SUPER BEAVER Zepp Tokyoレポ どこまでも真っ直ぐなバンドが“あなた”と共に進む先は
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SUPER BEAVER 撮影=Kouhei Suzuki
SUPER BEAVER「SUPER BEAVER『真ん中のこと』Release Tour 2017 ~ラクダの、中心~」 2017.12.16 Zepp Tokyo
「なんであなたがこんなに愛しいんでしょうね。それは……しっかり戦ってきたあなたがここに来てくれたからだ!」。
まるで別々の場所で命をかけてきた戦友を称え合うように、SUPER BEAVERはZepp Tokyoのステージでお客さんと対峙していた。
SUPER BEAVER 撮影=Kouhei Suzuki
今年9月にリリースしたミニアルバム『真ん中のこと』を携えて、対バン、ワンマンを含む全国27公演のツアーのファイナルとなったZepp Tokyo、2日目。アンコールでは、バンド初の日本武道館ワンマンを来年4月に開催することを発表したこの日。その場所からバンドがさらなる高みを目指してゆくために、これまで彼らがどういうバンドとして進んできたのか、これからも進んでゆくのかを、改めて確認し合うようなライブだった。
SUPER BEAVER 撮影=Kouhei Suzuki
SUPER BEAVER 撮影=Kouhei Suzuki
「27本中、27本目です!」。渋谷龍太(Vo)の開会宣言と同時に、メンバーの背後に掲げられたバンドフラッグが、『真ん中のこと』のジャケット写真を再現するような黄色いシャッターへと変わった。藤原“29才”広明”(Dr)が叩き出す軽快なスネアのビートがリードする「ファンファーレ」からライブはスタート。満員御礼、ギューギューのZepp Tokyoの隅々まで歓喜させる爆音のバンドサウンドが鳴り響くなかで、渋谷は身を乗り出すようにしてメロディと言葉とを丹念に伝えていく。そこに重なる柳沢亮太(Gt)と上杉研太(Ba)の歌声。歌い出しのワンフレーズで大合唱になった「うるさい」では、柳沢が(その時点で十分に大きな合唱だったが)「声、小っちゃいっすね」と挑発するように言うと、すでに最高点だと思われたところを軽々と越えて、場内にさらに大きな合唱が巻き起こった。ビーバーのライブはステージだけで完結しない。そこにいる“あなた”と一緒に作っていくのだ。
SUPER BEAVER 撮影=Kouhei Suzuki
SUPER BEAVER 撮影=日吉"JP"純平
「今日という日をあなたと一緒に作れることを大変名誉に思っています!」と、ファイナルの地に帰ってきた感慨を込めた渋谷の叫び声から、お手を拝借して息の合ったハンドクラップがフロアを満たした「美しい日」、 次はお声を拝借ということでウォーウォーというシンガロングが会場を包み込んだ「贈りもの」のあと、“あなたのお体を拝借”という前口上で繰り出した「irony」では、“昨今は珍しい踊れないロックバンド”を自称するSUPER BEAVERにとって新境地となった横揺れのロックンロールで、Zepp Tokyoを極上のダンスホールに変えていく。新たなリズムアプローチを取り入れた意欲作『真ん中のこと』ならではの楽曲たちは、今回のツアーでバンドに新鮮な風を送り込んでいた。
SUPER BEAVER 撮影=Kouhei Suzuki
SUPER BEAVER 撮影=日吉"JP"純平
「Zepp Tokyoでライブをするのは12年ぶり」と渋谷が話し出したのはライブの中盤だった。『TEENS' MUSIC FESTIVAL』という10代限定のオーディションで2005年のファイナリストに残ったとき以来だ。そして、いま思えば“覚悟が足りなかった”と振り返るメジャー時代、そこから音楽の楽しさを取り戻すためのインディーズでの再始動。一つひとつの積み重ねによって今Zepp Tokyoをソールドアウトできたことに、感謝の気持ちを伝えた渋谷。「俺たちは自分たちの過去を伝えるべくしてここに立ってる。手を伸ばして、掴み返してくれたのがあなたです」と言って、大きく息を吸い込んでから届けたのは、<かっこよく生きていたいじゃないか>と、彼らの生き様を刻んだロックバラード「人として」だった。さらに「27」と「361°」、そして「証明」という、彼らが大切な場所で歌い続けてきた、とりわけ強い意志を持つ楽曲たちを惜しみなく届ける。それは挫折を知るからこそ、“あなた”の人生を肯定する存在になりえたSUPER BEAVERの揺るぎない歌たちが、ともすると弱気になりがちな心を熱く奮い立たせる、かけがえのない時間だった。
