エレファントカシマシ・宮本浩次 病気療養、心境の変化、新作『RAINBOW』、ライブ……すべてを語る

2015.10.27
インタビュー
音楽

エレファントカシマシ

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エレファントカシマシの約3年半ぶり、通算22枚目のオリジナルアルバム『RAINBOW』は、ボーカル&ギターの宮本浩次の耳の病気による活動休止期間を乗り越えて、制作された作品だ。3年半の期間を凝縮したような、超強力・個性的かつ多彩なナンバーが揃ったベストアルバム的側面を持つ作品であると同時に、1曲目から13曲目まで、それぞれの曲が共鳴しあい、トータル・アルバムとしての輝きも放っていて、闇の深さも光のまばゆさも受けとめて進んでいくような深さと強さとを備えている。春夏秋冬に例えると、エレファントカシマシは新しい季節を向かえたところだろう。そのニュー・シーズンの到来を告げるのがこの『RAINBOW』。アルバムを聴いている瞬間にも素晴らしい作品という感触があるのだが、音が鳴っていない瞬間にもこの作品は真価を発揮していく。というのは脳内で勝手に曲たちが流れ出すから。個々の曲が潜在意識に働きかけたり、心象風景とシンクロしたりする。なぜこのような作品を作り得たのか。宮本浩次の話に耳を傾けていこう。



これまで目をそらしてきたことを受け入れていく期間になった


——3年半ぶりのアルバムということになりますが、ここまで時間があいたのは初めてのことですよね。

「27、28年で22枚目ですから、これまで我々は割とコンスタントにアルバムを作ってきたと思うんですよ。イメージと違って、コンサートの本数も実はそんなにたくさんはやってない。その分、楽曲制作に全力を注いで、毎年のようにアルバムを出してきた。そのコンスタントに出すサイクルの流れを分断したのが俺の耳の病気ということになりますね。ツアーを全部飛ばしたのも生まれて初めてだったし、アルバムの予定も飛ばしてしまった。今回のアルバムは分断されたところからのスタートでした」

——耳の病気はアルバムの内容にも大きく影響を及ぼしているのではないですか?

「もちろん病気も大きかったんですが、50歳が目の前に見えてきたことも大きかった。これまでのようなスピード、ペースでやっていたら、自分の体がもたないんじゃないかというのはちょっと前から薄々感づいていたんですが、“それでも前に進んでいくのが人生だ”って、無理矢理自分に言い聞かせて、誤魔化してきたんですよ。毎日のようにマラソンを10キロ走って、ツアー中もコンサートが終わってから10キロ走るみたいな。結局、体を壊してしまったわけですが、休んだ期間に気付いたこともたくさんありました」

——というと?

「自分は中年であり、初老であり、少しずつ死に近付いていて、やがては死んでいく存在だってこと。これまで目をそらしてきたことを受け入れていく期間になった。それは俺だけでなく、メンバー4人ともなんですが。そうした認識が形になったアルバムとも言えますね。「ズレてる方がいい」は病気になるちょっと前の曲なんですが、アルバムのスタートはそこだったので、この曲を入れられて良かったと思っています。3年半のダイジェストみたいな感じになったなと」

——認識の変化があったとのことですが、そのあたりをもう少し詳しく説明していただいてもいいでしょうか?

「僕らがファーストアルバムを制作したのは大学生のときで、19とか20歳くらいだったんですよ。曲で言うと、「ファイティングマン」「デーデ 」「星の砂」を作っている頃。家族の世界があって、学校の世界があって、いろんな人間と出会って、初めて社会の中に入っていく時期だったりするじゃないですか。そうすると、人との摩擦が生じて、社会の中で自分はどうやって生きていくのか、自分の立ち位置をどこに置けばいいのか、悩んだり、葛藤したりするところわけですが、そこから曲が生まれていった。歌だけで勝負できた20数年間。ところが具合が悪くなって、一気に自分はただの弱い中年だったんだってことに気付かされてしまった。病気になって左耳が聞こえなくなって、どんなに神様に祈ったって、聞こえないわけで、自分はただの弱い生き物なんだって認めざるを得なくなった。学生時代に通じるところもあって、改めて自分は社会の中で生きているんだってことを痛感させられました。それで「RAINBOW」のような日常的な歌が生まれていった。自分の老化を受け入れている今の立ち位置で、この曲を作れて良かったと思ってます」

