次代のフレッシュなキャストが踊る! Kバレエカンパニー『ドン・キホーテ』公開リハーサル
矢内千夏、堀内將平
2018年11月16日から18日まで、Kバレエカンパニーの『ドン・キホーテ』公演が始まる。それに先立ち過日、公開リハーサルが行われた。リハーサルに登場したのは初日を飾るキトリ役・矢内千夏とバジル役・堀内將平、指導は同カンパニーのプリンシパルにして、自身も何度もこの演目に出演している宮尾俊太郎だ。さらに2幕2場、ドン・キホーテの夢のシーンでは森の精の群舞とキューピッド役の川合有里子がリハーサルを行い、来るべき公演への順調な仕上がりを披露した。
(左から)堀内將平、矢内千夏、宮尾俊太郎
■3組すべてが初役! 次世代が開く新時代の扉
今回のKバレエカンパニー『ドン・キホーテ』の公演は、3キャストすべてが初役というフレッシュな顔ぶれがポイントだ。『ドン・キホーテ』はいわゆる姫や王子が主人公のバレエと違い、バルセロナの宿屋の娘と床屋の青年という若いカップルに、誇り高き妄想の騎士ドン・キホーテが絡んで繰り広げられる軽快なコメディである。「若い2人のパッションを感じ取っていただきたい」と指導の宮尾が語ったように、若いダンサーらが踊るキトリとバジルは等身大のキャラクターともいえ、むしろ作品を踊るのにはうってつけ。この瞬間の若さならではの情熱溢れる踊りと演技が見どころの一つといえるだろう。
(左から)矢内千夏、宮尾俊太郎、堀内將平
(左から)矢内千夏、堀内將平、宮尾俊太郎
(左から)矢内千夏、宮尾俊太郎、堀内將平
リハーサルに登場した矢内と堀内のペアが披露したのは第1幕の踊りだ。キトリとバジルの茶目っ気たっぷりの恋の掛け合いシーンを、2人は溌剌と踊る。矢内の弾けるような笑顔が実に印象に残る。そして宮尾が自ら手本を見せながらリズムやタイミング、「溜め」のポイントをチェックし、時には「Kの伝統的な動きはこう!」と指導する。小さな一瞬の演技だが、宮尾の指摘でそれが印象に残るものとなり、踊りが磨かれていく。先達から次代を担う若い人材に、まさに伝統が受け継がれていく瞬間であった。
矢内千夏
堀内將平
矢内千夏、堀内將平
■粒揃いのコールドバレエにも期待
続いて風車にはねとばされたドン・キホーテが見る夢、森のシーンのリハーサルが行われる。バレエミストレスによる腕の角度、足の出し方、腕を上げるときの肩の回し方などのチェックで、大人数の群舞が次第に揃っていくさまが見事だ。その森の妖精たちの間を、キューピッド役の川合が軽やかに、俊敏に踊り飛び跳ねる。よく動く役どころであるのはわかってはいたが、こうして間近で見ると、かなりの運動量であるのが改めて伝わる。キューピッドが軽やかに仕切るこの森の場に、当日は優雅な森の女王とキトリ、さらにKバレエならではのドルネシア姫が加わるのかと思うと、実に楽しみだ。
川合有里子
■「熊川哲也」の名を一躍世界に広めた『ドン・キホーテ』
Kバレエカンパニーの『ドン・キホーテ』は2004年初演で、以来、カンパニーの主要レパートリーの一つとして人気を博している。「明るく陽気」なバルセロナの町にありながら、セットはモノトーンの配色とし、しかしそれが明るい衣装とダンサーのエネルギーで逆に華やかさを際立たせる舞台美術も印象深い。またストーリーにも独特の解釈があり、それがこの物語と登場人物の心理描写により深みを持たせ、味わい深いものにしている。
何より『ドン・キホーテ』は「熊川哲也」の名を世界に知らしめた、歴史的な、重要な作品でもある。自身のカンパニーのためにこの作品を振り付けた熊川芸術監督の思いは並々ならぬものがあったであろうし、それを受け継いで踊るダンサーたちの思いも格別のものがあるのは想像に難くない。リハーサルからはそうしたモチベーションの高さもひしひしと伝わってきた。
ダンサーの超絶技巧やコメディ要素いっぱいの愉快な駆け引き、ちょっとほろっとする余韻など、何度見ても楽しく、また初めてバレエを見る人にとってもおすすめなのが、この『ドン・キホーテ』の魅力でもある。これから高みへ向かって駆け上がろうとする、若いダンサー達のエネルギーが炸裂してこそ一層楽しい舞台でもあり、そういう意味ではまさに今が旬ともいえる。ぜひこの機会にご覧いただきたいと思う。
取材・文=西原朋未 写真撮影=鈴木久美子
公演情報
■演出・再振付:熊川哲也
■原振付:マリウス・プティパ アレクサンドル・ゴールスキー
■音楽:ルードヴィヒ・ミンクス
■公式サイト:http://www.k-ballet.co.jp/