山田裕貴×飯塚達介プロデューサーインタビュー 『闇金ドッグス』主演俳優が4年をかけて練磨した“鋼”の本質と「嘘をつかない」表現
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山田裕貴 撮影=岩間辰徳
『HiGH&LOW』の番長・村山良樹、『あゝ、荒野』の好敵手・山本裕二、『亜人』の陽気な高橋……俳優・山田裕貴は、様々な役柄を変幻自在に演じ、観るものの心に爪あとを残す強烈な芝居を見せ続けてきた。そんな山田が、約4年間・11作品に渡って演じて続けてきた役が、『闇金ドッグス』シリーズの主人公・安藤忠臣である。
『闇金ドッグス』は、多彩な若手俳優たちが入れ替わりつつ主演をつとめたヤンキーアクション『ガチバン』シリーズのスピンオフとしてスタート。山田演じる安藤忠臣は、『ガチバン ULTRA MAX』で窪田正孝演じる主人公・黒永隼人のライバルとして初登場。シリーズをとおして組長に成り上がり、新シリーズ『闇金ドッグス』で主人公に。その後、最新作『闇金ドッグス9』までの9作品で、忠臣は“元ヤクザの闇金業者”として、地下アイドルや主婦、悪徳芸能事務所の社長、生活保護を悪用するNPO代表といった個性豊かな債務者たちと対峙し、金と欲望を巡るドラマを繰り広げてきた。
山田は役を“演じる”のではなく、“生きる”という信念を持つ俳優。文字通り、キャリアの中で最も長く生きることとなった“安藤忠臣”から、何を得て、どう変化したのか? 今回は山田本人、そして、『ガチバン』シリーズのプロデューサーであり、『闇金ドッグス』の企画者でもある飯塚達介氏にインタビューを敢行。二人に、『闇金ドッグス』誕生から、安藤忠臣=山田裕貴の変化、シリーズに託した想いまで、4年間を総括するかたちで語ってもらった。
4年間で練磨された俳優・山田裕貴の本質
山田裕貴 撮影=岩間辰徳
――そもそも、なぜ『ガチバン』の山田裕貴さん=安藤忠臣を『闇金ドッグス』の主役に起用されたのかを聞かせてください。
飯塚:当時、いわゆるヤンキー映画がたくさんあったんですが……そんな中で『ガチバン』というシリーズは“ちょっと変わったヤンキー映画”を作りたい、というところから始まりました。気が付けば、色んな若手の俳優さんが主演して、『ガチバン』の世界観の中でスポットを当てる人間を変えていくシリーズになっていたんです。それで、ヤンキー映画をやり尽くしたわけじゃないですけど、「新しいこともやりたいな」と思っていたんです。じゃあ、『ガチバン』のキャラクターを掘り下げていくのも面白いかな、と。シリーズの中で何度か登場するキャラクターはいたんですけど、山田くんと最初に『ガチバン ULTRA MAX』で出会ったときに、安藤忠臣という役にぼく自身が惚れ込んだので。そして、山田裕貴という人間もすごく愛すべき人間だな、と思っていたんです。その後、すぐに忠臣が登場する2本目を作ることになったんだよね。
山田:『ガチバン NEW GENERATION2』ですね。
飯塚:そう。『ガチバン NEW GENERATION2』で安藤忠臣を出すにあたって、彼が最初に出てきた頃と全く環境が変わっていたら面白いな、と思っていて。そのときから、安藤忠臣という人物を掘り下げていきたいというのはあったんです。それとは別に、新しいシリーズをやるなら、闇金モノが面白そうだというのがまず念頭にあって。安藤忠臣は若くしてヤクザなので、「失脚することもあるだろうな」「生きる場所をヤクザから闇金に変えていく男の話はちょっと面白そうだな」とピンきて。(山田の)マネージャーさんに相談したら、すぐに乗ってくれました。
飯塚達介プロデューサー 撮影=岩間辰徳
――安藤忠臣=山田裕貴の魅力と、新シリーズが結びついたわけですね。
飯塚:それともう一つ。『ガチバン』は23作続けてきたシリーズで、3代目の主人公が窪田正孝くんなんです。その窪田くんと山田くんが最初に共演したのが、『ガチバン ULTRA MAX』なんですが……。
山田:その頃、ぼくは窪田くんにすごく憧れていて。
飯塚:彼は現場でも、ずーっとそのことを話していました。『ガチバン ULTRA MAX』の舞台あいさつをやったときには、彼(窪田)はもうすでに人気を博していて、お客さんの出待ちもすごかったんです。舞台あいさつが終わって、一目を避けるようにしながらも、車に颯爽と乗り込んでいく姿に、スターの片りんのようなものがあったんですよね。それをわき目に見ながら、ぼくらはそそくさと出ていったんですが、その時、窪田くんの姿を見た山田くんは、「ぼくもいつかはああなりたいんです!めっちゃ羨ましいっス!」と素直に言っていて、その言葉に「いいな」「伸びていくんだろうな」と思えたんです。
山田:めっちゃ鮮明に覚えてますよ、その景色を。
山田裕貴 撮影=岩間辰徳
――山田さんとしては、『闇金ドッグス』の話を聞いたときには、「よっしゃ、やったるぞ!」くらいの気持ちだったんですか?
