早霧せいなインタビュー、宝塚退団後初主演ミュージカル『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』を語る!
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早霧せいな (撮影:岩間辰徳)
元宝塚歌劇団雪組トップスターとして、大劇場主演公演すべてをソールドアウトさせるという新記録を打ち立てた、早霧せいな。2017年7月に惜しまれつつ宝塚を退団した彼女が挑む、退団後初の主演ミュージカル『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』が、5月19日~27日に大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで、6月1日~10日に東京・TBS赤坂ACTシアターで上演される。
1981年にブロードウェイで初演され、トニー賞4冠に輝いた傑作ブロードウェイ・ミュージカル『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』。才気と美貌を兼ね備え、仕事に奮闘し、その年最も輝いた女性=ウーマン・オブ・ザ・イヤーに選ばれた人気ニュースキャスターが、恋に落ち、家庭を持つことによって抱える新たな悩みと戸惑いを、テンポの良いコメディ・タッチで描いた作品である。家庭を持ちながら、仕事も続ける女声が増え続ける今だからこそ、誰もが共感できる、ラブロマンスとなっている。
そんな作品のヒロイン、テス・ハーディングを演じる早霧せいなが、新しい舞台への意気込み、作品と役柄に感じていること、共演者と演出家への期待、さらに近況を含めた現在の心境までを語ってくれた。
早霧せいな
■表現者でいようとの覚悟を決めてくれた『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』
──宝塚退団後初の主演ミュージカルとなりますが、今の気持ちはいかがですか?
退団後初めて役を演じる、お芝居ができるというワクワク感に今は溢れています。退団後の初舞台だったショー『SECRET SPLENDOUR 』をやった時にはどちらかと言うと宝塚以外の外の世界で舞台に立つ不安の方が強かったのですが、そのステージを経て、今また新しいメンバーと一つの作品を創れる喜びを感じています。
──役を演じる最初の舞台に、この作品を選んだ決め手はなんでしたか?
正直に言って卒業を決めたあと、自分が表現者で居続けるかどうかすごく悩んでいました。でもそんな時、このお話が来たことによって「やってみよう!」と決心することができたんです。
声をかけてくださる方がいることに背中を押してもらえました。そして何よりも沢山のファンの方々が、「早霧せいな」が卒業後も舞台に立つことを望んでくださいました。その方々に「早霧せいな」は宝塚の男役としてしか存在しませんと言ってしまうのは、とても失礼にあたります。むしろ「別のパターンの早霧もいるよ(笑)」とお見せした方がいいのだろうと、考え方を変えることができました。だから私にとって非常に意味のある作品です。
──早霧さんにとっても、ファンの方々にとっても、大切な作品なのですね。作品自体についてはどんな魅力を感じていますか?
とてもしっかりとした造りのブロードウェイミュージカルなのですが、なにぶん1980年代初頭の作品なので、現代の日本の皆さんにも共感してもらいやすいようにアレンジが加えられています。仕事一筋だった一人の女性が恋をして、家庭を持つことによって、色々な悩みを抱えながら仕事と家庭を両立させていこうと奮闘する姿が、テンポのいいコメディ・タッチで描かれていきます。作品が描かれた80年代よりも、現代の方が家庭を持っても仕事を続ける女性がよりいっそう多くなっていますから、女性の方はもちろん、男性の方にも登場人物の誰かに共感してもらえる内容の作品なのではないかな、と思います。
──そういう意味では、たしかに今日的なストーリーですよね。
それはすごく感じます。テスも料理をしようとして大変なことになったりするんですけれども(笑)、そういった経験をした方も多いと思いますし、そうした身近にある話を、ミュージカルナンバーで華やかにショーアップしているので、気軽に気楽に楽しんで頂けると思います。
早霧せいな
■多彩な経歴の演出家、共演者との稽古から生まれるアイディアを大切に
──とても素敵な新ビジュアルも公開されましたが、撮影ではどんな工夫を?
ウィッグを使って、髪型を外にはねさせたり、衣装をつけて、メイクをして、新しい自分を感じました。撮影をすることによって、テス役のイメージに一歩近づいていけたのではないかと。この時に動画も撮ったので、テスとして台詞も話しましたから、役の感覚がひとつ芽生えたように思います。
──では、役作りもすでに始まっている?
働く女性の本を読んでいます! 実際に「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた色々な職業の方たちが紹介されている本もあるので、そうした方々の生き方や仕事の仕方などからインスパイアされるものがあればいいなと。また、テスはニュースキャスターなので、私もテレビをつけると、ついキャスターの方に見入ってしまっています(笑)。
──その中で、テスという女性をどう感じていますか?
