古川雄大、帝国劇場初主演! ~最新版ミュージカル『モーツァルト!』ダブル主演の意気込みを大阪で語る
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古川雄大『モーツァルト!』合同取材会にて(撮影/石橋法子)
2018年5月の東京公演を皮切りに、ウィーン・ミュージカル『モーツァルト!』が全国3都市で上演される。2002年の日本初演より宝塚歌劇団所属の演出家・小池修一郎が演出・訳詞を手掛け、2016年には韓国版も演出、国内外で人気を集める作品だ。日本では4年ぶり5度目の上演となる今作では、舞台ビジュアルをリニューアル、新たな楽曲も加え最新バージョンとしてお届けする。第2章とも言うべき新たな節目に、山崎育三郎とのダブルキャストで主演に抜擢されたのが古川雄大だ。自身初となる帝国劇場主演作を前に、現在の心境と作品への意気込みを訊いた。
「今の自分のイメージを超えていく、難しい挑戦になると覚悟しています」
ーー『モーツァルト!』への主演が決定しました。
作品を拝見したときから、いつかは演じてみたいという気持ちはありました。ただ自分では「まだまだ先だな」と客観視していたので、今チャンスを頂けたことに自分が一番びっくりしています。出演が決まったことで、とても嬉しい気持ちと、一体どこまでできるのかという不安もあります。日本でも代表的なミュージカル作品のひとつですし、歴代の主演者の顔ぶれも、中川晃教さん、井上芳雄さん、山崎育三郎さんと、ミュージカルスターが演じる役というイメージだったので。自分としては、かなり挑戦的なことになるなと、覚悟を決めた感じです。
古川雄大
ーーあるインタビューで山崎育三郎さんは、モーツァルトは「今の自分を丸裸にしないとできない役」とコメントされていました。
育三郎さんは、それまでご自身にあった王子様的なイメージを壊す必要があると思って、そういう発言をされたのかなと思います。自分もお客様から見ると、モーツァルトを演じる俳優とは180度違うところにいると思うので、本当に丸裸になってがむしゃらに稽古する必要があるんだろうなと思います。
ーーご自身で180度違うと思われる、古川雄大という俳優のイメージは?
自分で言うのも何ですが悲劇色が強いというか、作品のなかで死ぬ役が多いので。もしくは、先日まで『黒執事』で演じていたような、人間ではない役とか。「似合う」と言われるとちょっと複雑ですが、自分でも得意な引き出しはそういう部分にあるんだろうなと理解しているので、分からなくもないなと(笑)。あとは、『レディ・ベス』で演じた王子役とかのイメージが強いのかな。色が強いので、もっと透明に産まれたかったなと思います(笑)。『ロミオ&ジュリエット』でロミオを演じた時も演出の小池先生から、「お客様にとって古川さんは『美しい』というイメージだけど、ロミオはもう少し天真爛漫な役だから、もっと明るさが必要だ」と、すごく指摘を受けました。
古川雄大
ーー自分のイメージを超えていくとは、どんな感覚でしょう。
正直、いまの自分はまだそこまで辿り着けていないのかなと思います。たまに、器の大きな大人の役とかが飛び込んでくると、どう演じていいのか頭で考えても分からなくなる。以前演じた翻訳劇では、あえて海外の美しい言葉をそのまま翻訳した台詞だったので、日常では使わないような言葉の数々にとても苦労しました。自分には出来ないという思いもどこかにあり、壁をしっかり超えられていたのか少し不安も残りました。今回も難しい挑戦になると覚悟しています。
ーーそんな中、モーツァルトに共通点を感じる部分はありますか。
まだ、どういう人なのか全然分かりませんが。僕も音楽活動をしているので、ゼロを1にしていく大変さはすごく理解しているつもりです。でも、そもそもモーツァルトは作曲の才能に確信を持っているじゃないですか。そこは全然違うので、難しいですね。共演者と協力し合いながら、自分なりのイメージで演じつつ、時には違うと小池先生に直されて。稽古場で繰り返し演じながら、そういう捉え方もあるんだと役について発見していくんだろうなと思います。
「先輩の背中に学びつつ、古川雄大の新たな一面をお見せしたい」
ーー小池先生の演出についてはいかがですか。
