樋口麻美にインタビュー~『THE BEST OF MUSICAL CONCERT2017』で本格的にステージ復帰!
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樋口麻美(撮影:中田智章)
樋口麻美がステージに帰ってくる! 『ライオンキング』『夢から醒めた夢』『マンマ・ミーア!』『アイーダ』『ウィキッド』等、数々のミュージカルで主役を務める大活躍を見せてきたが、しばらく舞台から遠ざかっていた。その彼女が、2017年12月20日(水)21日(木)上演の『THE BEST OF MUSICAL CONCERT2017』で歌声を聴かせてくれることとなった。今彼女の胸にあるミュージカルへの思い、舞台への思いを聞いた。
――久しぶりのステージです。
今年の2月に『李涛バレンタインライブ』、そして11月に『木村花代Birthday Live』にゲスト出演した以外は、2年ちょっとぶりくらいになりますね。復帰する気はまったくなかったのですが、今回のお話をいただいて。コンサートで一日二日やらせていただけるなら……というノリでお受けしたのですが、あとでちらしなどを見て、こんな大舞台なんだ! と焦る樋口という感じで(笑)。
――復帰する気はあまりなかった?
一度、もういいかなとシャッターを下ろしちゃったので……。劇団を辞めるとき、自分の力で大きな決断をしたという感じはなくて。本当に自然な流れで「時が来た」という感じだったんですよね。そして今回も自然な流れで「時が来た」というか、そろそろ歌いなさいと神様がおっしゃっているのかなと思って。
――共演者の方々についてはいかがですか。
一緒に歌ってきた方たちが多いので、声を合わせるのがとても楽しみですね。声も共鳴するし、心も共鳴するし、お互いの生きてきた人生もとても心に響き合うところがあって。それがお客様に伝わり、心に響いていく、そんな心地よさがあるのかなと思っています。
――今回どんなナンバーを歌われるのでしょうか。
まず、木村花代さんと『夢から醒めた夢』の「二人の世界」を歌います。作品を保坂知寿さんから受け継いで、私たち二人のピコとマコを作っていこうと、浅利慶太先生に指導していただいた、すごく思い入れの強い作品なんですね。それだけに、声を合わせたときに、「ここに私のかけらがありました!」という感覚、二人で一つという感動があって。花(木村さん)とは11月にライブで一緒に歌ったときも、いろいろ語らなくても声を聞くだけでわかりあえるものがありました。そのときにも、一瞬にして時が戻るんだねと話していました。花はどんどん成長して高いところに行っていて、私は立ち止まっているな、もっと上を目指さないといけないな……ということも痛感し、教えられて。そんな部分と、当時の空気感が戻って来るのと、両方ありましたね。
花とは『ウィキッド』のナンバーも歌います。二人の歴史があって、エルファバにとってはグリンダだけが親友だった、そんなところで歌い始めるナンバーなんですが、11月のライブでも歌わせてもらって。花だからこそさらけ出せる、甘えられる。あの時のライブでは素の自分でした。『ウィキッド』は、体力的にも作品のテーマ的にもとてもハードな作品でした。だからこそ、すごく好きな作品でもあります。
福井晶一さんと歌う『アイーダ』のナンバーも楽しみです。『アイーダ』のオーディションに受かったとき、お稽古が終わってからも、ずっと二人で自主稽古していて。ああでもないこうでもないと作ってきて、すごく助けられた部分、教えられた部分がたくさんあって。私のいいところも悪いところもわかってくれていて、安心して声を合わせられる人ですね。
回変わりですが、『マンマ・ミーア!』からは「手をすり抜けて」を谷口あかりちゃんと歌います。自分の中では大事な曲ですね。初演でソフィを演じて、ずっと保坂さんのドナを観ていて、ずっと憧れてきたので、そのドナを演じられるとなったとき、最初は冗談かなと思ったくらいです。そのとき32歳だったんです。それで、シングルマザーである40歳のドナの役をできるんだろうかと思って。当時ソフィを演じていたのがあかりちゃんで、数えるくらいしか年齢が変わらないんだけれども、母と娘ができるだろうかと。私はどちらかというと童顔なので、お母さんに見えないなと、すごく苦労しながら役作りもして。でも、作品の力が強いので、作品を信じてドナとして語っていれば大丈夫だろうと思ってやっていました。あかりちゃんにも本当に助けられましたね。
そして、これも回変わりで、『ライオンキング』の「シャドウランド」を歌うとき、家塚敦子さんにラフィキをやっていただきます。劇団時代はご一緒させていただいたことがなくて、先日『ビリー・エリオット』を拝見したとき、ビリーのお母さんを演じていらっしゃったのが印象的でした。『ライオンキング』も私にとって初めて大きな役をやらせていただいた作品です。それまでは先に演じられてきた先輩方を見て勉強していたのが、ナラは日本初演の段階から作っていった役で、手も足も出ませんという状態で。すごく大変でした。ずっとノンビブラートで歌わなくてはいけないという指定もあって、それもすごくハードルが高かったですね。
――舞台から遠ざかっていた中、ライブ等にゲスト出演して、いかがでしたか。
あ、私にも表現したい気持ちがくすぶっていたのがまだ少しあったのかもしれないなと思いましたね。歌は自分の中では苦手なんですけど、やっぱりお芝居は好きだな、お芝居の中で歌う歌は好きだなと思って。今回も、樋口麻美の歌をお聞かせするというよりは、その作品の歌を聞いていただくことで、作品全体をお客様の中でふくらませていただけたらいいなと。苦しいことがあったけれども、その作品で救われたなとか、その一曲でうわあっと甦るものがあればと思っています。
――舞台から遠ざかっていたのは、女優魂がなくなってしまったから?
