THE ORAL CIGARETTES インタビュー あらゆる方向に突き抜けた無敵の最新盤『Kisses and Kills』はいかにして生まれたのか
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THE ORAL CIGARETTES 撮影=大塚秀美
やってくれた。待ってました。ここ数年、矢継ぎ早に“次の一手”を打ち続け、ライブの動員も知名度も右肩上がりの活動を続けてきたTHE ORAL CIGARETTESの4thアルバム『Kisses and Kills』は、掛け値なしに現時点での最高傑作だ。様々な方向に突き抜けた彩り豊かな10曲で彼らは、これまで培ってきたバンドの武器をより研ぎ澄ませるだけでなく、楽曲自体もサウンドメイクの面でも、チャレンジングな試みをふんだんに盛り込んできている。
「自分たちらしい音は何か」から、「自分たちが鳴らす音は何か」へ。新たな次元に突入した4人に、現在の心境とアルバム制作過程について語ってもらった。
――「もうアルバム?」って一瞬思ったんですよ。
山中拓也:ああー、たしかに。
――でも、前作からは1年5ヶ月空いていたから、「あ、普通か」と。でも逆に「ONE’S AGAIN」や「トナリアウ」あたりはずいぶん前の作品のような印象もあって、要するにそれだけ止まることなく進んできた1年だったんだと思うんです。
山中:うん。モードがすごい変わっていった1年でしたね。「こうすればこうなる」「こうしたら上手くいく」って頭で考えていた部分を取っ払える段階に、お客さんが連れてきてくれた1年だった気がします。アリーナ(ワンマン)も2回経験させてもらって、今のロック界隈から頭一つ抜けるためには?って改めて考えたときに、「もう頭を使ってやるような次元じゃないな」って気付かせてもらって。どこまでもっと自由に自分たちを出せるのか、俺らがもともとロックスターの何に憧れたのか?っていう原点に戻らせてもらった1年かなって感じますね。
――そういう意識の変化はそれぞれにありました?
あきらかにあきら:武道館終わりくらいには、この先はどういうテンションがいいのか、どこへ向かえばいいのかって悩んでいたというか。ここからまたみんなで一つになって進むには、どういう目標を立てたらいいのかなって、メンバーともそういう話をしてました。そうしたら拓也もすごい悩んでたんですけど、自分らが楽しまな楽しませられへんで、という結論になって、楽しむことを軸にやってみたら、今まで「ライブ中はこうじゃなきゃいけない」「俺らはこうや」みたいに固くなっていた部分を取っ払えて。お客さんもより“素のオーラル”に惚れてくれたり、そこに甘えられるくらいファンが付いてきてくれたから、深い絆でつながれたって感じます。
鈴木重伸:アリーナクラスが終着点じゃないよなっていうのは、去年1年、なんなら今年の頭くらいまで使って考えて。まだまだこの先もやりたいことがあるし、行きたいところもいっぱいあるよなって思ったときに、違う視点の考え方があるなって気づきました。武道館が終わったときは「あ、できるんや」って感じたんですけど、城ホールが終わったら、あの「できるんや」ってすごくハードルの低いところの「できるんや」やったな、もっとあるよなって改めて思ったし、それはバンドが成長したっていうことでもあると思うんですけど。もっと先を見ていかなきゃいけない、今後の僕らが一番念頭に置かなきゃいけないことはそこだなと、思うようになりましたね。
中西雅哉:バンドを始めた頃って、楽しくてやってたし、好きなものややりたいことを表現するガムシャラ感というか、自然と出てくる自分たちの感情とかスタイルでやっていたのが、だんだん観てくれる人が増える中で、自分たちはどういうバンドなのかとか、どういうものを求められているのかとかを考えていたんですよ。それが結果的にお客さんを増やすことにつながったのは間違いないし、また自分たちの原点の、モチベーションで突き進むとか、自然体で表現するっていうところに戻ったときにも、そこまでの経験や見てきたものをちゃんと吸収して、そういう武器を持った自然体になれているのが強みな気はするから、今のオーラルがすごく楽しく自然体にやりながら、自己満足じゃなくちゃんとお客さんを巻き込むパフォーマンスが見せられるのは、去年や一昨年の活動がちゃんとバンドやメンバーに染み付いているからなんだなって、すごく感じました。
――大阪城ホールでのワンマンもやはり影響が大きかったですか?
