早霧せいな緋村剣心再び見参! 浪漫活劇『るろうに剣心』製作発表レポート
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シリーズ累計6000万部超の大ヒット漫画『るろうに剣心』の舞台化作品、浪漫活劇『るろうに剣心』が、2018年10月11日~11月7日に東京・新橋演舞場で、11月15日~24日に大阪・大阪松竹座で上演される。
和月伸宏作「るろうに剣心─明治剣客浪漫譚」(集英社ジャンプコミックス刊)は、幕末に「人斬り抜刀斎」として恐れられた伝説の剣客・緋村剣心が、明治維新後は「不殺」(ころさず)を誓い、逆刃刀を手に流浪人(るろうにん)として全国を放浪する中、「人を活かす剣」を信じる神谷活心流道場師範代の神谷薫との出会いをはじめ、同じ激動の時代を生き抜いた宿敵達との戦いを通じて、贖罪と新たな時代での生き方を模索していく物語。1994年に週刊少年ジャンプで連載開始以来人気が爆発。1996年にアニメ化、2012年、2014年に実写映画化、そして2016年にミュージカル界の雄小池修一郎の脚本・演出により宝塚歌劇雪組で初の舞台化と、多彩なメディアミックスが重ねられてきた。
今回の上演はその宝塚歌劇公演の浪漫活劇『るろうに剣心』を、和の殿堂である新橋演舞場と大阪松竹座に合わせて小池修一郎が練り上げる新演出版で、男女による多彩なキャスティングの中に、宝塚歌劇での上演当時雪組トップスターとして主人公・緋村剣心を演じた早霧せいなが、2017年の宝塚退団後男女の枠を超えて、再び緋村剣心を演じるというかつて無いチャレンジを果たす公演となる。
そんな、この秋最大の話題作の製作発表記者会見が26日都内で開かれ、緋村剣心役の早霧せいな、神谷薫役の上白石萌歌、加納惣三郎役の松岡充、斎藤一役の廣瀬友祐、四乃森蒼紫役の三浦涼介、相良左之助役の植原卓也、高荷恵役の愛原実花、緋村抜刀斎(剣心の影)役の松岡広大、そして脚本・演出の小池修一郎が登壇。公演への抱負を語った。
会見はまずキャラクター紹介を兼ねたパフォーマンスからスタート。スケジュールの関係で、ギリギリまで会見出席が未定となっていた高荷惠役の愛原実花を除いた6人が、次々に役柄を象徴する、相楽左之助の巨大な刀剣「斬馬刀」、四乃森蒼紫の二刀流、斎藤一のヘビースモーカー等の描写を入れつつ紹介されていく。
そしていよいよ早霧せいなの緋村剣心が登場。遂先日まで女優として自然体の美しさを披露していた早霧が、懐かしい赤い着物と袴姿でセンターに立つと、一気にこちらの気持ちまで2年前にタイムスリップするかのよう。男性陣に混じっても、早霧が剣心を演じることに全く違和感がないのに改めて驚かされ、キャラクターの勢ぞろいに期待が膨らんだ。
そんなパフォーマンスに続いて行われた会見では、脚本・演出の小池修一郎が挨拶をしようとしてマイクスタンドからマイクを引き抜く時に、勢い余って部品を飛ばすアクシデントが。早霧がそれを受取ろうと自然に手を伸ばし「この会場の備品でしょうか、すみません!」と小池が謝り、会場には和やかな笑いが広がった。
小池は「今こうして早霧せいなさんの剣心を見ていると、2年半前に宝塚歌劇で初演する際の製作発表記者会見を思い出しますね。あの時にはまさかこんな日が来ようとは誰1人想像もできなかったのですが」と感慨深げ。新橋演舞場と大阪松竹座で初めての仕事を、というオファーに対して『るろうに剣心』がまず浮かんだけれども「1年前に宝塚を退団し、つい1ヶ月前には『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』で素敵な女優さんとして舞台に立っていた早霧さんに、再び男役をやってもらってよいものか?と考えました」とこの驚きの企画に小池自身も逡巡があったことを明かし、それでもなお踏み切ったのは「もう一度早霧せいなの緋村剣心に会ってみたい、僕自身が客席から観たい、もう一度蘇って欲しいという願いがあった。新橋演舞場と大阪松竹座に早霧せいなの緋村剣心が再び現れるのは素敵なことだと思っています」と熱く語った。
また原作にない加納惣三郎というキャラクターについても小池が説明。宝塚歌劇のスターシステムの中で、男役二番手と呼ばれるポジションのスターに、原作のどのキャラクターを膨らませたら相応しいだろうか?と原作者の和月伸宏氏と集英社に相談したところ「原作のキャラクターを膨らませるより新たなキャラクターを創って頂いた方が良いと思います」という驚きの逆提案を受けたという。この物語の登場人物は皆、幕末から明治維新という激動の時代に迷い悩みながら生き、成長する姿が描かれている。そこで、幕末と明治維新の時代に生きた人物を誰か?ということで、これまで小説などで様々に創作されてきた「加納惣三郎」に行き当たった。これが謂わば「ゲストスター」の面白い効果になったという。それを今回も踏襲して「歌えて、ミステリアスで、年齢不詳の役者さんということを探したところ、松岡充さんに出て頂けることになりました。そこから次々と他のキャストの皆さんも決まっていったんです」と新たなキャストに大満足の様子。
