SUPER BEAVERがキュレーター『Bowline 2018』ーBRAHMAN、NakamuraEmi、bacho ーー徹底的に現場至上主義な大阪公演
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SUPER BEAVER
『Bowline 2018』 curated by SUPER BEAVER & TOWER RECORDS@2018.11.12(MON)大阪・なんばHatch
タワーレコードが主催するライブイベント『Bowline 2018』 curated by SUPER BEAVER & TOWER RECORDSが11月12日、大阪・なんばHatchにて開催された。『Bowline』は、毎回1組のアーティストがキュレーターとなり、テーマの設定や出演者のブッキングなどを行うが、今年はSUPER BEAVERがそのキュレーターを担当。「現場至上主義」をテーマに掲げ、初日の大阪公演にはSUPER BEAVER 、BRAHMAN、NakamuraEmi、bachoの4組が出演した。
bacho
「SUPER BEAVER、俺たちを呼んでくれてありがとう!」(北畑・Vo&Gt、以下同)と今年の『Bowline』の開幕を担ったのは、姫路発のエモーショナルロックバンド、bacho。1曲目の「これでいいのだ」からザラついたバンドサウンドを響かせ、沸々とたぎるような熱いメッセージがなんばHatchに突き刺さる。派手な演出も、きらびやかな照明も何もない。『Bowline』の漆黒のバックドロップを背に、ステージ上の4人が己の音を鳴らすだけ。たった「それだけ」がこんなにも胸を揺さぶるのは、このバンドがこのステージに立つまでにかけた決して短くはない時間が、問答無用に音に宿っているからだろう。「僕が今日なんばHatchで目指す、奇跡の萌芽」とずっしりと重たいビートを鳴らした「萌芽」に続き、「自分の終わりは自分で決めるんだ」と歌い上げた「ビコーズ」ではたまらずダイバーも発生。満場のフロアから次々と拳が突き上がる。
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そんな客席から思わず上がった「bacho最高!」の声に、「俺も最高やと信じてるからここまでやり続けて、これからもやり続ける」と返す北畑。MCではなんばHatchでのライブが初めてだったため道に迷ったことや(笑)、楽屋に着くなりBRAHMANのTOSHI-LOW(Vo)からの愛あるいじりに触れ、「でも、引き立て役が勝つときもある」と言ってのけたラリーはもう最高!
一転、「夢破れて」ではなんばHatchがその言葉の1つ1つにグッと聴き入る静寂が生まれる。男の誇りも、弱さも、意地も、後悔も、喜怒哀楽の全てを刻み付けたbachoの音楽。なぜSUPER BEAVERがbachoをここに呼んだのか。その意味は語らずともオーディエンスに伝わっていることだろう。
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「またカッコいい曲を書いていくんで、よかったらみんなの好きな音楽の1つに加えてほしい。俺たちは音楽をやるので精一杯だから……それぞれの生活を頑張って、またライブハウスで再会しましょう」(北畑)
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そう語り歌い出した「決意の歌」には、またも魂を鼓舞される。メッセージとメロディがあれば、こんなにも人の心を突き動かすことができるのか。いつだって聴く者のそばにいて、どん底からでも空を見上げるようなbachoの音楽、広いなんばHatchの一番後ろまでまじりっけなしに届くその言霊は、どんなにデカいステージにだって通用することを、目の前でまざまざと証明してくれてる。ラストの「NENASHIGUSA」では、オーディエンスと共に歌う絶景を作り上げ、現場を愛し現場に愛された4人の男たちは、大きな感動と衝撃を残してステージを後にした。
