アヴィシャイ・コーエン 越境を続ける鬼才がホール公演で見せる新たな変化
イスラエルから単身乗り込んだニューヨークのジャズ・シーンで、アヴィシャイ・コーエンを輝かせたのはベースであり、その卓越したプレイはチック・コリアを始め、多くのミュージシャンを魅了した。また、マーク・ジュリアナ、シャイ・マエストロ、ニタイ・ハーシュコビッツなど気鋭のミュージシャンを輩出した自身のトリオも高い評価を得てきた。だが、一方で彼は実にさまざまな顔を持つ音楽家でもある。
ピアノからスタートした音楽遍歴は、ロックンロールと出会ってエレクトリック・ベースに移り、ジャコ・パストリアスに魅了されてジャズを志すと同時に、ユダヤ音楽からラテン音楽、中世ヨーロッパの古謡まで、多様な音楽文化を咀嚼してきた。そのことが、アヴィシャイを特別な音楽家たらしめたのだ。
2014 年リリースの「アルマー」ではストリングスをフィーチャーし、トリオを室内楽や伝統音楽に紐付けるアンサンブルを創出したが、最新作「1970」は自身も歌うヴォーカル・アルバムで、ビートルズから伝承曲やオリジナル曲まで、ルーツを意識した音楽を表現した。また、同じイスラエル出身で、中東の音楽とアフロビートやファンクを融合させたバンド、クォーター・トゥ・アフリカとステージや録音を共にするなど、近年のアヴィシャイ・コーエンの活動は多岐に渡っている。
今回の『アヴィシャイ・コーエン トリオ with 17ストリングス』は、彼の最新のチャレンジである。「アルマー」は好評を博し、「アン・イブニング・ウィズ・アヴィシャイ ・コーエン」というオーケストラ公演に発展した。パリ交響楽団とのステージなどを既に成功させているが、今回は17名の日本の弦楽器奏者との共演だ。しかも、「1970」の録音にも参加した同郷のイタマール・ドアリ(パーカッション)と、アゼルバイジャン出身でブラッド・メルドーらも絶賛するエルチン・シリノフ(ピアノ)との新しいトリオが登場する。「アルマー」に表現されたアンサンブルはさらにどんな変化を遂げるのか、期待は尽きない。
2018年8月26日に紀尾井ホールにて、アヴィシャイ・コーエンによるオーケストラ・プロジェクト公演が1日限定で開催。
文=原 雅明(はら・まさあき)
音楽評論家。レーベルringsのプロデューサー、LAの非営利ネットラジオの日本ブランチdublab.jpのディレクターも務める。新著『Jazz Thing ジャズという何か』。
公演情報
Blue Note Tokyo 30th Anniversary presents
AVISHAI COHEN TRIO WITH 17STRINGS
『アヴィシャイ・コーエントリオ with 17ストリングス』
出演:
アヴィシャイ・コーエン(ベース、ボーカル)
イタマール・ドアリ(パーカッション)
エルチン・シリノフ(ピアノ)
松本裕香、渡邉みな子、蓑田真理、西野絢賀、坂本尚史(1stバイオリン)
emyu:、土谷茉莉子、村津瑠紀、西原史織(2ndバイオリン)
惠藤あゆ、土谷佳菜子、西村葉子、吉田飛鳥(ヴィオラ)
山田健史、福井綾、岡本渚(チェロ)
永田由貴(コントラバス)
曲目:
アヴィシャイ・コーエンによるオリジナル楽曲、アレンジ楽曲
(日本初演ストリングス・オーケストラ版)
会場:
紀尾井ホール(東京都千代田区紀尾井町6−5)
日時:
2018年8月26日(日)
1st stage 14:30開場 15:00開演
2nd stage 17:30開場 18:00開演
料金:S席 9,500円 A席 8,000円 学生席(大学生以下)5,000円
発売情報:5月12日(土) 一般発売
※未就学児入場不可。小学生以上のお客様は通常の料金にてご案内いたします。
※学生席(大学生以下)をご購入のお客様は公演当日に学生証をお持ちください。
※の再発行は一切致しません。公演当日まで大切にお持ちください。
※会場内外で発生した事故・盗難等は主催者・会場・出演者は一切責任を負いません。
※会場内への録音、録画、模写に使用する機材及び酒類、飲食物、危険物等の持込はお断り致します。
※都合により、出演者、公演内容の一部を変更する場合がございます。予めご了承ください。公演が中止や延期となった場合の旅費等の補償は致しかねます
主催:ぴあ、ブルーノート・ジャパン