奇才・天野天街のアートワークが名古屋の歴史的建造物に集結 『揚輝荘天街展』2018年11月末まで開催

2018.11.22
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『揚輝荘天街展(ヨウキソウテンガイテン)』チラシ表

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凝縮濃密なコラージュ作品を中心として、ビジュアル版“アマノワールド”に迫る展覧会

1982年に名古屋で劇團少年王者(1985年に少年王者舘に改名)を旗揚げした、劇作家・演出家の天野天街。初めての劇作・演出より1年早く、’79年に友人が立ち上げた紅十字舎の『ダウンタウンブルース』でチラシ原画と舞台美術を担当して以降、少年王者舘やKUDAN Project(小熊ヒデジ、寺十吾と’98年に立ち上げた二人芝居ユニット)の公演はもとより、他劇団や各種イベント関連からの依頼も相次ぎ、現在まで約150作にも及ぶ宣伝チラシやポスターデザインを手掛けてきた。他にも、イラストレーションや本の装幀、映画やPVなどの映像作品、近年は自ら演出する人形劇の人形デザインも手掛けるなど、芝居と共に多岐にわたる創作活動を展開している。

そんな天野天街の約40年にわたるアートワークの数々を紹介する展覧会『揚輝荘天街展(ヨウキソウテンガイテン)』が、2018年11月30日(金)まで名古屋・覚王山にて開催中だ。

計40点のチラシ原画が壁を埋め尽くす、2階の展示室6(旧サンルーム)と展示室7(旧寝室 A)

〈名古屋市民芸術祭〉の主催事業として実施されている今回の企画美術展は、個人宅から名古屋市に寄贈された指定有形文化財で築100年を迎えた「揚輝荘(ようきそう)」が会場となっている。ここは、名古屋で創業された「いとう呉服店」を前身とする百貨店「松坂屋」の初代社長15代伊藤次郎左衛門祐民により、大正から昭和初期にかけて構築された別荘で、まだ名古屋に国際的がホテルがなかった時代に、さまざまな要人が集う迎賓館や社交場として活用されていた場なのだ。広大な敷地の北園と南園から成り、中でも今回作品展示やイベントが行われている南園の「聴松閣」は、鮮やかなべんがら色が目を引く山荘風の建物で、和室や多目的ホールも有する内部は各国様式が混在し、随所にさまざまな意匠が凝らされている。1階の喫茶室(旧食堂)や旧居間、2階のホールや、かつての書斎、応接室、寝室、和室など、思わぬ場所まで作品が展示されているので、建物と共にくまなくお楽しみを。

べんがら色で彩られた壁が特徴的な「聴松閣」の外観

今回、展示の中心となっているコラージュ作品は、天野が1987年頃から行っている創作方法で、戦前の婦人雑誌や図鑑、グラビアなどから大量にコピーを取り、手作業で一つひとつ切り抜いた膨大なモチーフを貼り重ねていく、というものだ。幼少期に実家が営んでいた貸本屋の、色とりどりの本の背表紙がぎっしりと並んだ光景や、漫画雑誌「ガロ」などから受けた影響をもとに、シンメトリーを軸とした構図や、どこか懐かしさを感じさせる独特の色彩感覚で全体を構成。そして夢の中のような背景、少年少女や時に妖艶な女性など必ず登場させる人物像、その人物や動物に添える羽根、無数に散りばめる球体…といったさまざまなモチーフと、美術家の田岡一遠(天野作品の多くの舞台美術を担当)による印象的な字体のロゴを1枚の画の中に凝縮させ、唯一無二のビジュアルを創り上げている。

2階の展示室3(旧書斎)では、装幀の仕事を紹介

本棚には、原画と共に実際に手に取って鑑賞できる本も並ぶ

創作のたびに、この気の遠くなるような作業を繰り返しているわけだが、天野にとっては、「誰かが成したことを利用して、切って刻んで合わせていく、その作業が至福の時間」なのだという。実際、初期のチラシはほとんが自筆のイラストレーションによるものだったが、コラージュの愉しみに目覚めた ’87年以降、宣伝美術としてイラストを用いることはごく稀になっている。会場では、初めてのコラージュ作品である『少年ノ玉』(劇団日本維新派と少年王者舘の合同公演)のポスターと原画から、最新作の『地獄極楽』(ハラプロジェクト×TURTLE ISLAND パンク歌舞伎)のチラシ原画までを展観。この『地獄極楽』の並びには、創作過程を紹介したパネルも展示されているので、ぜひお見逃しなく。

2階奥の和室では、漫画家のしりあがり寿とのコラボレーション企画を紹介。天野が8年にわたって宣伝美術と演出を手掛ける、しりあがり寿presents「新春! (有)さるハゲロックフェスティバル」のチラシ原画などが展示されている

尚、会期中は天野とゆかりあるゲストによるトークショーやライブのスペシャルイベントも開催。11月29日(木)からは、天野の劇作・演出による二人芝居ユニット・KUDAN Projectの『真夜中の弥次さん喜多さん』(原作:しりあがり寿)も名古屋の小劇場「ナビロフト」にて上演されるので(詳細は近日掲載予定)、東海エリア外の方は公演と併せてぜひご来名を。

開幕直後の17日(土)には、漫画家のしりあがり寿をゲストに招き、天野天街監督映画「トワイライツ」の上映と共にトークショーを開催、大盛況を博した

取材・文=望月勝美

イベント情報

名古屋市民芸術祭2018主催事業
『揚輝荘天街展(ヨウキソウテンガイテン)』

開催日時:2018年11月15日(木)~30日(金)9:30~16:30 ※26日(月)休館、イベント開催日時は別途記載
■会場:揚輝荘 南園 聴松閣(名古屋市千種区法王町2-5-17)
■入場料:一般300円、名古屋市内在住の65歳以上100円、中学生以下無料 ※イベントは別途料金が必要(要予約)
■アクセス:名古屋駅から地下鉄東山線で「覚王山」駅下車、1番出口から北東に徒歩10分  
■問い合わせ:名古屋市文化振興事業団ガイド 052-249-9387(平日9:00~17:00)        
■公式サイト:揚輝荘 https://www.yokiso.jp/event/20181115.html


【今後のイベント予定】
※イベント開催日でも展示観覧は16:30で終了につきご注意を

 
◆青葉市子スペシャルライブ「夢遊天蓋、霜月に棲まへば」
11月23日(金・祝)17:30~19:00/地階 多目的ホール
2,500円(定員50名)

 
天野天街監督映画「トワイライツ」(1994年製作 ドイツ オーバーハウゼン国際短編映画祭及びメルボルン国際映画祭短編部門グランプリ受賞)上映&巖谷國士(フランス文学者・評論家)をゲストに招き、天野天街とのトークショー
11月24日(土)17:30~19:00/地階 多目的ホール
1,500円(定員50名)
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