ワンオク、マイヘアらが繋いだバトン、エレカシが名曲連発で大トリ 『SWEET LOVE SHOWER 2018』DAY3
エレファントカシマシ Photo by 岸田哲平
SWEET LOVE SHOWER 2018・DAY3 2018.9.2 山中湖交流プラザ きらら
『SWEET LOVE SHOWER 2018』3日目=9月2日に出演したアーティストのうち、5組のライブレポートをお届けする。空は曇天。朝から降っていた激しい雨が止み、涼しい風が吹いている。
My Hair is BAD Photo by 上山陽介
「『SWEET LOVE SHOWER 2018』3日目、最高の一日に! 新潟県上越・My Hair is Bad、始めます! ドキドキしようぜ!」
サウンドチェック後からステージに残ったままだったMy Hair is Badの3人は、ジングルが終わるや否やジャジャーンと鳴らし、待ちきれていない様子。冒頭2曲の演奏後、椎木知仁(Gt/Vo)が導入的な内容を歌い「ドラマみたいだ」を届けた。しかし感傷的なムードは、30秒のラブソング「クリサンセマム」、曲間0秒で突っ込む「元彼氏として」での爆走ですぐさま吹っ飛ぶ。
My Hair is BAD Photo by 上山陽介
<前の彼氏の僕はどうだ/ラブシャの一番デカいところでライブするような感じ>と替えた同曲を終えた頃には、小雨が降っている状態。それを受け「雨、ギリ降ってますか? 野音も雨、スピッツのイベントも雨で中止! 俺のせいかもしれない。でもあんたの心を晴らしたいんだ!」と椎木。「フロムナウオン」では「平成最後の夏」というワードや時事ネタなどを放り込みつつ、本日も、生のロックバンドへの愛をぶつけていた。そしてラストは「いつか結婚しても」。捻くれた男の、意地と情けなさと欲望と愛情と。鮮やかな起承転結にはその全てが詰まっていた。
スガ シカオ Photo by 岸田哲平
初出演のスガ シカオは、バンドセットで登場。SEに合わせて音を重ねセッションを開始すると、いよいよライブがスタートだ。序盤に披露した「Party People」はフェスというパーティー会場にやってきた人々に対する彼なりの挨拶だろうか。「平成最後のギリギリの夏に、俺が作ったギリギリソングを捧げるぜ」と披露した、KAT-TUNのデビュー曲「Real Face」は、しっとりとスガの歌声を際立たせる「静」パートと「もはやメタルでは?」と言いたくなるほどの「動」パートを行き来するような構成に変貌していた。
スガ シカオ Photo by 岸田哲平
「小汚ねえギターが、俺たちのファンクが、柔らかくも美しい空気を汚すことをお許しください」と突入した「19才」はギターとバトルを繰り広げるような歌い出し、さらにベース、ドラムが加勢してくるサマが最高。「Progress」ではリバーブをたっぷり効かせながらスキャットを披露し、大歓声を起こした。硝子のようなスガの声質には繊細さと刺々しさがあるが、時にはソウルフルに、骨太なバンドサウンドを牽引してみせる。この日のセットリストは、代表曲を網羅しつつ、その多面性を存分に味わえるような内容になっていた。ラストの「コノユビトマレ」はこのフェスに集まる音楽ファンに対するメッセージともとれた。
ONE OK ROCK Photo by 岸田哲平
5年ぶりの出演だったONE OK ROCKのことを、きっとみんな待ち望んでいたことだろう。1曲目「Taking Off」から早速、フィールド一面が手のひらの海に。地を揺さぶるが如く重心の低いキメが放たれる度、オーディエンスは熱狂していった。最新曲「Change」は紛れもなく、「4人編成のロックバンド」という型に囚われていない彼らだからこそ生み出せた曲。ボーカルを際立たせるアレンジが施されている「Take what you want」ではシンガロングを巻き起こしたり、Taka(Vo)のロングトーンシャウトに会場が沸くシーンがあったりと、「声」が醸す厳かさで以ってその空気を引き締めていた。
