ウソツキと「僕らが出会ったなかで最高にかっこいいバンド」緑黄色社会&Saucy Dogの競演を振り返る
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ウソツキ 撮影=山野浩司
ウソツキpresents ウソツカナイミュージックツアー2017 2017.12.21 渋谷CLUB QUATTRO
12月21日(木)、渋谷クラブクアトロにて『ウソツキpresents ウソツカナイミュージックツアー2017』のファイナル公演が行われた。10月28日の仙台からスタートしたこのツアーは、ウソツキが「僕らが出会ったなかで最高にかっこいいバンド」たちと対バンしながら進めていったもの。この日は緑黄色社会とSaucy Dogが対バン相手に迎えられた。
緑黄色社会 撮影=山野浩司
まずは愛知県出身の男女混成バンド、リョクシャカこと緑黄色社会から。2012年に活動を開始し、2013年には「閃光ライオット」準グランプリに輝いたこのバンドを筆者が観るのは初めてだったが、同級生と幼馴染で組まれたというだけあってアンサンブルのよさが際立ち、メンバー全員がとても嬉しそう&楽しそうに演奏していたのも印象的。ボーカル・長屋晴子の歌声には透明感と力強さの両方があり、曲によっては切迫感も伴いながら響いてくる。声の抑揚のつけ方に技術以前の女性的野生があるようで、明るくキラキラした曲においてはまさしくそのような華ある輝きが声に現れ、かと思えば別の曲では何かを掴もうとしても掴みきれないもどかしさや切なさのようなものが声に現れる。それが意識下のコントロールではなく、とても自然であるところに女性的野生を感じずにいられなかったのだ。人と人との間で生まれる様々な感情……疑問も不安も幸福感も含んでのそれを正直かつ繊細に綴った歌詞は、ライブにおいてもしっかり言葉が届くだけに力を発揮。長屋のルックスは、いわゆるバンギャルにいなさそうな、どちらかというと普通に会社で働いているキレイなOLさんといったふうでもあるのだが、それも手伝ってその歌詞は多くの女性たちの共感を集めるのかもしれない。と、そんなことを思いながらライブを観た。
緑黄色社会 撮影=山野浩司
「実は私たち、前にもウソツキさんに誘っていただいたことがあって。そのとき、“めっちゃかっこいいな”ってなって、(メンバー同士で)“やばくない?”って。だから今日また対バンできることを本当に楽しみにしてました。それもこんなにたくさんお客さんがいるところで」。そんなふうに喜びも表しながら、実に多彩なナンバーを続けて全8曲。終盤には「来年3月に初めてのフルアルバムを出すことが決まりました。そのあと4月からツアーも決まっていて、5月にはここ(渋谷クラブクアトロ)に戻ってくるので、みなさんとまた会えると嬉しいです」とも話しつつ、ポップスでありながらダイナミズムも有した歌と演奏をしっかり印象付けていたのだった。
Saucy Dog 撮影=白石達也
続いて関西発の3ピースバンド・Saucy Dogが登場。昨年度の『MASH FIGHT!』(MASH A&Rの育成アーティストを決めるオーディション)でグランプリを獲得した彼らは、メロディのよさと出す音の迫力が奇跡的なマッチングを見せているバンドだ。歌ものバンドであるところは一緒でも、先の緑黄色社会がポップスという表現にこだわっているとするなら、Saucy Dogは紛れもなくロック。それも極めて純度の高いもの。メンバーがひとりずつステージに出てきて丁寧にお辞儀をしてから定位置に。そしてギター&ボーカルの石原慎也が1曲目「グッバイ」を歌いだした途端、その声のチカラで空気が切り裂かれる感覚があった。このバンド、メンバーチェンジを経て現体制に移行したのは2016年8月だそうだが、ベースとドラムが重心のあるリズムで石原を支え、その分、石原は歌とメロディに感情を乗せて放つ――といった感じで、トリオのバランスが非常によいことが観ていてわかる。人としての個性はバラバラなようでいて、まさしく三位一体となった音(と声)表現なのだ。因みに筆者がついプレイする姿を目で追ってしまったのが、ドラムとコーラス担当の紅一点せとゆいか。終始ニコニコしながら、しかし思いきり激しくドラムを叩く、その表情とプレイのギャップがいい。3曲目に新曲をもってきたあと、そのせとゆいかが「私たち、クアトロに初めて出させていただいてます。ウソツキが呼んでくれたおかげです」と丁寧に挨拶してからはますます演奏のドライブ感が増し、石原も「ウソツキ、ほんと呼んでくれてありがとう。感謝してる」と気持ちを言葉にした。
Saucy Dog 撮影=白石達也
彼らSaucy Dogが最後に演奏したのは、代表曲と言っていい「いつか」。音に繊細さとダイナミズムがバランスよく同居し、メロディと歌詞と歌のよさがギュッと詰まってひとつの塊になったようなこの曲は、やはり飛びぬけて力強さを感じさせた。せとゆいかのコーラスの合わさり方もいいし、オアシスの名曲にも通じる景色の広がりを感じさせるサビもたまらなくエモい。演奏を終え、登場時と同じように丁寧に観客たちにお辞儀をして場を去った3人は、この日初めて観た人たちの心にも確かに爪痕を残したはずだ。