——「あなたへ」「なからん」「昨日よ」なども、そうした立ち位置にいる今だからこそ生まれた曲と言えそうですね。個人的には特に「なからん」がムチャクチャ染みてきました。闇の中にいるような曲だからこそ、生を希求する思いが伝わってきました。

「「なからん」は休養中にバンドのメンバーとも会わず、ひとりぼっちになって、小さな声で少しずつ作り始めた最初の曲なんですよ。誰のことも考えず、発表する予定もなく、見栄も外聞もなく、ただただ自分と音楽だけがあるという空間の中で、音楽と対峙して作った。根本的なところが歌えた気がしたので、アルバムの中心に入れたかった。音数は少ないですが、金原(千恵子)さんの見事なストリングスが入って、見事なハーモニーの曲になった。「Destiny」みたいに前向きで光に向かっていくところをストレートに歌った曲も入っていますが、そればっかりになってしまうと、無理してマラソンを走る、みたいなことになってしまう。どうしようもないこともあるんだよってことを見据えた曲も入れることができて、良かったですね」

 

老いていくということを受け入れたことによって、かえって若々しい歌が歌えた


——具体的な作り方で、変わってきたことはありますか?

「「あなたへ」や「昨日よ」や「なからん」を作っていた時期は習作期というか。小さな音ではあるんですが、音楽をよく聴いていました。ストーンズの初期のものとか、マーヴィン・ゲイとか。デビューしてからって、実はそんなにじっくり音楽を聴く時間もなかったんですよ。ずっと走り続けている状態だったから。生存競争とはよく言ったもんで、止まっちゃうと、おしまいじゃないですか。そうした競争の中に入っていると、音楽を聴く余裕もなくなっていた。具合が悪くなって、活動が分断されることで、音楽を聴く時間、曲を落ち着いて作る時間、改めて自分と向き合う時間ができたんですよ。そうした中で「あなたへ」という曲を作ることができて、ようやくみんなの前で歌おうという気持ちになって、2014年の1月にさいたまスーパーアリーナでライブをやったんですが、たくさんの人が集まってくれたのが大きな自信になりました。うれしくて4時間もコンサートをやったんですが、みんながエレファントカシマシが音楽をやっているのを心の底から喜んでくれているんだと感じることができた。その経験、その喜び、その自信も今回のアルバムの中に入っていると思います」

——『あなたへ』での温かな歌声、『なからん』でのファルセットとウイスパーの中間の柔らかな歌声など、歌そのものも変化してきているのではないかと思いました。

「たばこをやめたのも大きかったですね。5、6年前の野音くらいから、ライブが終わると、咳き込んで夜寝られなくなったりしていたのに、やめられなくて一日百本くらい吸っていた。ところが人間って現金なもので、病気になって、こんなことをやっていたらダメだなって痛感して、やめることができた。あんなに大好きだったタバコだけど、歌のためにやめられたことも自信になった。やめてみると、どうってことなかったですけど(笑)」

——音域も広くなったのではないですか?

「そうなんですよ。「ファイティングマン」なんか、なんでそこまで叫び続けるんだっていうくらい叫び続けているんですが、それがすべてではないと気が付いたというか。叫ばなくても、しっかりと技術を磨いて、落ち着いて歌ったほうが届く場合もあるんだなってわかってきた。不思議なもので、自分が老いていくということを受け入れたことによって、かえって若々しい歌が歌えたんじゃないかと思います」

——歌詞も内省的な深みのあるものが目立っています。言葉を使う上での意識の変化はあったのでしょうか?

「自分ではわからないです。俺の家に本がいっぱいあって、勉強したら頭が良くなると思って、いっぱい本を買って読んだりしたんですが、本を読んでも頭は良くならないんだなってわかってきたというか(笑)。もともと頭のいい人がいっぱい読んだら、またちょっと違うかもしれないんですが、わからないことだらけだなって。なんで生きているんだろう?って悩むことも含めて、肯定できるようになってきたというのはあるかもしれない」

——今回のアルバムって、ストリングスやホーンがいっぱい入っていますが、想像力を刺激されるサウンドになっていて、サイケデリックなところもあります。意識していたことはありますか?

