クロスフィットトレーナー・AYAインタビュー「出来なかったことが出来れば、人生が豊かになる」“文化としてのワークアウト”への想い
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AYA
アメリカ発祥のトレーニング・クロスフィットが、徐々に日本でも流行の兆しを見せつつある。日常生活の動作をベースとしたトレーニングを通し、“実用的で強い肉体”を手に入れることを目的としたこのトレーニングは、欧米では極めて一般的。様々なスポーツ選手も参加する世界大会も定期的に行われ、文化として確立されている。そんなクロスフィットの日本での知名度向上に大きな役割を果たしているのが、AYAである。土屋太鳳や仲里依紗といった女優・モデルのパーソナルトレーナーとしても活躍する彼女は、『情熱大陸』(TBS系)などさまざまなメディアで頻繁に取り上げれられる一方、自身もモデルとして活動。“健康的な美しさ”を持つ新たなモデルの概念を日本に浸透させつつある。
そんなAYAが、「運動することは特別じゃない」という、フィットネス文化を日本でも根付かせるべく開催するのが、5月9日(水)に東京・チームスマイル/豊洲PITにて行われるイベント『AYA’S WORKOUT LIVE』だ。運動に馴染みの無い老若男女が参加できる「運動への入り口」を目指したという同イベントへの想いや、クロスフィットとの出会いなど、インタビューでたっぷりと語ってもらった。
「運動することは特別じゃない」文化としてのワークアウト
AYA
――流行しつつあるクロスフィットトレーニングですが、いったいどういう運動を指すのでしょうか?
簡単に言いますと、日常生活の動きを利用して、必要最低限の筋肉を鍛える一連の流れのことを指します。立ったり、座ったり、走ったり、歩いたり、重たい荷物を持って移動するとか、電車で網棚の上にあげるといった、人が何気なくやっている動きを応用したトレーニングですね。見せる身体ではなく、“動ける身体”を作るのをコンセプトとしていて、究極的には「人間の身体能力をどこまで高められるか」「潜在能力をどこまで引き出していけるか」をテーマとしています。
――トレーニング自体はハードなんでしょうか?
結構ハードなトレーニングではあるんですけど、それをどうやって日本人の生活に落とし込めばいいんだろう、と試行錯誤している段階ではあります。クロスフィットは、もともとアメリカのカリフォルニア発祥で、今もアメリカの人たちが中心となっているのが現状です。日本人はどうしても「楽をして痩せられる」とか、「これだけやれば痩せる」とか、そういった気軽なものに飛びつきやすい傾向にありますよね。そんな文化の中にどう溶け込ませるかが課題なんです。日常生活の延長線上で何気なくやっている運動なら、入りやすいと言えば入りやすいと思っています。トレーニングの動き自体は、日常的な動作から進化はしていきますけど、「こんな動きはやったことない!」ということをやるわけではないので。
――グループでトレーニングするイメージを持っている人も多いと思います。
そうですね。基本的にはグループワークアウトなので、しんどいものをみんなで共有します。みんなで励まし合ってトレーニングするのが、アメリカでは普通なんです。例えば、ロサンゼルスに行くと“マッスルビーチ”という場所があるんですが、そこにはジムにあるような器具が砂浜の上に建てられていたりして、知らないもの同士が声を掛け合ってワークアウトを始めたりします。フィットネスが日常生活、衣食住と同じくらいの文化になっているので、そういうことに違和感がない。日本では、ジムで「やろうぜ!」と、声を掛け合ったりしないですよね。日本人がシャイだからということもありますけど。トレーニングの文化が根付いていて、心が開いていると、みんなで声を掛け合えるのかな、と思います。
――コミュニティ的な側面もあるんですね。AYAさんは、文化としてのクロスフィットを日本に根付かせたい、という思いをお持ちなんでしょうか?
