drm インタビュー 圧倒的な“個性”が遺憾なく発揮されたソロアルバムに迫る

2017.11.30
インタビュー
音楽

drm

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まらしい擁するlogical emotionとしても活躍するベーシストのdrmが、2018年1月31日にソロアルバム『Hello World』をリリースする。
今作のDISC1には和田たけあき(くらげP)書き下ろしのボカロ曲や、ろじえもの新曲等全12曲が収められ、さらにDISC2には「千本桜」等を含むボカロ曲のノンストップリミックスが収録される。「無駄な苦労をするのが好きなんですよ(笑)」と語る彼の“無駄ではなかった苦労”が存分に詰まったソロアルバムができるまで。

──今年の1月からワンマンライブをスタートさせて、計4本行なってきたわけですけども、2017年を振り返ってみるといかがでしょうか。

意外とひとりでなんとかなるもんだなっていうのは思いましたね。最初はいっぱいいっぱいだったところもあったんですけど、本数を重ねることで余裕もでてきたし。あとは……健康って素晴らしいなというぐらいですかね(苦笑)。

──健康?

いや、ちょっと身体を崩していた時期があって。足の血管が詰まっちゃったんですよ。今はもう治ってピンピンしてるんですけど、心筋梗塞の足バージョンだったみたいで。歩いていたら急に歩けなくなって、病院に行って、たらいまわしにされて、最後にもしかしたら……って検査したらそれだったっていう。健康って大事ですよね。

──大変でしたね……。あれだけパフォーマンスするとなると、余計大事ですし。

そうなんですよね。そういう不安がありながらやったライブもあったんですけど、動かずにもっとよく見せるためにはどうすればいいんだろうかとか、「制限がある中での最大限」という考え方もできたので、ある意味すごく勉強にはなりましたね。

──ライブをしていて学んだことというと、他にはどんなことがあります?

なんか、僕って意外と手しか見られてないなと思って。お客さんはみんなワー!って盛り上がってるんですけど、ずっとこんな感じなんですよ(と言って真剣な目で前のめりになる)。

──かじりつくように見られていたと。

最初はつまんないのかなと思っていたんですけど、目線を辿っていったら手を見てるんだ!っていうことに2回目のライブぐらいで気づいて。静止しておく時間も大事なんだなって思いました。最初は動かなきゃ! 楽しくやらなきゃ!っていう感じでやってたんですけど、そういうサービスもあるんだなって。動いているばっかりじゃなくて、締めるところは締めて、弾くところは弾くっていう。

──確かに、生で手元を観たい!っていうのはみなさん思うでしょうから。

僕にその思考が本当になかったんですよね(笑)。自分はキャラ先行だと思っていたから。

──dさんの特徴としてあげられるところって、テクニックはしっかりとありつつも、パフォーマンスが派手というものですけど、世間的には「パフォーマンスが派手」の方に注目が行っているんじゃないかと思っていたと。

僕は完全にそう思ってました。でも、みんな意外とベース聴いてくれているんだなと思って、ちょっと嬉しかったです。

──それっておそらく「ちょっと」どころじゃないですよね?

はい、結構嬉しいです(笑)。ありがたいなと思いました。

──今年は新しい学校のリーダーズなど、メジャー流通の作品に参加することもありましたが、そういった現場を経験してみていかがでしたか。

スピード感が全然違いますね。あとはみんなの対応力とかも。そこにとにかくついていくのに精一杯だなと思いながらやっていたんですけど、俺よりうまい人がいるのに、俺が選ばれた理由はなんだ?って考えるようにしたら、だいぶ気がラクになりました。

──最初は重圧があったんですね。

レコーディングの準備をしていたときに、ギタリストの名越(由貴夫)さんの音を聴いて、本当にその音でやるのかな……って、最初は疑ったんですよ。失礼ながら(笑)。「こんなに個性を出しても大丈夫なのかな」って。でも、それが曲に入るとすごくかっこよかったんですよね。だから逆に、「これだけ個性を出さないとダメなのか」と不安に思うときもあって。
コンピューターが進歩して、キレイに聴かせることは誰にでもできるようにはなったじゃないですか。ひどい話だと、1小節単位でも録音はできるわけですから。だから、「あれだけの個性がないとやっていけないんだ」と思いつつも、「その個性しかなくてもやっていけるのか」とも思って。なんか、ブルドーザーみたいなもんだと思うんですよ。

──ブルドーザー。

「俺、これしかできないっす!」っていう感じだけど、ブルドーザーにしかできない仕事は絶対に振られるわけじゃないですか。メジャーどころの人たちって、なんでも器用にこなせるイメージがあったし、名越さんももちろんできるとは思うんですけど。ただ綺麗に弾いてりゃそれでいいとは思ってなかったけど、それでも個性みたいなところに立たされると、面食らってしまったときもありましたね。

──そういうこともあって、2017年は自分って何なんだろうと考えることが多かったですか?