「サイケデリックってよく言われるんですが、そんなに深く考えてないんですよ。「昨日よ」なんかでも、過去の夏の日のことを振り返っている部分もあって、逆回転の音を使ったりしているから、サイケデリックって感じるんですかね?」

——そうしたサウンドと想像力を刺激する歌詞とがどこかで連動しているようにも感じたのですが。

「そのことと関係しているかどうかわからないんですが、シガー・ロスというバンドがすごく好きで、アルバムを作る前に、彼らの作品を3枚買って、繰り返し繰り返し聴いていたんですよ」

——アイスランドのバンドですね。

「ええ。アイスランドって、行ったことがないんですが、オーロラが見えたり、氷から煙があがったりするんですかね? 彼らの音楽って、ヒューとかビューとか、後ろでいっぱいいろんな音が鳴っているんですが、それがアイスランド独特の空気や自然を表しているのかなって。そういうところでは影響を受けていると思います。「あなたへ」と「Destiny」は亀田(誠治)さんと金原さんがストリングスのアレンジをやってくれたんですが、「RAINBOW」や「なからん」に関しては、俺がやっていて。大きく雰囲気の違う使い方になっているとは思いますけど。例えば、どういうところがサイケデリックだと感じたんですか?」

——心象風景や深層心理を描いていくような広がり、膨らみを持った音だなと感じたんですよ。「シナリオどおり」からはドアーズやロキシーミュージックを連想させるセンスも感じたので、そこもサイケデリックだなと思いました。

「サイケデリックという意味では、ビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』に通じるような感覚も入れたところはありますね。あと、「永遠の旅人」と「Under the sky」と同じ歌が2曲出てくる構成もちょっと『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』を意識して」

 

街を歩いたりしていても、勝手に親しみを感じながら、歩いてます(笑)


——これまではそういう部分って、ほとんど出してないですよね。

「今回、人間の潜在能力って、すごいなと思いました。「ファイティングマン」の時だって、そういう要素を使おうと思えば、使えたと思うんだけど、ここまで幅広く深く表現してきたことはなかったわけじゃないですか。老化を自覚したところから、全部が同時進行で結実していった。歌詞の作り方も曲の作り方も歌い方もそうだし、サウンドもそう。「ファイティングマン」でがなる一方だった同じ人間が、だんだん内面を描いていけるようになるというのも、人間の持っている潜在能力ゆえですよね。もともと俺は表現者って、誰にも増して一番すごい職業だと思っていたんですよ。もちろん他のどの職業も素晴らしいんだけど、みんなを楽しませることができる歌手ほど、素敵な職業はないなって思っていた。でも実は人間って、みんな潜在能力を持っているわけで、すべての人がすごい。だから最近、池袋の街を歩いたりしていても、一方的に勝手に親しみが湧いてくるんですよ」

——誰かれ問わずですか?

「そう。今はすべての人が運命共同体というか……それも失礼だな。でも勝手に親しみを感じながら、歩いてます(笑)」

——今回はシングル曲もたくさん入ってますが、アルバムとしてまとめる時にどんなことを意識しましたか?

「シングルを作る時は狙いまくっていまして。なにしろシングル・ヒットを出すと、気持ちがいいし、フェスでも盛りあがるから。フェスってストレートで正直なもので。バンドがたくましい馬力のある演奏をしている時、あるいは本当に緻密な演奏をしている時はみんな、盛りあがってくれるけれど、そうじゃない場合は何で盛りあがってくれるかというとヒット曲なんですよ。「今宵の月のように」をやると、バーンと集まってくれるけど、あまり目立たない普通の曲をやると、みんな、サーッといなくなっちゃう。そういう相当シビアなところで盛り上げるには、ダイジェストになるような代表作を作る必要がある。だからいつも永井荷風で言うところの『濹東綺譚』、ストーンズで言うところの「スタート・ミー・アップ」を作りたいって思っています。俺は生きている限り、バンドをやっていこうと思っているんですが、65とか70になって振り返った時に、後悔したくなんですよ。恵まれていることに、レコード会社も総力を上げてエレファントカシマシを後押ししてくれている。なぜわかるかというと、1年半前の段階でもシングルとカップリングにプラスして、2、3曲も作れば、アルバムは出せたんですが、こちらの意志を尊重して、待ってくれた。1曲目に、「3210」みたいな遊び心あふれる曲を入れたり。「RAINBOW」や「永遠の旅人」を入れたり、「Under the sky」のようなものも入れたり」

——最初の曲「3210」のホーンが最後の「雨の日も風の日も」のホーンとシンクロしてますが、曲順、構成はどんな基準で決めたんですか?