山中:武道館は初めて立ったのがワンマンだったから、その感動がすごく大きくて、自分たちのテンションが上がったり達成感につながった部分もあったんですよね。で、そのあとイベントとかで大阪城ホールに立ったときには、正直「大阪城ホール、小さいな」って思ったんですよ。全然大きく感じなくて、これなら全然できるなっていう感覚の中で、より良いショーを見せるためにどうするか?って色々と詰めて、準備万端の状態で(ワンマンに)臨んだんですよね。だから武道館のときよりもよりストイックにやった気はしていて、もちろん感動はあったんですけど、それよりも冷静さが勝っていた気はする。そのときに「俺らがもっといいライブをするためには、リミッターが外れる瞬間みたいなものがないとダメなんだろうな」っていうことに気づいたんですよ。
――なるほど。
山中:まあ、冷静だった要因もあるにはあって。俺らは「ReI」っていう楽曲をツアーの段階から通して伝え続けてきていて、その集大成が“ReI of Lights”っていうタイトルをつけた大阪城ホールだったんですよ。「ReI」っていう曲が本当に伝わったのか伝わってないのか、音楽の力を信じていいのか信じちゃダメなのか、みたいな部分の答え合わせの場だなってずっと思っていたから、アンコールで「ReI」をやるまでずっと気を張ってたというか。「ReI」をやったときにその冷静さがバーンと崩れて、「伝わってた、よかった!」っていう安心感があって、緊張がすべて溶けました。自分でもすごく感動した瞬間が「ReI」だったし、僕にとって大阪城ホール=「ReI」だったなと。あとで映像を客観的に見返してもすごくいいライブだったんだなぁっていうのは思いますけど、やってる自分たちはすごく冷静だったと思います。
THE ORAL CIGARETTES 撮影=大塚秀美
――せっかくなので、あらためて「ReI」およびそのプロジェクトについても伺いたいです。どういう考えから生まれて、何を目指していくものなんでしょうか。
山中:過去のことはもう起こってしまったことだから、そこに囚われず、その起こったことがどう未来につながっていくのか?を歌っていきたい楽曲で……なんだろうな、ReI projectっていうものにはきっと終わりが無くて。
俺らはずっと天災を背負って生きていかなきゃいけない。時代がいくら巡っても、自然っていうものとは絶対に共に生きていくし、そこから逃れることは絶対にできなくて。じゃあ俺らはこれからどう向き合って生きていくの?っていうことを、どの世代に向けても歌っていかなきゃいけないんだろうなっていう。
――うんうん。
山中:俺らも阪神淡路大震災を経験してるんですけど、年齢的にそんなに覚えてないんですよね。だから正直、そのへんの危機感が無くて、そのあと福島だとか熊本とかでああいうことが起きたのがやっぱりショックだった。もっと自分たちがそのときのことを覚えてれば、とすごく感じたし、こういうことがこの先あるんだっていうことを分かっておくだけでだいぶ違うんだろうなとも思いますし、あとはやっぱりそういう「怖いな」とか「辛いな」って思う瞬間が、天災によって起こって……天災だけじゃなくて広島や長崎もそうだと思うんですけど、何か辛いなっていうときに、いつでも「ReI」が自分の手元にある状態を作っておきたかったのが、ReI projectとして無料配信する決断をした一番大きな理由だったんですよ。
大事なのは、そのときそのときに起こったことに対して動くんじゃなくて起こる前に動こうっていうことを、いかに俺らが考えながら、このReI projectを動かせるかっていうところだから、俺らの活動とは別軸でもいい。オーラルがReI projectをやっているということやオーラルっていう名前も知らなくていいんですよ。「ReI」っていう楽曲が持つ力で、どこまでみんなの意識を変えられるか、未来を明るくできるかっていうことを発信していきたいなって思ってます。
――それだけこの曲を作らざるを得ない想いが強く生まれたからこそ作ったし、城ホール公演の軸にも据えたわけですよね。
山中:そうですね。それは反動といえば反動なんですよね。俺らはずっと触れてこなかったんですよ、事件とか災害に対してどういう曲を書くかとかには。でもやったほうがいい、動かないより動いたほうが絶対にいいって思えたぐらい、やっぱり衝撃的なことだったから。2年くらいかけて楽曲も作ったのもそうだし、「ReI」を作るならReI projectをしっかりと立ち上げようとしたのもそう。やるからには絶対に中途半端には動きたくないし、中途半端に「大丈夫ですか」「辛かったですか」とか言うつもりはないっていうことが、大阪城ホールで「ReI」っていう曲を掲げた一番の理由だったのかなと思います。
――そしてその「ReI」は今回のアルバム『Kisses and Kills』にも入ったわけですが、そろそろアルバムの話に移りますね。……これはもう文句なしに最高傑作じゃないか?と思いました。
一同:うええーーい。ありがとうございます!!
