[Alexandros] が“意味なんてない”と謳ったツアーで解き放つ、レア曲の数々とバンドの真髄
-
ポスト -
シェア - 送る
[Alexandros](『-Tour 2017“NO MEANING” 』12/20公演より) 撮影=河本悠貴
-Tour 2017“NO MEANING” 2017.12.19 Zepp Tokyo
普段はステージ上の自分たちに鬱憤をぶつけてくれと言っているけど――と前置いた上で、「今日は俺らが鬱憤をみなさんに投げつけてやろうと思います」、川上洋平(Vo/Gt)はそう言って不敵に笑った。磯部寛之(Ba)は終盤ツアータイトルに関して触れ、「やりたいからやっただけ。“NO MEANING”、よく付き合ってくれました」と笑みをこぼした。
そうなのだ。この日はまさにそういうライブだった。アルバムが出たからとか(シングル「明日、また」のリリースはあったが)、何かのアニバーサリーだからとかではなく、自分たちがやりたい曲をライブハウスでやりたいようにやり、それをオーディエンスが驚きと歓喜をもって受け止めるためのツアーでありライブ。そしてそういうモードで躍動する[Alexandros]は、とにかく格好よかった。
[Alexandros](『-Tour 2017“NO MEANING” 』12/20公演より) 撮影=河本悠貴
「LET’S GET FUCKED UP」(おかしくなっちゃいましょう、の意)とだけ書かれたバックドロップのほかにはアンプ類と照明機材があるのみというシンプルなステージ。カウントダウンから流れるSEが「Burger Queen」で、そのまま同曲をバンド演奏、川上がオフマイクの状態で客席に向かって何かを叫び煽る、というあたりまで、あるいはイントロから大きな盛り上がりをみせた「can't explain」「city」でライブが一気に加速する――という冒頭の展開までは、ある程度想定内の開幕と言ってよかっただろう。が、そこからがすごかったのだ。取材陣用に配られるセトリが記載された用紙を二度見しました、僕は。
ある程度順を追ってライブを振り返っていくと、まず「準備できてるか、東京!」と焚きつけてから「ワンテンポ遅れたMonster ain't dead」に突入。川上による超高速の“フィラップ”、様々な音色とエフェクトを駆使して彩る白井眞輝のギター、そして楽曲そのものの緩急を巧みにコントロールしていく庄村聡泰(Dr)と磯部のプレイが、すでに沸点に達したフロアを容赦なくかき混ぜる。アウトロからそのまま「Dracula La」へと展開するつなぎもニクい。続く「Nawe,Nawe」や、後に披露された「NEW WALL」あたりの楽曲で、4人にキーボーディスト・ROSEを加えただけのシンプルな構成にもかかわらず、雄大なサウンドスケープをしっかりと描ききっていたことも特筆に値する。個々のスキルや各機材のセッティングなどバランス面でもより成熟を深めている印象だ。
[Alexandros](『-Tour 2017“NO MEANING” 』12/20公演より) 撮影=河本悠貴
そこからはよりディープなゾーンに突入していく。MVが存在する「Waitress, Waitress!」やライブ定番曲「Cat2」を挟みつつ、「My Blueberry Morning」「Wet Paint」「Kiss The Damage」など、普段はなかなかライブで聴くことのない懐かしめの楽曲たちがどんどん登場。客席からは都度、驚嘆半分歓喜半分のリアクションが巻き起こっていった。しかも随所に音源とは違ったアレンジを施すなどしっかりアップデートされているため、今の[Alexandros]として鳴らされる過去のレア曲を体感でき、コアファン垂涎かつ最近彼らを知った人でも新鮮に楽しめる内容である。その点、プレミア
レアなシーンはまだまだ続く。最新シングルから「I Don't Believe In You」を披露した後にはディズニーのミュージカル映画『メリー・ポピンズ』のテーマ「Supercalifragilisticexpialidocious」を「我々なり」にカバー。これが秀逸で、原曲を知らなければ彼らの新曲と言われて信じてしまいそうなほど、“らしい”仕上がりだった。さらには川上がアコギで「12/26以降の年末ソング」を1コーラスぶん弾き語った後、<あと2回でこのツアーも終わるから ああ全部 吐き出そうぜ>と歌詞を変えて歌う一幕も。粋な試みに沸き立つうち、ライブは後半戦へと向かう。