小池先生は頭の中に完璧なプランがあって、役者は先生が提示するものを作りながら、役としてそこにどう感情を構築していくかという作業になります。難しいという声も耳にしますが、僕は小池先生の演出作に出演する機会が多かったので、先生のやり方も、全部自由に自分で構築していいよというやり方も、両方好きですね。
古川雄大
ーー小池先生とは、作品や役柄についてお話されましたか。
色々とお話しさせて頂きました。言えるとしたら「殻を破れ」という感じでしょうか。だいたい稽古場では8割方、喝を入れられています。多分、喝を入れないとダメな人間だと、自分のことを分かっているからだと思います。「お前もうちょっと色々と頑張れよ~」という感じで、基本的には応援してくださっていると思っています(笑)。
ーー周囲はもちろん、ご自身でも今ある殻を破りたい時期にあるのでしょうか。
とはいいつつも、これまで色んな役をやらせて頂いていると思います。とくに小池先生の作品では、若手だけどすごく光る役を頂くことが多いので。今回のモーツァルトも今までにないキャラクターですし、自分としても新たな一面をお見せできればと思います。
ーーダブル主演の山崎育三郎さんとは『エリザベート』『レディ・ベス』でも共演されました。
大好きな先輩です。すごく優しくて、フレンドリーに接してくださる素敵な方なので、よくお話させて頂きます。ダブルキャストは初めてなので、お互いの役作りを意識するのかしないのか。どうなんだろう? 稽古が楽しみです。
古川雄大
ーーモーツァルトの妻コンスタンツェ役には平野綾さん、生田絵梨花さん、木下晴香さんがトリプルキャストで務めます。
平野さんは『レディ・ベス』で共演させて頂きました。その時は、口説いても落ちない相手だったので、そんな彼女と愛を描くとどんな感じになるのか楽しみです。生田さん、木下さんとは『ロミオ&ジュリエット』で共演させて頂きました。二人ともジュリエットのイメージそのままなので、今回は180度違うような役をどう演じられるのか。新たな一面に僕も刺激を受けるでしょうし、相手役が3人なので、毎回新鮮な気持ちで演じられると思います。
ーー父親役の市村正親さんとも、絡む場面が多いと思います。
市村さんとは、初めて共演させていただきます。僕の中では「テレビのひと」というイメージが強かったのですが、自分がミュージカル作品に出演させて頂くようになってから様々な作品で拝見し、ミュージカル界でも偉大な方なんだと後から知りました。尊敬する大先輩の一人ですし、現場をご一緒できるのはとても楽しみです。背中を見ながら、勉強させて頂きます。
ーー脚本・歌詞ミヒャエル・クンツェ&音楽・編曲シルヴェスター・リーヴァイによる楽曲の印象は?
劇場で作品も観ていますし、中川晃教さんのCDも聴かせていただきました。聴いているだけで幸せな気持ちになりますし、つい口ずさみたくなるような素敵な曲ばかりですよね。また、聴くのと歌うのとでは全然違うので、毎回難しいなと思いながら歌稽古をしています。キーの設定が高いような気がしていて。でもリーヴァイさんは、敢えて高い音域も書かれるとも聞いたので、頑張って自分のものにしたいです。
古川雄大
ーー古川さんが殻を破って挑まれる、初の帝国劇場主演作に期待が高まります。
帝劇初主演に関しては、加藤和樹さん、平方元基さんたち同世代の役者仲間からも、「おめでとう」「がんばって」と声をかけて頂きました。嬉しかったですね。「がんばるよ!」と伝えました。
ーー改めて、意気込みをお願い致します。
日本のミュージカル界でもとくに貴重な作品の主演に大抜擢されたので、稽古を積んで覚悟をもって初日を迎えたい。個人的にカーテンコールが舞台の醍醐味だと思っているので、今回も「全力を出し切れた!」と気持ちよくカーテンコールに立てるよう、頑張りたいと思います。
取材・文・撮影=石橋法子
公演情報
■音楽/編曲:シルヴェスター・リーヴァイ
■オリジナル・プロダクション:ウィーン劇場協会
■演出/訳詞:小池修一郎
■出演:山崎育三郎・古川雄大/平野 綾・生田絵梨花・木下晴香/和音美桜/涼風真世・香寿たつき/山口祐一郎/市村正親ほか
2018年5月26日(土)~6月28日(木)
■会場:帝国劇場
2018年7月5日(木)~18日(水)
■会場:梅田芸術劇場メインホール
2018年8月1日(水)~19日(日)
■会場:御園座