「まず『雨の日も風の日も』を最初か最後にしようと思っていた。今はサイクルがメチャクチャになっちゃいましたけど、1年半くらいは本当に規則正しい生活をしていたんですよ。夜12時前に寝て、朝6時に起きて、朝ご飯もちゃんと食べて、午前中に本を読んで、前日の日記を付けて、その後にスタジオに行って、練習するなり、曲作るなりという日々。そのサイクルを雨の日も風の日も寒い日も真夏の炎天下も続けていた。病気以降だったので、毎日歩くだけでも真の喜びもある。でも同時にすごく単調で、「あ〜あ」って思う時もある。全部がそこにあるっていう。「雨の日も風の日も」はそういう日常を描いた、アルバムの中心になる曲なんです。本当は1曲目にしたかったんですが、やたらと壮大になって7〜8分ぐらいになって、1曲目はどうかな?ってことになった。その後、「RAINBOW」というスピードのある曲ができてきて、A面の1曲目はファンファーレじゃないけど、祝祭感、生きているぞっていう感覚をホーンセクションで表現したいというアイディアが出てきた。「雨の日も風の日も」は山本拓夫さんのグループによる素晴らしいホーンが入っているんですが、1曲目でもあのホーンを活かそうと。SE的なものも入ってますが、基本は俺のアコギとホーン。それらを入れて、編集していった。で、ファンファーレのようなホーンが最後の曲に繋がっていく。実はアルバムの中に入っている様々な音が1曲目の中に詰まっています。ドラムの音はトミ(冨永義之)のドラムだし、ベースの音もせいちゃん(高緑成治)のベース。短い時間なんだけど、アルバムの中で鳴っている音を凝縮していった。で、アルバムが始まるよって感じにした」

——今回のアルバムって、ストリングス、ホーンが目立ったり、サイケデリックだったりというのが特徴的ではありますが、同時に、ギター、ベース、ドラムという基本的なバンドサウンドがともかく見事で。音色もグルーヴも気持ちいいです。

「一時期、打ち込みに凝っちゃった時期もあって、『good morning』というアルバムの「ガストロンジャー」のように、俺の打ち込みで成立している曲もあって。そういう時期って、病気みたいになりますね。ビシッと合っている機械のサウンドって、あれはあれで本当におもしろいものだから。ただし、そもそも何を打ち込みと言うのか、という問題もあるんですけどね」

——生の音を加工した打ち込みもありますもんね。

「おっしゃる通り、ストーンズの「アンダー・カバー」という曲も本当に演奏した音を使用してますし。U2もそうですよね。演奏したものをブライアン・イーノが本当に細かく構成している。でも今回はバンドの生の音が一番かっこいいんじゃないか、この4人の音を基本にするのが一番いいんじゃないかってところがスタートの段階であったんですよ。バンドなんだから、当たり前と言えば、当たり前のことなんですが、それが最大のテーマ。と同時に、テクノロジーの進化を学んだところもあるので、生音を素材にした打ち込みも使っている。バンドサウンドが際立っていると感じるように作っていく手法も少し学びました。でも「RAINBOW」も「永遠の旅人」も一発録りだし、やっとバンドを活かしていく作り方がわかってきた」
 

日常を受け入れて、歌にすることで開放されていった


——「RAINBOW」はアルバム・タイトル曲でもありますが、エネルギーが渦巻いていく混沌としたパワーを備えてます。どんなきっかけで生まれたのでしょうか?

