かれて、周りにいた子供も心配するぐらい怒られました(笑)。まぁネタ作りも絵を描くことも努力というより、好きだからやっているわけで。大きなライブがあっても、自分が楽しいからやっている。全部自分で考えたセリフを川で稽古しているんです。だから……芸人を目指しているのに、何にも「芸」がないなぁって思って。いきなり、ダンスも必要、歌も必要、演技も必要になると、ダメですねぇ……。今回はそれではダメなので、何かしようと思って、区民センターでエアロビクスを習い始めました!
――エアロビですか!?
はい。おじいちゃん、おばあちゃんたちと交じって45歳の宮本先生に習っています。でも最初の頃、宮本先生も、僕が何をしている人か知らなかったみたいで、最終的に『メリー・ポピンズ』に出演すると言ったらすごく驚いていました。
ラストチャンスの気持ちで臨む
もう中学生
――『メリー・ポピンズ』という作品についてはどういう印象をお持ちですか?
夢のある作品ですよね。見終わった後に毒消しというか、日頃の毒が洗い流されるような感じがする作品。なので、自分にぴったりかなと思います。僕、毒だらけなので(笑)。
――稽古で楽しみにされていることなどございますか?
ミュージカルに多く出演されているみなさんの歌や踊りを見聞きできるのが楽しみです。いつもと全く違う世界なので、ケータリングもどんな感じなのか、とか楽しみで……(笑)。とにかく全てが本当にありがたいです。ありがたさと幸せを感じつつ、でもそれを上回る不安もあって……製作発表会見の朝も、遠足で“行くの嫌だバージョンの遠足”ってあるじゃないですか。それでした(笑)。
――不安に感じるのはどういった部分ですか?
(出演者が)全員お笑い芸人でやるとかなら経験もあるのでいいんですが、周りは今まで錚々たる作品に出演されてきた方々ばかりなので。歌のお稽古を拝見しましたが、お美しくて、芸も一級の方々ばかりで、緊張もしましたし、僕はここに居ていいのかなという気持ちもあって。
個人的にはラストチャンスぐらいの気持ちで臨もうかなと思っています。今まで単独ライブをやったり、芝居に呼んでもらったことはありますが、これで変わらなかったら……と思って。このミュージカルに出て、ますますマネージャーと事務所とステップアップしていきたいです。いろんな世界や未来を見に行きたいんですけど、本当にラストチャンスな気持ちでございます。
――オーディションの時に、美声を評価されたとお聞きしました。
それ本当なんですかね?(笑) みんなが同じ曲を歌っていて、僕だけが「愛燦燦」を歌った。別の曲だったし、しかもいかにも日本的な歌だったから、そこにわびさびを感じただけじゃないかなって思いますよ。
お声が良かったと言ってくださる方もいますが、全然そんなことないのになぁ。おみくじで決めたのかなぁって思います(笑)。僕、こういうことがあると、別の原因を探しちゃうんです。去年の10月のお芝居怒られたからかな?とか、4月にやった単独ライブで中島みゆきさんの「糸」を歌ったのを聞いてくれたのかな?とか。まぁでも違いますよね……(笑)
――ちゃんと実力が評価されたのだと思いますよ! 最後に一言お願いします!
出演者の方々、スタッフの皆様、お客様とこの素晴らしい作品を分かち合って、『メリー・ポピンズ』のパワーで、こんな時代ですが、日本を元気に明るくするような、夢のようなことが現実でできたらなと思っております!
もう中学生
インタビュー・文・撮影=五月女菜穂
■会場:東急シアターオーブ
■会期:プレビュー公演 2018年3月18日(日)~3月24日(土)、本公演3月25日(日)~5月7日(月)
■会場:梅田芸術劇場 メインホール
■会期:2018年5月19日(土)~6月5日(火)
■公演に関する問い合わせ
東京公演:ホリプロ
(平日 10:00-18:00 / 土曜 10:00-13:00 / 日祝・休)
大阪公演:梅田芸術劇場 06-6377-3800(10:00~18:00)
■出演キャスト:
メリー・ポピンズ=濱田めぐみ/平原綾香
バート=大貫勇輔/柿澤勇人
ジョージ・バンクス=駒田一/山路和弘
ウィニフレッド・バンクス=木村花代/三森千愛
バードウーマン/ミス・アンドリュー=島田歌穂/鈴木ほのか
ブーム提督/頭取=コング桑田/パパイヤ鈴木
ミセス・ブリル=浦嶋りんこ/久保田磨希
ロバートソン・アイ=小野田龍之介/もう中学生
*上記キャストはダブルキャストになります。
斎藤准一郎 高瀬育海 髙田実那 田極翼 照井裕隆 中西彩加 華花 樋口祥久 藤岡義樹