山田:いや、「まさか」です。「よっしゃ!」という気持ちももちろんあったとは思いますけど、結構冷静でした。「ありがたいな」というのと、「面白くしないと、すぐ終わるぞ。自分次第だぞ」と、まずは思いました。
――『闇金ドッグス』の全体のコンセプトを生々しいものにしよう、というのは当初から決まっていたんですか?
飯塚:そうですね。『ガチバン』は、基本はヤンキーものなんですけど、王道というよりは「ヤンキーのB面を描く」という裏コンセプトがあって。だから、絶対に普通のヤンキーものに出てこない、「ヤンキーも宿題をしなくちゃいけない」とか、そういう過程も描いています。映画の中のカタルシスとして、最後は拳で確かめあうというのも、ヤンキーものとしての特徴だとは思っていたんですが、ポップな一面もあるのが『ガチバン』だったんです。でも、新しいシリーズをやるときには、大人の、ヤンキーじゃなくアウトローを描いて、少し年齢が上の人たちにもちゃんと伝わるようにしたいな、と思っていた。だから、『闇金ドッグス』の1作目の脚本を作るときは、時間をかけて世界観を作る作業が結構大変でした。
左から、飯塚達介プロデューサー、山田裕貴 撮影=岩間辰徳
――山田さんは、『闇金ドッグス』に関しては脚本について提案をすることもあるとおっしゃっていました。それは企画初期の段階でもあったのでしょうか?
山田:提案というほどのものではなくて……『闇金ドッグス』の製作にはだいたい周期があって、だいたいDVDイベントをやっているときなんですけど、「次の企画をやるんだろうな」というときに、飯塚さんが「次はこういうことやりたいんだよね」と、教えてくれるんです。ぼくは「はあ!なるほど」と感心して、そこで冗談まじりで、「こういうのどうですか?」くらいのことは言います。でも、だいたいは飯塚さんの中にやりたいものがすでにあって、それを聞いて、「ああ、次が始まるんだ」と思う。そんな感覚ですね。
――お二人は『ガチバン』のときから、そういうコミュニケーションをとられていたのでしょうか?
山田:『ガチバン』のときは、目の前にいるのが窪田くんだし、それどころじゃなかったですよ。めっちゃ温度が高かった頃で、もう話し合うとかそんなレベルじゃなかったです。
飯塚:脚本自体は、ギリギリになって、「これだから!」と、毎回投げつけるように渡すので(笑)。ただ、『闇金ドッグス』の企画にすんなり入っていけたのは、山田くんが安藤忠臣というキャラクターそこに“いる”状態にしてくれていたからです。ぼくらが脚本を作るときも、「安藤忠臣をどうしよう」と悩むことはそんなになかったですね。
飯塚達介プロデューサー 撮影=岩間辰徳
――『ガチバン』の2作で、すでに安藤忠臣という人物の土台がきちんと出来上がっていたと。その後、忠臣の人生は『闇金ドッグス8』まで4年続いてきました。山田さんは、このシリーズを通して何を得たと思いますか?