THE ORAL CIGARETTES 撮影=大塚秀美
――何かを突き抜けたような感覚がひしひしと伝わってくるんですが、作った本人達的にはどんな手応えですか。
あきら:すごい、手応えはあります。デモが拓也から届いた時点から「これを自分らができるのか?」って悩むレベルの幅の広さやったんですけど、そこに拓也が行こうとしてるのは、さっき言った通り「より楽しもう」とか「好きなことをしよう」っていう、音楽を始めたときのような感情に立ち返ったからだなって。この飛び抜けた楽曲達は、ちゃんと新しいものとして臨みたかったし、今までだったらこうしてたとか、そういう固定概念を一回外して、楽曲の良さを生かせるアレンジをすごく意識しました。それが結果としてこうやって10曲並んだときに、1曲1曲の色もすごく濃くて、でもオーラルやって自信持って言えるものになったので、本当、文句無しの最高傑作ではあります。
――実際、この10曲はいろんな方向に突き抜けてると思うんですよ。飛び出てきたものを戻すんじゃなく、どんどん伸ばしていって、それでもちゃんとオーラルの作品として成立させたのはすごいことだと思います。パートごとにアプローチしていく中ではどうでした?
鈴木:拓也と雅哉がデモを作ってる場に行ってニュアンスについての会話を聞いてたおかげで、「あ、この曲はそういうことね」っていう理解がいつもより早かったから、その気持ちのまま曲に集中できたことが、多分さっき言ってもらったいろんな方向に飛び抜けていけた理由かなって思いますね。それに、単純に楽しかったんですよ(笑)。アルバムの制作で思い返させてもらったこともあるし、自分の引き出しになかった新しいものも開けさせてもらって。「こうすればオーラルの正解じゃね?」みたいな意識が何となく出来てきていたこのタイミングで、そうじゃないことができたから、この先もやっていくのが楽しいなって思えましたね。
――これまでと違った方向にいく曲に対して、これはどうしたらいいんだ?みたいな迷いはありませんでした?
鈴木:ありましたね。曲調に寄せてみたりもしたんですけど、俺はそこまで変わっちゃいけないなっていうのは、今回すごく思いました。“オーラルに戻す”じゃないですけど、曲に寄せすぎると、違うバンドがやっても正解じゃね?みたいな曲になってしまうから、俺だけはそれこそ初期衝動で乗せたようなものを作る方がいいんだろうなって。
――まさやんさんはデモの段階から関わっていて、今作はどんなことを感じましたか。
中西:僕は、拓也の中にやりたいイメージとかが降ってきた段階で呼び出されるので、それを具現化する作業なんです。拓也が去年あたりずっと聴いてた楽曲も横目に見ながら、なんとなくアンテナを張ったりはしていたので、こういう楽曲の雰囲気が出てきても違和感はなく自然と取り組めたし、何より拓也がイメージしてるものを自然に形にしたいなって今回は思ってました。今までだったら拓也が「こういうドラムを作ってほしい」って言ったときに、どうしてもドラマーとしてのセオリーみたいなものに嵌めて修正しちゃうことがあったけど、それを今回は避けたい気持ちがあったので、わりと客観的に取り組んでいきましたね。
――今回はシンセっぽい音が鳴っていたり、エフェクトの音色だったりでも、新しい印象を与えてますよね。そういう要素も拓也さんの中では当初からイメージしていたんですか?