すごく考えましたね。俺の個性って何なんだ?って。大学生の自分探しみたいな感じなのかもしれないんですけど。

──あははは(笑)。自分ってなんだと思いました?

でも、結局自分のことって自分じゃよくわかんないんですよ。「手数が多い……かなぁ」ぐらいの認識しかなくて。前にロジエモ(logical emotion)のメンバーから、「そんな変な音を出す人は、僕が知る限りではあなただけです」と言われたので、音色が変わっていたり、極端な音を作ったりするのが自分の個性なのかなって。ただ、その運用方法を自分の曲以外で見つけられていないんですけど(笑)。


──そのあたりは、来年1月31日にリリースされる『Hello World』で発揮されていますが、そもそも、ソロアルバムの話が決まったときの心境というと?

「できるわけねえだろ、そんなもん!」っていうのが最初だったんですけど(笑)、経験できるのも今しかねえだろと思って。昔、サラリーマンをやっていたこともあったんですけど、「仕事とはなにか?」っていうときに、「できねえことをできるようにするのが仕事だ!」って偉い人が言ってたんですよね。その言葉を鵜呑みにするのであれば、きっとそうなんだって思ってました(笑)。「できねえことをやるからできるようになるんだ!」って、変に自分をいきり立たせたりして。

──リリースの話が来て驚いたりとかは?

「この人は正気なのか……?」とは思いましたよ(笑)。興味を持ってもらった喜びはもちろんあるんですけど。でもまぁ、どうしましょうねぇ……みたいな。そこから一緒に一生懸命考えてくださって。本当に何もない状態から始まって、ライブをやりましょう、CDを出しましょうという道中で今のスタイルができあがっていったんですよね。

──かなりバラエティ豊かな1枚になりましたけど、そういう作品になるんじゃないかなというのはご自身の中で予感していましたか?

自分の中で流行っているものをポンポン出していったらこの形になったので、予想はしてなかったですね。僕はすごく飽きっぽいので、同じ曲が続くとつまんないなって思ってしまうところがあるし、作るのは僕だから、どうせ僕っぽくなるだろうという気持ちでやっていたので、とにかく思いつく限り出してみようって。最後の方はもう出涸らしでしたけど(笑)。“もう思いつかない!” “もう何も出てこない!”ってなっても、“まだ足りない!” “もっとひねり出さなきゃ!”ってやってると、意外とパっと思いついたりするもので。

──そのアイデアをどんどん膨らませていって。

というか、僕、曲の作り方をあまり知らないんですよ。Aメロ、Bメロ、サビって綺麗に並べていけばそうなるとは思うんですけど、いまいちそういうのをちゃんと勉強してなくて。しかも、思いついたアイデアをすぐに使っちゃうから、たぶん1曲の中に2、3曲ぶんのアイデアが入ってるんです。それをもうちょっと上手く使えばよかったんですけど、出し惜しみすんな!やれること全部やっちまえ!って。曲もそうだし、今の音楽性もそうやって作っていった感じですね。そもそも、一緒にライブをしましょうって言ってもらえた瞬間から、打ち込みの音楽を聴くようになったんです。

──DTMを始めたのもライブが決まったタイミングからだそうですね。

僕、それまではむしろ人間が演奏していない音楽って、若干見くだす感じだったんですよ。「パソコンがなにやってんねん」ぐらいの気持ちでいて。でも、いざ作ってみるとすごく難しかったし、そもそも自分以外のパートを考えることがまずなかったんですよね。バンドをやっていたから、そのパートの人が考えてくれるっしょ?っていう。ただ、いざすべてが自分の思い通りになると、意外と気持ちがいいもので。


