舞台『文豪とアルケミスト 余計者の挽歌(エレジー)』太宰治役の平野良インタビュー 「もう2.5次元の舞台に出演できると思っていなかった」
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平野良
DMM GAMESから配信中のPCブラウザ&アプリゲーム「文豪とアルケミスト」が舞台化され、『文豪とアルケミスト 余計者の挽歌(エレジー)』として、2019年2月21日(木)~28日(木)まで東京・シアター1010、同年3月9日(土)~10日(日)に京都・京都劇場にて上演される。最初に公開されたビジュアルは本舞台の中心人物である「太宰治」の姿である。赤く短い髪にマントを羽織り、美しい装飾の大鎌を構えている様は「カッコイイ」と思わず息が漏れてしまうほど。
その太宰治を演じる平野良は今年34歳。最年長で主演を務める彼が考える2.5次元舞台の今と昔、そして役の作り込み方、酒飲み仲間でもある共演者についてなどなど今までの俳優人生にも関わるパーソナルな部分まで多くのことを語ってもらった。
太宰治役 平野良インタビュー 「テニミュ」の頃はまだ2.5次元の舞台は少なくて……
ーー本舞台に出演されることが決定した時のお気持ちを教えてください。
人気作品ということは聞いておりました。僕はまだゲームをプレイしていないので、初めてビジュアルを見たときは「僕で間違ってないかな?」と不安に思いました。歳を重ねるにつれ個性的な役を演じることは増えてきましたが、こういった煌びやかな2.5次元作品を実はあまり経験していなくて……。2.5次元の舞台を紹介する番組のMCをやっていますが、もう30代だからこういうのできないのかなってちょっとネタにしつつ言っていたんです。今回呼んでいただいて、ちょっと手の届かないようなところにあったこういう世界で演じられるというのはとても嬉しかったです。20代の頃はミュージカル『テニスの王子様』に出演していましたが、その頃はこんなに2.5次元の舞台って多くなかったので。しかも規模もまだ小さかった時代に20代を過ごしたので、やってみたかったけど僕はちょっと時期が違ったのかな? なんて思っていました。文学の作品の深いところも触れつつということを聞いて、チャレンジしたいなという思いでいます。
ーーこの作品やキャラクターに対する第一印象は。
キャラクタービジュアルの第一印象は「僕ができる!?」でした。僕がキャスティング権を持っていたら「23歳くらいの若い子を使いたい」って思うくらいのどちらかと言えば可愛らしい見た目です。プール増やして身体絞ろうかなって……(笑)。太宰の公式キャラクター紹介には「ナルシスト、自信過剰で打たれ弱い」ということが書かれていて、ちょっと合致した部分もあります。自分と似ているのかなぁって。後輩からはナルシスト、演出家からは打たれ弱いと言われ、揶揄の意味を込めて天才とも言われたことがあり(苦笑)、僕にとってはシンパシーを感じるキャラクターでもあります。
平野良
ーーアクションや振付がある舞台とのことですが、武器の扱いやダンスについてお聞きしたいです。
武器は仰天するほどの大きさでした。本当にこんなので戦うの!? って。殺陣師さんに聞いたら「舞うようなものではなくガチでやりたいんだ」って返ってきて。どういうことになるんだろう……? そこは挑戦ですね。演出家さんや殺陣師さんとも話し合って、見て美しく、そして意味のあるアクション――本当にそれを武器として扱って戦うかっこよさを作っていけたらと思っています。振り付け師の方は、以前に何度か一緒に仕事をさせていただいたことがありまして、「ザ・天才肌」という人なんです。その方の振り付けはめちゃくちゃ難しくて、拍と拍の間にもうひとつ動きをねじ込んでくるような細かさで。でもそれが全体で決まると、びっくりするくらい面白いパフォーマンスになるので、僕はすごく信頼しています。きっと大変だろうなぁ……と思ってはいますが。僕がお客さんだったら振りも見どころのひとつとなるような振り付け師さんです。純粋に楽しみにしていただければと思います。
俺も将ちゃんもクボヒデも30代。重厚なお芝居も作れそう
ーー共演者の方々について教えてください。
