小澤廉インタビュー 音楽活劇『SHIRANAMI』~「僕についてきてくれて、損はないですっ!」
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小澤廉
脚本・演出:G2、ショー演出・LEDディレクション:市川訓由の強力タッグによる音楽活劇『SHIRANAMI』が2019年1月11日(金)~29日(火)新国立劇場 中劇場にて上演される。本公演は、歌舞伎で有名な通称『白浪五人男』をベースに、殺陣、ダンス、映像……と、あらゆるエンターテインメントの面白さが詰め込まれた注目の一作。そして早乙女太一、龍真咲、伊礼彼方、喜矢武豊、松尾貴史ほかそうそうたるメンバーが集結する中、徳川家茂役で出演が決まったのが若手注目株の小澤廉。持ち前の明るさととどまることのないチャレンジ精神で、この大作に立ち向かう!
家茂は“愛される優しい将軍”
ーーまずは……本作出演のお話をいただいたときのお気持ちをお聞かせください。
自分にとって初めての2.5次元ではない舞台の出演ということで、最初は“僕に出来るのか”っていう不安がありました。でもなんでも挑戦しないことには人としても役者としても成長できないと思ったので、“出るぞ”と決めました。
ーークリエイター陣もキャストも錚々たるメンバーです。
こうして改めて見てみると……やっぱりちょっとビビってしまいます(笑)。ドキドキしてます。各界のトップの方々が一同に集まってホントにいろんなことをするので、その中で僕がやれることってなんだろうなって。またひとつ、自分を見つめ直さないとですね。
小澤廉
ーー小澤さんが演じるのは、将軍・徳川家茂。
始めは“自分が将軍を演じるなんていいんだろうか”という思いもありましたけど、最初に「愛される優しい将軍を演じてもらいます」と説明をいただいて、あ、それならいける……かも……知れない……って。音楽活劇なので、「歌って踊る将軍、どんな感じなの!? 」ってところもありますが(笑)、いわゆる“将軍像”というイメージを崩さずにどう歌って踊れるか、もしくはもうイメージをめちゃめちゃ壊してやっちゃうのが面白いのか。自由度の高い作品だと思うので、そこをどうするのかは楽しみにしてださい。
ーー愛される将軍、魅力的ですね。
家茂は強さを強調するのではなく、人としてやさしいところ、大事なことをわかっている人なんですよね。天皇家から和宮をお嫁さんとして貰うんですけど、それは政略結婚で、向こうが嫌がってるのも家茂はちゃんとわかってる。わかってるからこそ、「まずは話し合いをしようか」って、素直に相手に向き合うことができる人。家茂ももしかしたら政略結婚なんて嫌だったのかもしれないけど、それでも相手のことを思ってみずから寄り添えるのはとても男らしいと思いましたし、そういうところは僕も感情移入がしやすかったですね。
やっぱり家茂のように青臭い正義感を振りかざすっていうのは、結果的にとても大事なことだと思うんです。実は僕自身もどちらかというと青臭いヤツで(笑)、“正義”とか“論理”とか、バーっと言葉で言っちゃうほう。それは、若い頃に抱いた理想を貫くのも、大事なことだと思っているので。『SHIRANAMI』は全体的に現代的な雰囲気も感じるので、台詞回しも時代劇っぽい感じよりは普段の僕が発しているような感じで、自然な言い回しで行こうかなって。自然な会話になれるような芝居をしていきたいなって思います。
ーー演出のG2さんとは?