山中:ありましたね、全部。なんなら、デモの段階ではシゲが弾いてるリードギターの代わりをシンセがやっている楽曲もあったし、そこは結構意識しました。新しい要素というよりかは、自分がそのとき聴いていたものだとか、本当にやっていきたいものには、そういう要素が必要不可欠だったりもしたので、意識的に入れていきました。
THE ORAL CIGARETTES 撮影=大塚秀美
――今までのパブリックイメージであり自分達でも口にしてきた、“ダークサイド”っていうキーワードがありますけど、今回はそこに全然囚われていない印象です。むしろ聴きようによってはキラキラしているくらいの。
山中:なるほど。……難しいですけど、なんというか、今まではお客さんの顔がすごく浮かびながら曲を作っていたんですけど、それに加えて今回はメンバーの顔とか、去年1年自分の周りにいたメンツの顔も浮かんで、そいつらを絶対にギャフンと言わせたい気持ちが強かったんですよね。
去年の1年間はすごくクリエイターと絡むことが多くて、今も周りにいるやつがクリエイターばっかりなんですけど、そういう環境に自分が身を置いたときに、そいつらに「ダサい」「この人たちの音楽、売れてるけどあんまりカッコよくない」って思われるのが本当に嫌だったんですよ。でも、それ以上にメンバーから「やっぱり拓也に付いてきてよかった」って思ってもらいたい気持ちが一番でかくて、このタイミングでここまで仕掛けていいのかな?って一瞬は思いましたけど、メンバーを驚かせたいし振り切ってやろうって思えて、作っていきました。
――ファンの受け止め方だったりを考えて躊躇する段階は、すでに突き抜けたのかもしれないですね。
山中:そうですね。ライブでより自由にっていうところが自分達にとって大切で、自分達がリミッターを外せる楽曲じゃないとライブでやっている意味がないなともすごく感じていたので。より自分が一番気持ちよくなれる曲、みたいなことを意識していたかもしれないです。
――ちなみにリード曲でいうと「容姿端麗な嘘」ですか?
山中:そうなんですよ、ね……ねー(笑)。
あきら:(笑)。
――どうしたんですか(笑)。
山中:「容姿端麗な嘘」が総合的に、この『Kisses and Kills』っていうアルバムを一番象徴していて、まとめてくれてるんじゃないかなっていうのはすごく思っていて。シンセを一番最初に使おうと思ったのもこの曲だし、一番最初にできたのもこの楽曲だったから、このアルバムを紹介してくれる曲として一番当てはまったっていう。でも、リード曲っていうのか……イントロダクション曲っていうのか、そういう感覚ですね。
――じゃあ今回、明確ないわゆるリード曲っていうものは存在しないとも言えますね。
山中:ないっすね。「これが一番いいです」って言って「容姿端麗な嘘」を出してるわけではない!(一同笑)
――実際良曲揃いで、「もういいかい?」とかもすごく好きでしたし、あとは「What you want」の、曲調もポップスだし女性コーラスまで入るしという新しさも推したい。
山中:ああー、うれしいです。
――個々に「これは思い入れが強い」「これが好き」っていう曲はありますか。
中西:僕はそれこそ「もういいかい?」が。わりと後半にできた曲ですけど、「Ladies and Gentlemen」とか「PSYCHOPATH」とか、最初の頃に作った曲の個性が強すぎたから、俺はだんだん「どんなアルバムになんねやろ?」と思っていってて。で、そこで拓也が「もういいかい?」のバッキングを入れ始めたときに「あ、これこれ! 俺がこのアルバムで一番欲しくなるのはこういうこと!」って。
山中:(笑)。
中西:アルバム全体をイメージできたのはこの曲ができたからだし、来てくれてありがとうっていう曲であり、好きな曲ですね。
鈴木:「PSYCHOPATH」「容姿端麗な嘘」「What you want」っていうあたりは、ギターのサウンド的な部分を差別化していく意識で考えながら作ったなっていう、思い入れがありますね。今までだったらエフェクトを一発かませば全部一緒の音でも成り立ってた3曲なんですけど、それはちょっと違うなと思って、どうやったら差別化できるか、どうやったら印象が変わっていくかなって、すごく悩みましたね。ライブでも「容姿端麗な嘘」をやったりしてるんですけど……私はなかなか面倒くさいことをしたなと、今になって後悔しております(笑)。
――ああ、足元の話とかも含めて(笑)。あきらさんはどうですか?
あきら:僕は「リブロックアート」かな。この曲以外にも何個か候補のデモが上がってきた中で「どれをアルバムに入れる?」っていう話をしたときに、この曲を入れたい、やっぱりアルバムの中でこれぐらいバンド感を出したいなって思ってたんです。やっぱりバンドだから。新しい挑戦を色々としていく中でも、こういう今までに培った僕らの武器みたいなものがちゃんと入ってる曲を入れることで、お客さんも安心するのかなって。
――僕もこの曲は手元のメモに“オーラル印”って書いてます。
一同:(笑)。
山中:「リブロックアート」はあきらの強~い希望で入れたので(笑)。最初にアルバムの構成が頭に浮かんできたから、後から入れたのは正直「リブロックアート」くらいなんですよ。もし「リブロックアート」が入らなかったら、もっとクセ強い曲がここに入ってたんですけど(笑)、「リブロックアート」を入れたいっていう意見も、最終的に客観視したら「なるほどな」ってすごく感じたし、自分はもう好きにやっていいんだなって思ったというか。今はもうメンバーがバランスを取ってくれるから、僕は放出するだけで、メンバーがそこに対して驚いてくれたりとか、楽しんでくれたりっていう環境を、これからは作っていくんだろうなって。どれに思い入れがあるかというより、そう感じさせてくれた楽曲達ですね。
――なるほど。じゃあ、今回はわりとスムーズではあったんですか? 制作自体は。
山中:……!!
