カイワレハンマーが語る代表曲であり“一番デカい”曲を収録した最新作『Regression』のすべて
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カイワレハンマー 撮影=大橋祐希
2月14日に5thミニアルバム『Regression』をリリースするカイワレハンマー(BEMA/ワタナベマホト・imiga)。“Regression”=回帰という意味が込められた今作には、代表曲であり、彼らにとって大切な曲「sprout」(再録)が収録されている。そんな今作と豊洲PIT公演(2月18日(日))で「一回区切る」と彼らが話す理由とは? 最新作のすべて、そして最大規模の豊洲PIT公演についても語ってくれた。
──2月14日に5thミニアルバム『Regression』をリリースされますが、ツアーファイナル直前というタイミングでアイテムを出すことは以前から考えていたんですか?
BEMA:そうです。豊洲までに28ヶ所やってるんで、俺ら的にもちょっと曲を増やしたいなっていう気持ちが出てくるだろうなと思ったのと、今回のツアーは毎回セットリストを変えているから、これだけやってると「もうこのパターンをやったよね?」っていうときがめちゃくちゃあって。
──imigaさんとしても、セットリストに困った瞬間はありました?
imiga:そこはわりとマホト(BEMA)が決めているところではあるんですけど、感じてはいました……やばそうだなっていうのは(笑)。困ったときに頼まれたりもしたし、そういうときは自分なりにいろいろ考えたんですけど。
BEMA:あと、前半はimigaで、後半は俺っていう感じで考えたりとか。
imiga:あったあった(笑)。
BEMA:あと、Twitterでどの曲を歌って欲しいかアンケートをとってセットリストを決めたりもしていたんで、まぁ、普通に困ってたんですよ(笑)。それで、豊洲PIT前に1枚出そう、ツアーファイナル用に作ろうっていう。前作(『BegInner2』)を出したのも5月だったんで、時期的にもそろそろかなって。
──『Regression』には、「回帰」という意味があって、今作で原点回帰を図ろうとしたそうですが。
BEMA:プロデューサーに、1st(『BegInner』)のリード曲だった「sprout」を録り直したいって、俺がすげえ言っていて。それを入れることが最初に決まったんですけど、今まで出してきたような感じのアルバムで、いきなり最後に「sprout2018」っていう曲を入れたら、他の曲が全部それに持っていかれるような気がして。
──「sprout」は、カイワレハンマーにとってそれぐらい大きな曲だと。
BEMA:たぶん一番デカいです。まあ、言っても前作が『BegInner2』で、お前らいつまで1st引きずってんだって話なんすけど(笑)。でも、それぐらい俺らにとってデカいんですよ、「sprout」っていう曲は。じゃあ、今回は1stの雰囲気にちょっと寄せたものにして、これで引きずるのはもう最後っていう。
──原点回帰モードであり、復活以降の流れはここまで、というか。
BEMA:そうですね。豊洲PITとこのアルバムで一回区切る感じです。
カイワレハンマー 撮影=大橋祐希
──でも、なぜ「sprout」を録り直したかったんですか?
BEMA:単純に、ラップの仕方とかリリックの書き方が、1stの頃とはもうまるで違っていて。1stから今まで順番に聴いていくと、この人達、普通にラップうまくなってるなっていうのがわかるんで、俺は今さら1stを聴けないんですよ。でも、「sprout」はカイワレハンマーの代表曲だから、そうなのであれば、これをもう一回録り直したいっていう。
imiga:もう一度やり直すにあたって、最初は歌詞も全部変えてやろうと思っていたんですよ。でも、実際に作ってみたら、ちょっと違うなって。
BEMA:やっぱ無理!勝てない!っていう。
imiga:じゃあ、「sprout」は「sprout2018」としてもう一度録り直そうって。で、それとは別に、もう一度「sprout」をやり直すにあたって作った曲が、「GO MY WAY -STEP BY STEP-」になって。
BEMA:(「GO MY WAY -STEP BY STEP-」は)「sprout」のアンサーソングにしようっていう。タイトルも、「sprout」のサビにある歌詞をそのまま使ってるし。
──なるほど。アーティストによっては、昔の曲は大切だけど、自分達が成長していく過程で封印する場合もあるじゃないですか。それはしたくなかった?
