After the Rain(そらる×まふまふ)、未来への可能性を示したツアーファイナル・東京公演をレポート
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After the Rain
After the Rain WINTER TOUR 2017 ~X'mas in toy box~
2017.12.29 Zepp Tokyo
恵まれた身分の飼い猫ならずとも、出来れば家の中でぬくぬく&ダラダラと過ごしていたいのが、この冬という季節だ。だが、その一方でこの寒さに支配された日々を指す言葉としては、“ウインターワンダーランド”なる単語もあったりするわけで、クリスマスや冬休みなどを擁したこの日々は、自らが積極的に楽しもうとする姿勢さえ持てるなら、格別な想い出をつくることが出来る季節でもあると言えるだろう。
そうした意味では、2017年末に行われたAfter the Rainの『WINTER TOUR 2017 ~X'mas in toy box~』もまた、能動的な姿勢をもってその場に訪れ、充実したひとときを心から楽しんだ人々にとっては、まさに“ウインターワンダーランド”という言葉の意味を実感するような、忘れがたき一夜となったはず。そのツアーファイナルとなったZepp Tokyo公演では「絶対よい子のエトセトラ」と、アンコールなどで披露されることの多い「すーぱーぬこになりたい」が幕開けを飾る曲たちとなり、初っぱなから場内に詰めかけたオーディエンスのボルテージは最高潮へと達することに。
「After the Rain WINTER TOUR へようこそ!」(まふまふ)
「ツアー最終日の東京公演だぞ!オマエら、付いてこられるのか!!」(そらる)
火に油を注ぐかのように、ふたりが続々と煽りを入れたあとは「負け犬ドライブ」でふたりが共にギターを駆りながら熱唱するという、ロックなパフォーマンスまでもが展開されたのだった。
なお、2017年に入ってからはそらるがギターを弾くようになったことで、After the Rainとしてのライブにより幅が出て来たため、今回のステージでも「夢のまた夢」ではまふまふが。そして、「脱落人生へようこそ」ではそらるが、お互いにギタリストとして相方の歌をバックアップするという、実に興味深い一幕も。
そらる
「皆さん、ようこそ。そして、メリークリスマス! まぁ、実際にはとっくに過ぎたクリスマスですけれども(笑)、この場所は今日がクリスマスです。一緒に楽しく過ごしましょう、宜しくお願いします」(そらる)
「熱い声援をたくさんいただき、本当にありがとうございます。今回は、これまでのツアーで一番盛り上がってる気がします! 男の子の勇敢な声も聞こえてきて、なんか嬉しいです」(まふまふ)
確かに、夏に行われた武道館2デイズのときにも男性ファンの数が増えてきていた印象はあったが、今回のライブでもその傾向は継続中で、女子たちの発する黄色い声に混じって時おり聞こえる野太い声はなんだか妙に頼もしい。たとえ話ではあるものの、女にしかモテないイケメンはどうも信用出来ないが、男友達もちゃんといるイケメンは優良物件が多いというアレ的な話と同じで、アーティストにしても異性にしか人気がないというタイプよりも、同性にも好かれるアーティストの方が実力が備わっているケースが多いと感じるのは、単なる筆者の偏見だろうか……?