「俺はとにかく曲を作るのが好きで、毎日作っているんですが、去年の11月くらいに、シングルを作ろうぜという期間があったんですよ。「なからん」とか「昨日よ」みたいな曲はすでにあったので、A面の1曲目みたいなシングル向きの開放感のある曲を作りたいと思っていたんですが、ある日、10曲くらい同時に出てきて、「RAINBOW」はその中の1曲なんですよ」

——10曲って、すごいですね。

「曲って、不思議ですね。逆立ちしたって、できないこともある。それを作った日は、武道館ライブのパンフレット用の撮影の予定が入っていて、スタジオに行ったら、メンバーとカメラマンの岡田貴之さんがいた。岡田さんは10代の頃からの友人でもあって、気心も知れている。ヘアメイクの人、スタイリストの人もいて、武道館に向けて、かっこいい洋服を持ってきてくれた。生演奏しているところを写真で撮りたいというので演奏してたら、倉庫でいい音が出ちゃって、ノリノリになって、すごく楽しかった。それで家に帰ったら、10曲くらい作ってしまった。きっと潜在意識の中に曲の素が眠ってるんでしょうね。むかついたこと、楽しかったこと、色んな出来事があって、そのダイジェストとして、その素が浮上してきて曲が出てきた、みたいな」

——「RAINBOW」の持っている強烈なエネルギーって、そういうところから出てきたんですね。

「エネルギーって、常に持っているはずなんですよ。同じ人間が作っているんだから、いつだって、できていいはずなのに、なぜかできない。でも何かのきっかけがあると、生まれる。不思議なものですね」

——この曲の中に<まるでRAINBOW>というフレーズはありますが、いわゆる世間一般のイメージの“希望あふれる虹”みたいなニュアンスはなくて、光も闇もごちゃまぜにしたような「RAINBOW」だと思ったんですが、なぜ曲名は「RAINBOW」だったんですか?

「仮歌の時に“RAINBOW”ってサビで歌っていて。その時点ではいわゆる虹だと思っていたんですよ。「俺たちの明日」という歌でも“でかい虹を架けるんだ”みたいなことを歌ってますが、そういう虹だと思っていたら、全然そうじゃなかった。闇の中で渦巻いているものを虹と勘違いしていたっていう。むしろものすごくアングラ心というか、暗い日常が“RAINBOW”だったんだって、歌詞ができて気が付きました」

——闇の中にあるものを“RAINBOW”って描けるところがすごいですね。

「この曲を作ったことで日常に自信が持てたというか。……俺はもともと歩くスピードが早くて、誰にも抜かれたことがなかったんですが、今や買い物をしているおかあさん方にも抜かれてしまっている(笑)。歩くテンポがガクンと遅くなってしまった。20歳くらいの時、「優しい川 」という曲を作ってる時にもブラックホールの中に落ちていく感覚があったんですが、50歳を前にして、立ち止まらざるを得なくなって、またしてもブラックホールに落ちていく感覚になった。でもそういう日常を受け入れて、歌にすることで開放されていった。内面にある恐怖感をストレートに“RAINBOW”って歌えるようになった。老化も、おかあさん方に抜かれることも全部、引っくるめて、“RAINBOW”って描くことができて、良かったなと思っています」

——その言葉をアルバム・タイトルにしたのはどうしてなんですか?

「『RAINBOW』というタイトルを聞いているうちに、いろんな曲が入っているから、『RAINBOW』なのかなとか、いろんな意味が繋がっていった。虹のレインボーという意味だって、ないわけじゃないですし」

——歌詞のあちこちで“行く”というフレーズも目立っていますが、エレファントカシマシが新たなところに進んでいることが見えてくるアルバムでもあるのではないですか?

「自分が勝手にイメージしているアルバム的なものをなんとしても作りたくて、結構みんなに無理を言って、お客さんも待たせてしまいましたけど、非常に中味の濃い、今のエレファントカシマシの音が鳴っている作品になった。先々認められて、売れていく布石にもなるんじゃないかなって。いや、そこはちょっとそこはわからないですけど、先に繋がっていく、いい音楽の仕込みをできているという実感はありますね」
 

今までの野音でも屈指のライブ


——今後のライブも楽しみになります。先日の日比谷野外音楽堂での月が出ている中でのステージの感想も伺いたいのですが。

「雨が降るんじゃないかって言われてたんですが、晴れて、月まで出た。これまで“中秋の名月なんてくだらねえ”とか言っておきながら、実は一番感激するタイプで。月の曲をいっぱい用意して、みんなもワクワクしてくれましたね。野音でのコンサート、僕らが一番長く続けているバンドみたいで、そのこともあってか、独特の空気、空間が生まれていたんですよ。お客さんが僕ら以上にエレファントカシマシの野音というのを大事に思ってくれていて、中秋の名月が出て、しかも僕らはレコーディング中で、非常に緊張感のあるステージだったんですが、僕らもお客さんも一瞬たりともその緊張を切らすことなく、今までの野音でも屈指のライブができたと思います」

