川本成にインタビュー! 時速246億 ソロ公演『独特』がまもなく開幕
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時速246億主宰の川本成によるソロ公演『独特』が2018年8月22日から中野・劇場MOMOで始まる。2007年に前身のユニット「時速246」を立ち上げ、11年に「時速246億」と改名してからも、年1~2本のペースで活動を続けてきた川本。ソロ公演は『独立』(15年)、『独歩』(16年)、『独走』(17年)に続く4作目となる。どんな公演になるのだろうか。川本成に話を聞いた。
“3部作”を終えて、ここからが勝負だなと思った
川本成
ーー『独立』、『独歩』、『独走』ときて、今回の『独特』は第4弾という位置付けです。どのような内容になりそうですか?
いいマンネリもありつつ、より独特な感じになりつつ、という感じです。これまで同様、オムニバス形式です。ストーリーがある一人芝居というよりは、色々とやりたいことをポンポンやるという感じですね。
ーータイトルを『独特』とした理由はなんですか?
実は『独走』の稽古中から、このタイトルは決まっていました。いっぱい候補はあったんですよ、例えば『独自』とかね。でも、これまでの作品を振り返ると、“立”って、“歩”いて、“走”ったと。物事は、だいたい三部作で終わるという流れもあるじゃないですか。僕もそうしようかなとも思っていたんだけど、三部作で終わると、まぁ、花火だったなということになっちゃう。
ーーつまり、一瞬で終わってしまうということですか。
うん。ここからがやはり勝負だなと。普通だったらネタが尽きるし、やりたいことがもうなくなる。でも、ここで辞めるのか、辞めないのか。どちらがきついかなと思ったらやり続ける方がきついなと思って。もうないというところから、何とかしてひねり出したものが、いいものだったりするから。美談的に言うと、そんな感じです。
『独特』のチラシ
ーー毎年公演をやられていますが、今回も苦しみながら作ったのですか。
そもそも公演の
そんなことをチラシを描いてくださる、浮世絵師の石川真澄さんに話したら、こんなビジュアルになりました。まぁ地獄なんですよね、続けていく方が。僕には子供もいて、妻もいて、続けていかなければいけない。そんな地獄が悪くないなって思っています。もう生きていくこと自体が地獄だから、それはそれでなかなか面白いなと思っていますよ。
ーーこのチラシはおどろおどろしい印象ですが……。
よく見ると、まだ旗を持っているでしょう。まだまだ全然やる気で、先導して戦場でガンガンやっている絵なんですよ。刺されながら、血だらけになりながらも、ガンガン前に行っているという状況です。悲壮感漂う状況というよりは、攻めの姿勢を見せています。
ーー奥様もいらっしゃって、娘さんも2歳になられて、そういう存在がいるからこそ「戦う」のでしょうか。
まぁ本当は娘も妻もそんなことをやっていないで、ちゃんと大きな儲かるものをやってくださいってなるかもしれないんだけど(笑)、まぁでもねぇ。両極端あった方が面白いなということで、今はやっています。
人の可笑しみを表現したい
川本成
ーー一人芝居を作っていく上で、大切にされていることはどんなことですか。
アートにならないということですね。一人芝居は、自分に酔いしれている人の究極の形という感じがあるじゃないですか。僕は、そんな一人芝居も茶化したいところがあるのでね。やりたくないなぁと思ったからやることにしたんですけど……一人でやれる美しいことというよりは、一人でやれるひどいことやっていきます。
ーー今回は小林顕作さんと一緒に脚本を作られていますが、どういう風に作っていくのですか。
僕がやりたいことをいっぱい出して、精査していきます。最初は設定だけとか20個ぐらい案を出します。「あぁ、それは面白い設定だね」とか言って、話しながら決めていきます。序盤はほぼほぼ話していますね。立ち稽古はやっと本番1週間ぐらい前から始めました。
ーーえ! 立ち稽古、短いですね!
筋が定まってしまえばね。一人なので、変な話、当日の本番中に思いつくことがあったら入れられるじゃないですか。やるという段階に行くまでが大変なんですが、やると言ったらそれを具体化しながらやればいいわけなので。
ーーこれまでの公演との違いなどはありますか?
どんどん悪くなっていきますねぇ(笑)。ギリギリのラインをつきたいなと思っていたんですけど、ギリギリを超えちゃったかも(笑)。人間の可笑しみを僕は表現したいんです。「あの人スゲェ威張っているけど、さみしいよな」とか「スゲェ人だけど、ちょっと闇あるよな」とか。そういうことをみんな影で言うじゃないですか。そういうことを言われている人も言っている人も俯瞰で見ると可笑しいじゃないですか。そういう可笑しみは面白いと思っているんです。
僕、最近嫌なことがあると、嬉しいんですよ。ラッキーなことに、それを面白くコントにできる職業だから。嫌なことがあった時に、ポジティブシンキングになれますよ。
ーー日常生活でネタを探しているのですね。
まぁ、それだけにギャンギャン走っているわけじゃないですよ。ネタにギャンギャンしようと思うと、ネタになっちゃうのでね。この『独特』をやりましょうとなった時に、その時に思ったその時の全てが出れば一番いいなと思っていて。その時のアルバムを作る感じです。その時の一番ホットなこと、ホットにムカついていることをやりたい。だから、一年中無理やり考えているわけでもないんです。
日頃からメモはとるんですけど、いざ見返すと、今考えていることの方がいいなという場合がある。……まぁ偉そうなことを言っていますけど、くだらない舞台ですから(笑)。
これからも続けていくために、このオモシロに付き合ってくれ!
川本成
ーーどんな方に見てほしい舞台ですか。
変な話、シュールとかシニカルとか、そういうのを飛び越えたところに行きたいんです。子供が見ても面白いものでありたい。中学生や高校生だって「この人超汗かいているな」とか「この人スゲェ動いているな」というのは伝わる。
最近、一生懸命やっている人を見ると、グッとくるようになってしまってね。セリフやお芝居の内容ももちろん重要なんですけど、一人だからこそ特に人間を見に来るという状態だと思うんです。だから子供である、学生である、海外の人である……そういうものを超えて、誰でも来てください。僕は、プロでも素人でも子供でも犬でもそこの概念を超えたものを作りたいんです。
ーー最後にファンの方々に一言お願いします!
もうこれはいつも言っているんですけど、時速246億をやっていて、「ソロ公演はクラウドファウンディングだと思って見に来てくれ!」と言っているんですね。「金をくれ!」という意味ではなくて、「オモシロを今後も続けていくためにこのオモシロに付き合ってくれ!」ということなんですよね。面白いことをいっぱいするからこのオモシロに付き合ってください、と。これからも面白いことをいっぱいするので、川本成をぜひ応援してもらえませんかというところなんです。
僕はまだいけるのかと確かめる場でもあるんです。だからぜひ、見に来て欲しいです。応援してほしいです。
取材・文・撮影=五月女菜穂
公演情報
企画・製作:時速246億
【お問合せ】萩本企画 欽劇事務局 03-3795-5259(月~土12:00~20:00)