わたしがやっているのがたまたまクロスフィットなだけで、別にヨガでも、自転車のトレーニングでもいいんです。世の中には色んなフィットネスが溢れているので。わたしは、“運動する”という文化そのものを日常化させたいと思っています。
AYA
――AYAさんご自身は、もともとモデル兼フィットネスインストラクターとして活動されていらっしゃったんですよね。どういったきっかけでクロスフィットと出会われたのか、気になります。
モデルは、スカウトされて、「可愛い服を着られるから」という理由ではじめました。その頃は「モデルに筋肉は必要ないから、もっと痩せなさい。運動は筋肉がつくからやめなさい」と、すごく言われていたんです。そうすると、インストラクターとしては、自分で見本を見せず、「あれしてください。これしてください」と言うだけの“口だけの指導”になってしまうんですよね。お客さんからは「あの先生は口だけだよね」と思われて、信用を失ってしまいます。モデルとしても、野菜しか食べられないので、お肌がボロボロになってくる。お肉も食べないし脂肪分も摂らないので、身体自体は痩せましたけど、筋肉が落ちてボロボロになってしまった。そうなっても、モデルとしての仕事を約束されているわけではないんです。つまり、モデル、トレーナーどっちつかずの状態になってしまった。インストラクターとしては「口だけ」と言われるし、モデルとしても、大好きな運動をやめさせられていたから、生きているようで死んでいた。笑顔もないし、内側から出る美しさも一切ない。そうなると、仕事はとれないですよね。
――大変ですね。
そんな中で、わたしがクロスフィットに出会ったのは、まだまだ日本に情報がない5年ほど前のことです。YouTubeで検索して、外国人のクロスフィットアスリートがやっているのを見て、「こういうトレーニングをやっている」「ああいうトレーニングもある」と思いながら見ていました。動画のほどんどはアメリカから発信されているんですが、その中にオススメとしてヴィクトリアズ・シークレット(※編注:米国発の婦人服・下着ブランド)のモデルさんがランウェイを歩いている映像が出てきて。そこでは、日本では絶対に嫌われるような体型のモデルさんたちが、すごく堂々と歩いていたんです。彼女たちは、出るところは出ているカーヴィーな身体でありながら、腹筋も足も筋張っていて、腕の筋肉もしっかりしていました。日本で求められていた「細ければ細いほどいい」という価値観をひっくり返すようなモデルさんたちだったんです。しかも、彼女たちはいわゆるトップモデルとして確かなポジションを築いていて。そういうものを見ていると、日本で縮こまっているんじゃなくて、もっとワールドワイドに物事を見てみよう、と思えたんです。日本が最先端と考えるんじゃなく、海外のモデル業界とか、フィットネス業界にもっと目を向けていこう、と。クロスフィットは、死んでいた自分に、オアシスのように色んなものを与えてくれたので……目からウロコでした。そこからもう一度持ち直して、頑張ろうと思えたんです。
AYA
――現在は、仲里依紗さんや土屋太鳳さんといった方々のパーソナルトレーナーとしても、活躍してらっしゃいますよね。俳優さんやモデルさんは、何を目指してクロスフィットを始められる方が多いのでしょう?
「まずは運動不足を解消したい」というところから入る方が多いですね。見られるお仕事をされている方々って、やはりどこかストイックで。でないと、見られるお仕事なんて出来ないですし。彼、彼女たちにとっての一番のクロスフィットの魅力は、短時間で高い強度の運動が出来るから、忙しいことを理由に出来ないということです。2時間も3時間もやるわけではなく、1時間とか、短いときなら45分程度で終わることもありますから。その代り、倒れるくらい苦しいトレーニングなんですけど。でも、トレーニングは“ごっこ”じゃないので、しんどいのは当たり前。それなりにしっかりやらないといけない、という、トレーニングに対する自分の考えを、まずは皆さんに説明します。そうすると、そこからはみなさんスッと入ってきてくださいます。
――トレーニングについて、何かリクエストされるのですか?
昔はリクエストされることもあったんですが、今はみなさんわたしに委ねて下さいます。わたしが提供するものは大丈夫だろう、と信頼してくださっていて。ここ最近は、みなさん、「ここを痩せたい。あそこを痩せたい」とは言わず、「とにかく強くなりたい。強い身体を作って、どんな役にも対応できるようになりたい」とおっしゃいますね。女優さんは特にそうです。
出来なかったことが出来れば、人生が豊かになる
AYA
――俳優さんのように目的が明確ではない人や、これまで運動してこなかった人が、いきなりAYAさんレベルのシックスパックの腹筋を目指すのは、なかなかハードルが高いですよね。
みんなが最初から辛いことは出来ないですよね。高すぎるハードルを目指しても、そこに至るまでの道のりは絶対に大変だし、いきなり高くジャンプすることはできないので。その高さに届くために、まずひとつ、次にひとつと目標をクリアしていって、気付いたら高いハードルをクリアしていた、という導き方をしていかないと。いきなり高いレベルのものをクリアすることはできないですから、運動経験のない方でもちゃんとスッと入れるような指導の仕方は心がけるようにしています。クロスフィットをやっていらっしゃる方の年齢もさまざまで、60歳手前の方もいらっしゃいますよ。
――具体的に、運動経験のない方は何を意識して身体を動かせばいいのでしょう?
