レキシの作品を彩る豪華ゲストの“レキシネーム”の由来、ライブへの想い、レキシの想い描く未来とは?
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レキシ
レキシの約2年3ヵ月ぶり、6枚目のアルバム『ムキシ』が9月26日にリリースされた。石川五右衛門をテーマにした甘いファンクナンバー「GOEMON feat. ビッグ門左衛門」(ビッグ門左衛門=三浦大知)、オシャレキシ(上原ひろみ)と総勢13人からなる黒船ビッグバンド(from GENTLE FOREST JAZZ BAND)によるレキシ初の一発録り「SAKOKU feat. オシャレキシ」、大老の生き様を歌った切ないバラード「TAIROW ~キミが目指してんのは~ feat. カモン葵」(カモン葵=手嶌葵)など、日本の歴史をキーワードにしたドラマチックでダンサブルなナンバーが収録された今作について、豪華ゲスト陣の“レキシネーム”の由来から、ライブへの想い、そしてこれからのレキシについて訊いた。
井伊直弼って悪者のイメージだけど、徳川家を思って、将軍様のために尽くしたって思ったら、ちょっと泣けるな、みたいなのも含めて書いた。
――5thアルバム『Vキシ』以来、2年3ヶ月ぶりのニューアルバム『ムキシ』がリリースされました。レキシネームを与えられた新規ゲストが参加した楽曲を中心にお伺いしたいなと思うんですが、まず、音源よりも先に2014年12月に対バンツアーを開催したオシャレキシ(上原ひろみ)との出会いからお伺いできますか。
もともと、ひろみちゃんの旦那さんであるデザイナーの三原康裕さんと親交があったのね。で、ある日「奥さんを紹介するよ」って言われて、初めて会ったその日に「なんかやってみて!」ってむちゃ振りされてさ。
――あはははは。目に浮かびますね。そこで何を歌ったんですか?
「Let’s 忍者」だったかな。リズムもなしに、弾き語りで<息をひそめて/忍者>って歌ったら、ひろみちゃんが一人で“うわ~”って盛り上がってて。「もっとやって」って言われて、「狩りから稲作へ」をやったのよ。<縄文土器 弥生土器 どっちが好き~>って歌ったら、前のめりで“すげえ!”ってなって。急に横に来て、セッションみたいな感じで一緒に弾きだして。俺、もう必死よ! そこからもう、ずっと、いつか一緒にやりたいねって言われてて。
いつも会うと遊びで俺がやってる曲をオシャレにアレンジするっていうのをやってたのよ。それで、自分で「また、オシャレにしちゃった」って言ったりしてて。だから、最初から決まってたというか、自分たちで自然と言ってたのがレキシネームになったというか、結局はひろみちゃんが自分でつけたみたいなところがあるよね(笑)。
――(笑)対バンツアーはすでにやってますが、アルバムに参加するのは今回が初になります。出会いから7年越しでの実現ということになりますね。
そうだね。日本にいるときは週1くらいで、音楽関係なく、友達として会って。ひろみちゃんはパンケーキ好きだから、パンケーキを食べるときとか、必ず呼ばれたりしてて。しょっちゅう会ってる中で、「今、1曲、ビッグバンドのアレンジしようと思ってるんだよね」って言ったら、「それ、私がやる」って、冗談めかして言い出して。「だったら、アレンジだけじゃなくてフィーチャリングもやろうよ」って恐る恐る言ったら、「私はずっと待ってる身だから。そっちがいいならやる」って言ってくれて。
――ビッグバンドとはいえ、メロディはソウル歌謡ですよね。
そうそう。もともと歌謡曲寄りの歌で、途中からテンポが上がって、ビックバンドになるっていうイメージがあって。「自由にやっていいよ。前のツアーのときみたいにガラッと変えていいよ」って話したら、グッと自分の方に寄せてきた。ま、楽しく弾いてもらうっていうのが基本姿勢だから(笑)。曲を渡して、デモができて、もうちょっとこうしようっていう打ち合わせを1回しただけでできた。その後、リハもなしですぐにレコーディングして。
――黒船ビッグバンド(GENTLE FOREST JAZZ BAND)を含む18人編成による一発録りとなってます。
みんなが見られるブースに入って、4~5テイク録ったんだけど、ビッグバンドの人たちは相当、緊張してたね。でも、トランペットはツアーメンバーだったし、チームでお願いしたのがよかったかな。もちろん、やるときは必死だけどね。ソロの掛け合いもあったから。
――掛け合いというか、バトルというか。