[Alexandros](『-Tour 2017“NO MEANING” 』12/20公演より) 撮影=河本悠貴
すっかりライブアンセムの仲間入りを果たした感のある「ムーンソング」、落ちサビでの大音量のシンガロングが圧巻だった「Starrrrrrr」を経て、これまでのライブでもクライマックスを飾ってきた「Adventure」へ。ここ最近は彼らをアリーナクラスの会場で観る機会が多く、したがって壮大なアレンジで聴くことの多かった同曲だが、この日はアコギ弾き語りで始まるというシンプルなもの。それがまた格別で、前柵へと足をかけ観客に支えられながら歌い上げた川上の姿とともに強く印象に残っている。
[Alexandros]が磨き抜いてきた黄金律が惜しみなく炸裂する「明日、また」で本編を終えた後、アンコールで再登場すると、ほとんどMCらしいMCのないままここまで展開してきたライブは、「[Alexandros]史上、こんなロングMC初めて」というMCタイムへ突入した。謎の“シャバーニ(名古屋・東山動物園のイケメンゴリラ)推し”を繰り広げる磯部、それに対しての客席のリアクションが微妙なことを受けて「ここ一番の笑顔」(川上談)をみせた白井、そして「ロックは、ライブハウスに来ることは義務じゃない、選択なんだ」という持論や、自身が憧れた先達へのリスペクトとそれを否定されることへの違和感など、思わずグッとこぶしを握りたくなる熱い話を展開した川上……などなど、距離感の近いライブハウスの空気ゆえか、トークも弾む。
[Alexandros](『-Tour 2017“NO MEANING” 』12/20公演より) 撮影=河本悠貴
最後は「Kick&Spin」だった。ワンマンでもフェスでも演奏されることの多い曲だが、アグレッシヴで痛快な姿を存分に見せつけてきたこの日のライブの締めくくりに聴く「Kick&Spin」は、過去最高だったのではないだろうか。ド派手な照明、低音の効いたスラッシーな刻み、速射砲のように放たれる怒涛のビート、「来いよ」とばかりに手招きする川上目がけて続発するクラウドサーフの波。単に今回は小さい箱でやってみた、というだけでは決してない、ロックバンド・[Alexandros]の凄みと真髄に満ち溢れたライブは、最高潮の盛り上がりとともに幕を下ろした。
ツアータイトルは“NO MEANING”=意味なんてない、だ。ロックに夢中になることに、[Alexandros]を好きになること、その格好よさへ憧れを抱くことに、意味や理由なんていらない。それでいい。彼ら自身もずっとそうしてきたし、これからもそう在り続けるのだろう。そのことが強く胸に刻まれたという点で、あるいは「2018年のシーンも[Alexandros]を中心に動いていきそうだな」と嬉しい予感に胸を高鳴らせることができたという点で、我々にとっては大いに意味があったともいえるが。
取材・文=風間大洋 撮影=河本悠貴
[Alexandros](『-Tour 2017“NO MEANING” 』12/20公演より) 撮影=河本悠貴
1. Burger Queen
2. can't explain
3. city
4. ワンテンポ遅れたMonster ain't dead
5. Dracula La
6. Nawe,Nawe
7. My Blueberry Morning
8. Waitress, Waitress!
9. Wet Paint
10. Cat2
11. I Don't Believe In You
12. Supercalifragilisticexpialidocious
13. Thunder
14. Kiss The Damage
15. Kids
16. Last Minute(仮)
17. NEW WALL
18. ムーンソング
19. Starrrrrrr
20. Adventure
21. 明日、また
[ENCORE]
22. Kaiju
23. 新曲
24. Kick&Spin