早霧が再び剣心を演じることについても「宝塚を退団した人が男性に混じってまた男役をやるのはどうなのか?と思われる方もいると思うけれども、現在2018年の日本の芸能には、歌舞伎から今最も勢いのある“2.5次元”と呼ばれる舞台まで、女性が男性を演じる、男性が女性を演じるということの垣根がなくなっているのを感じる。元々日本には歌舞伎があり宝塚があり、男性が女性を、女性が男性を演じる文化があるので、日本が世界に誇るアニメーションや、漫画の世界とその文化が融合していくのは当然の流れだと思う。あくまでも楽しいエンターティメントにしたい」と熱っぽく語った。
記者からの「新演出版で変わるところは?」という質問には「それは観てのお楽しみにしたい」と笑わせながら「基本的な作りは変わりません」と明言した上で「花道も使おうと思っているし、早霧せいなが本物の男性たちと刃を交わすというのが、なかなかスゴイことだなと思っております」と今回の企画への期待をにじませた。
主演の緋村剣心の早霧せいなは「宝塚在団中、約2年前の2016年に『るろうに剣心』の緋村剣心役と出会ったことは、私にとってとても大切なものでした。そこから2年経って、私はもう男役ではない(笑)。本当の男性キャストのいる中で男性役を演じるというのは果たしてどうなのか?とここに漕ぎつくまでは正直悩みました。ですが男性でも女性でも“人”を演じるということに変わりはないのではないか?という境地に行きついて、今ここに立っております。宝塚版とはまた違ったキャストの皆様と心をひとつに、小池先生の演出と新橋演舞場と大阪松竹座という新しい劇場で、新しい『るろうに剣心』を皆様にお届けできたらなと思います」と、ここに至る思いも含めた決意を述べた。剣心の扮装をした時には「懐かしさが湧き上がった」そうで、「男物の袴を着て堂々と足を広げて座っていられるのはやっぱり楽だなと(笑)。沁みついた感覚というのはなかなか抜けないんだなと思って、それが男役を17年間続けてきた自分としては喜びでもありました。そしてこの赤い着物と赤い髪で逆刃刀を持って舞台に立てる。こんな機会は2度とないと思っていますので、この高まった気持ちのままで本番を迎えたいです」と早霧らしい爽やかな語り口で心境を披露してくれた。
加納惣三郎の松岡充は「加納惣三郎という人物は原作にはいない。その惣三郎に並々ならぬ愛情をもって先生が書き上げたものを演じさせて頂くことを光栄に思っています。先生の演出される作品にはずっと憧れておりました。僕は芝居に出るようになってまだ浅く15年になるのですが、そのはじめた当初、先生はもうお忘れになっていらっしゃると思いますが、1度お声がけ頂いたことがありました。その時はスケジュール等があって断念せざるを得なかったのですが、それを超えて今回お声をかけて頂けたことをすごく嬉しく思って稽古場に行き、初めて先生とお会いした時の一言が忘れられません『松岡君、結構歳いってるんだね!』」とのエピソードに会場内は大爆笑。平謝る小池とお辞儀し合う微笑ましい光景が見られた。
加納惣三郎役は原作イメージがないだけに自分独自の色をいれられると語り「稽古が進むともっとロックになっていくと思う」と松岡が演じるならではの惣三郎像に期待を抱かせた。
神谷薫役の上白石萌歌は「こんな歴史のある『るろうに剣心』という作品に素晴らしいキャストの皆さん、そして以前から憧れていた小池修一郎先生と新たに創っていけることをとても光栄に思います。私の演じる神谷薫は全世界から愛されていて、そんな役を演じることにはプレッシャーを感じるのですが、凛と大胆に、そして揺れ動く気持ちを繊細に演じていければ良いなと思っています」と、愛らしい中にも毅然と語っていたが、早霧剣心の印象を問われると「好きになってしまいそうです。それくらい素敵です」と初々しく話し、会場の笑顔を誘っていた。
斎藤一の廣瀬友祐は「漫画、アニメ、映画、ミュージカルと様々な形でたくさんの人に愛され続けている『るろうに剣心』という作品に出演できることをとても嬉しく思いますし、斎藤一という役が演じられることを光栄に思っています。大変な人気のある作品ですので、各キャラクターも色々な愛し方をされているファンの人が大勢いらしっゃると思いますし、僕も斎藤一という役を愛して、『るろうに剣心』という作品を愛して、廣瀬友祐なりの斎藤一を演じられたら」と力強く語った。また「本来カッチリと着る軍服を敢えて着崩して着ることが、だらしなく見えるか色っぽく見えるかは役者の力量にかかっていると思うので、頑張りたい」と、鋭い分析も聞かせていた。