ぶつかり稽古だよね(笑)。本当にこっちはバリエーションがないからね。向こうは無限にあるけどさ。逆に矢野(顕子)さんのすごさを改めて感じたね。この人に対峙できる人はなかなかいないなと思ったもん。あと、テーマを鎖国にしたのは、ニューヨークで活躍してる人で、オシャレキシのツアーのホーンメンバーを“黒船ホーンズ”って言ったりしてたから、外国勢みたいなイメージでいいかなと思って。ライブもまたやろうってずっと言われてるから、いつかつながるといいなという気持ちもあって。
――イギリス人とかオランダ人の恋人が、母国に帰ってる間に鎖国になっちゃったっていう、悲しきラブストーリーが思い浮かびます。
それ、もうどうかしてるね(笑)。そう思い浮かんでる時点で、術中にハマってるんだけど、どうかしてるよね(笑)。ある人には、「ちょっと政治的なメッセージも感じる」って言われたんだけど、<鎖に繋がれた国、日本>って、“鎖国”をばらして言っただけなんだけどね。意味も全くわからないし、ただの漠然としたイメージで。しかも、当時、鎖国っていう言葉自体は使われてなかったの。江戸時代の最後の最後、鎖国じゃなくなるくらいに出てきた言葉だからね、本当は。
――(笑)続いて、ビッグ門左衛門(三浦大知)さんとは?
リキッドルームでワンマンをやったとき(2012年5月の2ndワンマンライブ)に観に来てくれて。それも『レキツ』の時だよね。大知くんから「好きなんです。聴いてます」って言ってくれて。その1年後にラジオでコメントくださいって言われて、その頃はまだ、いまよりもレキシネームくださいって言われたらすぐにあげてたから(笑)。
――まだ気安くつけてた頃ですよね。
そうそう。コメントで喋りながら「三浦大知、だいち、だいちか……大近松、ビッグ近松、あ、ビッグ門座衛門だ!」って。今回、歌ってもらうことになって、「レキシネームどうする? あれはやっつけすぎないか?」って言ったんだけど、「自分の中で浸透してるし、気に入ってもいる」って言ってくれて。今回の曲は(石川)五右衛門だし、繋がったということで、これで行きましょうかって。
――「GOEMON」は甘いファンクナンバーになってますが、どんなところからできたんですか?
最初に曲の外枠ができた時に、久しぶりにブラック寄りだしダンサブルな曲にしようって思って。で、大ちゃんはもうずっと前から聴いてくれてたし、ライブも来てくれてたし、先にレキシネームもあげてたから、歌で踊ってもらおうというんで、お願いして。「GOEMON」は語呂合わせで<五右衛門>から<Go ahead moon>が出てきて。なんか、月が好きなんだよね。
――今作は特に夜の月が出てきますが、この曲では<月の明かりを盗みに行こう>と歌ってます。
実は苦肉の策で、小判とか物とか盗むって歌っちゃいけないなと思ったわけ(笑)。で、ハートはもう盗んじゃってるわけ、「キャッチミー岡っ引きさん feat.もち政宗(持田香織)」で。それで、何を盗もう?って考えた時に、月だ!ってなって(笑)。よくわかんないけど、月の明かりだったら盗んでもいいかな、みたいな(笑)。
――でも、かなりロマンチックなラブソングに聴こえますよ。
でしょう? 君だけのために、みたいなね。本当の宝物って何なの? みたいなイメージはあるけどね。けっこう語呂で書いてますね。
――MVも公開されました。
踊ってます! 俺だけが踊ってます!! 多分、がっかりすると思う、いろんな人が(笑)。大ちゃんに出て欲しかったっていうのもあるし、俺が踊れてないっていうのもある。頑張って覚えたんだけどね。覚えるだけじゃダメですよ。踊らされてはきたものの、踊って来なかった人生だから、踊れるわけがない。身の丈に合わないことをやっちゃいけないなっていう。無様な姿を見てくださいっていう感じかな。
――花嫁のハートを盗む五右衛門になったということで話題になってますけどね。そして、もう一人、カモン葵(手嶌葵)さんが。
もともと好きで聴いてたんだけど、去年、松本隆さんのトリビュートライブがあって。ツアーの合間で、タカシ(ハナレグミ)も出てたから観に行ったの。そしたら、向こうから「聴いてます。レキシネームが欲しいです」って言ってくれて。「あ、そうですか」って言いながら、心の投網をえんやーって引き寄せて(笑)。
――(笑)レキシネームは今やアルバムに参加しないともらえないですからね。
そう。割とすぐにイメージが湧く曲ができて。葵といえば、葵の御紋しか出ないでしょ。葵の家紋だとそのままだから、じゃあ、ひっくり返そうっていうことで、カモン葵にして。
――勢いのある名前になりましたね。
本人にそんなイメージないけど、実はすごく明るくて、お酒も好きだから、本当はこっちですよって感じでつけて。すごい気に入ってくれたの。「カモン、帰ります!」って福岡に帰っていったからね。
――カモン葵が参加した「TAIROW」はどんなイメージでした?
