【RUSH BALL 2018 クイックレポ】tetoの10年後も忘れられないライブ

2018.8.25
レポート
音楽

teto

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RUSH BALL 2018【ATMC】 teto

「何が平成最後の夏だ!」
小池貞利(Vo/Gt)のそんな叫びから、「高層ビルと人工衛星」で始まったtetoのライブは、闇夜を切り裂くような鋭さがギラギラに光っていた。「なんで俺だけが惨めな思いをしなきゃいけないんだ!」とまた、独白のように小池が叫ぶ。高層ビルにシカトされ、人工衛星にも見放されたかのように腹の底から訴えかける彼を、この場に集まった観客は誰一人として嘲笑ったりはしない。「よくぞ代弁してくれた!」とさえ思いながら、ひとりひとりがギューッと握りしめた拳を突き上げて応える、そんな幕開けに。

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「世の中がどうしても胡散臭くみえます。みんな仲良しぶったり、楽しぶったり幸せぶったり……。そんなふうに俺と同じことを考えてる、どうしようもないヤツに歌います」と、「拝啓」へ。山崎陸(Gt)がブンブンと全身を振り乱して感情のままに掻き鳴らし、佐藤健一郎(Ba)と福田裕介(Dr)が全身で打ち鳴らすリズムで観客の脈をドクドクと早めいていく。

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小池の叫びは続く。「平成最後の夏とか言って、世の中盛り上がってるんですよ。そうやって騒ぐヤツに限って、10年後には平成最後の夏があったことを忘れちゃうんですよ」と流行にやっかみながら、「でも忘れちゃうのは仕方がないところがあって……。俺だって10年前のことで覚えてることは少ないよ。でも。忘れたくないことが沢山だから、今、歌うんだと思います」と「忘れた」を披露。彼が生きてきた歩みを、忘れないよう高らかに歌い上げる。名残惜しさの残るラストの「9月になること」に至るまで、ステージにじっとかぶりつく者、形振り構わず頭を振り乱す者、観客はそれぞれの好きなスタイルで楽しみながら、1分1秒も気を抜かずライブに全神経を注いでいた。

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冒頭の叫びで、一瞬たりとも目を離してはいけない、という張りつめた空気を共有してからは、本当にあっという間だった。あっという間だったけれども、たった4曲に込められた想いはあまりに濃厚。言葉が、音がいちいち胸に突き刺さっては、アドレナリンが出まくってスローに見える、本当の瞬間が何度もあった。平成最後の夏であろうとなかろうと、tetoと歌った今日のことを、この夏のことをきっとみんな忘れず、いつだって思い出すだろう。

文=大西健斗 撮影=河上良

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セットリスト

RUSH BALL 2018【ATMC】 teto
1. 高層ビルと人工衛星
2. 拝啓
3. 忘れた
4. 9月になること