BEMA:そうですね。過去を否定したくないんですよ。過去があっての今なんで。俺らがあの曲に助けてもらったこともめちゃくちゃあったし、あの曲に思い出のある人達もいっぱいいると思うんです。「あのときのライブで聴いた」とか、いろんな細かい思い出が結構あると思うんですけど、それも全部封印してしまうような感じもして。自分的にはそれは全然考えなかったですね。封印するぐらいならパワーアップしたいっていう。
imiga:一番最初のライブの最後に歌ったのが「sprout」で、俺らとしても思い入れがある曲なんですよ。だからそれを録り直すのはいいなと思いました。
──『Regression』の収録順にいろいろとお聞きしていこうと思うんですが……まず、1曲目の「五番目ノ砦」は、今の自分達のモードをがっちりラップしていて。
BEMA:1曲目はラップがよかったんですよ。俺らは結構ポップス寄りではあるけど、とりあえずマイクリレーしたいよねっていう。
imiga:2枚目の『BETABOX』以降はそうしてるんですよ。
──<原点回帰>というワードもありますね。
BEMA:1曲目は、まず全曲作って、アルバムのタイトルも決めてから作るようにしてるんですよ。なので、この曲も一番最後に作っていて。
──それで他の曲にあるフレーズが出てくるんですね。まさにアルバムのイントロダクションになっていて。
BEMA:アルバムを全部聴いて、もう一回この曲を聴くと、「あ、これが入ってる」「あれも入ってる」っていうのがわかると思いますね。
カイワレハンマー 撮影=大橋祐希
──2曲目の「凸凹フレンド」は、学生時代の思い出を軸にしつつ、2人のパーソナリティや関係性がよく表れた歌詞になっていますね。
BEMA:俺の歌詞はリアルですよ。かなりリアル。
imiga:俺もリアルです。
BEMA:普通、こういうときってちょっと盛るじゃないですか。嘘偽りまったくないですからね。ヒップホップですよ。
──しかしまあ、気持ちいいぐらい正反対ですよね。
BEMA:陰と陽ですよね。このコンセプトはimigaが言ってきたんですよ。
imiga:ずっとやってみたかったんですよ。昔からデコボコだなって思ってたから、組んだ当初ぐらいからやってみたかったことではあって。
BEMA:でも、陰側からこういうことを言ってくるの珍しくないですか?
──たしかに、どっちかというと隠しておきたいですよね。
BEMA:そうっすよね?(笑)
imiga:まあ、やりたかったんですよ(笑)。歌詞もすらすら書けましたね。サビとかも全部自分で書いて、「はい、これ」って。
BEMA:(imigaが)<そんな学生時代>って書いてたから、じゃあ俺もそれに合わせるかって。コンセプトもサビも全部コイツが考えてるから、この曲、俺のほうがイキってる感じに見えるけど、実はコイツが一番イキってますからね?
imiga:逆にね(笑)。
──次の「play with love」も、言ってみれば正反対というか。
BEMA:そうですね。出会いと別れっていうコンセプトなので。俺は別れのほうを書いてますけど、これもわりとリアルですね。
──<キスの仕方が変わってた>っていうのが、めちゃくちゃ生々しいなと思ったんですけど。
BEMA:浮気されてたんすよ(苦笑)。
──そうでしたか(苦笑)。imigaさんは出会いのほうですけど。
imiga:俺は全部想像です(笑)。
BEMA:どうするの?恋愛とか全然してないでしょ?って聞いたら、「そうだなぁ……アニメでも観てみるわ」って(笑)。
──ちなみに何を観たんですか?
imiga:なんだっけなぁ……。
BEMA:そんなに観たの!?
imiga:いや(笑)、そんなにっていうか。出会いはわりと書きやすいかなとは思ったんですよ。ほとんどのアニメって、主人公が最初はひとりなんだけど、だんだん友達ができていく感じじゃないですか。そういうのを想像して書いてました。
──<ひらりひらり暖かい風と共に>という同じワードで場面を繋ぐところも綺麗ですね。
BEMA:この曲はMVを作りたいと思っていて。まだ今は俺の頭の中にしかないんですけど、なぜ出会いと別れが一曲に入っているのか、なぜこうなったのかっていうのが、観るとわかると思います。
カイワレハンマー 撮影=大橋祐希
──そちらも楽しみにしつつ、4曲目の「声」はかなり直球で。
BEMA:このコンセプトもお前じゃね? LINEで「コンセプトはこれです」って来たんですけど、「頼んでもいないのに背中を押している曲」って書いてあって(笑)。「頼んでもいないのに」っている!?って。
imiga:いや、俺はそれ言ってないよ(笑)。「頼んでもいないのに」はプロデューサーで、俺は「背中を押す曲」っていう。なんか、これまで背中を押す曲を作ってきたから、さらに背中を押すっていうか。
──なぜ背中を押す曲にしたいと思ったんですか?
