【DPF 2018 クイックレポ】アルカラ　期待と想像の上をいく変幻自在のトリックスター

DEAD POP FESTiVAL 2018　【CHAOS STAGE】　アルカラ

CAVE STAGEでSUPER BEAVERがステージを終えるタイミングを見計らって、何を思ったのか徳永英明の名曲「壊れかけのRadio」を歌い出す稲村太佑(Vo/Gt)。サウンドチェックがてらのお遊びかと思いきや、サビでバンドイン。これ、マジのヤツじゃん。結局、１コーラス＋大サビをしっかりと、そしてかなり気持ちよさそうに歌い上げた。アルカラは何かやらかすだろうとは思っていたが、想像の上をいく変化球に本番前からニヤリとさせられる。

「今が一番面白い時間帯です！ あとはカッコいいのしか見せへんからなー！」とひと煽りしたあとも、しばらく面白トークを続け、ベースの強烈なスラップが牽引する１曲目「アブノーマルが足りない」をプレイ。あれ？ どこから本番なの？ とこちらが戸惑ったが最後。あっという間にアルカラワールドへと力技で引き込まれる。

分かってはいたが、ねっとりと色気たっぷりに絡みつくアルカラのロックサウンドは、この爽やかな晴天に全く似つかわしくない。しかし、そんなミスマッチ感、非日常感がこちらの興奮を高めることもたしか。トリッキーなギターリフが癖になる「水曜日のマネキンは笑う」、ファンキーなグルーヴが腰と脳みそを直撃する「サースティサースティサースティガール」、「このフェスが今後800年続くことを祈念して」という稲村の言葉に導かれて鳴らされた「ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト」と、とにかく曲を畳み掛ける。「あとはカッコいいのしか見せへん」という本番前の言葉は本当だったのだ。もちろん、「誘っていただいてありがとうございます」とSiMへの感謝の気持ちは示したが、DPFのステージに初めて立った喜びを、言葉を尽くす代わりに演奏で表すというのは非常に正しい。

４人の演奏はとにかく分厚い。野外、強風という状況下にもかかわらず、ヘヴィな音塊はビシバシに鼓膜を刺激するし、とにかく楽しい。ラストの「さすらい」では、目まぐるしく変化していく展開にフィールドは一気にアルカラ色へと染め上げられた。初出演でセカンドステージの初日のトップバッターを任されるという難しい状況だったが、彼らにはなんてこともなかった。いつもどおりのパフォーマンスをカマせば、そこは簡単にアルカラの世界になるのだ。
 

文＝阿刀“DA”大志　撮影＝Yasumasa Handa