藍井エイル、夢の武道館ワンマンライブレポート
武道館に立つ藍井エイル
“Eir Aoi SPECIAL LIVE 2015 WORLD OF BLUE at 日本武道館”
藍井エイルと日本武道館。デビュー時から「いつかあそこに立つ」と言い続けていた彼女は、憧れも情熱も経験も全部内包してステージの中央に立っていた。『WORLD OF BLUE』と名付けられた武道館で生まれた奇跡を綴る。
2011年のデビューから4年。着実にキャリアを重ねて満を持しての日本武道館ワンマンライブとなった今回。はSOLD OUT、満員の武道館は彼女の登場を待ち望む観客で埋め尽くされていた。
それでも何故だろう、どことなく「藍井エイル」というアーティストの本当の姿を掴みきれないものを感じていたのは本音である。デビュー当時のミステリアスな雰囲気、そしてそのクールな風貌が産んだ印象なのかもしれないが、朧気な彼女の印象はこれだけの活動をこなし、数々の大舞台を重ねた今もどこかに漂っていた。しかし幕を開けてみれば、日本武道館という大きなステージにはただ「歌が好きで、思いを伝えたい」等身大のシンガーとしての藍井エイルがいた。
藍井エイル
「アヴァロン・ブルー」で飛び出した彼女は最初から全力。「WORLD OF BLUEの世界にようこそ!」と叫び「シンシアの光」~「AURORA」とノンストップで歌い切る。
「いつもは一日5食食べることもあるけど、昨日は緊張でスープ一杯しか飲めなかった」とMCで語った彼女が「4年半前、客席からあのステージに立ちたいって言っていて、やっと叶った!」と笑顔を見せると客席からは割れんばかりの拍手。バンドメンバーと呼応するように「GENESIS」「KASUMI」「Back To Zero」を続けざまに歌う。その姿から大きな舞台に立っているという気負いは感じられない。
たしかにステージは大きいが、Eir Bandはまるで下北沢のライブハウスで暴れているように見えた。何よりも本当に楽しそうなのだ。バンドメンバーと背中合わせで頭を振り、時にはステージ上に座り込んで感情をダイレクトに爆発させていく。武道館というステージに立てる喜び、このメンバーで音を奏でられる喜び、それがダイレクトに伝わってくるパフォーマンス。
藍井エイル
「A New Day」では多くの楽曲を手がけている安田貴広をゲストに迎え、センターステージでギター一本とのアコースティックな歌唱を見せたかと思えば、「Roses」ではストリングスチームを迎え壮大な世界観を披露。「コバルト・スカイ」では会場と一体となりタオルを振り回し、「サンビカ」ではステージ狭しと端から端まで走り抜ける。「ゆらり」をエモーショナルに唄い上げた後にはLEDスクリーンにフランス・パリを皮切りに行われた世界ツアーの写真が何枚も映し出される。その一枚一枚が星の形になっていく演出の中、「青の世界」をライブ初演奏した。
その後も「同じ北海道の大先輩に作って頂きました!」とGLAYのHISASHIがプロデュースした新曲「シューゲイザー」も初めてライブで歌い上げ、今までの藍井エイルサウンドとまた少し切り口の違ったソリッドでどこか懐かしいメロディーで観客を魅了していった。
藍井エイル
後半戦は畳み掛けるような構成。アニメ『ソードアート・オンライン』フェアリィ・ダンス編の主題歌「INNOCENCE」、客席とのコールアンドレスポンスで武道館を一つにした「Bright Future」、彼女の代表曲となったアニメ『キルラキル』主題歌「シリウス」ではその日一番の盛り上がりに武道館は爆発。そこからのトドメのように放たれた「IGNITE」。
何も残さない、全部武道館に出し切ろうとする彼女の思いが伝わってくる。
本編の最後では「一つ一つ夢を叶えてくれたのはみんなです、ありがとう」と瞳を潤ませながら「ラピスラズリ」を歌い上げ、駆け抜けるようにステージを後にした。
藍井エイル
アンコールではファーストシングルである「MEMORIA」のオーケストラバージョン。その後のメンバー紹介では、キーボードの重永亮介が「三年前の初めてのワンマンの時、三年後、私武道館に立ちますって言ったエイルが本当に有言実行した。俺達をここに連れて来てくれてありがとう」とコメント。さすがに涙を零した彼女だったが、それを振り切るように歌い上げた「HaNaZaKaRi」、そして最後に歌われた「ツナガルオモイ」で、全23曲、藍井エイルの激しさ、優しさが全て凝縮されていた渾身のステージは幕を閉じた。
藍井エイル
藍井エイルは歌を通して「伝えたい、誰かと繋がっていたい、一緒に歩んでいきたい」という願いに近い思いを発信し続けている。MCで「WORLD OF BLUEの世界を感じて下さい」と何度も言う彼女は少し不器用で、物凄く純粋なんだろう。
クールな美貌の裏にはシンガーとして、アーティストとしての渇望と夢が抑えきれず溢れだしている。「ツナガルオモイ」の歌詞の一節
”ツナガルオモイ 僕らの合言葉 不器用でもずっとそばにいたいんだよ”
これ以上に藍井エイルを表している言葉はないのではないかと思う、あの日武道館にいた観客はきっと解っている、そして藍井エイルを信じている。
満員の武道館が「WORLD OF BLUE」になる。
来年には16ヶ所の全国ツアーを行うことを発表した彼女、そのステージを見れば、誰だって真っ直ぐな藍井エイルを感じるはずだ。
文―加東岳史
01.アヴァロン・ブルー(1st Album「BLAU」に収録)
02.シンシアの光(3rd Album「D’AZURに収録)
03.AURORA(2nd Single/1st Album「BLAU」に収録)
04.GENESIS(9th Single/3rd Album「D’AZURに収録)
05.KASUMI(2nd Album「AUBE」に収録)
06.Back To Zero(1st Single「MEMORIA」に収録)
07.クロイウタ(5th Single「シリウス」に収録)
08.A New Day(2nd Album「AUBE」に収録)
09.Roses(Mini Album 「Prayer」に収録)
10.虹の音(6th Single/2nd Album「AUBE」に収録)
11.コバルト・スカイ(4th Single/2nd Album「AUBE」に収録)
12.サンビカ(2nd Album「AUBE」に収録)
13.ゆらり(3rd Album「D’AZURに収録)
14.青の世界(3rd Album「D’AZURに収録)
15.シューゲイザー(11th Single「シューゲイザー」に収録)
16.INNOCENCE(3rd Single/1st Album「BLAU」に収録)
17.Bright Future(3rd Album「D’AZURに収録)
18.シリウス(5th Single/2nd Album「AUBE」に収録)
19.IGNITE(7th Single/3rd Album「D’AZURに収録)
20.ラピスラズリ(10th Single/3rd Album「D’AZURに収録)
EN1.MEMORIA- orchestra ver.- (Mini Album 「Prayer」に収録)
EN2.HaNaZaKaRi(11th Single「シューゲイザー」に収録)
EN3.ツナガルオモイ(8th Single/3rd Album「D’AZURに収録)