──そっちの方にいきましたか。

俺が口で伝えられなかったことができる!って。もちろん、どっちも良いところ、悪いことがありますけどね。ひとりでやれば自分の思うようにできるところもあるけど、バンドでやると自分になかったものを教えてくれるところもあるし。だから、どっちが良いとは思わないですけど、ただ、純度100%俺のワガママが実現できるなと思うと、それはそれでおもしろいなって。ただ、最初の方に作った曲は、ものすごく気張ってデジタル方面に振り切ろうとしてたんですよね。最初は「ギターを入れちゃダメだ」って、変に意識をしてたし。

──なんか、昔のdさんのイメージでいうと「たにしげひっきー」とかですよね。

そうじゃないですか。人間が弾いて、歌ってというものが理想だったんだけど、「魚8oo」とかは、とにかくデジタルで頑張らなきゃと思って、いろんなものを観て、聴いて、こうすればギターを使わなくても済むっていう勉強をして作ったんですけど。でも、アイデアがなくなってきたのもあって(笑)、使えるものはなんでも使っちまえ!ってことになり、バンドとデジタルっていう、自分の育ちと新しいものを混ぜられるようにはなってきた感じですね。

──通して聴いていて、「ないないない」から「シケモクPart2」に行く流れが、とんでもない落差だと思って(笑)。

僕が好きなのもあって、極端な曲が多いんですよね。うるさかったら本当にうるさいし、静かと言っていいのかちょっとわからないけど。

──まぁクールというか、チルアウト的というか。

そうですね。あとは同じものを繰り返したりとか。そのせいもあって、曲と曲の繋がりが悪いっていう(笑)。

──でも、そこがおもしろいなと思いました。何が起こったんだ?と思って、姿勢が前のめりになるというか。

確かに言われてみれば。そうやって人をびっくりさせることは好きなので、そこはいいですね。

──あと、「エアープレイ・ライフゲーム」は、くらげPこと和田たけあきさんが書き下ろしをされていて。

人生で初めて人が僕のために作ってくれた曲だったので、うさんくさく聞こえるかもしれないけど、なかなか感激もひとしおで。しかも、何も話してなかったんです。「こういう曲にしてほしい」とか「こういうジャンルがいい」とか何も言わずに、パっと出されたものが単純にかっこいい!と思ったし、なんで俺が聴いてきたバンド知ってるんだ!?って。なんかこう、見透かされた感じはありましたね(笑)。本人がどう思ってこの曲を作ったのかはまだ知らないので、聞いてみたいところでもあるんですけど。

──先ほどお話があった「変わった音」というところでは、ロジエモのみなさんが参加されている「Metal Toilet」が印象的でした。あの曲で出てくるワブルベース的なものって、dさんがベースで弾いてます?

そうです。エフェクターを順番に踏み変えるっていう。

──ああいうのって普通はプログラミングしますけど、やってしまえと。

あれは元々、ロジエモでああいうことができないか?って言われたときに、よっしゃいっちょやったるか!って始めたものではあるんですよ。それこそパソコンでやればこんなにも楽なことはないんだけど、それもベースでやっちゃうっていう。そういう無駄な苦労をするのが好きなんですよ(笑)。これはきっと何の役にも立たないだろうなと思いながらも、俺の役には立っているんだろうなって。

──それこそ圧倒的な個性ですよ。

確かにそうですよね。でも、ロジエモで僕が作った曲をやるときって、「何がしたいのかわからない」って最初に言われるんですよ。自分も一生懸命伝えるんですけど、口下手なもんですからなかなかうまく伝えらなくて。こっちがいろいろ説明して、それを向こうも汲み取ってくれて、完成してみて「なるほどね」というのが多いんですけど、今回は最初に聴かせたときに「やりたいことがわかった」って初めて言ってくれて。バンド結成7年目にして、初めて曲を作って褒められました(笑)。


──コツコツと曲作りしてきた効果がでたんでしょうね。

そう願いたいですよね(笑)。なんか、僕は完成形が見えないまま曲を作ることが多いんですけど、外枠だけ先に作っちゃうと早いんだなって。

──たとえば、ブドウを絵に書いて伝えるときに、昔は最初に全体をざっくりと書いておくんじゃなくて、一粒一粒をひたすら書いてたというか。

そうそう、そうです。丸を連続で書き続けて、「何を書いてたんだっけ?」っていうのが僕だったんですけど、先に「ブドウです」って言っておかないと、ブドウにならないんだなって。

──あと、DISC2には「~Vocaloid Song Non Stop Remix~」を収録されていますけど、これをやろうと思ったのは?