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二番手は、猛者揃いのこの日にあって唯一のシンガーソングライターとなった、NakamuraEmi。まず1曲目は、「20代のときにいろんな職業の人たちに出会って生まれた曲」と「YAMABIKO」を。自らの名を世に知らしめるきっかけとなったこの曲を、真っ赤なニットにキャップ姿というキュートな佇まいで、大きなステージを横断しながら堂々と歌い上げる。普段はアコースティックギター/プロデューサーのカワムラヒロシとのデュオ形態でライブをすることが多い彼女だが、この日はSUPER BEAVERのたっての希望で鉄壁のバンドセットで挑む。そんな頼もしいサウンドに支えられ、「何かあるとすぐ人のせいにしたり、環境のせいにしたり、SNSのせいにしたり、そんなダサい自分に書いた曲です」とブチ上げた「かかってこいよ」でも、独特の視点で描かれる言葉の弾丸をフロアに撃ち込み、しょっぱなからキラーチューン2連発でオーディエンスをフックアップする。
NakamuraEmi
MCでは、「bacho、BRAHMAN、SUPER BEAVER……そこに名前を並べたときの胸のざわつきがピークで、もうダメかもしれない(笑)。今日は日本が誇るバンドが揃った、ダイブが起こるようなステージに初めて立つんですけど、本当に呼んでくれてありがとう!」と緊張しっぱなしだったという心境を述べると共に、SUPER BEAVERとは長年レコーディング・エンジニアが同じであることや、柳沢(Gt)とはサバイバルゲームで撃ち合っていた仲だったという接点を伝えるなど(笑)、この日に呼ばれた理由を丁寧に紐解いていく。
NakamuraEmi
ここで、「すごく久しぶりに歌います」と、彼女がかつて幼稚園の先生だった頃、子供たちを見て、見られて、感じたことをしたためた「プレゼント~繋ぐ~」を。ひと足早いクリスマスソングであると同時に、大人社会への彼女なりの警鐘を忍ばせたこの曲の世界観には、じわじわ引き込まれる。「携帯もパソコンも手放せない毎日に、こうやってYouTubeじゃなくて直接ライブを観に来てくれて、目と耳で感じてくれる皆さんに、そういう大人でいたいなと書いた曲です」。カワムラのつま弾くギターと彼女の言葉だけが響くなんばHatchで、「新聞」の優しいメッセージが胸に染みわたる。そこにゆっくりとSOKUSAI(Ba)とTOMO KANNO(Dr)のビートが溶け合っていく様も心地よく、緩急自在に楽曲を届ける彼女のソングライティングの妙には、改めて感心させられる。
NakamuraEmi
「自分がデビューしてもうすぐ3年になります。30を過ぎて、音楽でやっていこうなんて1ミリも思ってなかったんですけど、竹原ピストルさんのライブを観たときに、自分の人生は変わりました。竹原さんに出会ってできた曲です」。そうやって披露した新曲「痛ぇ」を息を呑みキャッチするオーディエンス。彼女が曲前にジャストなセンテンスで誘うことがこの日のライブでも抜群に機能していて、初見のオーディエンスも楽曲の持つ景色がまるでフラッシュバックするような想いだったのではないだろうか。
「『Bowline』ってロープの結び目のことで、その中でも一番堅い結び方らしくて。今日はアーティストもお客さんもギュッと結ばれた一日です。最後まで楽しんでください。またいろんな形で皆さんに会えるように頑張ります。最後に、私が仕事をしていたとき、少しでも笑った方が職場がいい雰囲気になって。皆さんの笑顔はすごい力を持っているという曲を歌います」。
ラストに放った「モチベーション」まで全6曲。言葉とグルーヴで己の音楽の真髄をしっかりと届け続けた、NakamuraEmiの充実のステージだった。
BRAHMAN
暗闇の中、メンバーが1人1人とステージへと現れ、KOHKI(Gt)が奏でるイントロに呼び寄せられるようにTOSHI-LOWがゆっくりと登場。切々と言葉を重ねる「FOR ONE’S LIFE」の「静」から、「ライブハウスのステージも、客席も、学校も、職場も、全てが現場。いただいた現場で、全力でBRAHMAN始めます!」(TOSHI-LOW、以下同)と沸点到達の「動」へ。「賽の河原」「SEE OFF」「DEEP」と、殺す気かと言わんばかりのアンセムでたたみかけ、瞬時になんばHatchは音と魂がぶつかり合う戦場に。その後も一切を手を緩めることなく、スカのビートで扇動する「GREAT HELP」、そして「警醒」ではTOSHI-LOWがフロアの大海原へと飛び込み、途切れぬダイバーをかいくぐりながら「鼎の問」をオーディエンスと共に熱唱。その姿は何とも神々しく、人の渦の上に立ちながらTOSHI-LOWはこう続ける。