※野音のライブレポートはこちら


——「月夜の散歩」では涙も流して。

「昔のことを思い出してしまったんですよ。でもコンサートって、いいですね。俺が泣いているのを、みんな、ちっともおかしいと思わない。なぜならば、みんなも実は他の昔の曲で俺の歌を聴きながら、涙を流したりしているから。泣いて歌えなくなってしまうなんて、プロとしてあるまじき行為かなと思ったんですが、みんな、意外と温かく受けとめてくれた。「ああ、私もその気持ち、わかる」みたいな(笑)。かえって一体感が生まれて、緊張感もあって、なおかつ温かみのあって、ますますいいステージになりました」

——アルバム・リリースの翌日からは『RAINBOW TOUR 2015がスタートし、さらに2016年1月4日・5日には東京国際フォーラム、10日・11日には大阪フェスティバルホールでのライブが控えてます。

「アルバム『RAINBOW』のツアーはオーソドックスですけど、最新曲と代表曲と両方でがっちりいい形で聴いてもらえたらと思っています。ライブハウスとホール両方あるので、それぞれの場所の良さが感じられるように、ちょっと変えていきたい。正月のコンサートは“ハレ”の気持ちもあるので、最大の華やかなステージにしたい。ゲスト・プレーヤーもたくさん呼んで、可能なかぎり、お正月らしいコンサートにしようと思ってます」
 

インタビュー・構成=長谷川誠


11月18日にNew Album「RAINBOW」の発売が決定したエレファントカシマシの全国ツアー『RAINBOW TOUR 2015が、リリース翌日の11月19日(木)東京・豊洲PITを皮切りにスタート。12月26日(土)金沢のファイナル公演まで全国10都市を廻る。
2016年の「新春ライブ」は1月4日(月),5(火)に東京国際フォーラム、1月10日(日)、11(月・祝)に大阪フェスティバルホールにて計四日間の開催。年明けからエレカシが最高のロックをかましてくれそうだ。

>>情報はこちら
ページ下部にも全国ツアー、新春ライブの情報あり。

リリース情報
22ndアルバム「RAINBOW」

2015年11月18日発売
 

初回限定盤【CD+DVD2枚組】

『RAINBOW』初回限定盤


UMCK-9799 ¥3,800(税抜)+税 

■収録曲(全13曲収録)
M-01 3210
M-02 RAINBOW
M-03 ズレてる方がいい
M-04 愛すべき今日
M-05 昨日よ
M-06 TEKUMAKUMAYAKON M-07 なからん
M-08 シナリオどおり
M-09 永遠の旅人
M-10 あなたへ
M-11 Destiny
M-12 Under the sky
M-13 雨の日も風の日も

DVD
「26年連続の野音の1日」
2015.9.27日比谷野外大音楽堂公演に密着した貴重なドキュメンタリー。


通常盤【CD】

『RAINBOW』通常盤


UMCK-1530 ¥3,000(税抜)+税 

■収録曲
M-01 3210
M-02 RAINBOW
M-03 ズレてる方がいい
M-04 愛すべき今日
M-05 昨日よ
M-06 TEKUMAKUMAYAKON
M-07 なからん
M-08 シナリオどおり
M-09 永遠の旅人
M-10 あなたへ
M-11 Destiny
M-12 Under the sky
M-13 雨の日も風の日も

 
 
イベント情報
RAINBOW TOUR 2015

11月19日(木)豊洲PIT
11月26日(木)なんばHatch
12月4日(金)サンポートホール高松
12月10日(木)わくわくホリデーホール(札幌市民ホール)
12月12日(土)仙台イズミティ21
12月18日(金)名古屋 日本特殊陶業市民会館フォレストホール
12月20日(日)福岡サンパレス
12月22日(火)広島アステールプラザ 大ホール
12月23日(水・祝)なら100年会館
12月26日(土)金沢・本多の森ホール


新春ライブ 2016

1月4日(月) 東京国際フォーラム ホールA
1月5日(火) 東京国際フォーラム ホールA
1月10日(日) 大阪フェスティバルホール
1月11日(月・祝) 大阪フェスティバルホール