imiga:オケがバンドで、声を張ってる感じかなと思ったんで。ちょっとリードっぽいコンセプトにはなっちゃいましたね。俺としては、<それでも 俺達はこの曲が 君のエールとなる そう信じて歌ってんだ>っていうところを言いたかったんですけど。
──その前にある<音楽の中で答えを 見つけ出すのは難しい>もすごいなと思いました。
BEMA:ですよね? 「あ、言っちゃった」と思って。
imiga:うん。ど直球ですけど、それも言いたかったこととしてあったんですよね。言っても難しいじゃないですか。結局、俺らが背中を押したとしても、その先は自分次第だし。だから、そうなると信じているっていう。
BAMA:たしかに、俺らも答えがない中でやってますからね。結局ヒップホップってなんなの?って、いまだに思うところもあるし。ネガティブに見えるかもしれないけど、俺も今の自分がガチで感じていることを書いてはいますね。
──そういったシリアスな曲もありつつ、次の「んなわけない」はライブでかなり盛り上がりそうですね。
BEMA:全体的に結構ネガティブなアルバムになっちゃうなと思ったから(笑)、マジでバカなやつを1曲入れてバランス取ったほうがいいかなって。で、コンセプトを「お祭り騒ぎ」にしたんですけど、コイツが結構ちゃんとラップしてて、俺だけバカすぎるんすよ。
imgia:ここまで来るとは思わなかった(笑)。俺が先に歌詞を書いたんですけど、マホトが後から出してきて、マジか!?って。
BEMA:いや、コイツ振り切ってねえ!と思ったから、振り切り方っていうのはこうやるんだよ!って。
imiga:途中で出てくる<hey!>の部分も、最初はラップしてたんですよ。でも、マホトがこんな感じだからっていうのでちょっと変えてて。
BEMA:むしろそこだけっすよ。俺に寄せてくれたのそこだけ。
imiga:あははは(笑)。
カイワレハンマー 撮影=大橋祐希
──そして、先ほどお話に出た「GO MY WAY -STEP BY STEP-」は、アンサーソングなのもあって、「sprout」に出てくる歌詞やフレーズを引用していますね。
BEMA:俺、あんまり歌詞に時間かかるタイプじゃないけど、この曲は時間がかかりました。やっぱり「sprout」っていうデカい曲のアンサーソングで、今後絶対大切になる曲だから、絶対に悔いの残らないものにしようと思ってたんで。
imiga:この曲は、「原点回帰」っていうのを頭に入れつつ、「sprout」の歌詞を見ながら書いてたんですよ。だからちょっと寄せてるところが何ヶ所かあるんですけど、最後の4小節は「sprout」と韻を同じにしていて。
BEMA:そこはね、相方だけど気づかなかった。
imiga:(笑)。そういう遊び心を入れてますね。細かいところではあるんですけど。
BEMA:imigaは自分の言いたいことがあってもちゃんと韻を踏むタイプだけど、俺は言いたいことがありすぎると韻を踏まなくなるんですよ。そこは俺の悪い癖なんですけど。
──そこも正反対で2人の個性ですね。そして、ラストが「sprout2018」。改めて録り直してみていかがでした?
BEMA:こんなにスムーズだったレコーディングなかったっすね(笑)。
imiga:早かったね(笑)。
──ずっとライブでやってきている曲ですからね。
imiga:初期の「sprout」は、俺はマホトのワンオクターブ下のキーを歌ってたんですけど、今回は自分もマホトと同じキーで歌っていて。
BEMA:1年前ぐらいだっけ? ライブでは一緒のキーを歌うようになったんですよ。だからライブでやっているものをそのまま落とし込んでいて。「sprout」のイメージがガッツリある人が聴いても、「あ、こっちのほうがいい、レベルアップしてる」っていうのがわかるものになってますね。
imiga:(オケも)生音だしね。
BEMA:うん。聴き比べるのもおもしろいかなと思うんですけど、俺としてはあんまりしてほしくないです。
──昔の粗が目立つから?
