“雨のパレードが生み出す漆黒の渦” 最新アルバム『Reason of Black Color』を紐解くインタビュー
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雨のパレード 撮影=森好弘
2016年メジャーデビューを果たした雨のパレードは、「変幻自在」という言葉が最も似合うバンドなのではないだろうか。ボーカルを務める福永浩平はバンドの強力なアンテナであり、彼が世界中の音楽からキャッチしたイメージをもとに、4人のメンバーたちが新しい音を構築していく。最新アルバム 『Reason of Black Color』では、エレクトロダンスナンバーからアコースティックな楽曲、80年代を思わせる懐かしいサウンドまで、1組のバンドの表現の限界を超えたあらゆる楽曲が収められている。それぞれの楽曲がもつ“色”が混ざり合い“漆黒”の渦となるこの話題作と、目前に迫った自身史上最大規模のワンマンツアーについて、福永浩平とドラマーの大澤実音穂に語ってもらった。
雨のパレード 撮影=森好弘
ーー雨のパレードが楽曲を作るときは、どのような順序で進めていくのですか?
福永 : 基本的には、僕がサビのコード進行とメロディーを作って、みんなとスタジオでセッションしながら肉付けしていく作り方です。以前は、「すべての曲をリード曲のつもりで仕上げなきゃ」と思っていたんですが、「Shoes」以降はいい意味で力が抜けて、セッションをボイスメモで録音しながらメロディーもその場で作っていって、その構成のまま仕上げてレコーディングまでいったりしましたね。
雨のパレード 撮影=森好弘
福永 : 僕は基本的に洋楽の新譜をチェックすることが多いんですが、気になったものはグループメールでメンバーに共有するようにしています。いつもメンバーから返信があるわけじゃないんですけど(笑)
ーーなるほど! 最近バンドで共有した音楽で、特に印象に残っているアーティストを教えてください。
大澤 : 彼が教えてくれたイスラエルのバンドのGarden City Movementは、メンバーみんながハマりましたね。あと、Kから始まって、MVで踊ってる人、誰だっけ? わたしすごく刺さったんだよな。
福永 : KWAYEだね。ジンバブエ出身ロンドン育ちで、僕は「Sweetest Life」という曲が好きです。Troye Sivanの「The Good Side」はハープを歪ませたり、新しいことをやっているなと思いました。あと、SOHNが 「Hue / Nil」というシングルを出していて、これまでのSOHNのいいところが凝縮されたような作品だったので、それもよく聴いています。
ーー国もジャンルもさまざまな音楽を絶えずチェックされているんですね。最新アルバム『Reason of Black Color』は、年代もジャンルも様々な幅広い音楽性を網羅した作品です。多様な楽曲を1枚にまとめるにあたり、どのようなテーマを掲げていましたか?
福永 : 去年1年間で制作したアルバムなんですが、「こういうコンセプトで作ろう!」といったことは特に話し合っていませんでした。 去年の半ばに出した「Shoes」というシングルは、ノスタルジックな色を強く出した作品だったんですが、それ以外にもさまざまな方向性を押し出した楽曲を同時期に作っていて、その中から厳選した14曲を収録しました。
ーータイトルトラック「Reason of Black Color」は、シンセサイザーを歪ませたダイナミックなイントロに圧倒されますが、あのアイデアはどこから得たものですか?
福永 : この曲を作っている時期に出たLordeのアルバムや、FKA Twigsの「Figure 8」という楽曲に衝撃を受けたのが、シンセを歪ませてみたいなと思うきっかけだったかもしれません。
大澤 : あの曲はわたし自身も「雨のパレードってギター歪ませる曲ができるんだ!」という発見がありました(笑)。 ドラムも腕がもげるぐらいパワフルに叩いて、自分なりのロック感をすべて出し切りましたね。
雨のパレード 撮影=森好弘
ーー今作の収録曲のビートに注目すると、生のドラムセットから電子楽器、「ice」ではカウベルの音も飛び出しますが、大澤さんにとって初体験だった楽器はありますか?
