ART-SCHOOL×踊ってばかりの国×polly『オルタネイティブ・サーキット』 ーーオルタネイティブな精神と強烈な個性を放つ3バンドの想いとは

2018.11.16
インタビュー
音楽

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ART-SCHOOL、踊ってばかりの国、pollyによる東名阪ツアー『オルタネイティブ・サーキット』のファイナル公演が、11月30日(金)東京・渋谷WWW Xにていよいよ開催される。そこで、いずれもオルタネイティブな精神と強烈な個性を放つ3バンドが共鳴し合う同ツアーのクライマックスを前に、木下理樹×下津光史×越雲龍馬の各フロントマンに加え、首謀者であるUK.PROJECTの「ダイマス」こと遠藤幸一氏を迎えたスペシャル座談会を実施。『オルタネイティブ・サーキット』が生まれたキッカケから、愛知・名古屋APOLLO BASE、大阪・梅田Shangri-Laの2公演を終えた途中経過、世代が異なる3組がこのツアーに懸けた想いまで、裏エピソード満載で語ってもらった。
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●みんないいバンドだし、どこにも属してない●

――まずは10月に愛知・名古屋APOLLO BASE、大阪・梅田Shangri-Laと回って率直にどうでしたか?

下津:いやもう俺は、こんな……人間のクズたちが(笑)、一緒にツアーを回らせてもらってありがとうございますという感じですね。

――アハハ!(笑) Shangri-Laの入口の扉を開けた時、この3組の音楽を聴きたいっていう人がこんなにもいるんだなぁって、単純に嬉しくなりましたよ。

木下:あぁ~ありがとうございます! まだ3組での打ち上げとかはしてないんですけど……polly踊ってばかりの国もみんないいバンドだし、どこにも属してないというか。それがすごくいいですよね。一緒に回れてよかったなぁって。

下津:血がちょっとずつ違うから混ざらないんですけど、何か模様になってるみたいな。

――それぞれにちゃんとアクと個性があるけど、交わらず、でも共感できる部分があって。

越雲:僕だったりうちのメンバーが、学生時代とかバンドを始める前に聴いていた2バンドとツアーを回れる喜びがまずあって……やっぱり普段のライブとは違う思い入れみたいなものはあります。2本やってみて、ライブに向かうための時間の密度が高かったなと。

――この3組で東名阪を回る発想自体がチャレンジでありシーンへの提案だと思ったんですけど、そもそも『オルタネイティブ・サーキット』をやろうと思ったきっかけは何だったんですか?

下津:それはちょっと聞きたい。その意図というか心構えは、遠藤さんから聞いてなかった。

――ヘンな話、志がないとこんなことは絶対にやらないはずなんですよ(笑)。

下津:無茶苦茶ですもんね、3組とも(笑)。

遠藤:昔はライブハウスの名物企画というものが結構あって、1つお目当てのバンドがいると2つ好きなバンドに知り合える、みたいなことがよくあったんです。今は企画があっても新人括りだったり、ショーケースっぽいものが多くなってきて……言わば、ART-SCHOOLだけでも知っていたら、「このバンドのこの音、絶対に好きになるに決まってんじゃん!」みたいな企画が随分少なくなったなぁと。じゃあ、ないならやった方がいいんじゃないかと思って。それも、あえて1回じゃなくてツアーにした時に、すごい化学反応が生まれるような気がしたんです。下津が「下北でよく会うクズばっかりが集まった」とか言いますけど、まぁ実際そうだよなと思いつつ(笑)。下北にそれぞれのバンドがよく行く飲み屋があるんですけど、「この3組での打ち上げは断ります!」って言われてますから(笑)。

(一同爆笑)

遠藤:でも、それはそれで「やった!」っていう気持ちですよ(笑)。

●やっぱり音楽をちゃんと愛してるアーティストに惹かれる●

――pollyなんかは、同世代には音楽的に共感し合えるバンドがなかなか見付からないという発言もよくしていましたね。

越雲:そうですね。本当に(苦笑)。言い訳になってしまうところはあるんですけど、今の同世代のシーンだったり、自分たちの歯痒い現状に対しては……居心地の悪さや憤りを感じていて。

下津:ちなみに今いくつ?

越雲:25です。

下津:あ、それならもう、イケイケドンドンだわ。そういうことはガンガン言っちゃった方がいいよ(笑)。

越雲:はい。(笑)

――下津くんはもう30になった?