ONE OK ROCK Photo by 岸田哲平
改めてこのバンドの曲を聴くと、彼らは一切、シーンの風向に寄せに行くようなやり方をしていないんだなということがよく分かる。そこでTakaは言うのだ。「この素晴らしい大地に降り注ぐ音楽、今日はみなさん、しっかりと心を解放して音楽聴けてますか?」と。その上で「これは毎回言ってることですけど、フェス初めての人、自分の好きなバンドだけじゃなくて初めてのバンドも見てみてください。それが醍醐味です」と。ライブが終わる頃には、上空の雲は流れ、日の光が差し込んできていた。そんな自然現象さえ彼らのための演出に思えてしまうほど、凄まじいライブだった。
「遅れてきた新人、ハナレフジです。今日はどうぞよろしく!」と永積 崇(Vo/G)が挨拶し、ハナレグミとフジファブリックによるユニット=ハナレフジのライブがスタート。彼らはこの秋、全国ツアーを行うという。いわば今回のライブはその前哨戦だったのかもしれない。横一列に並んだ彼らはとにかく楽しそうで、ステージ上の笑い声がこちらにも聞こえてくるほどだった。途中にはコール&レスポンスを実施。永積はオーディエンスの上々な反応に対し、「さすが、ワンオクで弾けてきただけあるね!」と笑った。
最初のブロックでは、自然に囲まれたロケーションによく似合うような柔らかなアンサンブルが主だったが、中盤ではもっとプログレッシブになり、「今夜はブギー・バッグ」~「ダンス2000」~「FUNKY ウーロン茶」~「ダンス2000」という流れのメドレーを披露。遊び心が効いた曲間の繋ぎ、各楽器のソロ、ユニゾンしても相性抜群な永積&山内総一郎(Vo/G)によるボーカルなどに魅せられていたら、あっという間に過ぎていった。そして日没時、最後に演奏されたのは「明日天気になれ」からの「若者のすべて」。ベストタイミングとしか言いようのない選曲に、多くの人が喜びの声を上げていた。
エレファントカシマシ Photo by 岸田哲平
『SWEET LOVE SHOWER 2018』の3日間を締め括ったのは、エレファントカシマシ。宮本浩次(Vo/Gt)のカウントを機に冨永義之(Dr)がビートを刻み、そこにバンドの音が重なっていく。そうして始まった1曲目は「Easy Go」。この曲を初めて聴いたとき、「デビュー31年目のバンドが、どうしたらこれだけフレッシュな音を出せるのだろうか」と思ったのだが、生で聴くとその気持ちがさらに強まるし、彼らぐらいの歳になった頃、自分もああして青春できるのだろうか?と思ったりもする。宮本が、めちゃくちゃ楽しそうに高緑成治 (Ba)の肩に手を回したり、石森敏行 (Gt)の新しいヘアスタイルをカッコいいと褒めたりしていたときにも、同じようなことを思った。
エレファントカシマシ Photo by 岸田哲平
「奴隷天国」「RAINBOW」と激しい曲を続けた流れ。ギターの音が出なくなるハプニングに見舞われるも「じゃあ無しで!」と機転を利かせた「悲しみの果て」、そして「風に吹かれて」。「とりあえずは一緒に生きている仲間ということで、まあ今日を境に二度と会わないかもしれないですけど」と宮本は前置いたが、やはりこのバンドの曲は共闘宣言そのもの。だからこそ、とびきり楽しかったこの空間を去っていこうとする私たちの胸に刺さって抜けなくなるのだ。「もう1曲あるんですけど、最後の曲です」と正直に述べてから始めた「今宵の月のように」、予告通り登場したアンコールでの「ファイティングマン」でライブは幕を閉じた。
余談だが、この日の宮本、計2回、少年のような笑顔でステージの方にお尻を突き出しながら、「お尻出してプッ!」と言っていた。マイブームか何かなのだろうか。
取材・文=蜂須賀ちなみ