SUPER BEAVER 撮影=日吉"JP"純平
SUPER BEAVER 撮影=日吉"JP"純平
SUPER BEAVER 撮影=Kouhei Suzuki
会場が暗転すると、観客が口々にメンバーの名前を呼ぶなか、「ぶーやん(渋谷)、最高!」と野太い声が飛んだ。会場のお客さんの男女比は半々ぐらいだと思うが、こういうとき、男性から熱烈なラブコールが響き渡るのもビーバーらしい。その筋の通った生き方に同性が惚れ込むのも、彼らのライブを見るとよくわかる。そんななかフロアから「まだまだー!」という熱い声がステージに届くと、渋谷が「“来い”って言ったのはあなただから。責任とってついて来いよ! 頼りがいのある仲間だと思ってる。まずは俺たちが戦ってる姿を見せてやるよ!」と、「正攻法」に突入。ここからメンバーと観客との心と心のぶつかり合いは加速していった。巨大なミラーボールがZepp Tokyo に“流星群”を降らせた「東京流星群」、曲の途中でメンバー紹介を挟み、そこに“今日来てくれたあなた”も加えてSUPER BEAVERの一員だと伝えた「秘密」。一貫してお客さんを“あなた”と呼び、個人として向き合うビーバーは、いつだって私たちの運命共同体でいてくれるのだ。
SUPER BEAVER 撮影=日吉"JP"純平
SUPER BEAVER 撮影=Kouhei Suzuki
ラスト2曲。他の誰でもない渋谷龍太が歌う“頑張れよ”が強さと安心感を与えてくれる「それくらいのこと」のあと、ラストナンバーとして届けた「歓びの明日に」の曲間で、渋谷は最後のメッセージを伝えた。「あなたが目指してるところ、あなたにしか進めない場所だろ? そこを迷わずに進んでいけよ。楽しみにしてるから!」。それはライブという特別な場所から日常へと“あなた”を笑顔で送り出すための、ビーバーからの共闘者としての別れの歌であり、同時にライブハウスで再会するための約束の歌だった。
SUPER BEAVER 撮影=日吉"JP"純平
SUPER BEAVER 撮影=Kouhei Suzuki
SUPER BEAVER 撮影=日吉"JP"純平
アンコールでは、4月30日にバンド史上初の日本武道館でワンマンライブを開催することがスクリーンを使って発表されると、Zepp Tokyoに、大きな、とても大きな祝福の拍手と歓声が響き渡った。そして、「日本武道館だって、あなたが来てくれなきゃただの場所でしかない。あなたがいてくれる日本武道館に立てることが嬉しいです!」と、らしい言葉で喜びを伝えた渋谷。最後は七色の光が降り注ぐなかで “あなたの声を聴かせてくれよ”と何度も繰り返すフレーズが印象的な新曲「虹」を届けると、この日何度目かの感謝の言葉とともに渾身の想いを込めた「ありがとう」で2時間のライブを締めくくった。
SUPER BEAVER 撮影=日吉"JP"純平
SUPER BEAVER 撮影=Kouhei Suzuki
初の武道館について、渋谷はステージでこんなふうにも語っていた。「少しもゴールじゃないからね。新たなスタートとして、俺たちが立つ日本武道館というステージ。“さあ、こいつらどんなスタートをするのかな”って、ニヤニヤしながら見てください」と。ビーバーの全ての歌詞は柳沢が書いている。ライブで言葉を担うのは渋谷だ。ステージでは上杉と藤原はほとんど喋らない。だが、ビーバーは全員が同じ方角を向いているバンドだ。どんなときも、ひとつの意志として音楽を鳴らし続けてきたビーバーが立つ武道館。どうやっても特別になってしまうと思う。それでも、これからも続く物語のひとつの通過点として、その場所にはいつもと何ひとつ変わらない真っ直ぐなSUPER BEAVERがいるはずだ。
取材・文=秦理絵 撮影=日吉"JP"純平、Kouhei Suzuki
SUPER BEAVER 撮影=日吉"JP"純平
SUPER BEAVER 撮影=Kouhei Suzuki
1. ファンファーレ
2. 青い春
3. うるさい
4. 美しい日
5. 贈りもの
6. irony
7. ひなた
8. 人として
9. 27
10. 361°
11. 証明
12. 正攻法
13. 東京流星群
14. 秘密
15. それくらいのこと
16. 歓びの明日に
[ENCORE]
17. 虹
18. ありがとう