――そうでもない?
山中:全っ然そうでもないです(苦笑)。一番最初にすごく迷ってた時期、全然曲ができなかった時期にも雅哉を家に呼んで、こういう曲を作ろうと思ってるけど全然うまいこといかへんし、全部ボツになりそうやわ、みたいなことを話してて、それが12月から1月くらいまで。結局それまでに作ってた曲は全部ボツになって、そこからまた一人で考える時間があったんですけど、難産で全然出てこなくて。でも一回「もう作るのやめた」って気を抜いて、PCの電源とかも全部落として寝ようとした瞬間に、これ(『Kisses and Kills』)全部降ってきたんですよ、一気に。
――え、その一晩で。今までにもそういうことってあったんですか?
山中:全くなかったです。教えてほしいです(笑)。だからスムーズではなかったですね。デモが上がってからはみんな楽しんでやってくれてスムーズではあったですけど。
中西:大阪城ホールの後がレコーディングだったので、大阪城ホール前になんとか終えて。
山中:間に合ってよかった!って感じですね。一回マジで諦めたので。
THE ORAL CIGARETTES 撮影=大塚秀美
――でもその難産具合が、音には出てないですよね。たまにそういう苦心の跡が見える作品もありますけど。
山中:イメージが完成してからできあがるまでがめっちゃ早かったからだと思うんですよね。いつから作り始めたか?って考えるとめっちゃ難産でしたけど、ブワーっと降ってきてからでいえば超安産じゃないですか(笑)。
――たしかにそうですね。その結果として出来上がったこの作品、今までのファンは当然のこと、それ以外の人にも届いていくような気がします。
山中:初めて、自分の周りの人間にも「良かったら聴いてください」と音源をガバッと送って。音楽好き以外にも刺さるアルバムにしたかったし、他のものを作ってる人にも絶対に伝わるアルバムになってると思ったから。その点は自分たち4人の中で自信を持てるなって思います。
――届く範囲を広く想定するにあたって、ポップスであろうとする意識ってありました?
山中:どうやろう? それは俺の中にはあんまり無かったですね。ただやりたい音、頭の中で鳴ってる音をそのまま具現化するっていうのがデモの段階だったと思うけど、でもあきらとかは絶対にそこを考えてやってくれてたと思うし……俺はわかんない(笑)。
あきら:ポップスっていうと難しいんですけど、ポピュラリティの価値は付けたいってすごく思っていて。映画主題歌を担当したりとか、いろんな人に触れる機会があった上でのアルバムなので、折角存在を知ってくれた人に対して、ちゃんと期待を超えていかないとなっていう意味でのポピュラリティ、大衆感をポップスと呼ぶならば、ポップスでありたい意識はありました。ジャケット一つにしてもそうだし、曲順はこうがいいとか、より手に取りやすいようにはしたかった。楽曲に関してはそれぞれが突き抜けた結果、これがポップスになるんだなっていう、自分の中での発見もありました。
――自分で言っておいてなんですけど、ポップスってすごく難しい表現ではあって。決して安っぽいとかイージーという意味ではなくて、むしろ変わったアプローチも多いのに、とても聴きやすく仕上がっていると思うんですよ。
山中:もともと聴きやすいものを好んでいるのかもしれないですね。自分たちの好きな音楽にしても、マニアックなものって共有しようとあまり思わないじゃないですか。そういう音楽は夜寝る前に聴けばいいやとか。だから、自分たちは人に共有したいと思わないような音楽を作ってもしょうがないと思うし、オーラルは行くところまで行かないといけないバンドだって自分でも思ってます。そこは聴いている音楽からそうだったかもしれないですね。海外アーティストを聴くにしてもジャンルはHIP-HOPとかR&Bとかも含め色々だけど、そんなにマイナーなところを掘るよりは広く評価されてるものを聴いてたから、そういう部分は滲み出たかもしれないです。
――バンドの向かいたい先とも自然に関わってくる部分ですね。そしてこの作品が世に出た後はフェスシーズンを経て、アリーナ4公演を含むツアーも控えています。現時点ではどんなことを考えてますか?
