fox capture plan 今だからこそ完成した“初期衝動”がテーマの最新アルバム『CAPTURISM』ができるまで
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fox capture plan
現在放送中の吉岡里帆主演ドラマ『健康で文化的な最低限度の生活』の劇伴を担当しているfox capture planが、7thフルアルバム『CAPTURISM』を9月5日にリリースする。前作『UИTITL∃D』から約11ヶ月。今回のリリースまでに多くの劇伴を手がけ、カバーアルバムのリリース、そして数々のライブを行なってきたという彼らに、この11ヶ月を振り返ってもらいつつ今作が完成するまでを訊いた。
──昨年10月にリリースされた『UИTITL∃D』から約11ヶ月で、7枚目のオリジナルアルバム『CAPTURISM』をリリースされるわけですが。
岸本 亮:バンドとしては早いですよね。
──そうですよね。しかも、前作から今作の間に『オーファン・ブラック ~七つの遺伝子~』、『コンフィデンスマンJP』、『健康で文化的な最低限度の生活』の劇伴を担当されていて、ツアーも『UИTITL∃D TOUR』『GREATEST BLUE TOUR 2018』の2本がありました。あと、10月からスタートするアニメ『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』の劇中音楽も手がけるということで、あいからずお忙しそうですよね。この約11ヶ月を振り返ってみるといかがですか?
カワイヒデヒロ:本当にあっという間でしたね。『健康で文化的な最低限度の生活』と、10月からのアニメの劇伴と同時に『CAPTURISM』を作っていたので、正直あんまり記憶がないんですよ(笑)。
──ずっと曲を作り続けて演奏し続けることは、音楽家として素晴らしいことだと思いますけど、人間的に心配になるところもあるんですが……(苦笑)。
カワイ:この前、夏休みというか2週間ぐらい何もなかったんですよ。バンドとしては。
井上 司:年末年始も落ち着いていたので、そう考えると、やたら集中している時期と、落ち着いている時期があって。
カワイ:波が激しいよね(笑)。
井上:極端だよね。全然会わない時期もあるし。
岸本:そう考えると、制作の山場は乗り越えて、今はツアーに向けてとか、アルバムが出るのでこうやって取材を受けさせていただくという期間ですね。
fox capture plan・岸本 亮
──そんな超多忙な中で制作された『CAPTURISM』ですが、事前にコンセプトを話し合ったりはされました?
岸本:なんとなくですけど、「初期衝動」みたいなものはあったかもしれないです。初期のアグレッシブな作風というのが、キーワードとしてあったような気はしますが……。
井上:1曲目の「CAPTURISM」ができて、他の曲が決まって行ったんですよ。
岸本:「Greatest Blue」「We Are Confidence Man」「Overdrive」はツアーでもやっていたし、この辺りがアルバムに入ってきて軸になるだろうなと。あと、今回はつかっちゃん(井上)が、昔のデモのストックを発見したんですよ。
井上:まだみんなで合わせていないデモの欠片がいっぱいあったんで、それをフォルダにかき集めてシェアしたんです。
岸本:その中から、このテイストはないからやろうよって、話し合いながら進めていった感じでしたね。「CAPTURISM」はアルバムを出すことが決まってから僕が作ったんですけど、最初にサビのメロディが出てきて、そこに繋がっていくイントロやAメロを考えていったらああいう感じになりました。
──イントロが始まった瞬間に「よっしゃきた!」って思う高揚感がありますね。
岸本:「CAPTURISM」っていうぐらいなんで(笑)、やっぱりイントロでキャプチャーしないといけないなと思って。『BUTTERFLY』に収録されている「混沌と創造の幾何学」とか、過去にも似たテイストのイントロがあるんですけど、それを派生させた感じですね。
井上:デモを初めて聴いたとき、イントロが何拍子なのか全然わからなかったです。これは身体に悪いイントロだなって(笑)。
岸本:あのイントロって、変拍子っぽく聴こえるけど変拍子ではないんですよ。トリックアート的というか。カワイくんの曲にも多いんですけどね。4拍子なんやけど変拍子っぽく聴こえるっていう。
カワイ:アクセントの位置が拍の頭にないので、それで勘違いをさせるというか。まあ、させられているというか。僕も「CAPTURISM」を聴いたときに、これってどうやってやるの?って思いましたからね(笑)。
fox capture plan・カワイヒデヒロ
──岸本さん的には「CAPTURISM」を作っているときに、初期衝動というテーマが頭の中にあったんですか?