燃え尽きたっていうと簡単な言葉になってしまうかもしれないんですが……。自分の中で一つ時代が終わってしまった感じはあったかもしれないですね。「樋口麻美一幕、終わり」みたいな。
――お芝居なら、ストレートプレイもあります。
蜷川幸雄さんの演出される舞台には出てみたかったですね。小さいころから蜷川さんの舞台は観ていて、ずっと憧れだったので。蜷川さんの演劇に対する熱い思いのシャワーを浴びてみたかったです。演劇人として、蜷川さんの目指すところ、同じところを見てみたかったなと。演出を受けると、演出家の目指すところが、雲がかかっているにせよ、見えるじゃないですか。そこを見たかったなと。ただ他にあまり舞台に出たいという思いもなく、劇団の女優として終わろうかなという気持ちもありました。
――ミュージカルを目指された原点は?
『オペラ座の怪人』を観たことです。もうそこからはミュージカル命で人生進んできて、ミュージカルが私の人生のすべてでしたから。自分でも、すっきりした心でロッカーを片づける日が来るんだろうかって思いましたけれども、辞めるときには、すっきりした心で片づけていましたね。
――辞められてからどう過ごされていましたか。
何もしていないですね。たまにホットヨガに行って汗をかくくらいで(笑)。愛知県の岡崎で、知り合いから頼まれ、ミュージカルを目指す子供たちが集まった団体で演出したり歌を教えたりはしていました。その話がなければ、自分の中で活性化するものもなかったかもしれないですね。そこでキラキラしている子供たちを見て、何かいいなと思うところがあったのかもしれない。そういうステップはあったのかもしれません。そんな中でお話をいただいて、挑戦したりする中で、今回のお話につながっていきました。
――今改めて、ミュージカルへの思いは?
子供たちを教えていたとき、幼き日の自分を見るようで、ああ、自分もこうやってミュージカルを目指していたなと思って。私はミュージカルに人生を救われてきたので、次の世代を育てるというか、ミュージカルっていいものだよと教えるというか、バトンを渡すという仕事は、私がというだけではなくて、やはり尊い仕事だなと思いましたね。
――ミュージカルに救われたとは、観て? 出て?
両方ですね。『レ・ミゼラブル』も『オペラ座の怪人』もそうですし、最近ですと、花と一緒に浅利先生の『夢から醒めた夢』を観て、涙が止まらなくて。改めて俯瞰で観ると、やはりすごい作品だなと思って。ミュージカルってすごい力があるなと。そうやって人生救われるというか……。私が出させていただいていたときに、そう思って観ていたお客様もいるんだなって、改めて気づかされました。離れてみると、大変な仕事だなと思いますが。舞台を観ると、すごいことやってるな、こんな世界にいたんだなと思います。今回のステージも不安しかないですけど(笑)。
――改めて意気込みをお願いします。
皆さん、ミュージカルに思いを馳せて来てくださったらと思うんです。お客様の聞きたい歌、お客様が主役だと思うので、私は案内役として。作品、ナンバーをすてきにお見せできれば、その世界に私が少しでもお力添えできればという感じで、足を引っ張らないように頑張りたいと思っています。
取材・文=藤本真由(舞台評論家) 撮影=中田智章
■公演日時:2017年12月20日(水)19:00、21日(木)14:00/18:00
■会場:新国立劇場 中劇場
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■出演:
鈴木壮麻、福井晶一、木村花代、樋口麻美
小野田龍之介
家塚敦子、谷口あかり
■歌唱予定作品
『アイーダ』
『ウィキッド』
『ウェストサイド物語』
『オペラ座の怪人』
『美女と野獣』
『マンマ・ミーア』
『ミス・サイゴン』
『ライオンキング』
『レ・ミゼラブル』etc.
(歌唱予定作品は変更の可能性がございます。ご了承ください)