白濱亜嵐インタビュー 戦争、自衛隊、家族、性体験への焦り……複雑な安藤桃子監督の映画で学んだのは「“役として生きる”ということ」
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白濱亜嵐 撮影=早川里美
EXILEや三代目 J Soul Brothersらに歌詞を提供してきた作詞家・小竹正人氏の詩から生まれた6つの楽曲と、全6編のショートフィルムで綴る 映画『ウタモノガタリ -CINEMA FIGHTERS project-』が6月22日(金)から全国公開される。『舟を編む』の石井裕也監督、『トイレのピエタ』の松永大司監督ら6人の監督が、岩田剛典、TAKAHIROら6組のキャストを短編ならでは語り口で演出する。
全く異なる魅力を放つ6つの作品の中でも、安藤桃子監督がメガホンをとった『アエイオウ』は、特に重々しい雰囲気が特徴だ。世界大戦を目前にした近未来の日本を舞台に、白濱亜嵐(EXILE/GENERATIONS from EXILE TRIBE)演じる若き自衛官・安住ひかるが山崎信人将補(奥田瑛二)の命を受けて極秘任務に赴き、かつての恋人(木下あかり)との思い出や、謎の老婆(林寿美)との交流の中で思いもよらない真実を突き付けられる、という異色の物語。「戦争」や「家族」といったテーマや、最低限の説明で観客に解釈を委ねる作風など、これまでに体験したことのない“役者”としての現場に、白濱は何を感じ、何を得たのか? インタビューで語ってもらった。
「脳みその中を覗いてみたい」安藤桃子監督の発想力
白濱亜嵐 撮影=早川里美
――かなり重いテーマを持ち、観る人の解釈によって印象が異なる複雑な作品だと感じました。最初に脚本を読まれたときの印象を聞かせてください。
正直に言うと、初めは理解できなくて。最初に監督にお会いしたときに、作品の概要が書かれた紙をいただいたんです。そこから台本をもらって、次にお会いしたのは撮影の初日だったんです。だから、監督とは初日に「これはどういう意味なんですか?」とか、色々と話し合った上で、撮影に臨ませていただきました。
――話し合いの中で、白濱さんは監督にどういった言葉を投げかけられたのでしょう?
抽象的なシーンが多かったので、「この言葉はどういう意味をもっているんですか?」「ここでは何を伝えたいんですか?」と、かなり事細かにお聞きました。安藤監督にも「観ている人にもそれぞれの捉え方をしてほしい」と言われて。だから、ぼくは余計に迷いました(笑)。でも、その都度監督はぼくのところに来て、話をしてくださいました。
――この役を通じて、俳優としてどう成長できたと思われますか?
この作品で、俳優として何よりもその場その場で“役として生きる”ということを学びました。安藤監督は、毎シーン毎カットと言っていいくらい、「ここはこういう風に演じて欲しい」とか、しっかりと説明してくださいました。ぼく自身も模索しながら演じていたので、監督と一緒にひかるという人物を作っていった感覚がありました。役って、自分一人で作りがちなんですが、「こうやって撮影しながら作っていく方法もあるんだ」ということを学びました。
白濱亜嵐 撮影=早川里美
――この映画では「戦争」がテーマのひとつになっています。作品に参加するにあたって、何か下調べされたんでしょうか?
ぼくはもともと軍事オタクで、防衛大学に行くのが夢だったんです。この仕事をしていなかったら自衛官になりたかったくらい、憧れていました。そこから偶然ですけど、この映画に出演することになって。監督に初めてお会いしたときに、「主人公は自衛官」と聞かされて、「ぼく、自衛官になりたかったんです!」という話から始まりました。だから、戦争については昔すごく調べていたことはあります。今回のために、あらためて戦争について勉強するということ特別にはなかったですね。
――戦争を前にした自衛官の複雑な心情も描かれていますね。
実際に自衛官になったわけではないので、想像して演技するしかなかったんですが……たしかに考えるところはありました。奥田(瑛二)さんはそこですごくアドバイスをしてくださったんです。普通の二十代の隊員がトップに呼び出されて極秘任務を与えられるというのは、本当にはあり得ないことなんでしょうけど、「実際にそうなったら、どう思うんだろうね?」という問いかけをもらったんです。その時は正直、答えが出ませんでした。こうやって演じさせていただいたんですけど、いまだに「どんな気持ちなんだろう?」という問いに、明確な答えは出せていないです。
――容易に答えを出せる状況ではないでしょうしね。ひかるは、過去の回想シーンで彼女に対してとても酷い言葉を投げかけます。戦争、家族、仕事、と様々な要素が絡んだ複雑な状況下での言葉ですが、心情は理解できましたか?