岸本:なんとなくありました。2ndアルバム(『BRIDGE』)の「Attack on fox」やデビューミニアルバム(『FLEXIBLE』)の「capture the Initial “F”」みたいな雰囲気とか。曲の中で拍子が変わっていくんだけど、スピード感はそのままで、緊張感はあるんだけどメロディには初期の頃のようなキャッチーさがあるというか。そういう感じの曲を作ろうかなと思っていました。
──でも、なぜまた初期衝動というテーマが出てきたんです?
岸本:ここまで紆余曲折……というほど迷ってはいないんですが(笑)、3rdアルバムの『WALL』でロックっぽい要素を強調したり、4thアルバムの『BUTTERFLY』でストリングスをいれてクラシカルなものにしたり、5thアルバムの『FRAGILE』で電子音を入れたりしてきて。それを経た今、結成したときのポストロックやコンテンポラリージャズを融合させたようなスタイルでやると、ひとつの完成形になるんじゃないか?っていうイメージがあったんですよね。
──ぐるっと一周したというか。
岸本:そうですね。かつ、この曲はあえて3人だけのアンサンブルでやろうと思ってました。
──2曲目の「Greatest Blue」は、『GREATEST BLUE TOUR 2018』をまわる際に書き下ろした曲で、ライブでも披露されていました。あのツアーは、バンド結成時の目標のひとつでもあったブルーノートでの単独公演もあったわけですけども。
岸本:目標にはしていましたけど、そこまで行けるとは思っていなかった部分もあって(笑)。でも、憧れのステージではありましたね。
──その舞台に立つにあたって、それこそ自分達の原点を思い返したのかなというイメージもあったんですが。
岸本:ああ、なるほど。この曲を書いたときのコンセプトは「ジャズ」だったんですよね。僕は特にジャズピアニストを聴いてきたんですけど、そこへのリスペクトを散りばめたんですが、fox capture planとしては、あまりやってこなかったタイプの曲ではあるんですよ。曲の中にアドリブパートの要素があったり、生ピアノとウッドベースというアコースティックサウンドにこだわってやってきて、そこが自分達のジャズっぽい要素だったりするんですけども、ジャズに寄せた曲はやってなかったんです。でも、『GREATEST BLUE TOUR 2018』が決まって、そういう曲もあったほうがいいなと思って、後半はメンバーのソロ回しで終わっていく展開にしようと思って作ったんですけど。
カワイ:(資料に「Greatest Blue」の曲尺が6分12秒と書いてあるのを見て)今、初めて知ったんだけど、この曲って結構長いんだね。やっているとそんな気はしないんですけど(笑)。
──(笑)。聴いていてもそんなに長い気しないですよ。
カワイ:展開も多いので、あまり長さを感じないというか、退屈しない構成になってるんですよ。だから、6分もやってるのかと思って。体感では5分ぐらいかなと思ってたんですけど。
岸本:俺もそう思ってた(笑)。
井上:「Greatest Blue」をブルーノートでやったときに、めちゃくちゃ気持ちよかったんですよ。
岸本:あれは気持ちよかった。最後のドラムソロのところで、ストリングスも含めてユニゾンをしたんですけど、あれをやりきったときのドヤ感はすごかった(笑)。
fox capture plan・井上 司
──(笑)。あと、ドラマ『コンフィデンスマンJP』のテーマ曲だった「We Are Confidence Man」のリアレンジ版も収録されています。
岸本:この曲はカワイくんが作ったんですけど、ドラマで使われたバージョンは、ゴージャスなエンターテインメント感のあるアレンジになっていて。あれに対抗しようと思ったら、これはちょっと無理やなって。
カワイ:3人対20人ぐらいだからね(笑)。
──ドラマで使われていたものは、ホーンやコーラスなどが入っていて派手さがありますけど、それがタイトになって、グルーヴがより気持ちいいものになってますよね。
カワイ:最初は一回原曲っぽい感じであわせたんだっけ?