BRAHMAN
「今や現場はライブハウスや家庭だけじゃなく、あちこちに増えちまったんだけれども、東北や熊本だけじゃなくて、今年は西日本にたくさんの現場ができちまった。さぁ現場至上主義の皆さん、お近くに現場があります。まだ土の中に埋まった家があります。何をしようか、この歌を歌って考えてください」
BRAHMAN
この夏の西日本豪雨を思い捧げた、名曲「満月の夕」。阪神大震災を機に生まれたこの曲を、数え切れない現場で歌い継いできたBRAHMANは、途中アカペラでも歌い上げ、なんばHatchに集った現場至上主義の同志と共に大合唱する。だが、やっぱりBRAHMANは今日も超えてきた。
「卑怯だ。あのにっくき黄色と赤のCD屋(笑)、タワーレコードをバックにつけて、やりたい放題やってるキュレーター。卑怯だ。前の世紀からやってる、時代遅れの俺たちみたいなかよわいおっさんを(笑)、今イケイケのバンドが見せ付けるようにこれからライブをする。そんな卑怯なキュレーターから、リクエストが来ました。1曲だけ「あれ、その曲をリクエストすんの?」みたいな曲があって、分かりやすい曲でもなければ、みんなに頑張れとか、勇気を分け与える曲でもない。その曲を何で選んだんだろうと思って、当時その曲を作った背景を自分でも考えたのさ。10何年か前、同世代のバンドはどんどん辞めていって、自分たちの時代が終わりを迎えていく。そんな中でいつか俺たちも、まっすぐまっすぐ進んで、そのまま穴に落ちるように死んでけばいいと思ってた。だけど、そうじゃなかった。少しでも進もう。どんな恥をかいても進もう。それを選んだ。それまでは、コンクリートみてぇに硬くなって、ぶっ壊れないようにすることが、強くなることだと思ってた。でも、そこから変わったのさ。どんなに風に吹かれても、右に揺れ、左に揺れ、倒れない草木のように、たおやかに。それがホントの強さなんだ。ブレないことが強さじゃない。ブレてもいいから立ち上がる。倒れてもいいからもう一度立ち上がる。そんな願いを込めながら書いた曲をキュレーターが選んだってことは、バンド人生の中でどんなことがあったかが、すぐに分かる。bachoも、NakamuraEmiも、順風満帆では来てない。そりゃまっすぐ来たかったさ。でも、まっすぐ来なかったから、今日ここに俺たちの現場がある。現場至上主義っていうのは、強いヤツが現場でイバることじゃない。現場を捨てなかったアーティストが持つ、優しい強さなんだって、今日は教わりました。どうも呼んでくれてありがとう。そんな歌になったら嬉しいな」
BRAHMAN
心を貫くような「Oneness」は、オーディエンスはもちろん、ステージ袖にいる出演者やスタッフ、なんばHatchに集った全ての現場至上主義者たちに降り注ぐ。そしてラストは、「真善美」。最後の最後に「さあ幕が開くとは 終わりが来ることだ 一度きりの意味を お前が問う番だ」を言い放ち、暗転と共に凄まじい余韻と強烈なメッセージを残したBRAHMAN。今日もBRAHMANは最強で最高だった。そして、自らが選んだbacho、NakamuraEmi、BRAHMANの名演により、これ以上ないくらいハードルを上げ切ったSUPER BEAVERの運命、これいかに。
SUPER BEAVER
おなじみのCap'n Jazzの「TOKYO」のSEとオレンジ色の光に照らされながら、ついに現れた本日の真打。「キュレーターを務めます、卑怯者のSUPER BEAVERです(笑)。今日はよろしくお願いします!」(渋谷、以下同)。BRAHMANのバトンを受けたそんな挨拶と共に、「27」で幕を開けたSUPER BEAVERのライブ。自らが選んだ強力な3組の後、気合が入るしかないだろうというステージで、「現場至上主義へようこそ! 俺たちがカッコいいと思うバンドだけ呼ばせてもらいました!!」と「歓びの明日に」を投下。TOSHI-LOWが代弁したように、彼らとてこのなんばHatchに容易にたどり着いたわけではない。彼らが絶体絶命の窮地から這い上がっていく過程で生まれたそんな1曲を、オーディエンスと全力で作り上げていくSUPER BEAVER。
SUPER BEAVER
そして、「現場至上主義、どう? いいだろ!? 現場至上主義は、自分の目で観たものだけが、自分の耳で聴いたものだけが、自分の心が動いたものだけが本物だっていう、俺たちの意志表示」と語った後は、bacho、NakamuraEmi、BRAHMANとの出会いと感謝を、ステージ袖にいるであろう3組を見つめながら告げる渋谷。