大老って井伊直弼しか浮かばないじゃん? 老中はいるんだけど、大老はそんなにいない。で、井伊直弼って、桜田門外の変で暗殺されたし、悪者のイメージじゃない? でもさ、石田三成もそうだけど、本当の悪役って歴史上にいたかってわかんないじゃん。勝てば官軍っていう言葉もあるし、みんな、国を思ってのことだったかもしれない。たとえば徳川家を思って、将軍様のために尽くしたって思ったら、ちょっと泣けるな、みたいなのも含めて書いて。
――基本的に戦いに勝った方の歴史になりますからね。
そう、いろいろあるからね。俺、基本的に人って会ってみないと本当のところはわからないと思ってるんだけど、歴史上の人物は会ってないし、人柄もわからないわけじゃない? そういう意味も含めて、せめて主人を思う気持ちくらいは美しくしたいな、みたいな。で、「奈良に大きな仏像」もそうだったんだけど、これも先に“大老”っていう言葉が出ちゃったの。で、つけた歌詞が取れなくなる。あとは、オケも含めて大地の壮大なイメージだったの。あ、これも月出るしね。月好きだね! なんでだろう。
――大地の壮大なイメージがカモン葵さんの歌声と合ったわけですね。
そうだね。圧倒的な母性があるでしょ。母性本能の母性もあり、声の母性もある。大きいイメージの曲をさらに壮大に包み込んで欲しいっていう。歌ってもらったら、説得力が違うっていう感じになって。もうほんとに、ありがとうございます!って言いたいね。これでまたジブリに一歩近づけたってことだよね。
――「かぐや姫の物語」の主題歌を歌っていた尼ンダ(二階堂和美)に続き。
着々とね。ただゴールはしません! ゴールはしちゃいけません。ゴールしちゃったら終わっちゃうから。この近づいてる過程がいいの。でも、かなりグッと近づいちゃったね。
――(笑)前作とは何か違いを感じてますか?
毎回、ないんだけどね。『レシキ』は江戸に寄ってたけど、今回は幕末に寄ってるなとか。人の名前を具体的に言ってるなとか、土地を言ってるな、とか(笑)。そういうシリーズ!? 幕末を書きすぎたのは、「SEGODON」の影響だね。あとは、アンサーものが多いかな。「SEGODON」で薩摩を書いたから、対比として「マイ会津」を書いたし、「SHIKIBU」のアンサーとして「なごん」があって、「SAKOKU」と「出島で待ってる」があって。それくらいしかないね。結局、日本史だもん。
もうずっとレキシの曲やライブのことを考えてるから、頭に熱が残ってる状態なの。だから、家督を譲ってみたい(笑)。
――枚数を重ねるごとに豪華客演陣も厳選されてきた感があります。
そうなの。だから、次の7枚目は、もう一人だね。8枚目で0になって、9枚目で俺がいないっていう構想がある。家督を譲る。あはははは。
――誰に譲りますか?