山田:間違いなく、度胸はついたと思います。大御所の方の胸ぐらをつかんだり、平気で出来るじゃないですか。まあ、出来るというのも変ですが(笑)。
飯塚:こちらとしては、平気でやってもらわないといけないのでね(笑)。
山田:正直、デビューしたての頃は、「このシーンを頑張らなきゃ」とか、自分の中に緊張がありました。今は、そういう邪念が一切なくなったというか、自分の中でどっしりしたものが出来たという感じで。でも、まだ『闇金ドッグス8&9』までは、“忠臣の重み”みたいなものが、正直言ってまだ足りないと思っていて。ようやく、『闇金ドッグス8』でそれが出てきたかな、と思い始めてるんです。あとは、これだけの短期間で毎回2本を撮るので、大変だと思う現場がなくなったということはあります(笑)。忠臣に関しては、引き算で、やりすぎないことを心がけていて。目で語るということを思いっきりやってきたんですが、それがほかの役を“生きる”ときにも、活かされているのかな、とは思います。
――飯塚さんから見て、山田さんはどう変化されたと思いますか?
飯塚:いま山田くんが言ったようなことは、現場でも日々感じているんですが……最初が衝撃的な出会いだったと思うんです。山田裕貴自身もさることながら、安藤忠臣のあの感じを作り上げた“役者・山田裕貴”の根本は、変ったというより“鍛練された”感じがします。本質は変わってはいないと思うんですけど、あの頃に持っていたエネルギーも全然変わらない。だから、変化というより、強化というか……。
――錬磨されたようなイメージですか?
飯塚:そうですね。鋼のごとく。
山田:ありがとうございます(照)。
山田裕貴 撮影=岩間辰徳
――『闇金ドッグス』シリーズは、最初はとてもダークだったんですが、途中で忠臣たちのパーソナルな部分を掘り下げる方向に変わりました。『闇金ドッグス8』では、また原点回帰したように思うのですが。
飯塚:ぼくはいつも、撮影中に次の作品のことを考えているんです。プロデューサーなので、つきっきりで現場にいるわけでもないですし、やることもないので。『闇金ドッグス4&5』については、『闇金ドッグス5』が特に重たい話だったので、次は観てくれているお客さんをいい意味で裏切りたい、というのはありました。シリーズをやっていくうえで、だれちゃったり、「これ、もう観たよ」という風には感じて欲しくないんです。つねに、「次はこうきたのね」という驚きを届けたい気持ちがあって。で、『闇金ドッグス6&7』では一気に方向転換して、ラブストーリーをやってみよう、と。一時は忠臣が主人公のキラキラムービーを別の映画として撮ったら面白そうだな、とも思ったんですけど(笑)。
――(笑)
飯塚:でもなあ……と考えているうちに、「じゃあ、『闇金ドッグス』でラブストーリーをやっちゃえばいいんじゃないか」と、自分で膝を打ったんです。これなら、今まで見せてこなかった、パーソナルな部分も描けるんじゃないかと思ったので。
山田:衝撃的でしたけどね。「マジっすか。恋愛ものっすか」って、現場で話をしていたんです。最初は、「いや、やらないでしょ」と思っていたんですけど、(飯塚氏は)本気だったんで。
飯塚:そう。甘いモノはもうやったんで、次は激辛にしようと決めていたんです。
山田:「次はどヘビーにしたいですね」みたいなことは話しましたよね。
飯塚:『闇金ドッグス』1作目も重くて、「どうしようもないな」という感じの作品だったと思うんですけど。それで、ヘビーな話にしたいと思っていたんです。だから、『闇金ドッグス8』はゲス、『闇金ドッグス9』はクズな債務者が登場します。
心がけたのは「嘘をつかない」「逃げない」こと
山田裕貴 撮影=岩間辰徳
――『闇金ドッグス8』は、シリーズで最も胸糞の悪い作品だと思いました。ゲス一家が生活保護を悪用し、脳卒中の息子まで金のために利用するという。
山田:それは、すごくありがたい言葉です。ぼくが、『闇金ドッグス』シリーズで一番伝えたいことが、今回の『闇金ドッグス8』のテーマとして来たな、と思っているので。つまり、お金によって人間の弱いところが思いっきりあぶりだされる。闇金の“闇”とは、こういう意味もあるんじゃないか、と。今回のゲス一家は、それくらい滑稽でした。本当に息子が可哀そうだと思うし……忠臣はゲス一家とは違う感覚で、長男の章太郎に目を向けていたと思うんです。どんな悪い客よりも、人間として救いようのない、これまでで最悪の敵が登場した、という感覚で。そういう面白さは、今回が一番あるんじゃないかな、と思います。普通の人間ならもっと悩むはずのところで、ゲス家族は開きなおって、「働かなくていいじゃん」と平気で思える。しかも、家族すら利用するわけですから。本当に、笑えちゃいますよね。
――今回の忠臣は、これまでのシリーズの中でも最も控えめで、どちらかと言えばゲス一家が物語の中心になっています。山田さんは、何を意識して立ち居振るまわれたのでしょう?