強がっているけれども、実は脆い部分も持っている、ある意味で可愛らしい人だなと。とても頭が良くて冷静なのに、思わず感情的になって行動してしまうところもあって、人間味がある素敵な女性ですね。私自身はできるだけニュートラルでいて、演出家の方や共演者の方々とのやりとりから生まれるアイディアを吸収していきたいですね。そのほうが一人で考えるよりも柔軟で、限界のない表現ができると思っています。お稽古に入るのが今からとても楽しみです。
──共演者の方々も豪華な面々ですね。
多くのキャリアを積んでいる方ばかりですし、ミュージカルはもちろんストレートプレイの経験豊富な方、またバレエダンサーの方など、ジャンルがとても広い。皆さんが役や作品にどうアプローチされるのかを、同じ稽古場で見て、体感できるのがすごく楽しみです。あとはやはり宝塚の先輩が二人もいらっしゃる。春風ひとみさんは数々の舞台を踏んでこられた方ですし、樹里咲穂さんは男役から女優への転換をなさった先輩でもあるので、ご一緒できることに安心感があります。『SECRET SPLENDOUR 』の時も、安寿ミラさんがいてくださったことが、私にとってすごく大きかったんです。「このままでは男らしすぎますか?」というような質問は、同じ道を通っている方だからこそ訊けることなので。ですから今回も先輩方の存在が頼もしいです。
──演出の板垣恭一さんも、非常に多岐に渡るジャンルの舞台を手掛けている方で、アイディアも豊富でしょうね。
初めて板垣さんの演出を受けます。板垣さんの世界に入っていけるのが楽しみですし、私自身も意見を出して、話し合いながら共同作業が進められたらと思っています。
早霧せいな
■原点に返り、基本に返って臨む、新たな世界
──近況も伺いたいのですが、宝塚も観劇されているそうで、客席からご覧になった宝塚歌劇の世界はどう映りましたか?
「宝塚は裏切らない」と思いました。楽しかったし、面白かったし、ここが自分の故郷だなと。やはり、在団中は他の組の公演を観ても、どこかでは研究している、勉強している感覚がありました。でも退団して、やっと100%宝塚を楽しめるようになり、「あぁ、この感覚懐かしい」と感じました。もちろん夢の舞台を創る現実も知っているので、純粋なファンの時と同じにはなれなくて、自分の中で夢と現実のスイッチが切り替わり続けたりもするのですが……。それでも「宝塚を楽しむぞ!」という気持ちで観られることはとても嬉しいです。
──他に、自由な時間に新しくはじめたことなどは?
キック・ボクシングに行きました! ずっとやってみたかったんですが、痣ができたりしてはいけなかったので、退団後にようやく念願が叶いました。でも、難しいんです。どこかでもっと簡単にできるような気がしていたのですが、大間違いでした。何事も基礎をきちんと学ばないといけないんだ、ということを学びました(笑)。私自身、何をしても突き詰めたくなるタイプなのですが、突き詰めるためには基礎が必要で、その経験を経て、今バレエに戻っています。
私にとってのクラシックバレエは、宝塚に入るための、舞台に立つためのツールだったので、「バレエが好き」とはなかなか思えず、バレエの基本ポジションをはみ出したい!とずっと思っていたんですよ(笑)。でも退団して「やはり基本はバレエなんだ」と思えるようになりましたので、今本当に地道なところから、一からバレエを始めています。大技をしたいというのではなくて、自分の身体と向き合う、身体づくりのために取り組んでいて。それは自分でもとても意外なことでした。まさか私が自分からバレエをやろうと思うとは、と(笑)。どちらかと言うと、ノリの良い曲で思いっきり身体を動かして踊りたいほうだったので。
──原点に返ったということでしょうか?
よくそういう心境になったな、よく気づいたな自分、と思うくらいですが、やはりこれまで舞台に立つ為の、より華やかに魅せる為のダンスを求めてきたので、今は基本に忠実であるからこその美しさを求めていると言うか。体操の内村選手が目指している境地を私も…って一緒にしたら怒られそうですが(笑)、精神としてはそういう気持ちです。
──確かにバレエダンサーの方って、普通に電車に乗ってきた立ち姿だけで「あ、この方バレエを踊る人だな」とわかりますものね。
そうなんです。姿勢などに如実に現れるので、精神的な意味合いも含めて、美しさを目指したいです。
──では、そんな美しさを含めて、新たに臨む舞台『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』への意気込みを是非。
私にとっては宝塚の世界を飛び出しての初挑戦の舞台になりますので、今、ワクワクドキドキしています。その感覚を劇場で私と共に味わって頂きたいですし、本当に楽しい、面白い、観て損はさせない作品になると思うので、生の舞台の醍醐味を体感しに是非劇場にいらして下さい! お待ちしています!
──ちなみに『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』はe+の貸切り公演もありますね。
私も利用していて感じるのですが、e+って会費を取る訳でもないのに親切ですよね。お得な情報のメルマガも来ますし、それによって自分が知らない世界の公演の情報を知ることができて「あ、こんな公演をやっているんだ、観てみよう」と思える、視野を広げてくれるコンテンツですね。私もそうしたメルマガをきっかけにめぐりあった公演もあるので、私と同じようにe+の情報によってこの『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』を知って、「うん?」と感じるものがあったら、ぜひ観に来て下さい!
早霧せいな
取材・文=橘涼香
写真撮影=岩間辰徳
ヘアメイク:沖山吾一
スタイリスト:田中雅美
衣裳協力:ジョゼフ(オンワード樫山 お客様相談室)ジャンヴィト ロッシ(ジャンヴィト ロッシ ジャパン)マリア ブラック(ショールーム セッション)
公演情報
■作曲:ジョン・カンダ―
■作詞:フレッド・エッブ
■上演台本・演出・訳詞:板垣恭一
■音楽監督:玉麻尚一
■出演:早霧せいな、相葉裕樹、今井朋彦、春風ひとみ、原田優一、樹里咲穂、宮尾俊太郎(Kバレエカンパニー)他
■日程:2018年5月19日(土)~27日(日)
■会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
■日程:2018年6月1日(金)~10日(日)
■会場:TBS赤坂ACTシアター