強いて言うなら……いないかな。歌が上手くて、曲が作れる人はいっぱいいるけど、日本史好きな人が限られてるじゃん。コミカルなこともできて欲しいからね。稲穂の妖精ができないと。もうずっとレキシの曲やライブのことを考えてるから、頭に熱が残ってる状態なの。だから、家督を譲ってみたい(笑)。でも、これだけは言えます。『レシキ』から『Vキシ』まで2年空きました。今回、2年3ヶ月空きました。……ということは、次は2年と半年後です。2021年に会いましょう。
――あはははは。せめて2020年にはニューアルバムを聴きたいですし、その前に全国ツアーが決定してます。
規模が大きくなって、できることも増えたんだけど、それと同時に力も入るじゃない。肩の力を抜きたい気もするんだよね。そっち側の人じゃないのにって。どんどん側(がわ)が大きくなってく……。
――横アリ2DAYSと大阪城ホール公演も決定してます。
この前、さくらももこさんが亡くなってすぐくらいに足軽先生(いとうせいこう)と話してて。先生はいち早く「武道館でやれ」とか「どんどんでかいところでやれ」って言うのよ。でも俺は「いやいや、俺はそっち側にいたいんですよ」って言ってるの。みうらさんとわちゃわちゃ寺を回ってる系譜の人だと思ってるしって。そしたら、さくらももこさんもそういう人だった、と。ちびまる子ちゃんが大きくなって、世間が大きくしたけど、根本は変わらなくていいんだからって。「みんなの認識は大きくなっても、根本が狂ってればいいじゃない」って言われて。一瞬納得しかたけど、やっぱりイヤだって。いやいや、違うわって。ま、でもね、こればっかりは、言ってもね(苦笑)。
――レキシにとってライブとはどういう場所になってますか?
今回の『ムキシ』なんか、特にライブを見越して作ってるし、どっちかというとライブが基盤なのかなっていうのがあるよね。常にライブ。楽曲のアイデアもライブのアイデアもメモってるし。ただ、最近よく思うのは、みんなを楽しませるために俺が苦しんでたら、みんなも楽しくないでしょってことだよね。みんなをほったらかしにしてでも、俺が楽しんでるのを見てるのが楽しいんだなって思ったから。そうなると、アリーナに行ったころで、今までのレキシをやりますっていうことしか言えないよね。
――では、ツアーで何か楽しみにしてることはありますか?
ライブはもちろん、打ち上げだったり、空き日にメンバーとどこかに行くのも楽しみ。空き日を楽しむために、ライブをいいものにするっていうモチベーションがありますからね。しかも、群馬、静岡、熊本、岩手、北海道の旭川は、バンドでワンマンをやるのは初なの。初めての土地、初めての食べ物、初めての遺跡。ああ、冷麺食べれるなとか。群馬は遺跡多いなとか。静岡なんか、おしゃレキシのお膝元だし、登呂遺跡もあるからね。
――(笑)ライブの内容として何かすでに考えてることはあります?
メンバーに何を着せるかが問題だね。ま、『まんま日本ムキシばなし』だし、シングルには「BANASHI」(昔話風のポエトリーリーディング)もありましたからね。それだけで浮かぶところあるでしょ。あとは、きっと長いです。曲数は自ずと減ります。長くなるけど曲数は減るのはな~んだ?って。なぞなぞですね。あははははは。
取材・文=永堀アツオ
リリース情報
URL:http://rekishi-ikechan.com/free/special/feature/mukishi/
ライブ情報
・2019年1月22日(火) 横浜アリーナ (神奈川県)
開場 / 開演:17:30 /18:30 (問) DISK GARAGE TEL:050-5533-0888
・2019年1月23日(水) 横浜アリーナ (神奈川県)
開場 / 開演:17:30 /18:30 (問) DISK GARAGE TEL:050-5533-0888
・2019年2月6日(水) 大阪城ホール (大阪府)
開場 / 開演:17:30 /18:30 (問) 清水音泉 TEL:06-6357-3666
親子席(ペアー指定) 13,500円(税込)
※対象者:保護者1名と子供1名(3~12才対象) 立見は禁止の席です。
※スタンド座席指定親子席券をご購入後、公演当日に座席指定券と交換となります。
その際にお子様の年齢を確認できる身分証明書等をご持参下さい。
※親子席は並びの2席ですが通路を挟んでの2席となる場合がございます。
レキシ オフィシャルサイト:http://rekishi-ikechan.com/