下津:いや、今29でもうすぐ大代ですね。

――しかし、木下理樹が40歳ってすごい時代がやってきましたね(笑)。

下津:俺、ずっと前から友達なんですけど年齢を知らなくて……すいません、いつも敬語とか使わなくて(笑)。

木下:でも俺、それで怒ったことがないじゃん(笑)。

下津:ただ、赤羽まで急に呼び出されたりしてますけどね(笑)。

――ART-SCHOLLと踊ってばかりの国の付き合いは、このツアー云々の前からという。

下津:よく遊んでもらってます。最初は俺らが『世界が見たい』(2011)を出した時だから、23~24の頃かな? もう6年前ぐらいですね。上京して右も左も分からん頃に助けてくれた先輩です。だから逆に、pollyにちょっと興味津々で……というか、マジでビビってるっす! 日本人であんなにマイブラ(=マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン)直系でやれるヤツっていなくないですか!? 初めてちゃんと観させてもらってビックリしてます。

越雲:ありがとうございます(照笑)。僕はやっぱり音楽をちゃんと愛してるアーティストに惹かれるんですけど、この2バンドはもうドンズバというか。それはもうステージを観れば分かるし、音楽への愛が深いなと思って。

下津:ART-SCHOOLはやっぱりパブリックに強いバンドやなと思うんです。お客さんのノリとかを観てても、俺らには全くそれがないので……羨ましいっすねぇ。曲を書いてる人間として、そこから何か術を学ぼうと思ってます。

●曲がいい人じゃないと話す気にもならないんで(笑)●

――ART-SCHOOLから見た2組の印象は、2本やってみてどうですか?

木下:踊ってばかりの国はね、その日によって結構印象が違うから面白いんですよね。

下津:今回は「Boy」だけは毎回やってますけど、あとは全く曲が被らないようにセットリストを組んでます。

遠藤:え、違うんだ!? 名古屋でも大阪でも「ロックンロール!」って言ってたけど(笑)。

(一同笑)

――曲は変わるけどスピリットは一緒ってことね(笑)。

下津:とりあえず、MCが思い付かない時はロックンロール!(笑)

――でも、曲被りなしというのは、今回のサーキットに挑む踊ってばかりの国なりの意気込みを感じますね。

木下:だから余計に、“あ、今日はこういう感じか”とか思うし。やっぱり根本的に彼の作る曲がいいので。

下津:死ぬほど一緒に呑んでるけど、初めて言われましたよ! いつもは罵られたり、訳分からん後輩を連れてきてTシャツを破いたり(笑)。(越雲に)Tシャツを破かれたらすぐ言ってくださいね、下克上するんで(笑)。

越雲:もう2回ぐらいあるんで……。

下津:えっ!? もう破かれたん? 自分何してるん!?(笑)

(一同爆笑)

木下:いや、そこまでにいろいろあっての破きだから(笑)。

下津:ま、こういうヤツらでも生きられるのが下北であって……。

遠藤:いやいや、それはロックであって下北じゃないでしょ(笑)。

――pollyに関してはどうですか?

木下:pollyの新しいアルバムがすごくよくて、ライブは結構久しぶりに観たのかな? 変わってないところは変わってないんだけど、今でも進化中というのが羨ましいですよね。僕らが進化を止めたわけではないですけど、pollyはこれからどの色にもなれる。多分、今はまだまだ試行錯誤してると思うけど……やっぱり、基本的に曲がいい人じゃないと話す気にもならないんで(笑)。

下津:あと、声の抜け感がすごくいい。伝えるってそういうことですよね。リッキー(=木下)の声も弱々しいんですけど、ちゃんと言葉が聴こえる声というか。何かその共通項があるなと。あと、ダイナソーJr.とかも俺たちの共通言語なんかなと思った。トーンを絞ったディストーションというか、あのモコ感が共通してるかも。

木下:あ、分かった。パキッとしないってことね。

下津:そう、その音像。それが昨今の日本にはないから、俺らもちょっと頑張ってそれをやってるんですけど。あのオルタネイティブ感が背景にあるバンドが集まってるんじゃないかなと思います。

木下:あと、この2組には和の感じというか、フォークを感じて。そこも似てるなぁと思う。それも発見でしたね。

下津:なるほどなぁ。

――やっぱり一夜限りじゃないツアーの良さがありますね。お互いに知る仲だとしても、ライブを重ねて新たに分かることがある。

下津:ただまぁ総じて言うと、遠藤さんのイタズラです(笑)。

(一同笑)