BEMA:そう(笑)、バカほどそれが目立つんで。
──そして、豊洲PIT公演も目前となってきました。去年からここへ目掛けて走ってきたわけで、いよいよという感じですね。
BEMA:過去イチのものにしたいと思ってるんで、自分にプレッシャーを与えるために、「今日のこのライブより、豊洲は120倍やべえから」ってずっとツアーで言い回ってきたんですけど、言わなきゃよかった(笑)。
──まさかの後悔(笑)。
BEMA:120はやめとこっかなぁ……っていう(笑)。やっぱ緊張しますね。半端なことできないし。
imiga:地方の子が「豊洲行きますね!」って言ってくれるたびに、全国から来てくれるんだっていうのを最近実感し始めて、やべえなと思って。なんか壮大な感じがしてきてるんで、俺もやっぱ緊張はしてきてますね。
BEMA:(会場のキャパシティが)3000人ぐらいですからね。俺、高1のときに初めてオフ会やって、15人集まって大満足みたいな感じだったんですけど、それから数年後に2人で3000人とか集めるとかね。
imiga:PITはZeppとはまた違った威圧感があると思うんですよね。その威圧に負けないようにしないと。
BEMA:うん、会場負けだけは絶対にしたくない。このライブをいろいろな人達に見せつけたいんですよ。なんか、名前を出すのはアレだけど、某事務所あるじゃないですか。YouTuberの事務所の一番大きいところ。そっちは全員で豊洲PIT埋めたけど、俺ら2人で埋められっから、みたいな(笑)。
imiga:はははははは(笑)。
BEMA:そういうところにも見せつけたいですし、今まで「YouTuberでしょ?」ってナメてた人達にも見せつけたいし。とにかくツアー中にいろいろと考えていたことを全部ぶっこみたいと思っていて。途中で劇とかもやろうと思うんですけど……。
カイワレハンマー 撮影=大橋祐希
──劇をやるっていうのは書いちゃっても大丈夫なんですか?
BEMA:大丈夫です! 「あ、SPICEで言ってたのこれね!」って当日思ってくれれば。そういう、今までやったことのなかったエンターテインメント寄りのライブをやろうかなと思っていて。
──エンターテインメント寄り。
BEMA:俺はエンターテインメント寄りなほうが観ていて楽しいなと思うし、観ている人を驚かせたいんですよ。なんか、「笑う」とか「泣く」とかよりも、「驚く」とか「ビックリする」っていうのが、一番ストレートに残ると俺は思っていて。
──それはあるかもしれないですね。
BEMA:だから豊洲は、どれだけ人を驚かすことができるか、予想外のことをしてビックリさせることができるかっていう。それを自分の中でテーマにして、セットリストとかも決めました。
──imigaさん、劇とのことでしたけど。
imiga:そうっすねえ………………劇か……。
BEMA:なになになに!(笑) やるって話になってたでしょ、ずっと前から。
imiga:いや、演技力とかさ……。
BEMA:そこまで必要ないから。
imiga:まあ、リハーサルで自信をつけてこうかな……。
BEMA:いや、そこまで大変じゃないから! 大丈夫だって!(笑)
──じゃあ、驚きに満ちた豊洲PITを楽しみにしつつ、エンターテインメント寄りのライブをすることで、また新しい道も開けそうですね。
BEMA:そうですね。豊洲PITが成功すれば、またデカいところでもやれると思うし、いろんなことを考えながらやっていこうかなと思ってますけど。とにかくPITは今までついて来てくれた人達が誰一人悔いのないようなものにしたいし、「こんなこともやってたの!? 行っときゃよかったー!」って、来れなかった人達が一生悔いの残るライブにしたいです。
取材・文=山口哲生 撮影=大橋祐希
カイワレハンマー 撮影=大橋祐希
<OSAKA>
会場 Zepp Namba
日時 2018年2月12日(月・祝)
開場/開演 16:30/17:30
※6歳未満入場不可
『Regression』
価格/品番:2,500円(税別)NKR-00011
制作・販売元:Neo Kinder Record
全国のローソン・ミニストップLoppiとHMV(店舗・オンライン)先行で発売決定
01.五番目ノ砦
02.凸凹フレンド
03.play with love
04.声 ※フジテレビ系『魔女に言われたい夜』2月・3月度エンディングテーマ曲
05.んなわけない
06.GO MY WAY -STEP BY STEP-
07.sprout2018