共演したことがあるのは、谷佳樹(志賀直哉役)くんと和合ちゃん(和合真一/江戸川乱歩役)、大志(杉江大志/武者小路実篤役)。クボヒデ(久保田秀敏/芥川龍之介役)とはガッツリ一緒にお芝居やったことないんですよ! あと将ちゃん(陳内将/織田作之助役)も共演したことはないけど、よく一緒に飲んでました。演技している姿を見るのがすごく楽しみです! みんな、すごくお芝居に対してアツい想いを持っているメンバーだと思います。23~34歳くらいまで幅広い年齢の中で、僕も将ちゃんもクボヒデも30代。そのため、『文劇』は2.5次元の作品の中では平均年齢は高いほうになるのかもしれませんが、だからこそ重厚なお芝居も作れそうだなと感じています。大志は前に共演した時はかわいらしくてやんちゃな子ってイメージでしたが、たくさん経験を積んでいろんなことを表現できる役者さんだと思っています。そして涼太郎(小坂涼太郎/坂口安吾役)とは初めて会ったんですが、もう挨拶でわかりますね! いい子! 目を離さずしっかりと「よろしくお願いします!」って言われて、たいへん気持ちのいい俳優さんです。
ーー今日はビジュアル撮影ですが、衣装やウィッグを着用したときの感想はいかがでしたか?
マジでテンションあがりました。こんなにきらびやかでかっこいい衣装で、スモーク炊いて加工なしでもびしっと撮ってもらって。男の子はどこかでヒーローやアイドルに憧れる一面が誰でもあると思うんです。その感覚に近かったですね~。とにかくテンションめっちゃあがる! めっちゃかっこいい!
平野良
ーー本作の公演場所である、シアター1010と京都劇場に思い入れなどは?
京都劇場は『ソングライターズ』で、シアター1010は『さよならソルシエ』で立たせてもらいました。どちらもキレイで音の返りがすごく良い劇場ですよね。場所に関係なくお芝居はしますが、良い劇場といわれるところではお客さんと共有している摩擦が減っていくような感じはあるので、嬉しいですね。
「太宰治」「純文学」というものについて。読みたいものが多すぎる!
ーー太宰治の著作を読んだことはありますか。
「走れメロス」や「人間失格」は学生の頃授業で習ったり、読んだことがあります。ですが、あまり純文学を普段読むことがないので……。この時代の文学作品は舞台の原作にもたくさんなっているので、仕事で何作かは触れたことがありますが、プライベートでじっくり読み込んだことはないかもしれないです。これを期に読んでみたいと思いますが、読みたいものが多すぎますね。
ーー太宰治だけでも本当にたくさんの作品を残していますね。
今の作家さんは締め切り間近にホテルで缶詰になって書いたりするそうですが、昔の作家さんは出版社が所有する部屋で閉じ込められて書いていたそうです。実は僕、太宰治が使ったその部屋を訪れたことがあるんです。ちょっと怖かったですね。昔の日本家屋は土壁なので、なにかが染み付いてる感じもしましたし、ここで書いてたんだぁ……って鳥肌が立ちました。
「表現派」と「存在派」。2.5次元舞台はシェイクスピアの舞台のようなつくり
ーーストレートな舞台と2.5次元舞台の違うところ、役作りについて教えてください。
ストレートなお芝居は心を先に作ってそれをどう外に表現しようか、という内から外に作っていくお芝居。逆に2.5次元は見た目や動き、口調も世に生まれている(外がある)ものなので、そこを駆使した上で内側を作っていくという芝居方法のような感じで今まで演技プランを立てていました。それプラス、最近ちょっと思うようになってきたことがあるんですが……。大きく2つに分かれるお芝居の分類を僕は「表現派」「存在派」と呼んでいます。「表現派」は古典や宝塚、劇団四季のような形があるもので、「存在派」はTVドラマなど。2.5次元はどちらに入るかと言いますと、僕はだんだん「表現派」になってきたのかなと思ってきています。シェイクスピアのお芝居のつくり方に似てきているのではと。だからこそ日本を代表する文化になりうるコンテンツですし、海外で受け入れられる理由もわかります。去年、ブロードウェイの奇才と呼ばれるマイケル・メイアーという演出家がトニー賞を取った作品で来日したときに、ご挨拶させてもらう機会がありました。通訳の方がいなければ言葉が通じなくて、今のお芝居わかってるのかなって思ったんですが、「言葉がわからなくても通じるのが芝居なんだ。何をやっているのか、ぱっと見てわからないものは芝居じゃない」っておっしゃったんです。シェイクスピアのような「表現派」のお芝居と似ていて、ぱっと絵で見てわかったりもするので、2.5次元の舞台は言葉が通じなくても伝わるようなコンテンツなのかなと。2.5次元舞台の世界は、どんどん広がっていくんでしょうね。それこそブロードウェイみたいなところでできたら嬉しいですけどね。ものすごく夢は広がります!