●メインストリームではないけど、絶対に誰かの心には響く●

――あと、今の時代に「オルタネイティブ」っていうのも、逆に新鮮に響く言葉ですけど。

遠藤:そうですね。でも、メインストリームではないけど、絶対に誰かの心には響くっていうテーマはあると思うので。踊ってばかりの国しか好きじゃない人がたまたま来て、pollyART-SCHOOLを観ていいなと思う可能性があればなと。そもそも僕がそういう人間なので。「これ、おいしいと思うんだけどあなたもどう?」っていうのは、広い意味で言うと人類愛じゃないですか(笑)。

――独り占めじゃなくて薦めたくなる。確かにうまい店を教えたくなる感じに似てますね。

遠藤:だから、名古屋でも大阪でも3バンドをずっと観てて、やっぱり面白いなと思ったし。「3バンドが3バンドとも最高!」という日もなくて、誰かが調子が悪くて、誰かがよかったりするのも、コクがあって本当にいいなと(笑)。やってよかったなと思うし、これは思い付いて小っちゃく始めたことだけど、本数もプラス3ヵ所とか5ヵ所になって、毎年恒例になって、「これは観に行かなくちゃ!」というサーキットになっていくことを願ってるんですよ。もちろんメンバーを固定しなくてもよくて、その精神性みたいなものがずっと受け継がれていけば。

木下:最近、髭の須藤(寿・Vo&Gt)くんがインタビューで、40を超えて「自分たちがカッコいいと思うことだけをやりたい」って言ってて、俺もそうだなと。もちろん……売れたらそりゃいいですよ? でも、カッコいいなと思うことだけを徹底的にやってりゃいいんじゃないのかなぁって。

下津:カッコよくないことをしたくないから、バンドをやってますからね。好きなことしかしたくないから、バンドをやってるんで。

――踊ってばかりの国は結成10周年、pollyはイメージを具現化できた1stフルアルバムをようやくリリースし、木下理樹は生誕40周年を迎えて(笑)。それぞれのバンドが去年でも来年でもなくてこのタイミングで呼ばれたのも絶妙だなと思ったんです。キャリアの中でも、改めて音楽を楽しめている時期というか。

下津:この2ヵ所のライブを観てて、全バンド、メンバーが超ワガママ系なんですよね。それが最高(笑)。pollyのドラムとうちのギターが喋ってたり、(中尾)憲太郎(ART-SCHOOL・サポートBa)さんとうちのドラムが喋ってたり……そういうことが流れ星みたいに現場で起こってるから、めっちゃ楽しいです。だから俺は、すごいニコニコして現場にいます。そういう光景を端から観るのが一番いいアテというか、ロックの真髄かなと。

――このムードだと、ファイナルの東京公演もかなり期待できそうですね。

下津:いやぁ、これは東京でやることに意味がありますからね。

木下:東京でやる「エグみ」はあるよね。カッコいいものはカッコいいし、2組とも曲が本当によくて。でも、もっともっと評価されるべきだし、されてもらわないと僕らの世代もバトンタッチができないからって勝手に思ってるんで。

――世代が違う3組が揃ったキャスティングも意図的ですか?

遠藤:ちょびっとだけあります。ART-SCHOOLは18年とキャリアが長いバンドだし、お客さんも木下と一緒に歳を取るわけじゃないですか。pollyだって、越雲の同世代のお客さんがいる。その世代がシャッフルされることは絶対にあった方がいいなと。

木下:最初はpolly踊ってばかりの国の3組でやるなんて思いもしなかったなぁ。あと、名古屋でpollyが反省会をしてて、ストイックだなぁと思って。

下津:え? 名古屋、めっちゃカッコよかったのに?

