平井堅 『Ken’s Bar』20周年記念、8年ぶりニューヨーク公演で喝采
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平井堅 撮影=MAYUMI NASHIDA
平井堅が自身のライフワークと位置づけ、1998年にスタートしたアコースティック形式のコンセプトライブ『Ken’s Bar』。この開店20周年記念公演が、今年5月のTOKYO DOME CITY HALLに続く第2弾として、8月27日・28日の2日間にわたってニューヨークで行われた。平井堅にとっては2010年のデビュー15周年記念公演以来、8年ぶりとなるニューヨークでのライブで、会場はブロードウェイの劇場など、エンタテインメント施設が数多く集まるエリアに2018年3月にオープンしたばかりのSony Hall。ジャズクラブで知られるブルーノートの所有、運営で、各国の、そしてさまざなジャンルのアーティストのライブがブッキングされているが、平井堅はこの会場のステージに立つ初めての日本人シンガーとなった。
平井堅 撮影=MAYUMI NASHIDA
その『Ken’s Bar』開店20周年記念公演。オープニングナンバーは、もともと1977年の映画『ニューヨーク・ニューヨーク』のために作られたのだが、のちにフランク・シナトラがカバーしたことで世界的に広まった「Theme From New York, New York」。ニューヨークという大都市で成功を夢見る若者の野心を歌ったものであり、そのためには愛する君が必要なんだというプロポーズを歌ったラブソングでもある。このスタンダードを歌い終えると、平井堅は「こんばんは。『Ken’s Bar』にお越し下さいましてありがとうございます。本当に嬉しい限りです」と挨拶。満員のフロアを見渡すと笑顔で「最高の夜にしようぜ、ニューヨークボーイズ&ガールズ!」とお決まりの文句で観客を煽ると、さらには英語で「ニューヨークで歌うことができてとても幸せです。ベストを尽くします」というMCも披露した。
平井堅 撮影=MAYUMI NASHIDA
そして、2016年発表のシングル「魔法って言っていいかな?」、2003年発表のコンセプトカバーアルバム『Ken’s Bar』にも収録されているジョージ・マイケルの「FAITH」と、平井堅のファンにとってはお馴染みのオリジナル曲とカバー曲が続いたあと、エロティックな歌詞が特徴のマニアックな楽曲が登場した。2000年に発表されたオリジナルアルバム『THE CHANGING SAME』収録曲で、ステージを照らす赤い照明が、その「LADY NAPPER」が持つ妖しい世界観を見事に演出していた。
平井堅 撮影=MAYUMI NASHIDA
そんなムードが残る中、“ニューヨークでも I want your request”と、「リクエストコーナー」の始まりを告げるジングルのニューヨークバージョンが歌われると、場内に割れんばかりの拍手と歓声があがった。平井堅の投げたボールをキャッチした人が、自分の歌ってほしい平井堅ナンバーをリクエストできるという大人気企画で、初日は「Run to you」、2日目は「wonderful world」が披露された。なお、「リクエストコーナー」のジングルはいつもピアノをバックに歌われるのだが、今回はアコースティックギターというアレンジが新鮮な印象を残した。
平井堅 撮影=MAYUMI NASHIDA
このように、『Ken’s Bar』ではひとつの楽器の演奏だけで歌われるスタイルが圧倒的に多く、続く「why」、「瞳をとじて」、「知らないんでしょ?」もピアノだけをバックに披露された。ここで二部構成の前半となる1st STAGEが終了し、休憩を挟んで2nd STAGEがスタートしたのだが、ステージ上にはベーシストしか現れない。ひとつの楽器の演奏だけで歌われるスタイルはまだ続くようだ。ところが、ウッドベースが鳴り出しても平井堅は出てこない。どうしたのか。すると突然、客席の後方に照明が照らされると、そこに平井堅。1959年の映画『お熱いのがお好き』でマリリン・モンローが披露した「I wanna be loved by you」を歌いながら、フロアを埋めたファンのあいだを通ってステージへ戻っていくサプライズな演出だった。いうまでもなく、会場は大変な盛り上がり。
平井堅 撮影=MAYUMI NASHIDA
サプライズは続く。「哀歌(エレジー)」である。『Ken’s Bar』ではいつもピアノだけの演奏だが、今回はウッドベースのみ。平井堅が発するひとつひとつの言葉と、ウッドベースのひとつひとつの音が絡み合うようなアレンジは、退廃的な男女の関係性を歌った「哀歌(エレジー)」にぴったりであり、そして新鮮だった。過去の楽曲にまったく違う響きを持たせることで観客を驚かせる、それが『Ken’s Bar』のお楽しみのひとつでもあるのだ。すると、“「哀歌(エレジー)」の余韻をぶっ壊し もう1曲 リクエストコーナー”と、歌詞を変えた大人気企画のジングルが再び始まり、会場のムードは一変。しかも、いつものピアノでなく、1st STAGEのアコースティックギターでもなく、今度はウッドベースだけで歌われた。これまた新鮮だった。そしてこの日、二度目の「リクエストコーナー」は、初日は「まばたき」、2日目は「POP STAR」が披露され、盛況のうちに終了した。
平井堅 撮影=MAYUMI NASHIDA
続いて、アコースティックギターだけの「One Love Wonderful World」が歌われると、シンプルな演奏でずっと展開してきた『Ken’s Bar』が、ピアノ、ベース、パーカッションがs加わることで、そして、「ソレデモシタイ」、「世界で一番君が好き?」、「KISS OF LIFE」というアップテンポな楽曲が続くことで、一気に変化していった。平井堅のライブのハイライトを飾るお馴染みの楽曲ばかりということもあって、ステージ上だけでなく、それまで座っていた観客が立ち上がって頭上で手を叩くなど、フロアの景色も変わっていった。それを眺めた平井堅は満面の笑みを浮かべ、あらためてお礼の言葉を述べた。
「『Ken’s Bar』開店20周年を記念して、こうしてニューヨークでコンサートができたこと、こんなぜいたくなことはないと思います。今日という思い出の日を作って下さって、本当にありがとうございました。今回はニューヨークで開催したわけですが、引き続きセレブレイションイヤーとして、次は11月からツアーを開催します」
平井堅 撮影=MAYUMI NASHIDA
2nd STAGEは昨年、「紅白歌合戦」をはじめ、数多くのテレビ番組で披露してきた「ノンフィクション」で終了し、そしてアンコールは2曲。1998年の開店当時から歌っている『Ken’s Bar』のテーマソングともいうべき「even if」と、この楽曲の登場人物のその後を描いた「Half of Me」だった。この2曲のあいだに平井堅はニューヨークで生活をする人たちに対し「世界で一番刺激のある街。世界で一番戦わなければならない街。ここニューヨークで自分らしく、悔いのない人生を送って下さい」とメッセージを送ったあと、さらにこう述べた。
「自分を愛し、大切な人を愛し、自分の気持ちに正直に、常に悔いのない人生を、と、自分に言い聞かせて歌っています。みなさんもノーリグレットなライフをこれからも過ごして、また会いに来て下さい。ニューヨークでもいいですし、パリでもどこでもいいんですが、みなさんにこうしてお会いできる日までがんばって歌っていこうと思います」
と語り、ラストにまだ音源化されていない楽曲「Half of me」を披露しLIVEを締めくくった。
撮影=MAYUMI NASHIDA
平井堅 撮影=MAYUMI NASHIDA