四乃森青紫の三浦涼介は「僕は実写版の映画で沢下条張という役を演じまして、その役はすごく力強い役でした。今回の四乃森青紫はとてもクールで、無表情が印象的だと思いますが、実は情に厚く、熱い芯を持っている男だということは変わらないのかなと思っています。上演時間が限られていますが、その中で小池先生のご指導のもと、四乃森青紫を一生懸命演じたいと思います」と抱負を述べ、独特の扮装についても「スタッフさんのこだわりの詰まった衣装は、役者の役作りを大きく助けてくれるアイテムだといつも思っているので、その想いに応えたい」と、三浦らしい真摯で誠実な言葉が聞かれた。
相楽左之助の植原卓也は「自分がまさに子供の頃ど真ん中にいたと言っても過言ではない作品に、自分の身を投じることになって本当に光栄だと思っています。左之助というキャラクターは、本当に男らしい芯のある真っ直ぐなキャラクターです。しっかりとそんな左之助の持ち味を出せるように向き合って、稽古を一生懸命頑張っていきたいと思います」と話した上で、やはり左之助の必須アイテム「斬馬刀」を新橋演舞場と大阪松竹座で振りかざすことができるのがとても楽しみだそうで、原作ファンも観客も必ず注目するだろうポイントを、きちんと突いた発言が頼もしかった。
高荷恵の愛原実花は「原作の漫画も、アニメも舞台も大好きだったので、参加させて頂けることを幸せに思います。また宝塚現役時代に早霧さんとは雪組でご一緒させて頂いていたので、改めてこうして同じ舞台に立たせて頂けるのを本当に嬉しく思います」と喜びでいっぱいの様子。恵役は「妖艶の妖の字の魅力があると思う」と語りながら、宝塚時代に小池演出のミュージカル『エリザベート』で皇帝フランツを誘惑するマデレーネ役を演じた際に、小池から「色気が全くないと怒られた」というエピソードを披露しつつ、10年間に蓄えたものを見せられるように頑張りたいと目標を掲げた。
緋村抜刀斎の松岡広大は「個人的に『るろうに剣心』が大好きで、やるなら剣心がやりたいなと思っていて(笑)、それがまさかの緋村抜刀斎、幕末に暗躍した時代の緋村剣心をやって欲しいと言って頂きまして、恐悦至極に感じる」と、使った言葉の重々しさに、本人の決意が漲るよう。日本刀での殺陣は初めての経験とのことだが、「何より抜刀斎として早霧さんが演じられる剣心の、その影が嘘にならないように、しっかりと現在の剣心とリンクするように本番に向けて学んでいきたいと思います」と語り、想いの深さをにじませた。
その後、早霧せいな、松岡充、上白石萌歌による囲みインタビューが行われ、新たなメンバーと合流したことについて早霧が「皆さん漫画から飛び出したようで、加納さんは違うけれども」と笑わせたあとで「松岡さんらしい惣三郎ができるということが実証されたんじゃないかな?と思いますので、皆さんと一緒にお稽古をするのがとても楽しみ」と語った。
また原作の魅力を早霧が「生きて来た年数が多い人ほど色々なものを感じる作品なのではないかな?と私は思っているので、2年前には感じなかったことが発見できている」と語り「作品と役のファンの方々の期待を裏切りたくないですし、私も一剣心ファンとして誰よりも深い愛で挑んでいきたい」と話すと、松岡は、自分がデビューしたのが1995年で、その翌年に『るろうに剣心』がテレビアニメになり、その主題歌をSOPHIAでやりたくてやりたくて仕方がなかったが叶わなかったという秘話を披露。「それがこんな形で出られるとは!原作にはないキャラクターなんですが、逆に和月先生がこれを観て『加納惣三郎入れようかな?』と思ってくださるくらいのものにしたい」とある意味の野望も語った。また上白石が「日本のみならず、世界中の方に愛されている漫画原作の絵柄の迫力や、ページをめくるごとに生まれる迫力などを、原作ファンの方もすごくお好きなのだろうと感じます」と話し「表現方法は違いますが舞台にはその場の空気を共にする臨場感があるので、是非原作ファンの方にもお越し頂きたいです」と意欲を見せ、10月の舞台への期待を高める時間となっていた。
取材・文・撮影=橘涼香
公演情報
■原作◇和月伸宏「るろうに剣心~明治剣客浪漫譚~」(集英社ジャンプコミックス刊)
■脚本・演出◇小池修一郎
■出演◇早霧せいな、松岡充、上白石萌歌、廣瀬友祐、三浦涼介、上山竜治、植原卓也、愛原実花、松岡広大 ほか
■日程・会場:
東京公演 2018年10月11日(木)~11月7日(水) 新橋演舞場
大阪公演 2018年11月15日(木)~24日(土) 大阪松竹座
■公式サイト:https://ruroken-stage.com/