劇団四季『キャッツ』新たな専用劇場をお披露目!「キャッツ・シアターは思い出を辿る場所」
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劇団四季 キャッツ・シアター内覧会(撮影:上村由紀子)
1983年の日本初演以来、各地で巡演され続けている劇団四季のミュージカル『キャッツ』。8月11日からの東京公演ロングランに向け大井町に建設された専用劇場の内覧会が行われ、内部の模様がメディアに公開された。
劇団四季 キャッツ・シアター内覧会(撮影:上村由紀子)
まずは専用劇場の大きな特徴である回転席のデモンストレーション。オーバーチュアの響きの中、開演前は舞台奥に設置されている回転席が180度回る様子にテンションが高まる。
続いて劇団四季 代表取締役社長の吉田智誉樹氏、本作の振付・演出スーパーバイザーを担う加藤敬二氏、舞台美術家の土屋茂昭氏が登場し、それぞれの思いや『キャッツ』の歴史が語られたのだが、加藤氏の発表に会場内がザワつく一幕も。というのも、1998年の福岡公演にあたり、細かな箇所も含めて約300カ所の改定が行われた『キャッツ』が今回の東京公演で新たな変貌を遂げるという文言があったからだ。加藤氏から語られた演出・振付の変更点の大枠は以下の通り。
『キャッツ』振付・演出スーパーバイザー 加藤敬二氏(撮影:上村由紀子)
1 ジェニエニドッツ(おばさん猫)に登場するゴキブリたちのタップシーンが変わる(手足や身体に金具を付け、ボディパーカッション的な振付を施す案も)。
2 マンゴジェリーとランペルティーザ(泥棒猫)の曲調を一新し、より激しく迫力のある雰囲気に。
3 初演以来封印されてきたランパスキャット(けんか猫)のナンバーが復活。
音楽に関しては1984年のBW版より『キャッツ』に携わっているクリステン・ブロージェット氏が音楽監督として来日し、すでに俳優達と稽古を重ねているとのこと。
劇団四季 キャッツ・シアター内覧会(撮影:上村由紀子)
四季の初演版から舞台美術を担当している土屋氏は「楽しい空間をつくることが僕の仕事」と笑顔で劇場を見渡し「この劇場は”キャッツ”という作品を上演するためだけに作られたもの。初演時からただ一つの作品のために劇場を作るというのは世界的にも例がない。それを劇団四季は初めてやった。この劇場内にあるものはすべて”キャッツ”のためだけにあるんです」と語り「その一部、特殊な機構ををお見せしましょう」と劇中劇・海賊猫グロールタイガーの場面で使われる装置のデモを行った。それまでただの壁だった場所から海賊船の装置が降りてくる様子は何度体感しても心が踊る。
舞台美術家 土屋茂昭氏(撮影:上村由紀子)
また、キャッツ・シアターの特徴のひとつ”ゴミのオブジェ”だが、これらは猫の目で見た大きさで作られており、通常の3倍のサイズとなっている。劇場入り口付近にはその感覚を楽しんでもらうため、なるべく大きな”ゴミのオブジェ”を配置しているそう。
劇団四季 キャッツ・シアター内覧会(撮影:上村由紀子)
さらに土屋氏は続ける。「なぜ、キャッツ・シアターでなければならないのか、それは2幕冒頭でオールド・デュトロノミー(長老猫)が歌う”幸せの姿”のように、この劇場は猫たちと観客とがともに思い出を辿る場所だからです。ここに捨てられている3000点のゴミにはすべて誰かの思い出が詰まっている。だから、ゴミを見た瞬間にそれが何であるのか分かるよう作っています」。
1983年、初演時の劇場仕込みの際には、紙ゴミばかり飾られていたという。その様を見た演出家から「それは違う」と指摘され、”思い出”をキーワードに新たにゴミのオブジェを作り直したそうだ。
劇団四季 キャッツ・シアター内覧会(撮影:上村由紀子)
また『キャッツ』で1番心に残る、胸に響くシーンは?という質問に対し、吉田氏は「エンディングです。私はこの作品を観るたびに、明日も頑張って生きようと思えます。きっとお客さまもそうだと信じています」。自身もマジック猫のミストフェリーズとして長らく本作に出演してきた加藤氏は「2幕最後、グリザベラが”ジェリクルキャッツ”となり天上に昇り、オールド・デュトロノミーが”猫からのごあいさつ”を歌う場面。グリザベラを選んだのはじつはオールド・デュトロノミーではなくほかの猫たち。自分より他者の幸せを願う猫たちの真っ直ぐな表情に胸を打たれます」。そして土屋氏は「論理的には”メモリー”が好きですが、暗闇の中で盆が回り、光の中にタントミールが立ち上がっていく……このワクワクする感じが舞台装置家として1番好きですね」とそれぞれの想いを語った。
劇団四季 キャッツ・シアター内覧会(撮影:上村由紀子)
なお、この日、土屋氏からユニークな発表もあった。それは3000点のゴミの中に、ただひとつ四つ葉のクローバーが飾られているということ。三つ葉のものは複数あるそうなので、ここはぜひ四つ葉のクローバーを見つけて幸運をつかんで頂きたい。『キャッツ』恒例のご当地ゴミと併せて注目ポイントだ。
劇団四季 キャッツ・シアター内覧会(撮影:上村由紀子)
世界に類を見ない専用劇場、3000点にも及ぶゴミのオブジェ、つねに進化し続けるミュージカル……初演時から100回以上この作品の客席に座り、24匹の猫たちの生き様を観続けてきた観客のひとりとして、大阪公演を終えた猫たちがどんな進化を遂げて6年振りに首都圏に帰還するのか……その姿に出会うのが今から楽しみでならない。
劇団四季 キャッツ・シアター内覧会(撮影:上村由紀子)
劇団四季ミュージカル『キャッツ』は2018年8月11日(土・祝)より、キャッツ・シアター(東京・大井町)にてロングラン上演される。なお、本年11月11日には日本初演35周年を迎え、2019年3月には1万回の上演達成予定。
取材・文・撮影=上村由紀子
公演情報
■詞:T・S・エリオット「Old Possum's Book of Practical Cats」より
■演出:トレバー・ナン
■振付:ジリアン・リン
■美術:デザインジョン・ネイピア
■デザイン:デビッド・ハーシー
■日本語台本:浅利慶太
■初演日本版 演出:浅利慶太
■振付:加藤敬二 山田 卓
■照明:沢田祐二
■美術:土屋茂昭 劇団四季美術部
■演出スーパーバイザー:加藤敬二 坂田加奈子
■スーパーバイザー助手:飯田洋輔
■会場:キャッツ・シアター(東京 大井町)