中西:武道館や大阪城ホールを成功させた自信もありますけど、音源に対しての自信がすごくあって。今までもオーラルは音源によってステップアップしてこれてる自覚もあるし、ツアーに行く頃にはこの音源をたくさん聴いてくれた人が集まることで、僕らに対する期待値もまた更新されていくだろうなっていう。とはいえ、僕らはその期待値を超えていきたいし、期待していたツアー、期待していたアリーナを、やっぱりオーラルは超えていくよねっていう姿を見せたいし、そういうモチベーションで僕らとお客さんの関係が成り立っていってほしい。それはこれからもずっとテーマになりそうな気はしていて、今回のアルバムもそこがポイントになってくるかなと思います。
鈴木:後半4本のアリーナや、ライブハウスでも2000人規模のところがあったりとかしますけど、そういう規模のところばっかり回っていたらまた視野が狭くなる気はしていて。でも次のツアーでは、秋田のClub SWINDLEは200~300キャパだとか、(高松)festhalleとかもそうですし、そういう会場が混在してるから、そこでしか感じられない感情とかがそのあとのアリーナにもすごく影響してくるだろうなって。やっぱりツアーは毎度毎度成長させてもらえるタイミングでもあるので、かっこよくなった姿をちゃんとお客さんに見せれるように、頑張れればなと思っております。
あきら:春フェスとかでアルバムの曲を披露してもすごく反応もいいし、今年前半にライブを減らしてた間にまわりの期待値も高まったのかなってヒシヒシと感じているので。早くこのアルバムの曲をツアーでお披露目したいなって思うし、僕は楽しみでいっぱいです。
山中:僕も単純にワクワクしてます。新しい所、初めての所でもできますし、アリーナツアーもようやくできるようになったなって。今までにやったことのないことをやるときのワクワクが一番好きなので、誰よりも楽しもうかなって思ってます。
――次こそは、始まった瞬間からバーンと楽しむモードでいけそうですね。
山中:そうですね。僕って、ツアーになると突き詰めてしまいがちなんですけど、今回のツアーに関しては全会場楽しんでやろうと思ってます。
取材・文=風間大洋 撮影=大塚秀美
THE ORAL CIGARETTES 撮影=大塚秀美
ライブ情報
Live House series 〜Directly to various places〜
9/18(火)東京・Zepp Tokyo
9/20(木)愛知・Zepp Nagoya
9/21(金)大阪・Zepp Osaka Bayside
10/7(日)広島・BLUE LIVE広島
10/9(火)京都・ KBSホール
10/11(木)新潟・LOTS
10/13(土)富山・クロスランドおやべ
10/18(木)宮城・仙台GIGS
10/20(土)北海道・Zepp Sapporo
10/23(火)秋田・Club SWINDLE
10/27(土)鳥取・米子コンベンションセンター BiG SHiP
10/29(月)熊本・B.9 V1
10/31(水)山口・周南 RISING HALL
11/1(木)香川・高松 festhalle
11/3(土)愛媛・松山市総合コミュニティセンター
12/8(土)愛知・日本ガイシホール
1/26(土)兵庫・神戸ワールド記念ホール
2/11(月・祝)福岡・福岡国際センター
3/17(日)神奈川・横浜アリーナ
リリース情報
◎通常盤(CD Only)¥2,800(税抜) AZCS-1070
01もういいかい?
02 BLACK MEMORY (映画「亜人」主題歌)
03 PSYCHOPATH
04 Ladies and Gentlemen
05 What you want
06トナリアウ(TVアニメ「サクラダリセット」EDテーマ)
07リブロックアート
08 容姿端麗な嘘
09 ONE’S AGAIN
10 ReI
BKW!!カード(Kisses and Kills ver.)
※初回盤/通常盤共通となります。
今年2月15日に開催された初の大阪城ホールワンマン公演「唇ワンマンライブ 2018 WINTER「Diver In the BLACK Tour~ReI of Lights~」at大阪城ホールからライブ映像9曲を収録、さらに現在進行形のReI projectドキュメンタリーを収録。
(ライブ映像収録曲)
・カンタンナコト
・N.I.R.A
・マナーモード
・接触
・Flower
・大魔王参上
・BLACK MEMORY
・起死回生STORY
・ReI
昨年の全国ツアーから始まったReI projectの未公開ドキュメンタリームービー、メンバーインタビューを収録