山田:感じたとおりに動いたという感じですね。ただ、控えめになることは恐れないようにしよう、とは思いました。普通にこういう客だから、こう対峙しよう、という感覚というか。主演だし、主人公だし、という邪念を一切なくす。もちろん、どの作品でもそうなんですが、最近は控えることを恐れずに“生きる”ということだけをやれれば、と思っています。そうすると、あくまで自分の見た感じですが、「出過ぎなくても、案外伝わるんだな」と思っていて。もちろん、出るところ、出ないところを間違えちゃいけないですけど。今回は、そういう挑戦もあったんです。それと、より商売人としての忠臣、闇金・忠臣のような感覚・色が強かったので、より引き算で、目だけで語れるか。一言でどこまで思わせられるか、ということを意識して。本当に感じたまま受け取って出す、みたいな。単純な作業かもしれないですけど、究極的に難しいことを突き詰めてみよう、という感覚はありました。
山田裕貴 撮影=岩間辰徳
――先ほどおっしゃられていた、引き算の集大成みたいなものですね。
山田:ぼくとしては、バトンの受け渡しじゃないですけど、家族のほうにポイッと預けるつもりでした。それは、気を抜いているわけじゃなくて、あの家族を見て、「そのほうが作品が面白くなる」と思ったから、というか。ゲス一家の中で、誰が一番忠臣からお金を借りるか、と競い合うシーンがあるんですが……そこで忠臣が珍しく笑うのも、台本にあったからじゃなく、ただ“そう思ったから”なんです。今回は、表現の攻撃というか、前に出たのはそのシーンくらいです。「忠臣も笑うんだ」ということがわかる場面です。さげすんだ笑いはあまり見せないけど、人をフェアに見ようという視点もない。そもそも人に興味がない。そんな中で、初めて「本当にバカだな、こいつら」という感情を入れることで、より際立つと思いました。
――生活保護の不正受給についてのお話は『闇金ドッグス5』でも出てきましたね。実際にニュースなどでも報じられることの多い問題ですが、意図的にシリーズに現実を反映させているのでしょうか?
飯塚:ネタ探しはいつもしているので、世の中で起きている事件をヒントにすることも多いです。『闇金ドッグス5』は、まさに現実をトレースしているんですけど。ネットでは有名な、息子が借金まみれで生活保護が受けられず、お母さんも認知症という、哀しい事件をモチーフにしていて。そのときも思ったのは、「やっぱり、世の中にそういうことはあるよね」ということです。そして、あまりに哀しいことは、突き詰めると笑えてしまう。今回の『闇金ドッグス8』なんて、特にそうですよね。だから、はしばしに実際にあったことを入れ込んで、脚本にしているところはあります。『闇金ドッグス8』はフィクションですけど、よくネットでネタになっているフレーズはいれています。「働いたら負け」とか、「(生活保護で)なんで肉食べちゃいけないんですか?」とか。それと、生活保護の制度については、ホン打ちをやってるときは勉強して、なるべく今の制度に照らし合わせて、嘘がないようにする、ということは考えたりします。
飯塚達介プロデューサー 撮影=岩間辰徳
――リサーチをしていて、驚くようなこともあったのでは?
飯塚:実は『闇金ドッグス8』のラストは、描写も含めて、本当はもっと残酷だったんです。「保険金詐欺のために人間はここまでやるんだ」ということを描いた、『黒い家』という映画がありますが……それに近い、非常にヘビーなことをやろうとしていて。ただ、まさにその時、実際に似たような事件が起きてしまって。「これは無理だな」ということになったので、多少オチを変更しています。
――それくらいリアルだったと。
飯塚:そう。ぼくたちが考えていたのは脳内で描いていたことだけど、それくらいのことは実際に起きてしまう。想像を平気で飛び越えてくる現実があるんだ、と。自分たちで言うのもなんですけど、『闇金ドッグス8』は、ドキュメンタリーを観ているような感じになる作品なんじゃないかと思います。ぼくはラッシュを観たときから、「(ゲス一家のような人たちが)現実にいそう」と、妙に現実を垣間見ているような感じがしたんです。
――『闇金ドッグス』は、それをシリーズでやり続けてきたわけですね。やはり、何かしらの意義を見出しながら作り続けてこられたんでしょうか?