ひかるは自衛官になるために頑張って、何もかも捨ててやろうとしているときに、彼女の行動や態度が気に障って、キレてしまうんです。ずっと“こっち”ばかりを見てきたから、女の子への対応がわからない……そういう感情なのかな、と思いながら演じました。安藤監督は、「ひかるは絶対に童貞なんだ」と、かたくなにおっしゃっていましたね。
白濱亜嵐 撮影=早川里美
――なるほど。確かに、性体験への焦りのようなものは感じました。そんな複雑なお話が、GENERATIONSの「何もかもがせつない」にインスパイアされて作られているんですよね。この歌詞からここまでイメージを広げた安藤監督に驚きました。
それはぼくもすごく思いました。安藤監督の発想力は素晴らしいですよね。でも、映画を観終わって、「何もかもがせつない」が流れると、歌詞の内容にすごくマッチしているんじゃないかな、と思いました。自衛官として仕事に失敗するし、恋人も離れて行ってしまうけど、最後に少しだけ希望が見えるというか。安藤監督は最初にお会いしたときに、「歌を聴いて、この作品が出てきた!」と、自信を持っておっしゃっていたので、本当にすごいと思いました。脳みその中を覗いてみたいですよ(笑)。
「“劇団”から入っているということは、いまだに根底にあります」
白濱亜嵐 撮影=早川里美
――共演のみなさんも個性的です。奥田さんは経験豊富な俳優さんですが、共演されて、いかがでしたか?
奥田さんとの初対面は衣装合わせだったんですけど……めちゃくちゃ怖かったです。何が怖いというわけではないんですけど、存在が怖いというか。オーラがありましたし、お会いした瞬間にぼくも背筋が伸びて、「ピシッとしなきゃ」という気持ちになりました。でも、意外にお話ししてみるとすごくフランクな方で、怒られることも一切なかったですし、お芝居も親身になって一緒に考えて下さいました。
――恋人役の木下さんとはラブシーンもありましたね。
本当はあそこまでやる予定はなかったんですけど、監督が「よし!やってみようか」って、そのノリで始まったんです(笑)。「こういう流れでこの座組は進んでいくんだな」と、その場で理解しました。その都度、(台本から状況が)変わっていくというか。
――やはり白濱さんにとって新鮮な現場だったんですね。新鮮といえば、林さんも演技経験のない方と聞いています。
林さんは、現地で監督が知り合い伝いでスカウトしてこられた普通のおばあちゃんだったので……撮り方も新鮮でした。林さんは台詞を覚えられないので、現場に孫さんがいらっしゃっていて。お孫さんが台詞をしゃべって、それをなぞって林さんがしゃべって、それをぼくが受けてしゃべるんです。普通の撮影ではあり得ない間が一つあるので、その間を上手く“無いもの”として、シーンを完結させるのに意識を持っていくのが大変でした。
白濱亜嵐 撮影=早川里美
――特殊な撮影ですね。
林さんはすごくナチュラルな方で……本当に純粋なんです。この映画には、普通のおばあちゃんが発しないような台詞がたくさんあるんですが、安藤監督はそこに狂気を感じさせたい、とおっしゃっていて。撮影に入った日に、安藤監督に「スカウトしてきたよ!」と言われたので、「これはすごい撮影になりそうだ」と思いました(笑)。
――ほかに思い入れのある台詞やシーンはありますか?