まだ稽古前で直接お話しできてないんですけど、脚本を読ませていただくとストーリーも分かりやすくて面白いし、わくわくするし……心がスゴく動かされました。同時に家茂がスゴく大事な存在だというのが伝わってきたので、そういうふうに書いてくださっている、G2さんの期待を裏切らないようにがんばりたいなと思っています。求められてるのは“愛される将軍像”だと思うんです。だから……まずはどうしたら人に愛される空気を醸し出せるか、ですね。それってきっと稽古中のオフの時間のみなさんとのコミュニケーションも大事だと思いますし、将軍としてみんなに愛されるように稽古に臨んでいきたい。また、ショーの演出がB’Zなどのステージを手がけている市川さんなので、その爆発力みたいなモノもちょっと楽しみにしつつ、たくさんのことを受け止めながら、愉しみながらやってみたいです。
小澤廉
ーー非常にエンタメ性の高い本作。手練の役者さんが揃う中、2.5次元作品で培ってきた小澤さんならではの武器も存分に発揮して欲しいです。
武器……なんだろう……自分は“花が開く”、みたいなときがあるんです。芝居もそんなずば抜けて上手いわけではないですし、歌も人並みだと思っていますので……。でもそこでなにが秀でてるかなって考えたら、やっぱり思い切りの良さなんですよね。“ここぞ”というときに自分の持てる花をバーって演者のみなさまにもお客様にも存分に見せて、そこで魅了することをいつも第一に考えてます。歌とダンスの経験はあるので、そこでも発揮できることが絶対ありますし…あ、将軍様が客席をノセる演出があるかどうかはまだわからないですどね(笑)。G2さんや市川さんと相談しながら、ほかの人だと出来ないようなパフォーマンス、僕ならではのエンターテインメントをやっていきたいです。
ーー時代モノはお好きですか?
観るのはけっこう好きです。でも演じるのは初めてだから、ここで今後、好きか嫌いか分かれちゃうかも(笑)。もちろん好きでいたいので、その下準備はちゃんとやっておきたいです……漢字とか(笑)。僕、最初、かずのみや(和宮)をかずみやと読んでいたくらいですし、『白浪五人男』も読めなかったので。漢字だけじゃなく、歴史の勉強や調べ物を稽古始まる前にしっかりやって準備して、稽古に置いていかれないようにしなくっちゃ。
あと、原案の歌舞伎『白浪五人男』って、戦隊モノの元祖じゃないですか。僕はライダーのほうでしたけど(笑)、ここでその原点に触れられるっていうのも嬉しくて! 歌舞伎的な演出もあるのかなって考えるとまた楽しいですし……口上とか見栄とか、一回やってみたいんですよね〜。そこもちゃんと稽古で身につけないと、このままだと“にわか”になってしまいますから。
ーーもうじきにお稽古も始まりますね。
はい。役者さんはほぼみなさん初めましてです。唯一、『あんさんぶるスターズ! オン・ステージ』で一緒だった谷水力くんがいるので……でも力くんも台詞がたくさんある役で結構大変だと思うので、稽古中はお互いに話す余裕がなさそうですねぇ(笑)。でもお互いに心の中で見守りつつ、精神的に崩れそうになったら話しをしたり、支えあえたらなぁって思ってます。やっぱり初めての現場にそういう存在がひとりいてくれるとだいぶ違いますよね。気持ちが。
あとはもう、全部が勉強。早乙女太一さんの殺陣を見て、盗んで……仲良くなったら教えてもらえたりしたら素敵だなと思います。それと喜矢武さんの思い切りの良さも見逃せない(笑)。バンドをエアでやってポップミュージックのトップに立つってすごいですよね。それをやり切ることができる、あの精神の強さを教わりたいです。ほかにもみなさんそれぞれにプロとしての魅力をお持ちなので、自分はその魅力を観察して理解して吸収して。ここでまた小澤廉も新たな色づけをしたいなと思っています。
小澤廉
“かけはし”になれる役者でありたい
ーーさて。2017年も残りわずか。この1年、いかがでしたか?