大澤 : 「MARCH」で初めてタンバリンを叩きました。ドラムとは別の日に録ったのですが、すでに出来上がっている楽曲のグルーヴに重ねて叩くのは、けっこう難しかったですね。
福永 : この曲は僕らの中でOASISをイメージしていたので、パソコンのDAWで作っている段階から「バンドでアコギで、ストリングスとタンバリンを入れよう」という感じでレコーディングまで進めました。タンバリンて、ひとつひとつ音色がまったく違うんです。素材ももちろんですが、同じ種類でも新しいものと古いものでは音が違ったり。
大澤 : 「これはちょっと音が豊かすぎるな、逆にこれは寂しいな」と言い合いながらいくつか試して、最終的に 「MARCH」に使ったのは、すこし使い古された木の枠のタンバリンでした。
福永 : やっと辿り着いた音でしたね。
ーーそうなんですね。大澤さんのドラムセットについても、同じように時間をかけて選んだのでしょうか。
大澤 : ドラムはどの楽器よりも先に選ばないとレコーディングを進められないので、どんなバンドにとってもすごく重要な作業だと思います。ドラムセットを選ぶときは、ドラムテック(ドラムのチューニングやメンテナンスを行う技術者)の方に事前に「こういう曲を録るのでこういう音にしたいです」というのを伝えて、レコーディングにいくつか持って来ていただくんです。シンバルを一枚変えただけでも全体の聴こえかたがまったく違うので、メンバーにも聴いてもらいながら選んでいきました。
雨のパレード 撮影=森好弘
ーーこのアルバムには、福永さんのボーカルと同じくらいに楽器が強くフィーチャーされた楽曲が収録されています。SOIL&”PIMP”SESSIONSのトランペッター・TABU ZOMBIEさんを迎えた「Hometown」は、ボーカルとトランペットのデュエットのようなバランスですね。
福永 : この曲はもう、タブさんが主役です。最近のSZAとかJamila Woodsあたりの、ヒップホップ調のトラックにメロディーを乗せるような楽曲に魅力を感じていたんですが、ビクターの先輩であり鹿児島出身の先輩でもあるSOILのタブさんが、以前から「いっしょにやろうよ!」と言ってくださっていたので、この曲でお呼びしました。僕、cro-magnonというインストバンドの「Tokyo Times feat. 三宅洋平」という曲を擦り切れるほど聴いていたんですが、その曲のトランペットをタブさんが吹いていらっしゃったので、今回いっしょにできてかなり嬉しかったです。
ーードラマの主題歌に起用された 「What's your name? (plus strings ver.)」は、ストリングスが加わることによって80年代のディスコのような雰囲気に仕上がっていますね。
福永 : オリジナルバージョンはすでに配信していたんですが、アルバムに収録するにあたってレーベルの方に「この曲にストリングスを入れるとすごくハマると思うんです」とお願いして作らせてもらいました。ストリングスのアレンジは、星野源さんの作品のストリングスも担当されている美央さんに、「美央さんのカラーを出してください!」とほぼお任せでやっていただきました。
雨のパレード 撮影=森好弘
ーー今作にも、歌がなくインストのみの楽曲がいくつか挿入されていますが、こういったインタルードにはなにか意義をもたせているのでしょうか。
福永 : 僕が思うに、何度も聴きたくなるアルバムというのは歌だけが主張しているわけではないので、ずっと聴ける作品にするために毎回インストを入れるようにしています。このアルバムは短い曲も多くて全体の時間が50分なので、その点でも繰り返し聴きやすいのではないかと思います。
雨のパレード 撮影=森好弘
ーー演奏するメンバーの体温が直に伝わってくるような熱い楽曲から、無機質な電子音を多用した楽曲までを収めたアルバムなので、3月31日(土)に仙台からスタートする全国ツアーではどんなふうに披露されるのかが気になります。
福永 : 僕もどうするんだろうなぁと思ってます(笑)。 でも、ほぼセッションから曲を作ってるのでそのままライブできる状態ではあります。メンバーはレコーディングと同じだし歌っているのは僕なので、そんなに違和感なくできるんじゃないかなと。ただ、ライブだからこそ映えるアプローチを加えられる曲もあるので、そういったブラッシュアップはやっていきたいですね。
大澤 : 私は自分の中で前回のワンマンが今までのライブの中でも特に満足のいくものだったので、それを超えなきゃいけないのが今回の課題です。しっかり準備して挑みたいです。特に東京、名古屋、大阪の公演は素晴らしい照明のスタッフの方についていただくので、演出も見所です。
ーー楽しみです。最後に、今回のツアーをどんなかたに観てほしいですか?
福永 : これだけ多くの“色”を表現したアルバムなので、いろんなカルチャーだったり年齢層のかたに足を運んでいただいて、お客さんの数だけ会場がカラフルに染まればいいなと思います。
雨のパレード 撮影=森好弘
取材・文=Natsumi.K 撮影=森好弘
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仙台・Rensa
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■大阪:1Fスタンディング ¥3,800(D代別) / 2F指定席 ¥3,800(D代別)
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※未就学児童入場不可
【東京公演のみ】雨天決行/荒天中止