ところで集まった観客たちはといえば、1番手の緑黄色社会のときも2番手のSaucy Dogのときも曲によっては手を挙げて“捧げるように”前後に振ったりするなど、非常にいい反応をバンドに返していた。メインのバンドだけを楽しんで、あとは流し見……なんてところはこれっぽっちもなく、みんながみんな、この日迎えられた2バンドに対して愛ある関心を示しながらあたたかに観ていたのが印象的だった。ウソツキにはヘンなエゴのない良質なバンドばかりが寄ってくるのだなと思ったのと同時に、観客もよくない形で贔屓を表したりしない人たちばかりだなと思わされもしたのだった。
ウソツキ 撮影=山野浩司
さて、いよいよウソツキの登場だ。打ち込みのSEと共に黒でまとめた4人が登場し、その曲が終わるやいなや揃っての生バンドサウンドをガツン。そして「夢のレシピ」へ。実に鮮やかな導入。その様を観ながら筆者は「華があるなぁ」と強く思った。そう、いつのまにかウソツキはライブバンドに必要な華を身につけたのだ。だから会場を包む空気そのものが一瞬で変わったようにも感じられた。フロントマンの竹田を挟んでステージ両端にお立ち台があり、始まって早々、藤井浩太がそこに乗ってベースソロをキメると、続いて吉田健二も乗ってギターソロをキメる。始まってすぐにそのような見せ場をもうけて観る者たちを引きつけるあたり、ワンマンとは異なる短い持ち時間での楽しませ方をよく心得たものだと感心してしまう。
ウソツキ 撮影=山野浩司
「『ウソツカナイミュージックツアー・ファイナル』、渋谷クアトロへようこそ。今日はみんなでひとつになりたいと思っているので、コール&レスポンスやっていいですか? 」と竹田が言い、「ネ・ガ・ティブ、ネガティブ。そうでしょ?」と続けて煽れば、観客たちもそれに合わせ、その勢いをキープしたまま「ネガチブ」へ。その曲の間奏部分では林山拓斗のドラミングが強烈な印象を与え、途中、吉田のギターがレゲエのリズムを刻んで曲テンポを変換したりも。いつもの「ネガチブ」からアレンジを大胆に変え、楽曲自体により膨らみを持たせた形だ。
ウソツキ 撮影=山野浩司
続いては「地獄の感情無限ロード」。ドライブ感という言葉がピッタリくる4人の演奏のまとまりとうねりに観ているこちらのカラダも揺れずにはいられなくなる。と同時に、このあたりまでで既に実感させられていたのが、竹田のフロントマンとしての意識の変化、パフォーマーとしての意識の変化であり、それに伴う成長~進化だ。表情。それとアクション。その堂々たるあり方、つけ方、動かし方。それは2年前、1年前、半年前とも違っていて、自信がそこに漲っていた。歌やギターだけじゃなく表情やカラダの動きでもライブはもっと躍動させられるのだ、場に熱をもたらすことができるのだ。だったら大きく動いてオレが引っ張ろう。そういう意志がそこに表れており、だから観る側の着火も早かった。パフォーマーとして頼もしく、逞しくなったなあと、そう感じずにはいられなかった。
ウソツキ 撮影=山野浩司
高揚感をキープしたまま、曲は続けて「旗揚げ運動」へ。“Shall We Dance?”と大きく描かれたミントグリーンのタオルを吉田が高く挙げ、いつものように彼がフリをレクチャー。「右手・左手・両手~」と言いながら腕を上げ下げする彼に合わせて観客全員がその動きをし、そうしてステージとの距離はますます縮まる一方だった。ミラーボールも眩しい光を放ちながら回り出し、そのディスコ・ノリをキープさせたまま次に「コンプレクスにキスをして」。ここでは吉田・竹田・藤井の3人が往年のソウルショーのように揃って左へ右へとステップし、華やいだムードをさらなるものにする。ハンドマイクで歌う竹田はマイケル・ジャクソンよろしくハットを手で押さえたり、シュッと腕を高くあげるなどしてポーズをキメ、しまいに今回もムーン・ウォークを披露。人一倍恥ずかしがりの彼ゆえ、かつてのステージではそんなこと考えられないものだったが、今や自分のなかで逆側に振り切って、すっかりエンターテイナー的振る舞いを身につけた。完全に覚悟を決めたのだ。そしてそのような豊かな表情や大きなアクションを見るにつけ、このバンド、今ならもっと大きな会場で大勢の観客を楽しませることができるだろうし、それを目撃したいという気持ちにもなった。
ウソツキ 撮影=山野浩司
と、ここでバンドは勢いと華やぎの連続技をひとまずストップさせ、誠実で正直で剥き身のバラード「本当のこと」、そして「ピースする」の2曲を丁寧に演奏。「ピースする」の最後、竹田と同じように観客全員がピースサインの手を高く挙げているのを見た彼は、とても嬉しそうな笑顔を見せてもいた。
