MUCC 完全復活のZepp Tokyo 2days、オフィシャルレポート到着!
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MUCC 2018.5.22 撮影=西槇太一
MUCC。完全復活——。
5月21日・22日。MUCCはZepp Tokyoにて『MUCC 2018 ~復活の夜~ The WALL-CRIMEorDESTROY-』と題した、復活ライブを行った。
まず。MUCCというバンドをよく知らない人にとっては、“完全復活”“復活の夜”などと大々的に掲げられたら、このバンドがどれほど長く活動を止めていたのか気になるところだろう。
いやいや。その期間とは、活動休止といえども、2018年の1月から3月までのたったの3ヵ月である。
「は? たったの3ヵ月!?」
というのが、大半の反応であろう。それが当たり前。しかし。ここからして“MUCC”なのである。
彼らは、2017年に20周年という節目を迎えるまで、とにかくひたすらに走り続けてきたバンドであり、海外、国内ワンマンツアーはもちろん、ジャンルに壁を立てることなく積極的に参加し、怒濤の音源制作など、“とにかくひたすら”に“MUCC”というバンドを貫いてきたのだ。
そんな彼らが“やっていないこと”としたら、活動休止くらいだった、と説明した方が分かりやすいのかもしれない。
今回の活動休止は、最初から“有期限活動休止”と銘打ってのことであったのだが、説明したとおり、とにかく走り続けてきたMUCCが“3ヵ月も”の間活動を止めることは大事件であり、さらに、ワンマンライブに至っては、7ヵ月ぶりというのだから、MUCCのファンにとっては“ただ事”ではなかったのだ。
特に20周年目であった昨年の1年は、いつも以上に濃密な活動を自らに課して突進んできたことから、有期限とはいえ、夢烏(※ムッカー=MUCCのファンの名称)の3ヵ月の“MUCCレス”を思うと、それはそれは相当なものであっただろうことが察せられる。
実に、この“活動休止明け初ワンマンライブ”は、どれだけオーディエンスがMUCCを欲していたかを思い知らされた2日間となった。
MUCC 撮影=西槇太一
21日18時。開演1時間前。ステージに張られた銀幕に映し出された廃墟は、開演時刻の19時に向け、その景色をゆっくりと変えていった。
徐々に描かれた絵が枯れ、MUCCの象徴であるバンド名を象った梵字が、開演時間ちょうどにそこに浮かび上がった。
19時——。幕の向こうから、おどろおどろしいイントロが流れ始め、封印は解かれた。封印を解いたのは「蘭鋳」だった。いつもは、ライブの後半あたりの最高潮でぶち込まれる、古くからの暴れ曲が1曲目とは、なかなか思い切った最高の復活の形である。オーディエンスは、その挑発に渇望のすべてを曝け出した。
MUCC 2018.5.21 撮影=西槇太一
イントロの途中で幕がはぎ取られると、ギターのミヤとベースのYUKKEとドラムのSATOちが入魂のプレイを魅せる中、ボーカルの逹瑯は、“ようこそ”と言わんばかりに、品定めするようなシニカルな表情を浮かべ、中央のドラム台に腰をかけた状態でオーディエンスをライブへと誘った。
曲中に全員座らせ、SATOちのカウントで一斉にジャンプさせるというオキマリの煽りが存在するのだが、この日は、“こんなに離れてたことはないから、空いた時間と距離を、ちょっとずつ縮めていこうと思ったけど、やっぱり急接近してぇよな!”と、更なる挑発を加えたことから、オーディエンスの渇望は限界を越え、そこにいつも以上の地獄絵図を描き上げた。
これ以上に最高な復活劇はないだろう。
MUCCというバンドにしか宿すことができないと断言できる、“邦楽ロック”の魅力を彼ららしく描いた、激しく、けばけばしくありながら艶やかな影を潜ませる「極彩」から、「塗り潰すなら臙脂」「空と糸」「あすなろの空」「ニルヴァーナ」と、曲調はまったく異なれど、世界観に入り込みやすい流れで届けられていった。「ニルヴァーナ」の間奏明けに、客席に起った大合唱は、圧巻だった。
MUCC 2018.5.21 撮影=西槇太一