映画の終盤で、奥田さん(演じる山崎信人将補)から聞いた言葉を、そのまま繰り返しつぶやき続けるシーンに、すごく思い入れがあります。あそこから最後まで2ページぶんの台詞、実は撮影前日にまるまる変わったんですよ。最初はラストシーンに渋谷でマイクを持って、若者たちに向かって叫びながら、今の想いをぶちまける、みたいな内容だったんです。それが撮影の関係で出来なくなって、「じゃあ!」と安藤監督が書き換えて……前日の23時にとんでもない量の長台詞が送られてきた(笑)。
――(笑)
すごく驚いたんですけど、「やれるだけやってみよう!」と思いました。あの長台詞は心にグサグサくるものがありましたね。地名とかも一語一句間違えず、同じ言い方で、ブツブツと自分に言い聞かせるようにしゃべる。ちょっと削られてはいたんですけど、トンネルの中であの長台詞を2、3回繰り返しながらずっと歩いています。
――劇団EXILEからスタートされて、その後パフォーマーになられました。俳優の仕事は、白濱さんにとってどういうものなのでしょう?
色々なことをやらせていただいていますけど、ぼく自身、最初に“劇団”から入っているということは、いまだに根底にあります。パフォーマーも同じくらいの気持ちで臨んでいるんですけど……寿命というか、踊れなくなるときは来るので。「自分からダンスを取ったときに、何が残るのか?」と考えたときに、真っ先に出てくるのが“役者”なのかな、と思います。最近は、よりそう感じますね。
――『アエイオウ』は、役者としてのステップアップという意味でも、意義ある作品だったんでしょうね。
そうですね。もちろん、今まで出させていただいた作品も本当に素晴らしいですけど、今回が一番「役者をやっている」とすごく感じました。
白濱亜嵐 撮影=早川里美
――役者の仕事が決まったときは、どんな心境なんでしょう?
「キターーーー!」っていう感じですね(笑)。役者をメインでやっているわけではないので、やっぱり毎回嬉しいです。まず、「これはイヤです」って言ったこともないですし、まず出られることに感謝です! どんな役でも出られることが一番嬉しいですし、ぼくはまだまだ作品を選べる立場でもないです。今は20代を折り返すくらいの時期ですけど、まだまだ吸収するときかな、と思います。
――パフォーマーの経験やスキルが、演技に役立ったことはありますか?
パフォーマンスをやっているので、身体の自由が利くというのは、アクションをやるときにはあります。それと、今回はなかったですけど、殺陣を覚えるのは早いとは思います。
――『HiGH&LOW』のアクション監督さんや監督さんにお話を聞くと、EXILE TRIBEの、特にパフォーマーの方は「キメの画がすごく決まる」そうです。ご自身では、どう思われます?
どうでしょうね……キメの画というのは、ダンスでいうポージングに近い感覚なのかもしれないです。ぼく自身はあまり実感したことはないですけど、外から見てそうおっしゃる方は多いかもしれないですね。
――逆に言うと、『アエイオウ』ではパフォーンマンス経験をあまり活かせなかった?
そうかもしれないです。あ、でも安藤監督に「さすがパフォーマー!」って言われた記憶があるんですけど……何の場面で言われたのか思い出せない(笑)。
――(笑) それはすごく気になるじゃないですか! お話を聞いていると、安藤監督はどちらかと言うとパッションで撮られる方のような気がしてきました。
そうですね。どちらかというと、感覚で撮られる方なんだと思います。撮影が終わった後の打ち上げで言われたんですが、安藤監督は男性を主演に撮るのが初めてだったらしく、「初めはどうやって接したらいいのかわからなかった」とおっしゃっていました。でも、「2日目くらいから、めっちゃ愛情湧いてきたよ」って(笑)。
――意外にすぐですね(笑)。
「2日目だったんかい!」って思いました(笑)。
白濱亜嵐 撮影=早川里美
映画『ウタモノガタリ -CINEMA FIGHTERS project-』は6月22日(金) 全国ロードショー。
インタビュー・文=藤本洋輔 撮影=早川里美
プレゼント情報
白濱亜嵐サイン入りチェキ 1名様に
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