ライブでやっていたというのもあるんですけど、CD1枚に収録しようとなったときに、気づいたら自分が作っていた曲って意外とあるなと思って。でも、自分が今までやってきたものをどうするよ?っていう話になったときに、全部やっちゃえば?って言われて(笑)。無茶なこと言うなとは思ったんですけど、やってみたら意外とできましたね。まあ無茶をしたんですけど(笑)。

──特に「千本桜」の、いい意味でぶっ壊れているドラムンベースがおもしろいなと思いました。

ライブをひとりでやることになったときに、この曲を一番最初に作ったんですよ。そのときと形は変えているんですけど、そういう曲を今回収録できてよかったなと思うし、「千本桜」って、もしかしたらボーカロイド曲の中で一番アレンジされていて、すごくいろんなパターンがあると思っていて。そのなかでも、一番おかしなパターンとしてやれたんじゃないかなと個人的には思ってますね。

──そして、来年2月にはレコ発ライブを行なわれますが、初日の東京公演にはゲストでlogical emotionが出演されると。

初めてソロライブをやったときに、メンバー2人が心配だったのか、面白半分だったのかはわかんないけど(笑)、観に来てくれてたんですよね。でも、それだけで心強くて。そういう思いもあって、今回出てくれるのはすごくありがたいです。一緒に出るから責任も分散されるし。何が起きても僕だけのせいじゃない!

──なんか急にズルいですね(笑)。どんなライブにしたいですか?

ライブも回数を重ねていくにつれて、いろんなことを改善していったんですよ。やってみないとわからないことばっかりだったから、とにかく思いつくものすべてやってみたんですけど、やりすぎていたんですよね。お客さん参加型にしてみたり、15分ぐらいお客さんを放置して、「何の会なんだ、これは……」っていうときもあったりしたし。

──あははは(笑)。でも、とにかく試してみることが大事ですから。

そういう実験的なことは常にやりたいとは思っているんですけど、そういうものも踏まえたうえでの「最後の清書」というか。ゲームでいうところのベータテストが終わって、正式サービスが開始される感じ。今までは「どうっすか?」っていう感じだったけど、ある程度方法論もわかったし、こうすればうまくいくというのもわかってきたので、「どや?」って自信を持ってやれると思います。


取材・文=山口哲生

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ライブ情報
drm「Hello world」レコ発ワンマンライブ
「コンニチワ、セカイ」レコハツライブ
2/3(土)東京:池袋LIVE INN ROSA ゲストlogical emotion(まらしぃ、タブクリア)
2/16(金) 名古屋ReNY Limited maras k(marasy×kors k)Live(special act drm)
2/18(日)福岡:DRUM SON
2/24(土)大阪:RUIDO
前売¥3,500 / 当日¥4,000(2/16名古屋のみ前売¥4,500 / 当日¥5,000)
※all standing・tax in・整理番号付・ドリンク代別
・一般発売 12/2(土)~

 

リリース情報
『Hello World』
◯アルバム情報
http://www.subcul-rise.jp/drm/helloworld/

発売:2018年1月31日
商品番号:SCGA-00067/68
価格:¥2,315+税 (2CD)
発売:Subcul-rise Record
収録曲
DISC1
01 Navix(ナビ子)
02 クロアチア
03 チュルリラ・チュルリラ・ダッダッダ!(新録)(music 和田たけあき(くらげP))
04 エアープレイ・ライフゲーム 和田たけあき書下ろしボカロ新曲
05 ないないない
06 シケモクPart2(Hello world Album ver.)
07 日曜日はMonday
08 彗星ハネムーン  feat.logical emotion(music ナユタン星人)
09 Metal Toilet feat.logical emotion
10 たにしげひっきー
11 BOSS ※guitar:和田たけあき(くらげP)
12 魚8oo
全12曲収録予定
DISC2
~Vocaloid Song Non Stop Remix~(Instrumental) 
01 エイリアンエイリアン(music ナユタン星人)
02 デリヘル呼んだら君が来た(music ナナホシ管弦楽団)
03 KABA in the sky(music drm)
04 千本桜(music 黒うさ)
05 ワールズエンド・ダンスホール(music wowaka)
06 メランコリック(music Junky)
全6曲収録予定