この日のセットリストは、事前にサブスクリプションサービス「Spotify」を用いて、セットリストの一部が募集されていた中から選ばれていたものであったことから、オーディエンス目線に立ち、“純粋に聴きたい曲”が並べられていると思うと、納得の並びだ。
これは、MUCC史上初の試みでもあったのだが、後のMCで、このセットリストを考えたオーディエンスが会場に来ていたことと、「極彩」から「ニルヴァーナ」までの流れが、偶然にも同じキーで構成されている楽曲であったことがミヤから明かされ、会場は大いに盛り上がった。
もう1つ。この日のセットリストの中で度肝を抜かれたのは、中盤で5曲まとめて新曲を投下したことである。これこそが、普通を嫌う彼らのやり口。活動休止期間中に作ったという、それぞれが作詞作曲を手掛けた4曲4色の異なる個性が放たれた。
ミヤ作詞作曲の「生と死と君」は、逹瑯によって伸びやかに歌われる愛と別れに、ミヤの台詞が絡み付く感情的な楽曲。逹瑯作詞作曲の「TIMER」は、デジタル色の強い音色のベースフレーズから幕を開ける、ポストロックが匂う新たな風であり、SATOち作詞(逹瑯共作)作曲の「レクイエム」は、バンドサウンドとオーケストラを見事に融合させたドラマティックな1曲。
YUKKE作詞作曲の「マゼンタ」は、悲しげなイントロを導入とするも、言葉が畳み掛けられていく静と動の振り幅の激しさが印象的な楽曲だった。(※この4曲は、シングルとして7月25日にリリースされる)
MUCC 2018.5.21 撮影=西槇太一
「なんかね、たまたまそれぞれの作詞作曲の曲を作ってシングルを作ろうって決まって、それぞれが自分のことを歌うっていうことが、偶然にもいろいろとリンクしたんだよね。ここまで何も無いところで合致するということがいままでなかったから、楽しみにしていてほしいです。“こうしたい”と思わなくても“こうなった”ことは、【運命】としか言いようが無いんだよね」
と、新曲の制作秘話を語ったリーダーのミヤの言葉に、オーディエンスは歓声と拍手を贈った。オーディエンスにとってその言葉は、4人の絆が見えた何よりも嬉しい言葉だったに違いない。
この他に、ミヤ作詞作曲の新曲「自己嫌悪」も届けられたのだが、サビで連呼されるタイトルは、まさに自己嫌悪に陥った心理状態を見事に描ききったライブ曲も暗く、人間の業を深く見せつけられる彼らの真髄を思わすものだった。
そんな最新のMUCCから、一気に、結成して初めて作った曲だという「狂想曲」へと舵を切ったその極端さも“彼ららしさ”だと感じた。
また、この日のアンコールでは、ラスト曲の「リブラ」終わりで、SATOちがステージ前方にドラムセットごと迫り出し、セットとして積み上げられていたステージ背景のブロックが崩壊するという予想だにしない演出で楽しませてくれたのだった。
MUCC 2018.5.21 撮影=西槇太一
22日。完全復活を遂げたMUCCは、初日とはまた全く異なる景色でオーディエンスを迎え入れた。前日ラストで起った背景の崩壊をそのままに、彼らは新曲「生と死と君」からライブをスタートさせた。
5曲まとめて新曲を投下した前日では、歓喜の声をあげながらも、必死でノリ方を探っていたオーディエンスだったが、2回目には早くも受け入れていた。乾燥していたスポンジが水を大量に吸収するかのような、素晴しい吸収力である。
2018年は、“新曲が出来たらどんどんライブで披露し、それをアルバムにしていく”のだというが、ライブで育て上げられた熟した楽曲たちで構築される新たなアルバムの完成形は、いったいどんな印象を与えるものになるのだろう。
彼らはそこから、1999年にリリースされた1stミニアルバムの中に収録されている旧曲「オルゴォル」へと舵を切り、「娼婦」「我、在ルベキ場所」という初期曲から、逹瑯の新曲「TIMER」、再び初期曲「ママ」と、大きな振り幅でオーディエンスを威嚇した。
MUCC 2018.5.22 撮影=西槇太一
前日がメジャーデビュー記念日でもあったことから、メジャーデビュー曲である「我、在ルベキ場所」が届けられたときには、とても感慨深く、初期の頃の彼らの姿をそこに重ねた。
闇深く哀愁をおびた日本人特有の業を個性とし、そこを軸としていた初期と、その時代からは想像がつかなかった英語を用いた歌詞と、オルタナティヴなヘヴィロックへと変化した現在のMUCCサウンドの同居に違和感を感じないのは、いかに進化しようとも、原点を見失うことなく“MUCC”を貫き通しているということと、旧曲を過去のものとして仕舞い込まず、常に“現在(いま)”の自分達のスキルに合ったプレイで進化させているからなのだろう。