井上:うん。一回やってみて、途中でこれは違うんじゃないか?って。
岸本:イントロで音がどんどん重なっていくんですけど、そこがちょっと寂しかったんですよ。
カワイ:ピアノ一本でストリングスとかホーンやギターを表現すると、あと指が20本ぐらい必要になってくるし(笑)、あのアレンジだと3人でやる良さが出ないなと思って。それでリズムをちょっと変えてみたりとか。
岸本:最終的に、R&Bやヒップホップに通じるものにしました。展開は多いんですけど、メロディはどれも印象的なので、ドラマを観ていた人なら、あの曲だよねってわかる形にはなってますね。
──ちなみにですけど、井上さんが持ってきたデモの欠片はどの曲になったんですか?
井上:「Kick Up」「Liberation」「Paradigm Shift」ですね。
カワイ:「interlude」もそうだよね。
fox capture plan
──アルバムを通して聴くと、「interlude」で雰囲気が分かれる形になっていますよね。前半はどちらかというとアッパーというか明るめで、後半は比較的メロウなものが多い……とはいっても手数は多いし、激しい部分もありつつですが、そういう印象がありました。
岸本:録っている段階から、「Paradigm Shift」は最後かなとか、いろいろ考えてはいたんですけど、最終的な曲順は、全部録ってから僕が決めました。「Mad Sympathy」の始まり方とか、「Liberation」のベース音とか、それぞれ個性が強烈なのもあって、アルバムの後半にするとすごく活きてくるだろうなとか、この2曲はライブでも繋げてやりそうな気がするから並べてみようとか。結構いい曲順になったかなと思いますね。ストーリーといいますか、流れがキレイなものにはなったかなと。「interlude」は、まあ、休憩と言うとあれですけど(笑)。
カワイ:箸休めではあるよね。あの曲はエンジニアの趣味というか、録った素材を好きに加工してもらったんですよ。DJプレイみたいなミックスの仕方をしたので、おもしろい感じに仕上がったと思います。
──確かに「interlude」とはいえ濃いですからね。
岸本:今回のアルバムは、今まで以上に一曲一曲のキャラクターが濃いし、自信を持って『CAPTURISM』というタイトルにしたところもあるかもしれないですね。ある種セルフタイトル的といいますか。バンド名の「Capture」に「ISM」なので。
──あと、今作にもカバーが収録されていますが、これまではロック畑の人達の楽曲を選曲されてきましたけど、今回はNe-yoの「Because Of You」というR&Bからのセレクトですね。
岸本:カバーについては、いつも僕とつかっちゃんで相談して決めるんですけど、なんか、よく行くカレー屋があって、そこに行くたびにこの曲が流れるんですよ(笑)。元々曲は知ってたんですけど、やっぱええ曲やなと思って。で、Twitterでつぶやいたら、「かっこいい曲ですね」っていうリアクションもあって。
井上:僕はそのつぶやきをリアルタイムで見てました(笑)。
岸本:僕としては、ブラックミュージックというか、R&Bの曲を引っ張ってくることは頭になかったんですけど、全然ありじゃね?って。他にもいろいろ考えてみたんですけど、他の曲とのバランス的にもいいし、なんか時代的にも余裕のある感じの音楽を求められているような気がするというか。たとえばロックフェスとかでも、「みんなで一緒に盛り上がろうぜ!」って全開でやるよりも、ちょっと引いた感じの人達も支持され始めているので、直感的にこの曲かなって思いましたね。
井上:僕もこの曲はすごい聴いていたんですけど、カバーをするならやっぱりメロディーが印象的なものがいいと思っていたので、この曲をやるのはすごくいいなと思って。
岸本:日本人にも受けるようなメロディーラインだよね、この曲は。
カワイ:この前、ライブで初めてやったんですけど、反応もよかったんですよ。みんな意外と知ってるんだなって。
fox capture plan
──fox capture planは、かねてよりいろんなジャンルをクロスオーバーした音楽をやってきましたけど、カバーの選曲といい、今回は全体的に黒いグルーヴのものがやや多いなと思ったんですが。
岸本:ああ、確かにそうかもしれないですね。「interlude」もそうだし、「Paradigm Shift」のリズムとかもそうだし……。
カワイ:「Mad Sympathy」もちょっとツーステップっぽさがあるしね。
岸本:うん、あの曲のリズムの跳ね具合はそうだもんね。
井上:あと「Liberation」はあんなに激しいけど、今までやってこなかった4ビートを叩いているし。
