パノラマパナマタウンが“見たことのない熱狂”を掲げ、過去最大規模のハコを揺るがした代官山UNITワンマン
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パノラマパナマタウン 撮影=小見山峻
CORE HEAT ADDICTION TOUR 2018.6.9 代官山UNIT
「今日ここにはたくさんの人がいる。俺はよく知らんけどそれぞれに生活があると思う。何も考えんと生きられるような世の中だけど、俺はライブしてるときが一番生きてるって思うし、みんなも何となくでここに来たんじゃないと思います」
「だからまだまだ生きていたいと感じたときには俺たちのライブに来てくれ! よろしく!」
パノラマパナマタウン 撮影=小見山峻
ライブ終盤にあたる本編16曲目、「世界最後になる歌は」の最中、フロアの最後部からマイクを通さずに岩渕想太(Vo&Gt)がそう叫んだ。これこそがこの日バンドが最も伝えたかったことだろう。今思うと、ツアータイトルにも掲げられていた、そしてメンバーがオーディエンスを煽る際に何度か言っていた「熱狂」という単語。あれには音楽を通じて生身の感覚を取り戻していきたい、そうして血の通った人間同士で体温のあるコミュニケーションをしていきたいんだという、バンドの意志が反映されていた。
パノラマパナマタウン 撮影=小見山峻
今年1月にミニアルバム『PANORAMADDICTION』をリリースし、A-Sketchよりメジャーデビューしたパノラマパナマタウン。同作のリリースに伴い、2~4月には全12本の対バンツアー(「HEAT ADDICTION TOUR」)を実施。春フェス等の出演を挟み、6月には、現在の彼らにとっての本拠地・東京、そしてバンド結成の地・神戸でワンマンライブを開催した。このテキストでは、6月9日に行われた東京・代官山UNIT公演の模様をレポートしていこう。因みにこの日はバンド史上最大規模の会場でのワンマンだったが
パノラマパナマタウン 撮影=小見山峻
パノラマパナマタウン 撮影=小見山峻
そしてアナウンスの音声が途切れ途切れになった直後、けたたましくサイレン音が鳴り、それがSEに変わったタイミングでメンバーが登場。岩渕はキャノン型の消火器のようなものからフロアへスモークを放出し、「調子はどう!?」と投げかけている。そうして始めた1曲目は挨拶代わりの「PPT Introduce」。「PPT」コールも巻き起こるなか、曲の後半でグッとテンポが上がると、バンドの演奏はより渇望感溢れるものに変わっていく。続く「リバティーリバティー」、浪越康平(Gt)→田村夢希(Dr)→田野明彦(B)の順に岩渕と一対一のバトルをするように演奏する場面を経て、熱量はさらに上昇。フロント3人は衝動的にフロアの方へ身を乗り出していて、歌詞の通り、<はやる気持ちが溢れ出して止まらない>様子だった。3曲目は「マジカルケミカル」。浪越がクールにソロをキメるその背後で、他の3人がじゃれあうように楽器を鳴らしている姿も微笑ましい。
パノラマパナマタウン 撮影=小見山峻
パノラマパナマタウン 撮影=小見山峻
その後は、1stミニアルバム『SHINKAICHI』ボーナストラックの「寝正月」、3rdミニアルバム『Hello Chaos!!!!』収録の「エンターテイネント」、2ndミニアルバム『PROPOSE』収録の「Gaffe」「シェルター」、未音源化曲「ねぇ、東京」と続いていく。この日のライブも『PANORAMADDICTION』レコ発ツアーの一環ではあったものの、全体として、新旧の楽曲を織り交ぜたセットリストになっていた。バンドのアンサンブルはしっかりと交通整理されていて、以前よりメロ同士の絡みが見えやすくなった印象。それによって、ソロ回しで繋げた「シェルター」~「ねぇ、東京」間のようなライブならではの見せ場がより映えるようになっていたし、例えば「クラリス」のようにこのバンドの節(ぶし)が効いた、ある楽器の動きをきっかけに曲の展開が大きく変わっていくタイプの曲はより面白く聴こえるようになっていた。
パノラマパナマタウン 撮影=小見山峻
アウトロでオーディエンスに自らのマイクを預け、岩渕がオフマイクで叫んでいた12曲目「SHINKAICHI」までほぼノンストップ。その頃にはメンバー全員、汗で髪までびっしょりになっていた。熱狂と集中力をグッと高めた状態をずっと保っていたのだから無理もないだろう。この日唯一のMCらしいMCでマイクを取ったのは岩渕。
パノラマパナマタウン 撮影=小見山峻