この日は、前日と異なり、通常通りミヤが考えたセットリストであったのだが、新曲の5曲がセットリストの中に散在する形で届けられた、敢えて振り幅を楽しむライブになっていたように感じた。
「活動休止中、Twitterとか見ると、みんなライブやってんの。すげぇ置いて行かれてる気がして、ソワソワしたんだよね。ま、こっから追い上げて、一気に取り戻していきますけど。でもね、その間、仲間のバンドが“あの頃はZeppが大きく見えたけど、今はちょうどいい”って言ってんのを横目に見ながらね。ふんっ。俺には小さいけどなっ(笑)! なんて、いろいろと煮え湯を飲まされるような気持ちになってましたけど(笑)。MUCCのメンバー全員同じ気持ちだったと思いますよ。だからね、そんな想いを、今日と昨日でキミ達にぶつけてるわけですよ。でも、まだぶつけたりない! だからここからは、全力投球でキミ達に投げつけていこうかと思ってます。ちゃんとキャッチしてね。打ち返してくれてもいいよ。どこまでも飛んで行こうじゃねぇか! 着いてこいよ!」
本音を吐き出した逹瑯の言葉に続いて届けられたのは「フライト」。この曲がシングルとしてリリースされた当時は(2007年5月リリース)、こんなにも明るい曲をMUCCがシングルの表題曲として選んだことに、正直驚きを隠せなかった。「フライト」からわずが2ヵ月前の2007年の3月にリリースされた、暗く混沌としたサウンドと光を感じさせるサビのメロディに、鬱屈とした日々の中で生きる意味を探す歌詞が乗った、21日のラストでも届けられた「リブラ」は、シングル曲としてはマニアックなものだと思うのだが、当時、これこそがMUCCの根底であると感じていただけに、「リブラ」からの「フライト」へとバトンが渡されたときは、振りの大きさに驚かされたのだ。
が、しかし、いまや「フライト」は、ライヴで盛り上がる曲、愛されている曲としてMUCCの顔とも言える曲になっているのだ。あんなにも驚いた私自身も、「フライト」をライブで聴くときはいつも、改めてMUCCというバンドを長く見続けてこれたことへの幸福感にも似た至福に包まれるのは、この楽曲の持つ力なのだろう。
彼らが大きく成長するときにはいつも、聴き手を突き放すほどの挑戦に出る。今回の5曲の新曲達も、MUCCの未来を示す成長の証であり、大きくステップアップする前触れであると感じた。
セットで使われていた崩壊した壁(ダンボールでできたブロック)を客席に投げ込みながら届けられたアンコールラストは、次のライブを観ずにはいられない衝動に駆られる、深い余韻を残したのだった。
2日間に渡って示した彼ららしい【ただいま】の形は、MUCCにしかできない、唯一無二な宣戦布告であったと言えるだろう。充電を終えた2018年のMUCCには、これまで以上の狂気を感じる。
取材・文=武市尚子 撮影=西槇太一
MUCC 2018.5.22 撮影=西槇太一
リリース情報
2018年7月25日(水) 発売
※MUCCメンバー各々が書き下ろした新曲4曲入りシングル!
<初回盤> CD+エムカード MSHN-047~048 ¥2,300(tax in)
1.生と死と君(作詞 / 作曲ミヤ)
2.TIMER(作詞 / 作曲逹瑯)
3.レクイエム(作詞SATOち、逹瑯 / 作曲SATOち)
4.マゼンタ(作詞 / 作曲YUKKE)
※全曲編曲ミヤ
[初回盤特典] エムカード ※Zepp Tokyo公演写真、新曲メンバーインタビューなど随時更新予定!
<通常盤> CD MSHN-049 ¥1,800(tax in)
※収録曲は初回盤と同様になります。
ライブ情報
書籍情報
2018年6月29日(金)発売
定価¥2,500+tax A4変形判 / 176ページ
リットーミュージック商品ページ https://www.rittor-music.co.jp/product/detail/3117213010/
amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/4845632438