岸本:そうだよね。そこは逆に避けてた部分でもあったんですよ。
カワイ:だけど、ベースは歪んでるっていう。
岸本:そうそう。ドラムは4ビートだから、ベースは歪ませてリフを弾くっていう。でも、黒っぽさは全然意識してなかったですね。言われてみて初めて気づきました。「Greatest Blue」にもそういうパートがあるし……ほんまや。おもしろいですね。
カワイ:こうしたら曲がよくなるんじゃないかな?って作っていったら、今回はそういう要素が多く含まれた曲が、たまたまたくさん収録された感じなんですよ。レコーディングのときも「そこちょっと跳ねさせてよ」っていうぐらいの感じで話していたから、何かをめちゃくちゃ意図したわけでもなくて(笑)。
岸本:今のジャズシーンって、R&Bだったりヒップホップだったりの影響がすごく強くて。そこはロバート・グラスパーが提示した部分もあると思うんですけども、その前からジャジーヒップホップという言葉もありましたし、ディアンジェロとか、コモンとか、ザ・ルーツみたいに、生音でヒップホップをやる人達は90年代からいたから、僕らの音楽にそういう要素が加わってくるのは、世代的にも全然当たり前なことなのかもしれないですね。
カワイ:最近は、あるジャンルに属してはいるけど、いろんな要素を取り入れている人も増えているし、一応「ジャズ」とは言ってはいるけど、あまり関係なくなってきましたよね。「このジャンルだから、こういう感じ」という人達が減ったというか、そうじゃない人が増えてきたから、そういう人達が逆に目立たなくなったのかもしれないですけど。でも、やっぱりジャンルが多様化してきているので、ジャンルで縛って何かを語ることがナンセンスになって来ているなっていうのは思います。
──そして、ツアーが決定しています。まず、9月7日に京都磔磔、9月8日渋谷クアトロで『KICK OFF LIVE』と題したワンマンライブを開催されて、10月からは全国8ヶ所をまわる本ツアーがスタート。ツアーファイナルは、11月4日、EX THEATER ROPPONGIにて行なわれますが、それぞれどんな内容になりそうですか?
岸本:『KICK OFF LIVE』と本ツアーで、内容がちょっと変わると思います。本ツアーはアルバムの曲を全曲やるつもりでいて、『KICK OFF LIVE』のほうは、今までの代表曲とハーフハーフぐらいのイメージですね。
カワイ:『CAPTURISM』は濃い曲が多いので、たぶん頭からお尻までライブを観ると、お腹いっぱいになれるんじゃないかなと。というか、僕がおなかいっぱいなりそうです(笑)。
井上:あと、アルバムの曲で試した部分がいろいろあるので、それがライブでどうなるのかっていうところも見所だったりするかもしれないですね。
岸本:ゲストボーカルを入れるわけでもなく、全曲インストではあるんですけど、曲調のバリエーションがさらに広がってきたので、最初から最後まで飽きずに聴いてもらえるかなと思います。「インストバンドのライブって行ったことないからな」とためらっている人も、この記事を見て初めて知っていただいた人も、非常に楽しませる自信はありますね。
文=山口哲生 撮影=菊池貴裕
fox capture plan
リリース情報
ライブ情報
9月7日(金) 京都府 磔磔
9月8日(土) 東京都 渋谷CLUB QUATTRO
※オールスタンディング
※学生の方は500円キャッシュバックあり(学生証などの身分証明書確認あり)
レコ発ツアー"CAPTURISM TOUR"
2018年10月5日(金) 北海道 札幌 cube garden
2018年10月7日(日) 愛知県 名古屋 LION THEATER
2018年10月12日(金) 宮城県 仙台 CLUB JUNK BOX
2018年10月13日(土) 山形県 Sandinista
2018年10月19日(金) 岡山県 CRAZY MAMA 2nd Room
2018年10月27日(土) 福岡県 Early Believers
2018年10月28日(日) 大阪府 梅田 Shangri-La
2018年11月4日(日) 東京都 EX THEATER ROPPONGI
<学割を受ける方へ>
学生証ご持参の学生の方に限り、公演当日のご入場の際に、学生証の提示で¥500キャッシュバック致します。小学生・中学生に限り、ご年齢を証明できる公的身分証明書でも構いません。学生証をお持ちでない、もしくはお忘れの学生の方 及び 公的身分証明書もお持ちでない小学生・中学生の方には、キャッシュバックはございません。未就学児入場無料。ただし、