平野良
ーー公演は2月~3月ですが、冬の思い出はありますか?
寒いなって感じるとTRFの「寒い夜だから」が脳内再生されます。ここ10年くらい毎年絶対(笑)。あとこの時期と言えばバレンタインデー。でも実は……本命チョコをもらったことないんですよね。見た目でわかる詰め合わせ系の義理チョコは何度かあるんですが、学生時代、母親に「お返ししなきゃいけないから何個もらったの?」って聞かれた時は、見せるのが恥ずかしかった思い出があります(苦笑)。
ーー最近読んだ本の中でオススメのものを1冊教えてください。
1冊!? どうしよう~! ぱっと思いつくのは太田愛さんの「天井の葦」という本です。「ウルトラマンティガ」の脚本でデビューされていて、「相棒」の脚本も書かれています。本は日本のジャーナリズム、マスメディアのあり方というものを軸に置き、マスメディアが日本人の思想を操って第二次世界大戦に至るという物語です。本の中の「不謹慎狩り」として世間を煽っていった時代と、今の日本がとても似ていると言われているんです。この本を読んでたくさん考えさせられました。戦争を経験した方が少なくなる今だからこそ、太田さんの本は多くの方に読んでほしいなと思います。難しくなく楽しく読めるので、エンタメに関わる人はぜひ!
ーーファンのみなさまへのメッセージをお願いします。
人気作品ということでももちろん気合が入っております。平野良のお芝居を観たことがなくても、存在は知っていたという方も多いと思うんです。「なんで30歳を越えた人がこの役をやるんだ」と思われる方ももちろんいるでしょう。それでも観た後にはよかったと思えるように全力で邁進いたします。作品の世界観やキャラクターを壊さないことは当たり前ですが、原作ゲームファンの方にも「太宰治ってこんな一面があったんだね」というような説得力のある役作り、その場にちゃんと生きているようなお芝居をするつもりなので、ぜひ楽しみにお待ちください。そしてたくさんの方に見ていただけたら嬉しいです。
平野良
取材・文=松本裕美 撮影=山本 れお
公演情報
【公演日程・場所】
<東京>2019年2月21日(木)~28日(木) シアター1010
<京都>2019年3月9日(土)~10日(日) 京都劇場
【出演】
太宰治:平野良、織田作之助:陳内将、坂口安吾:小坂涼太郎、佐藤春夫:小南光司、中原中也:深澤大河、志賀直哉:谷佳樹、武者小路実篤:杉江大志、江戸川乱歩:和合真一、芥川龍之介:久保田秀敏
【公演
一般発売 12月23日(日・祝)10:00~
【原作】「文豪とアルケミスト」(DMM GAMES)
【監修】DMM GAMES
【世界観監修】イシイジロウ
【脚本】なるせゆうせい
【演出】吉谷光太郎
【音楽】坂本英城(ノイジークローク) / tak
【振付】MAMORU
【アクション】奥住英明(T.P.O.office)
【制作】ポリゴンマジック
【主催】舞台「文豪とアルケミスト」製作委員会
【公式HP】http://bunal-butai.com
【公式Twitter】https://twitter.com/bunal_butai