飯塚:単純に、好みで観たい映画だというのが根底にあるとは思います。ただ、わたしに限らず、ほかのプロデューサー陣、脚本家や監督とも話したりするんですけど、「厳しいものは厳しく描かないと、“啓蒙”にはならない」ということは、考えながらやっています。慈悲の心を持ちながら、「こういうことはやったらいけないですよ!」と言うほど、いいことをするつもりはないですけど。ただ、お客さんにも「やっぱり、怖いよね」という風に、心底染みてほしいとは思っていて。そのためには、こっちが逃げずに表現しないといけないんじゃないかな、と。だから、嘘はつかない。(映画的な演出という意味で)嘘はついても、なるべくブレずに、逃げずにやる、ということは心掛けています。
左から、飯塚達介プロデューサー、山田裕貴 撮影=岩間辰徳
――山田さんは、『闇金ドッグス』だけじゃなく、逃げない表現の作品や役柄を好まれているようなイメージがあるのですが。
山田:「嘘にしない」というのは、ぼくが好きなところなんです。普段は見ないようなことを見ないままでも、それはそれで知らないままで幸せなのかもしれない。でも、全部が見えたほうが、絶対に人として変わると思うんです。嫌なことから目を背けて逃げていても、ぶつかる壁はある。それが闇金じゃないにしても、人間は悩んで、苦しんで、悔しく思って、怒って、ということがあると思うんです。だから、人間の弱い部分を、嘘なく見せることができたらな、と思っていて。例えば、「結局、主人公とくっつくんでしょ?」っていう、綺麗すぎる恋愛ドラマもあるじゃないですか。そういうのって、別に上手くいかなくてもいいと思うんです。そういうのはつまらないというか、「みんながみんな、そんなに幸せじゃないよ」と思うので。だから、「(現実は)『闇金ドッグス』よりはマシじゃね?」とか、「こういう人間にはならないでおこう」とか、そう思ってもらえたら、それはそれでいい。いいものからいいものを学ぶだけじゃなくて、悪いものからいい影響を受けるのも、全然アリだと思うんです。
――なるほど。
山田:だから、ぼくはいつも脇役とか、悪役のほうが好きというか……そういう感覚はあります。悪いやつは、絶対にそれを悪いと思ってやっていない。正義だと思っていることが、結果的に生き方を間違えたから、悪いことになってしまっている、とか。
――忠臣にしても、ゲス一家にしてもそうなんでしょうね。
山田:忠臣は、ただの客としてゲス一家に相対しただけなので。「ハメられるな、この家族は」と思った。ただ、それだけのことだと思うんです。それが怖く見えたり、逆に家族が本当のクズに見えたり。それが面白いところだし、「こういう人間にはならないでおこう」と思ってもらえればいいな、と。やっぱり、“感動”って全員が共有できるものじゃないと思うんです。その人しかわからないものですよね。幸せじゃない人は、感動できるものを観ても感動出来ないと思います。でも、「怖い」とか、「嫌だな」とみんなが思えることは、一番共感できるし、共有できる感情だと思うので。
――感動は全員では共有できない、というのはとても腑に落ちます。飯塚さんが山田裕貴という人を『闇金ドッグス』の主役にしてくれてよかったな、と思います。作品の本質をこれだけ理解して、体現されているわけですから。
飯塚:ほんとですよ。ぼくの人生の中で今のところ一番よくやったというか……自分を褒めてやりたいですね(笑)。
山田:そう言ってもらえるのが一番うれしいです(笑)。
山田裕貴 撮影=岩間辰徳
映画『闇金ドッグス8』はDVDレンタル中。
インタビュー・文=藤本洋輔 撮影=岩間辰徳 2018年2月28日取材
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山田裕貴サイン入りチェキ 1名様に
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作品情報
(C)2018「闇金ドッグス8&9」製作委員会