『フジロック』2018年のタイムテーブルは前代未聞、ボブ・ディランの“裏がない”

昨日は七夕だった。天の川では織り姫と彦星が年1回の逢瀬を遂げていたことだろう。しかし昨夜は天の上の二人よりも、7月29日にとうとう出逢う、あるアーティストと音楽フェスについて想いを寄せていた。

今年の3月16日0時を回った真夜中、『FUJI ROCK FESTIVAL'18』（以下、フジロック）はオフィシャルサイトを通じて、ボブ・ディランが出演することを発表した。

各報道機関はノーベル文学賞受賞後初となる来日が『フジロック』であることを躍起になって報道し、音楽情報機関もまた様々に書き立てていた。そうした報道を受けた音楽ファンも、そうではない日本全国の人たちも、ひいては世界の音楽ファンまでもが、2018年、ボブ・ディランと『フジロック』が遂に出逢うことを知ったのである。

あれから約４ヶ月が経過した7月6日、『フジロック』は今年出演する最終ラインナップと共に、タイムテーブルを発表した。そこで発覚したことがある。

上記の表を見て欲しい。字面では気づかないが、こうしてタイムテーブルを表で見ると、ボブ・ディランの出演時間帯に他の主要ステージがすべて空欄であることがはっきり見て分かる。これは業界用語で言う「裏がない」状態だ。はっきり書こう。こんなことは前代未聞だ。

そこで関係筋に話を聞いたところ、元々グリーン・ステージに近いレッド・マーキーでは、音がバッティングしないように配慮されているそうだ。しかし、『フジロック』のメインステージであるグリーン・ステージ（３万人収容）の次に大きいホワイト・ステージ（１万５千人収容）でまったく音を鳴らさないなんてことは、かつてなかったはず。さらには、フィールド・オブ・ヘヴン、ジプシー・アヴァロンまでもが何もやらないのだ。

出演のアナウンス、タイムテーブルの設定。どれをとってもこれほどまで前代未聞を連発したステージはなかったと記憶している。また、ヘッドライナーであるにもかかわらず、18:50よりショーを開始するのも今回初めてなのではないだろうか。これがディラン本人の意向なのか、制作的なことなのかは分からないが、結果的には翌日仕事などを控えるディラン・ファンが最終の新幹線に乗れることだけは間違いない。

これは『フジロック』のディランへの愛なのか、オーディエンスへの強烈なメッセージなのか、それともステージ制作間でのリスペクト精神から生まれたものなのか、単にスタッフもディランのステージを観たいのか。

真相はわからないが、理由なんてどうでもいいだろう。ただ想うのは、『フジロック』史上でまた新たな伝説が生まれるその瞬間、たとえ数万人に埋もれてでも私はボブ・ディランを観たいということだ。むしろ溢れかえる人に埋もれてみるのも面白そうだし、その中で一丁前に「何の曲演ってるのかわかんない」などと口にしてみたい。そんなことを考えながら、七夕の夜は更けていった。

文＝早乙女‘dorami’ゆうこ