かくして、本編中盤にかけてのそらるとまふまふはロマンティックな「ロメオ」や、スウィートなラブソング「ノンファンタジー」で観客たちをより深く魅了していくこととなり、バンドメンバーによるインストゥルメンタル曲がインターバルとして挟まれた間には、さりげなく衣装替えも実施。前半戦とはまた違ったトーンの衣装でさらにドレスアップしたふたりは、8曲目の「待ちぼうけの彼方」と次の「ショパンと氷の白鍵」を、歌・そらる/ギター・まふまふの体制にて届けてくれたのである。
また、今ツアーから初披露となった新曲「メリーバッドエンド」や、先ほどとは逆転してのそらるによるエッジーなギタープレイとまふまふの繊細なハイトーンボーカルが聴衆を圧倒した「病名は愛だった」、叙情的な面持ちを持った「灰色と青」と、つくづく今回のライブではAfter the Rainのふたりがボーカリスト、ミュージシャンとしての実力を我々に対していかんなく見せつけていく場になっていたように思う。
ちなみに、この後に続いたMCではクリスマスらしい“サンタは何時まで信じていたか話”から、まさかの“都民税ネタ”までを含む、そらるとまふまふによるカオスでラフなトークが炸裂し、場内の雰囲気もここで少し和やかなモードへと突入。
「じゃあ、ここでちょっと明るい曲やろっか」(まふまふ)
またとない選曲の「ネバーエンディングリバーシ」が、えもいわれぬほっこり感を漂わせていたあたりも素晴らしく乙だった。さらなるダメ押しとして、2017年春に同時リリースされ、ともにオリコン上位にランクインしたヒットチューン「解読不能」と「アンチクロックワイズ」が連打されたくだりも、After the Rainの強いアーティストパワーを感じる象徴的な場面になっていたのではなかろうか。とはいえ、彼らはさまざまな絶対的好況を生み出している立場でありながらも、依然として謙虚さや誠実さを失うことは決してない。
「僕らはふたりとも、相変わらずツアーとかライブに対しては、始まるまでいろいろと不安を感じていたりしたんですが、実際にこうして会場に入って皆の顔を見て、皆からの声を聴いたときには「あ、大丈夫だ」って思えるような良いツアーになりました。皆、ありがとう。楽しかったよね」(そらる)
「うん、楽しかったー。大晦日のカウントダウンは来年のことも込みというか、また別のイベントになるので、今年のAfter the Rainとしてのワンマンは今日が最後になりますが、こうしてそらるさんと、信頼しているバンドメンバー、そして満員のお客さんたちと一緒にライブが出来ていることを、本当に嬉しく思います」(まふまふ)
しかも、この場では来年に向け今後はさらにAfter the Rainとしての活動を活性化させていきたいという旨の発言もふたりから飛び出し、そのうえで歌われた、After the Rainの始まりとなった楽曲「桜花ニ月夜ト袖シグレ」、それに続いて本編ラストとして披露された2017年夏に制作された最新曲「四季折々に揺蕩いて」、彼らの“これから”へと向けた所信証明のようなものとしても受け取ることが出来た。
ソレだけでは終わらないのがAfter the Rainのニクいところでもある。なんと、アンコールの場にはそらるがサンタクロース、まふまふがトナカイ仕様にて華麗に登場し、「チョコレイトと秘密のレシピ」を歌い上げてくれるというサプライズが実現。しかも、歌い終わったあとにはふたりがジャレあいながら、そらるがまふまふに馬乗りになるというレア展開があったこともここに付記しておこう。
「あのさ。まふまふって、曲を作っている時の精神状態が大体いつもマイナスというか不安定でしょ? そういう時に限って良い曲を書いてくるんだけど、来年はもうちょっと明るい曲が増えてもイイよね(笑)」(そらる)
「これからもっと、広く柔軟にいろんなことをやっていきたいですね。実は、きっと皆が「うぉーっ!」って驚いてくれるようなことなんかも既に決まりつつあるんですよ。ということで! ここは最後に来年への活力を皆さんからいただきつつ、ありったけの力を2017年の最後に出し切りたいと思います!」(まふまふ)
After the Rain
澄み渡る冬空を思わせるような「彗星列車のベルが鳴る」と、After the Rainならではの切なさと旋律が疾走した「セカイシックに少年少女」をもって、無事に幕を閉じることとなった、この『WINTER TOUR 2017 ~X'mas in toy box~』だが、全ての演奏が終わったあとには、とびきりの笑顔でハイタッチとシェイクハンドをしてから“ウインターワンダーランド”を後にしたサンタとトナカイの後ろ姿が、やたらと仲睦まじく見えただけに、ここは彼らの紡ぎ出していく新しいセカイにも、今から大いなる期待をしたいところだ。
取材・文=杉江由紀 撮影=小松陽祐(ODD JOB)、岡本麻衣
1. 絶対よい子のエトセトラ
2. すーぱーぬこになりたい
3. 負け犬ドライブ
4. 夢のまた夢
5. 脱落人生へようこそ
6. ロメオ
7. ノンファンタジー
8. 待ちぼうけの彼方
9. ショパンと氷の白鍵
10. メリーバッドエンド
11. 病名は愛だった
12. 灰色と青
13. ネバーエンディングリバーシ
14. 解読不能
15. アンチクロックワイズ
16. 桜花ニ月夜ト袖シグレ
17. 四季折々に揺蕩いて
[ENCORE]
18. チョコレイトと秘密のレシピ
19. 彗星列車のベルが鳴る
20. セカイシックに少年少女