一世一代の騙しあい!最後に笑うのは誰だ!?『黒いハンカチーフ』

2015.10.4
レポート
舞台

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矢崎広が天才詐欺師に!舞台「黒いハンカチーフ」公演スタート

10月1日(木)から新国立劇場中劇場にて、舞台「黒いハンカチーフ」が上演されている。本作はマキノノゾミが脚本を手掛け、劇団M.O.Pによって2001年に初演、その後2002年には「演技者。」シリーズ(フジテレビ)でTOKIOの城島茂と山口達也が出演した作品。今回、約10年ぶりにリメイクされ、演出を奇才・河原雅彦が担当した。

舞台は、昭和30年代の新宿。終戦の余韻がまだまだ残るころ。一人の娼婦が虫けらのように殺された。その仇を討つために「伝説の詐欺師」フジケンを父に持つ医師・日根(矢崎広)を中心に、伝説の詐欺師集団が再集結!憎い相手を“詐欺”という手段で追い詰めていく――。

普段はさびれた喫茶店の片隅でゴロゴロしているぐうたらな医者・日根は、詐欺師である父に反発しつつも、親譲りの詐欺の才能と、何より内に秘めた熱い正義感を持つ男。彼が新聞に出した三行広告=詐欺の依頼をするための秘密のメッセージを知り集まったプロの詐欺師たちによる、大胆な騙しあいは痛快。一方、その広告の意味を知り、彼らの動向に目を光らせる古株の刑事がいつどんな邪魔をしてくるのか、ストーリーが進めば進むほど、気になって仕方がない。

インターネットもなければ、携帯電話もない時代の詐欺ともなると、騙す相手と直接、もしくはかなり近い距離で行う、かなり危険度の高い勝負。詐欺をしかける敵も一筋縄ではいかないヤツばかり。直接作戦を決行する現場の裏で、日根たちがどんな計画を立てているのか、無意識に予想しながら観ていると、ああ、そうきたか!と思わず笑顔になってしまう。ところがさらなるどんでん返しもあったりして…!いったい誰が本当に騙しているのか、最後まで油断できない展開を楽しみたい。

ところで、クールに装いながらも人情味あふれる日根、したたかに次の作戦を練るプロの詐欺師たち、ボロボロになっても強い相手にかみつくチンピラの宮下、生きる場所を探し、しがみつく娼婦たち、そして騙す相手でさえも、それぞれが雑草のようにしぶとくたくましく生きている。彼ら全員が戦後の日本社会の象徴なのかもしれない、と思うのはいささか大げさかもしれないが、実に魅力的な人々だ。また劇場で会いたい。(無論、騙されたくはないが)

公演情報
『黒いハンカチーフ』
日時:2015年10月1日(木)~10月4日(日)
会場:新国立劇場 中劇場
脚本:マキノノゾミ
演出:河原雅彦
出演:矢崎広、いしのようこ、浅利陽介、橋本淳、松田凌、桑野晃輔、村岡希美、宮菜穂子、まりゑ、武藤晃子、加藤未和、吉田メタル、鳥肌実、神農直隆、高木稟、三上市朗、おかやまはじめ、伊藤正之