とてつもなく早くて、この間年開けたと思ったのに……“今年、なにやってたっけ??”ってくらいの感覚です(笑)
ーー人気作、話題作に次々出演されて大活躍でしたからね。
ありがとうございます。そうですね、特に去年から今年は濃厚さの連続で、全部繋がっているイメージではあります。その先の2019年のアタマにこの『SHIRANAMI』がある。いろんな意味で自分の“新たな一歩”、その最初を飾る作品になっていくのかな、と思ってます。
ーー12月21日、役者業と並行して活動を続けてきた所属ユニット・B2takes!からの卒業も迫っています。
やっぱり今僕がこういういろんな世界を知ることが出来ていること、小澤廉という名前が少しずつ浸透することが出来ているのはまわりのスタッフさんが支えてきてくれたからこそだと思いますし、応援してくれるファンのみなさんがいてくれたから来られた場所だと思うので、そのみんなにすごく感謝しています。B2takes!卒業の決断は、“僕は役者一本でやっていく”っていう意思表示。ファンのみなさんに対しても業界のみなさんに向けても、「小澤廉は役者一本でやっていきます」と、きちんと宣言したかったんです。メンバーとファンのみなさんは僕の精神的支柱なので、ひとりになって大丈夫かなって不安もあるんです。だけど、僕が決めた道だから、後ろを向かず突っ走っていかなくてはいけないと思っています。これからも僕を見守ってくれているみなさんに愛されるような小澤廉でいれたら、きっと、道も開けていくんじゃないかな。常に、関わってくれた方たちが誇ってくれるような男でいたいなって思っています。
ーー明確な「役者宣言」。そのためになにか実践していることはありますか?
普段の生活から気持ちを変えていかないな、とは意識してますね。やっぱり役者自身の人となりが出るのがお芝居ですから、自分も日頃からもっとアンテナを立てるべきなんじゃないかな。課題はたくさんあるんですけど、これからもっともっといろんなことに挑戦していかないと世界が広がらないと思うので、チャレンジ精神を第一にしたいです。怒られることを恐れて萎縮するよりは、怒られてもいいからなんでもやっていきたい。どの現場に行っても全力の小澤廉を魅せたいですね。
小澤廉
ーーでは、どんな俳優さんを目指したいですか?
自分は……最終的な目標が戦争映画に出ることなんです。それを目指してこの業界に入ってきたっていうのも大きいので、歴史を学び、所作を知り、そういうのも含めてちゃんと戦争を伝えられる作品をやりたいです。僕の地元には米軍キャンプがあって、身近にうっすらと戦争の匂いもあったので……周りの人に比べてもそういうところへの思いが強いんだなとは思います。今回の『SHIRANAMI』は時代劇の所作とかも教わるでしょうし、自分がまったくの未経験の歴史に基づいたことを知り、学び、そして表現できるのはありがたいなって思ってます。
ーー『SHIRANAMI』での小澤さん、私たちも楽しみです。
未開拓のゾーンに挑戦、ですね。ミュージカルでも音楽劇でもない、新しいエンターテインメントを目指している作品なので、稽古場でどう化学変化していけるのか楽しみです。僕は自分のことだけ考えるのではなく、周りのことも気遣うことが出来る家茂のような人間って魅力的だと思うので、徳川家茂をやる上ではぜひそういう“僕の理想の男像”も織り込みながら演じていきたいなって思ってます。
ーー作品を通して新たな出会いもたくさんあるでしょうね。
2.5次元からの僕のファンの人たちがB2takes!を知ってどっぷりとハマってくださったこともありますし、そういうふうに今回も僕がかけはしになって、2.5次元ファンのみなさんに「こういう世界もあるんだよ」っていうのを知って欲しいし、僕を知らない人たちには僕の周りのことを知らせていけたなら、それはまたひとつ役者冥利につきるなって思います。
『変わっていくのは進み続けていたいから……』ってB2takes!の歌詞にもあるんですけど、これ、今の自分にもすごいドンピシャだなって思うんです。前に進むためには変わり続けること。僕はそれを少しも恐れていません。ファンのみなさんの中には「そっち行くならもういい」って思っちゃう方もいるかもしれないんですけど。小澤廉というひとりの男を応援すると思ってもらえたら、「ついてきてくれて損はないです!」と、言い切ります! あー、こんなに大口を叩いて……もう逃げられない(笑)。精一杯がんばります。
小澤廉
取材・文=横澤 由香 撮影=山本 れお
公演情報
■脚本・演出:G2
■ショー演出・LEDディレクション:市川訓由
■出演: 早乙女太一、龍 真咲、伊礼彼方、喜矢武豊(ゴールデンボンバー)、松尾貴史 他
■日時:2019年1月11日(金)~29日(火)
■会場:新国立劇場 中劇場
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