いきなり「筋トレをやれ!」と言われると辛いと思います。例えば腹筋のフォームにしても、寝転がったところから起こし上げるときに、どこに力を入れればいいのかわからない段階だと思います。ではどうするか?“自分に合うもの”を見つけるところからスタートするのがいいと思います。普通に歩いたり、走ったり……みんな、走ることは出来るじゃないですか。走ることひとつとっても、実際にやっていくと、身体が姿勢を保とうとするので、体幹がついてくるんですよね。だから、出来る運動を見つけることから始めてもらえれば、自信がついたから次にいってみよう、という風になるはずです。
――まずは一つ、クリアできるものを見つけることから始めるんですね。
そうです。じゃあ次はヨガスタジオに入会してみようかな、とか。家でワークアウトの本でも読んで、やってみようかな、とか。そういうことを少しずつやっていくといいと思います。人間は、一つ達成できると、もの足りなくなってくるので、そこから少しずつ上にいきたくなるんです。運動できない人に、「腹筋、背筋、腕立て、スクワットをやれ」と言っても辛いと思うので。まずは、何かしらで身体を動かして、汗をかくところから始めてもらいたいです。
AYA
――達成感がクロスフィットの醍醐味だったりするのでしょうか?
そうです。クロスフィットのいいところの一つは、出来なかったことが出来るようになる、ということです。子どもの頃を思い出してもらうとわかりやすいと思います。例えば体育の授業で、一輪車に乗れるようになったり、逆上がりが出来るようになったり、二重跳びが出来るようになったり……それだけでも嬉しかったじゃないですか。クロスフィットをやっていく過程で、大人になってからそのときの気持ちが復活するんです。「懸垂が出来るようになった!」「あれ?こんなに出来るようになってる!」と感じられるようになるのは、底力が上がっているから。その瞬間は、みなさんすごく喜びますね。今まで見てきた中で、喜ばなかった人はいないです。出来なかったことが出来るようになったら、次の段階に行ってみよう、と階段を踏んでどんどん次の動きにトライする。そして気が付けば、最終的に強い身体が出来ている。毎回、毎回、少しずつでも達成感を得ていくと、それが自信につながるんです。その自信は、仕事に活きてきたり、プライベートにも活きてきます。トレーニングやワークアウトって、人生を豊かにしてくれるものなんだと思います。性格すら変えてくれるパワーをもっている、ということをすごく感じていて。身体を鍛えるだけじゃなくて、内面にもプラスになるということをもっともっと広めてくのが、目標の一つですね。
――AYA’S WORKOUT LIVEは、運動が日常的なものであることがわかる、いわばクロスフィットの“入り口”になるイベントだそうですね。ただ、こういった大人数で運動するイベントは、日本では珍しいと思います。なぜ、ライブ形式でやろうと思われたのでしょう?