「ウソツカナイミュージックツアーも今日で終わりかと思うと、本当にねぇ……」「本当に僕が好きな音楽をやっている人たちとこうしてイベントができて嬉しい。各地でたくさんのバンドに出てもらいました。みんなで拍手しませんか?」。そんな話を竹田がしたあと、曲は「一生分のラブレター」へ。その曲で会場全体がひとつになると、早くも吉田のギターによる汽笛の音が聞こえてきた。「え、もう?」と思ってしまったくらい、いつも以上にあっという間に感じられたが、観る側のそんな寂しさを打ち消すように4人はさらに熱のこもったプレイを見せる。再びお立ち台に乗って弾く吉田と藤井。その真ん中で一歩前に出てギターを弾く竹田。曲の終盤で3人はリズムを支える林山のほうを向き、ひとつになりながら熱く演奏。いつものことながら、その様にはこれぞロックバンドというタフさも感じられ、最高にかっこいい。ウソツキのファンは女の子ばかりじゃなく、男のファンもけっこういるのだが(この日も半々に近いくらいの割合だった)、こういう場面などまさにロック好きの男たちが熱くなるところだろう。
ウソツキ 撮影=山野浩司
アンコールに応えて再登場すると、竹田は「いい日だねぇ。いい日じゃないですか。ねえ?」と林山にふり、林山はそれに応えて「緑黄色社会とSaucy Dogが出てくれて本当によかったね」。また2018年3月から『ULTRA USOTSUKA NIGHT~俺たちバッドボーイズ!~』と題した東名阪ツアーに出ることもアナウンスされ、4月1日のエイプリルフール=ウソツキの日には、恵比寿リキッドルームで公演することも発表。そして最後の曲に選ばれたのは「人生イージーモード」で、中盤はみんなでシンガロング。こうしてアップ~ダンス~バラード~アップという具合に緩急をつけ、あっという間ではあったもののいろんな楽しさが詰まった流れよきショーを終えたのだった。
かくして傑作2ndアルバムのリリースも含んだウソツキの2017年は大充実のうちに終わり、さらに面白いことが待っていそうな2018年へ。「俺たちバッドボーイズ!」なる驚きの宣言がいかに形となり、そこからどう転がっていくのか、楽しみでしょうがない。
取材・文=内本順一 撮影=山野浩司(ウソツキ、緑黄色社会)、白石達也(Saucy Dog)
4月27日(金) 福岡DRUM SON
4月30日(月・祝) 名古屋クラブクアトロ
5月3日(木・祝) 梅田クラブクアトロ
5月5日(土・祝) 仙台LIVE HOUSE en 3rd
5月6日(日) 渋谷クラブクアトロ
5月12日(土) 札幌コロニー
札幌・仙台・福岡 ¥3,500 / 東京・名古屋・大阪 ¥3,800
※全会場オールスタンディング
※ドリンク代別途
※消費税込
※未就学児入場不可
一般発売:2018年3月24日(土)
申込期間:2018年1月5日(金)10:00~1月14日(日)23:00
列伝ツアー2018(Saucy Dog 出演)
2018年2月22日(木) ※都合により会場が変更となりました。ご了承下さい。
福岡 BEAT STATION福岡 BEAT STATION
OPEN/START 18:00/18:30
2018年2月23日(金)
広島 CLUB QUATTRO広島 CLUB QUATTRO
OPEN/START 17:30/18:30
2018年2月25日(日)
高松 MONSTER高松 MONSTER
OPEN/START 17:30/18:00
2018年2月28日(水)
札幌 cube garden札幌 cube garden
OPEN/START 18:00/18:30
2018年3月3日(土)
仙台 MACANA仙台 MACANA
OPEN/START 17:30/18:00
2018年3月4日(日)
新潟 GOLDEN PIGS RED STAGE新潟 GOLDEN PIGS RED STAGE
OPEN/START 17:30/18:00
2018年3月7日(水)
名古屋 CLUB QUATTRO名古屋 CLUB QUATTRO
OPEN/START 17:30/18:30
2018年3月8日(木)
大阪 BIGCAT大阪 BIGCAT
OPEN/START 17:30/18:30
2018年3月11日(日) ※TOUR FINAL
東京 マイナビBLITZ赤坂マイナビBLITZ赤坂
OPEN/START 17:00/18:00
【前売り】
料金:3,300円(税込・ドリンク代別)
申込枚数制限:お1人様1公演につき4枚まで
受付期間:12月17日(日) 10:00~
ULTRA USOTSUKA NIGHT~俺たちバッドボーイズ!~
3/23(金)大阪・心斎橋Pangea
OPEN 18:30 / START 19:00
問い合わせ:清水音泉 06-6357-3666
OPEN 18:30 / START 19:00
問い合わせ:サンデーフォークプロモーション 052-320-9100
OPEN 16:00 / START 17:00
問い合わせ:LIQUIDROOM 03-5464-0800
前売り\3,500(+1ドリンク)
12/21(木)22:00~12/29(金)23:00まで