まるで的の中心をまっすぐに射るように。この日の彼らは自分たちの熱狂を回り道せずに伝えることができていて、演奏に関しても、そして岩渕の言葉一つひとつに関しても、無駄な一手が少なかったように思う。それで結果的に、全部で18曲を演奏したにも関わらず、わずか1時間半というコンパクトなライブになったのだろう。それは紛れもなく今回のツアーを経たからこその部分だが、なぜこのように成長できたのだろうか――。それを考えながら観ていたら「世界最後になる歌は」の曲中、岩渕がオーディエンスの中を突っ切り、フロアの最後部へと辿り着いた。そして冒頭に引用したように話し始めたのだ。彼曰く、以前の自分たちは「俺のため」あるいは「4人のため」という意識で音楽をやっていたが、今では「俺の思ってる(世の中への)疑問・ズレが(聴き手にも)伝わるんじゃないか」と思っているのだそう。フロア全体を漠然と見るのではなく、オーディエンス一人ひとりの目をしっかり見ながらライブをするようになったのも「きっと伝わる」と信じられるようになったからなのかもしれない。
パノラマパナマタウン 撮影=小見山峻
会場全体が「ほっといてくれ!」の叫びでいっぱいになった「フカンショウ」で本編を終えると、アンコールでは翌日0:00より配信リリースされた新曲「$UJI」をいち早く披露。この新曲が私はとても好きだった。数字をモチーフに用いた歌詞は皮肉が効いているし、岩渕が手に持つおもちゃから偽のドル札を噴射しまくる演出もユーモアがある。そういうこのバンドらしい不敵さが発揮されていた一方で、歌詞の中に「本当は気にしたくないのに外野の声を気にしてしまう自分がいる」という作者側の人間臭い葛藤が見え隠れしていたのだ。「フカンショウ」もそうだったが、ここ最近岩渕の書く歌詞には、本当は目を背けたい自分の濁った部分もしっかり描かれている。それも、この日彼らが主張していた内容を鑑みればごく自然な変化だ。
パノラマパナマタウン 撮影=小見山峻
だからこそ最後に特筆しておきたいのは、コミュニケーションは決して一方通行では成立しないのだということ。本編終了後「俺たちにとっての熱狂できるものがロックバンドなら、お前たちにとってのそれは何だ?」(岩渕)と言っていたように、そして「$UJI」のラストフレーズに<ここからはアドリブ あとは任せた>とあるように、この日の4人は去り際にオーディエンスに対する問いかけを投げかけていた。人と人との対話というものは、相手の言葉に何かを返さなければまず始まることはない。
パノラマパナマタウンを観て、聴いて、あなたはどうする? その答えの先でバンドとオーディエンスが再会を果たしたとき、それこそ数字で計ることが無粋に感じられるほどの熱狂が生まれるに違いない。今後に想いを馳せたくなるような、良いライブだった。
取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=小見山峻
パノラマパナマタウン 撮影=小見山峻
セットリスト
2.リバティーリバティー
3.マジカルケミカル
4.寝正月
5.エンターテイネント
6.Gaffe
7.シェルター
8.ねぇ、東京(未発表曲)
9.PPT
10.ロールプレイング
11.クラリス
12.SHINKAICHI
13.ラプチャー
14.odyssey
15.MOMO
16.世界最後になる歌は
17.フカンショウ
[ENCORE]
18.$UJI
ライブ情報
2018年10月11日(木) 渋谷club asia
OPEN 18:30/START 19:00
w)後日発表
リリース情報
2018.6.10. Release
「$UJI」
「$UJI」 6/10(日)0:00より配信スタート
■iTunes
https://itunes.apple.com/album/id1388167803?app=itunes&ls=1
■レコチョク
http://recochoku.jp/album/A1010229148/
■Google Play Music
https://play.google.com/store/music/album?id=B5cexleqcz3mls2npgthvz6tnju
他
■Apple Music
https://itunes.apple.com/album/id1388167803?app=music&ls=1
■Spotify
http://open.spotify.com/album/6Jn5Mnuo75nNhNDtsYpThN
■LINE MUSIC
https://music.line.me/launch?target=album&item=mb000000000166d2b9&cc=JP
■Google Play Music
https://play.google.com/music/m/B5cexleqcz3mls2npgthvz6tnju
■レコチョクBEST
https://best.recochoku.jp/sp/?package_id=1010229148
■Amazon Music
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B07D988RY3
■KKBOX
https://kkbox.fm/Nl2qbU
他