SUPER BEAVER
「おしなべて3組全力のステージ。あと、知恵を貸してくれた黄色と赤のレコード屋さん(笑)、こんな素敵なイベントをやらせてもらってどうもありがとうございます! 何よりも来てくれたあなたに、めちゃくちゃ大感謝でございます。何かが起きる気がするんだ、何かが変わる気がするんだ。先輩からいただいたバトンではございますけども、俺たちの記憶しか残らないぐらい塗り替えていくんで!」
SUPER BEAVER
超満員の会場で拳と声が上がる光景からも、SUPER BEAVERがいかに待ち望まれていたかが如実に分かる。とは言え、そんな追い風ムードに甘んじる気などさらさらない4人は、今年も全国各地で鍛え上げたストロングなビートで圧倒する「うるさい」「閃光」をトップギアでたたみかけ、クラップに乗って始まった「美しい日」では、ハネるオーディエンスになんばHatchが揺れる揺れる! シンガロング巻き起こる「青い春」といい、最高を更新していく様には希望しかない。それはこの日出演した全てのアーティストの共通項でもあり、インスタントに消費されるようなやわな表現ではなく、年齢やキャリアを重ねても経験を血肉に変えて前進する凄みがここにはあった。
SUPER BEAVER
「図らずとも、力んだ(笑)。今日はすごく楽しかったです。それは大好きな先輩たちとステージに立ててるのもあるし、1日ずっとライブを観てて、あなたが楽しそうだったから。こういう日を作れて、最後にバシッとあなたの前で歌うことができて、めちゃくちゃ嬉しいです。bacho、NakamuraEmi、BRAHMAN、タワーレコード並びに、今日真剣に音楽と向き合ってくれたあなた。そして、我々SUPER BEAVERに大きな拍手をお願いします!」
SUPER BEAVER
いつまでも鳴り止まない拍手に、思わず「できてよかったー! やったったぞ!!」と笑みがこぼれる渋谷が、こう続ける。「日々の生活、あなたが当たり前だと思ってることに目を向けたとき、どの日も、いつでも、誰かの特別と、誰かの想いの上に成り立ってるのを知るんです。それが今日はこうやっていい空気になって表れた、素敵な1日でした。こういう歌を、こういう日に、あなたの前で歌えることに誇りを持って」と、最後に生声でフロアに想いを伝えた後は、「ありがとう」を。何度も歌われてきたであろう名曲が、音楽は時を超えていくという綺麗事を目の前で現実にしてくれる。「最後に本当のコール&レスポンスを、あなただけのレスポンスをよろしくお願いします!」。このMC1つでコール&レスポンスという集団行動を、1対1の土俵まで鮮やかに持っていくSUPER BEAVER。大きくハネ上がったレスポンスに包まれた「秘密」を終えたとき、「素晴らしい時間を、あなたと共に過ごせて嬉しかったです」と渋谷が残した言葉は、まさにオーディエンスの気持ちそのものだったのではないだろうか。
アンコールでは、「もう一度俺たちの大好きな先輩に拍手をお願いします! バチッと気合の入った1曲、最後にやってもいいですか?」と、渋谷がステージを駆け降りオーディエンスのもとで「証明」を完遂! 最近はフェスやイベント出演、ワンマンツアーが多かったビーバーにとっても、自らが責任をもってキュレーションする宴は、大きな財産になったことだろう。
SUPER BEAVER
こんな激アツな一夜を経て、残す東京編は11月17日(土)東京・新木場STUDIO COASTにて開催。出演は、Azami、eastern youth、錯乱前戦、spike shoesに加え、澁谷逆太郎をオープニングアクトに招いて行われる。
取材・文=奥“ボウイ”昌史 撮影=青木カズロー
イベント情報
目の前で鳴る音、 表情、 息遣い、 空気、 間、 温度。
オンステージした姿が全て。 オンステージして見る景色が全て。
そういうバンドが作る一日。 痺れる一日
SUPER BEAVER
開催日時:2018年11月17日(土)13:00開場 14:00開演
会場:新木場STUDIO COAST
出演:SUPER BEAVER / Azami / eastern youth / 錯乱前戦 / spike shoes / O.A. 澁谷逆太郎
※3歳以上