わたしに今のスタイルでやっていこう、と思わせてくれた、きっかけになった人がいるんです。ケイラ・アイトサインズ(KAYLA ITSINES)という、Instagramで1億人弱のフォロワーを抱える人気のトレーナーさんで。「そんなスタイルで、よくそんなことが出来るね」と驚くくらいの、しなやかで強い、美しい身体の持ち主なんです。そして、色んな人たちの人生を変えてきた方。人の人生を身体から変えていくということで、すごく結果を出している方なんです。彼女は、Instagramに自分が指導した方のビフォア・アフターの画像を載せているんですけど。そこでは、太っていて自分に自信のない人が、次第に身体がシュッとなっていく姿が写っていて。その人は、それが自信になってさらにライフスタイルを充実させていく。そのケイラが、シンガポールや、ロンドン、ニューヨークと、ワークアウトライブで世界を回るワールドツアーをやっているんです。しかも、彼女が告知したら、イベントの
――すごいですね。
彼女がやっているワークアウトライブのようなものを目指しているんです。彼女は東京ドームのような、スタジアムレベルの会場を回りながらやっているので、それにくらべれば、まだわたしがやろうとしていることは、ちっぽけなものなのかもしれません。彼女は、もちろんパフォーマンスも素晴らしいんですが、ワークアウトで日本のアーティストなみに人を動員できてしまうのがすごい。これは、海外でワークアウトという文化が当たり前になっているからこそ出来ることだと思うんです。まだ日本は運動に対するハードルが高いというか、そういう文化がないので……難しいのは重々承知しているんですけど、今回のAYA’S WORKOUT LIVEをきっかけに自分も学んで、最終的にケイラがやっているような活動を日本で出来たらいいな、と思っていて。その第一歩が、このAYA’S WORKOUT LIVEです。
――豊洲PITも1,000人規模の会場なので大きいと思うのですが、世界ではもっと大規模なワークアウトライブが行われているんですね。今回のAYA’S WORKOUT LIVEは、具体的にはどんなことをやるのでしょう?
今回は、とにかく「みんなで一つの運動を、何百人で共有する空間がこんなにも素晴らしいんだ」ということをわかって帰ってもらえれば、と思います。運動自体が出来なくても、わたしはいいと思っています。とにかくみんなで身体を動かして、汗をかく。その第一歩を踏み出して、楽しい!また続けよう!と思えるようなライブにしたいと思っています。全員がパーフェクトに身体を動かせるようにならなくてもいいので、楽しんでもらえたらいいな、と。
――AYA’S WORKOUT LIVEと、ご自身の今後の展開で考えてらっしゃることはありますか?
AYA’S WORKOUT LIVEについては、少しずつ会場を大きくしていきたいな、と思っています。そのためには、日本人にもっと運動を好きになってもらわないといけない。フィットネスを当たり前の文化に変えていかなければいけないと思っています。だから、わたし自身は、例えばテレビ出演だったり、雑誌だったりにも出て、どんどんワークアウトが大事だということを、もっともっとアピールしていけたらいいな、と思っています。そうして「この人誰なんだろう?」「こんなことをやっているんだ」と、興味を持ってもらえて、何かしらのきっかけになれる人物になれればいいな、と。こういうウェア、こういう服を着たいから、運動をやってみよう、とか……入口はなんでもいいんです。わたしは、そういうことのためのアイコンになれればいいな、と思います。
AYA
――先駆者として、アイコンになることが必要だと感じていらっしゃるのでしょうか?
先駆者というか……そういう方は、ほかにもいっぱいらっしゃると思いますよ。「腹筋女子」なんて呼び方も流行っていますし。わたしは先駆者だから、というよりも、トレーナーのイメージ自体を変えたいんです。日本のトレーナーって、すごく型にはまっているように感じていて。例えばトレーニングの本で言うと、トレーナーが著者・監修で、中身ではモデルさんが動きを見せているケースが多いですよね。つまり、裏方のような存在であることが多い。海外のトレーナーは……わたしの好きなケイラもそうなんですが、自分の持っているメソッドを自分がモデルになって打ち出している。そうすると、「このトレーナーさんのようになりたいから、このメソッドでやってみよう」と思ってもらえる。わたしは、昔からモデルをやりながらインストラクターをやっていたので、そこで繋がったんです。「これならモデルであることが活かせる。自分をもっともっと発信していこう」と思えたんです。だから、自分が運動している映像をInstagramで上げたり、ポジティブな印象を与えられるようなものを発信していく。モデルをやっていてよかったと思うし、新しい“フィットネスモデル”というカテゴリーも、もっと確立していきたいですね。
『AYA’S WORK OUT LIVE』は5月9日(水)チームスマイル/豊洲PITにて開催。
インタビュー・文=SPICE編集部 スチール撮影・動画編集=大野要介
イベント情報
日時:2018年5月9日(水)
第一部 15:00スタート 第二部 19:00スタート
会場:チームスマイル/豊洲PIT
協賛:ボディメンテサポートプログラム/Reebok
制作:Zeppライブ
イベント特設ページ:http://eplus.jp/aya-fitness/