越雲:ありがとうございます。でも、あの日は単純に俺のメンタルが100%音楽に向かなくて……。

下津:それはダメだね。板の上に立つ以上は、天使になってあげなきゃお客さんもお金を払う意味がないっすよ。でも、そこに自分で気付けることが才能やと思うんです。反省すんのは自分やし。

越雲:本当に神経質なんで、自分自身にもメンバーに対してもこう……。

下津:当たっちゃうんだよねぇ〜。分かるよ、俺もそれで丸山(康太・Gt)とマジでケンカするから(笑)。

(一同笑)

――上の世代からすると過去の自分を見ているようなところはあるだろうし、面白いですね。

下津:若い頃は敵ばっかりやもんなぁ~。

越雲:まだ、そうですね……。

木下:でも……。

下津:フフフッ(笑)。リッキーだけは、こんな時もあったかく、“でも……”って言う(笑)。バンドってこういう話になると真剣になっちゃうんですけど、はぐらかしてくれるその優しさが、リッキーの周りに後輩が集まっていく理由っすかね(笑)。

木下:いや~ありがとう(照笑)。

越雲:アハハ(笑)。

●何か心に痛みがあったり、不自由を感じて生きてる人のために音楽をやってる●

――それでは改めて、ファイナルの東京公演に向けてそれぞれ思うところを聞きたいなと。

越雲:pollyは今、この2バンドを追いかける位置にいると思うんですけど、すごい若い発言すると、お客さんも含めて全部かっさらっていきたい気持ちしかないというか。さっき遠藤さんが言ったように、ART-SCHOOL踊ってばかりの国のお客さんが、今後も僕らのことをちゃんと観たくなるようなライブをしたい。今回のツアーの最後は、それが全てだと思ってます。

遠藤:越雲はさ、「ART-SCHOOL踊ってばかりの国もぶっ殺す!」っていう人と、「みんなに愛されたい!」っていう人、どっちなの?

越雲:対バンということに関して、遠藤さんが言った2つを選ぶとしたら、「ぶっ殺す!」。

下津:あぁ〜気持ちいいねぇ〜カッコいいよ~!

木下:フフフ(笑)。

下津:いやでも、ゴリゴリ来てくださいよ。待ってますよ。

越雲:分かりました(笑)。

――先輩方のイヤな煽りだわ(笑)。では、次は下津くんに。

下津:まぁしょーもない音楽ばっかりで張り合いのない世の中でもね(笑)、俺はART-SCHOOLをもう中学生の時には知ってたんで。で、初日の名古屋でpollyを初めて観て、何で俺たちが呼ばれたのか、その意味を考えて……遠藤さんがやりたいことがすげぇ分かった。やけど、俺たちが手を抜くことが愛ではないので、東京では全力でぶっ壊しにいく!ロックの上では言い訳なんか関係ないから。ダサいかカッコいいかだけやから。渋谷よろしくぅ〜!(笑)

(一同笑)

――ART-SCHOOLとしては、ファイナルの東京に向けてはどうですか?

木下:いや、ぶっちゃけ僕らもお客さん、奪いたいですよ。そうじゃないと馴れ合いだから面白くない……でしょ? 最後の渋谷はこっちもね、そういう気持ちでいくんで。だから、すごくいい夜になるんじゃないかな。

下津:ヤバいね、事件だね。

――3組を知っている人、この記事を読んで興味を持ってくれた読者はもちろん、「こういう気持ちを抱えている人にファイナルに来てほしい」と思う対象ってあったりします?

下津:8ビートが好きな人に来てほしいっす! あと、真面目に言うと、こっちは何か心に痛みがあったり、不自由を感じて生きてる人のために音楽をやってるから……。メロディを書くってそういうことなんです。本当にもう浮世を離れ……。

木下:いいメロディを書ける人ってさ、バイトできないもんね(笑)。

(一同爆笑)

下津:そうなんですよ! 決まった時間にタイムカードなんか押せるわけがない!!

遠藤:あと、木下はピザを配達せずに捨てて帰ってますからね。あれから20年ぐらい待ってる人がいるよ(笑)。

(一同爆笑)

――ファイナルも刺激的な夜になりそうです(笑)。

木下:この2組がどう出てくるのかが楽しみですよね。

下津:じゃあ一番オルタナなことをします。ラップしよかな!?

木下:ホンマか?(笑)

下津:気持ちが高められて高められて、俺たちはこれから当日まで悩むんすよ(笑)。それだけは分かってるから。

取材・文=奥“ボウイ”昌史 撮影=田浦ボン

イベント情報

オルタネイティブサーキット@東京
11月30日(金)東京・渋谷WWW X
OPEN 18:00 / START 19:00
出演:ART-SCHOOL / 踊ってばかりの国 / polly
:前売¥3,500 / 当日\4,000(共に1ドリンク代別)
 
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